私の新しい仕事はハンターです   作:abc2148

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どうすれば

不自然に生き物の気配を感じない森の中を一人と一匹が駆ける。元々森に住み着いていた生物は虫によって食い尽くされたか、もしくはこの場所を捨て何処かへ逃げたのか。

 

どちらも恐らく正しいのだろう。現に巣からかなり離れたにも関わらず巨大な虫が間を置かずに襲って来るのだから。

 

「しつこいっ!」

 

そう叫びながら近付いて来た虫の翅を砕く。そうして翅を砕かれた虫は無様に地面に堕ちる。しかし獲物を追跡するのを諦めてはいない、いや、機械じみた単純な命令を繰り返しているだけだろう。再び飛び立とうと翅を震わせるが砕かれた翅では二度とその身を飛ばすことは叶わないようだ。

 

ギギギ、と唸る姿を横目で確認……直ぐ様視界から外す。

 

見るだけ無駄なのだ。敵は一匹だけではなく先程から逃げる先に待ち構える虫にカムイは剣を振り続けていた。もはやどれ程剣を振ったかカムイは覚えていない。ちらりと握る剣を見れば虫の体液に汚れ刃が欠けている。切れ味は著しく落ち、最早鈍器としての使い道しかない。盾も同じ様な有様だ。

 

「ギャーッ!」

 

ジャギィが勇ましく鳴いた。前方から三匹が接近、密集している。通り抜ける隙間は……ない。

 

「右から抜ける!」

 

言葉と行動、体を右に傾けることにより進行方向を示す。意味を理解したジャギィは右に進行方向を変えながら走る。

 

単純な速さ比べなら虫よりもジャギィの方が速い。やり過ごした虫の姿はどんどん小さくなっていく。

 

だが油断は出来ない。この周辺はまだ虫達の領域、カムイとジャギィは注意深く、しかし風の様に森を駆ける。そんな彼らに近付いて来る虫には時に剣で潰し、盾で潰し、時には交戦を避ける様に走り抜ける。

 

そうしてどのくらいの距離を駆け抜けたのだろう。精魂尽き果てる寸前まで追い詰められていたが、ふと周りを見渡せば見慣れた景色、村の近くの景色にいつの間にか変わっていた。急襲される事に備えて注意深く周りに視線を向けるが虫達の姿は無い。

 

「ようやく撒いたか」

 

漸く安全と思われる所まで来た。すると今迄気にならなかった臭いに鼻をしかめた。

 

「臭い……」

 

虫の体液を被った処から何とも言えない臭いが鼻についた。そうしているとカムイが気を抜いたことを察したのだろう。安全だと分かったジャギィはその場で体を揺すりギャーと鳴いた。

 

ーー協力するのは此処までだ

 

言葉を話したわけではないが思う所は理解できた。

 

「分かった。此処まで走ってくれてありがとう」

 

ジャギィから降り感謝の言葉を伝える。強引に振り落とそうとはしなかったのはこの短い間の共闘を思っての事だろう。もしコイツがいなければ今頃虫達に食われていた筈だ。そう考えれば感謝の念しか出てこない。

 

ジャギィは最後にカムイを見て一鳴きした後に森の中へ帰って行った。その姿を見届けたカムイも足早に村へ帰る。急いでやるべき事、虫の対策を練らなければならない。

 

 

 

 

 

 

急いで村に帰ったカムイは剣の修理等の雑務を終えると村の書庫に籠った。探すものは虫に関する情報、モンスターに関する数少ない文献から情報を見つけ出そうと書物を開いた。

 

だが幾ら探しても求める情報は出てこない。もしかしたら見落としていると考えてもう一度読み返す。パラパラと紙が捲れる音が空しく書庫に響くが、それもすぐに終わる。すると今度はまた別の書物で同じ様に繰り返す。

 

そうして数少ない書物で何度も繰り返した。だがどれほど続けても、何回も読み返しても望むものは書かれていなかった。

 

「……碌なものが無い。そもそもモンスターに関する文献が少なすぎる」

 

カムイが愚痴を零すが仕方のない事だ。村の書庫には多くの本があるが全てがモンスターに関する本ではない。その中にある数少ない本に書かれていることも内容が古すぎて当てにならない可能性もあるのだ。

 

「……記憶から虫への対策を検索するか」

 

前世の記憶から虫に関する対応策を検索する。肝心なところでは全く役立たないものであるから期待はしていないがーー

 

潰す、熱湯、殺虫剤。

 

「本当に碌なものが無い」

 

まずは第一の案の潰す。これはあれか、最後の一匹に至るまで虫を殺し続けろと言う事か。体力、武器もそうだが何匹いるか分からない敵に対して出来る策ではない、却下。

次に第二の案の熱湯。どれほどの熱湯が必要なのか、例え熱湯を用意できたとしてもどうやって運ぶ、これも却下。

最後に殺虫剤。これは三つの中で最も現実的だが肝心の殺虫剤の作り方が分からない。浮かんだイメージも何かから白い煙がモヤモヤと出てくる位しか無い。

 

相も変わらず役立たずだ。どうやら虫に囲まれたときに出した案、騎乗して逃げる案は奇跡だったようだ。だが奇跡も売り切れ、出てくるのは現実的でないものばかりときた。

 

ーー出直そう。

 

今日はこれまでとカムイは諦めて書庫を出ようとした。時間を置けば何か良案が浮かぶと無責任に考えて。

 

だが書庫から出る寸前にまだ手を付けていない書棚が目に入った。そこにはおとぎ話に胡散臭い歴史、何を書いたのか分からない書物等が納められていて今回の調査からは外したものだ。

 

「……一応探すか」

 

カムイは念の為に調べる事にした。だが案の定出て来るのは必要無い物ばかり。空想の物語に分からない文字の羅列、占いについてのものもある。

 

やはり無駄だったかと諦めるも残りも少ない。仕方なく最後まで調べるつもりで次の書物を手に取る。

 

「これも古いな」

 

カムイが開いたのは一冊の古びた書物だ。内容を見るにどうやら日記形式で綴られたもののようだ。だが劣化が激しく所々読み解く事が難しいが読めない事は無い。そうしてパラパラと捲って流し読みしていくとあるページで視線が釘付けになった。

 

「この絵は……」

 

そこに描かれていたのは古い絵だ。長い年月が経ったせいで薄汚れてはいるが見間違えることは無い。カムイを襲った虫が描かれていた。その次のページには図解付きで虫に関して何かが書かれている。

 

求めていた情報、書かれている内容を解読しながらカムイは読み始めた。

 

 

 

 

 

 

あの生物、人喰い虫をラ■ゴスタと今後は呼称する事になった。

おそらくラン■■■タは蜂から分岐した生物だ。何らかの影響により突■■■■異を起こし巨大化した蜂の一種だ。

その大きさは個■■■■■よっては2mを越える巨体が確認される、もはや唯の虫とは到底考えられない。

以上の事から事態を重く見た■■■■■■■■■■はこの生物に対する討伐部隊を編成。それに先立ち■■■■■■■■■■■が調査を主導することとなった。

 

 

運よく捕獲できた個体を■■■■■■■■■■■■■で解剖する。送られてきた報告書によれば体の構造は蜂をそのまま巨大化したようなものだったらしい。

だが環境に対する適応力が非常に高い。

■■■■■■■■■■■■■■■■でも生存が確認された事から推察するに寒冷、そして灼熱の環境でも生存は可能だ■■■。

恐るべき生物だ急いで対策をしな■■■■■■

 

 

■■■■■■■■■■■■が送ってきたランゴスタの情報だ。

解剖の結果、腹部の先に針は非常に鋭利だ。■■■■■■■■■で採用される鎧すら貫くかもしれないと書かれている。

ランゴスタはこの針を獲物に突き刺して強力な麻痺毒を送り込む。

これによって痺れて動けなくなった■■■■の肉を強靭な顎で食い千切り、巣に持ち帰る。

また、小■■■■などの小さな獲物はそのまま抱え込んで巣へ拉致してしまうとの事だ。

 

 

これは吉報と言えるだろう。

どうやら個々の肉体は非常に脆く弱い。物理的な衝撃、それこそ■■■■■■でも対処は可能だ。

だが変則的な動きと毒針、そして圧倒的な個体数がそれを補う武器となっている。

これに関しては別な対策が必要だろう。

 

 

討伐部隊が■■■■■■■■■からランゴスタを駆逐することに成功。

だが少なくない犠牲者が出た。

主な原因は分かった。

まず奴が出す羽音だ。羽音のせいで■■■■■■■■■■■■■は常に集中力を削られ、加えて奴は飛び回り隙あらば攻撃してくる。

相対し■■■■■■■■■■■■■が報告していたがこれが非常に鬱陶しいそうだ。

そして奴の翅は■■■■■■りも薄く、大した強度はない。だが掠めるだけで皮膚を切り裂く程鋭利であり無視できないもの。

不用意に接触すれば手痛い攻撃を受けるだろう。

他にも複数あるが多くはこの二つだ。

 

 

討伐部隊で意見が分かれている。

討伐隊の■■■■■■■■■■■■■は駆逐したことで脅威は消えたと判断、撤収を進言した。

反■■■■■■■■■■■■■はラン■■■■の巣に侵入しこれを殲滅すべきと進言。

二つの意見、撤収か殲滅かで討伐隊は対立している。

だが殲滅を主導す■■■■■■■■■■■■■の本当の狙いはランゴスタから■■■れる素材の回収だろう。

あれは良質な武具になる可能性を秘めている。

加えて近々■■■■■■■■■■■■■との戦があるとの噂もある。

勘弁してもらいたい。

 

 

最近討伐■■■から行方不明者が相次いでいる。

■■■■■■■■■■は討伐隊の方針が殲滅に決定、それで死にた■■■■奴が逃げていると言っていた

だとしても鎧と武器を置いて逃げるものなのか?

 

 

違った、逃げ出したんじゃない。奴らに、ランゴスタに連れ去られたんだ!

巣に向かう途中で逃げ出したと思われていた■■■■■■■■■■■■■死体を見つけた。

いや、あれは死体じゃない。奴らの食い残しだ。

すぐさま討伐■■■■■■■■■■■■■は撤収を進言するが却下された。

クソッタレ。

 

 

死ん■■■■■■■■■■■■■た……

 

 

 

 

 

「何だこれは……」

 

日記はここで終わっていた。解読出来ない部分もあったがそこに書かれていたものは間違いなくカムイが求めていたものだ。

 

「ランゴスタ」

 

それがあの虫の名前。他にも情報がないか探すが日記はここで途切れていた。だが巻末に折りたたまれた紙が挟まっていた。それも劣化が激しくカムイは破らないように慎重に開いていく。

 

どうやら報告書のようなもので整った形式で何かが書き込まれていた。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■を襲撃したランゴスタ、およびその巣に関する報告書

■■■■■■■■■■■■■を襲撃したランゴスタは■■■■■■■■■■■が率いる討伐隊によって撃退。

その後討伐隊はランゴスタの巣へ侵入、戦闘を行い討伐隊の過半数を犠牲に殲滅は成功。

なお新たに巣で確認出来た事を以下に示す

巣の内部ではランゴスタの■■■■■■■■■■■■■と思われるものを確認。その後の調査で■■■■■■■■■■■■■■■■と呼称される事になる。

ラン■■■■は■■■■■■■■■■■■■を中心とした群れを形成しその後■■の規模が大きくなりすぎると、■■■■■は巣を分割すると考えられる。

今回の■■■■■■■■■■■■■の襲撃も分割によるものと判断される。

分割された小規■■■■■■■■■■■■■■■■各地に点在しており、

よって巣が近い場所では数え切れない程のランゴスタが確認される。

また同じ群れの中でも大きさによる個体差があるが、

■■■■■■■■■■■■■■■■の護衛を任される個体は「親■■隊」と呼ばれており、通常の個体より一■■■■■■■■■■■■■■■■きい。

新しい巣を作る場合は親衛隊を引き連■■■■■■■■■■■■■頭に立つが、

近くで■■■■■■■の危険が迫っている場合は親衛隊が■■■■■■■■■■■■■■■■を運ぶ事■■■■■■■■■■■全を確保しようとする。

■■■■■■■■■■■■■が出す翅の音で■■■■■■■■■■■■■■■■特殊な連携を取ることもある。

ランゴスタに関する報告は以上

 

なお討■■■■を壊滅に追い込んだ責任を問われ■■■■■■■■■■■■■■■■は近々■■■■■■■■■■■■■■■■に召喚さ■■■■■定である。

 

 

 

 

紙に書かれていたものは日記よりも有益な情報。だが内容を理解するに従ってカムイの顔は青くなる。

 

カムイは気が付いていただろうか。いつの間にか書物を持つその手が震えていることに。

 

 

 

 

 

覚束ない足取りで村を歩くカムイ。その顔は血の気が引き青くなっている。他人が一度見れば心配する事は間違いない。だが村に差し込む夕陽のせいで青くなった顔色を見られる事は無かった。

 

そんなカムイの頭の中では書庫で知り得た単語が浮かんでは沈むを繰り返している。

 

巣の分割、人喰い虫、そして■■■■■■■■■■■■■。

 

巣の分割は簡単に理解出来た。生物の本能は数を増やし生息領域を拡大する事だ。そこに人もモンスターに違いはない。

人喰い虫、これも理解出来た。実際に連れ去られているのだ、人もランゴスタにとっては食料の一種なのだろう。

■■■■■■■■■■■■■、文脈から推測するにランゴスタを率いる存在の名前が書かれていた筈だ。無視する事は出来ない。

 

どうすればいい、先程からカムイはこの単語だけを繰り返していた。だが解決方法は浮かばない。その代わりに浮かぶのはランゴスタが村にもたらす被害だけだ。

 

幻視してしまう。ランゴスタがカヤを、アヤメを、村長を、村に住む人たちを食い殺す様が簡単に視えてしまった。

 

今までの生活を振り返る。呑気に狩りをして村の人たちと笑い合う。近くにランゴスタの巣があることも知らずに。村人たちを見れば皆笑顔で明日に向かって希望を抱いている。冬の時のようなガリガリに痩せた人はいない。

 

そうランゴスタから見ればよく肥え太った獲物が此処には沢山いる。加えて数で劣っているのは明白、襲わない理由はない。

 

村はモンスターに見つからないように入口は隠蔽されその効果は確かだ。だが地上を闊歩するジャギィのようなモンスターと奴らは違う。空を飛べるランゴスタには隠蔽は通じず空から村を見つける可能性がある。

 

ランゴスタはいつ村を襲ってくる?今日か、明日か、一か月後か、それとも一年後か。分からない、それがカムイの不安にさせる。

 

それ程恐ろしいモンスターでありながらランゴスタが地上を支配したという話は無い。村人達もその存在を子供に教えなかったことから今まで見たことも聞いたこともなかったのだろう。それから推測できることはランゴスタと言えども生態系のピラミッドでは下に存在するモンスターという事実。

 

村を守るため戦いは避けられない、だが勝てるのか。細かな事は分からないが昔は討伐隊を編成したと書いていた。だがそれでも壊滅と引き換えに討伐したのだ。

 

それともランゴスタの天敵になるモンスターが来るのを祈って待つのか。

 

もしくはカムイの住む村でランゴスタに対抗できるだけの戦力を揃えるのか?仮に出来たとしても圧倒的に不利の可能性も高いのだ。

 

村を捨てる案はどうか、だが捨てた後は何処へ行く、何処に逃げればいい。

 

そうして最初に戻りどうすればを繰り返すのだ。

 

「あっ、カムイいた!」

 

そんな暗い考えを吹き飛ばすような明るい声が後ろから響いた。振り返ればアヤメが小走りで駆け寄ってくるところだった。

 

「どうした、アヤメ」

 

カムイがアヤメの顔を見れば興奮したように顔を赤くしていた。

 

「どうしたも……うわっ、顔色悪いけど大丈夫?」

 

アヤメには夕陽の中でもカムイの顔色の悪さは分かったようだ。そっとしてほしい気持ちもあったが気付いてくれたことにカムイは嬉しいやらなんだかわからない気持ちになった。

 

「ああ、大丈夫だ。ところで何か用なのか?」

 

「ふふん、聞いて驚きなさいカムイ。なんと蜂蜜を採取できた!」

 

「本当か!」

 

「……かもしれない」

 

「オイ」

 

とんだ肩透かしだが出鱈目を言っている感じではない。とすれば採取の目処が立ったのだろう。

 

「そ、そんな顔しないでよ。でも実際に蜂蜜は採取できたのよ。後はこれを続けられるようになれば自給可能になるわ!」

 

自信満々に話すアヤメにどうやってと聞けば詳しく教えてくれた。

 

今日いつものように蜂を観察していたら巣から何かが滲みだしてきたこと。

慌てて病気か何か悪い事が起こったのではと皆で慌てたこと。

その中の一人が滲みだした液体を指で掬い匂いを嗅いでみればそれが蜂蜜だった事。

急いで巣の下に零れた蜂蜜を入れるための壺を置いたこと。

 

身振り手振りで興奮して話してくれた。

 

「カムイ顔色悪いけど、ホントに大丈夫?」

 

そうして話し終わったアヤメは相変わらず顔色の悪いカムイを心配した。カムイも蜂蜜が採集出る目途が建ったことは嬉しい。だが今は素直に喜べる気にはなれず、取り繕うだけの余裕もなかった。

 

「だ……、いや、やっぱ大丈夫じゃないかも」

 

「何で早く言わないの!直ぐにケンジさんのところへ行こ、私も付いて行くから」

 

カムイの背を押してケンジが住む家まで連れて行こうとする。それにカムイは逆らわずされるがままになっていた。そうして背中を押されながら歩いていると不意に口が開いた。

 

「なあアヤメ」

 

「何?」

 

言おうとした。村に危険が迫っている、逃げ出さないと死んでしまうかもしれないランゴスタの恐ろしさを伝えようとした。

 

だが言えなかった。カムイは初めて見たのだ。以前のーー食料に困窮した時に見せた張り付けた笑顔ではない。ようやく心の底から笑えるようになったのだアヤメの笑顔を。アヤメだけじゃない、他にも沢山の人がいるだろう。

 

「……いや、何でもない」

 

ついさっきの様に興奮して笑顔で話すアヤメはどんな顔をするのか。また以前のように暗い笑みを張り付けてしまうのが嫌でカムイは言えなかった。

 

「でも」

 

「大丈夫だから!今日はもう帰って寝るから心配ないよ」

 

そう言ってカムイはアヤメの手を振り払って家に帰る道を進む。一人になりたかった、誰かといると暗い気持ちにさせてしまうのが嫌だった。

 

「……分かった。でも困ったことがあったら相談してよ、力になるわよっ!」

 

小さくなっていくカムイの背中にアヤメの力強い声が届いた。

 

「ありがとう」

 

小さくカムイは呟いた。だが小さ過ぎるその言葉はアヤメにしっかりと届いた。

 

 

 

 

 

 

「どうす……」

 

そうしてカムイはまた振り出しに戻る様に同じ言葉を……繰り返さない。

 

ガツンと自分の頬を殴る。

 

「自惚れるな、今まで一人でどうにかなった事なんてあったか」

 

そしてアヤメの言葉もカムイの耳に、心にしっかりと届いていた。

 

思い出せ今までの事を。自分一人の力で成した事などあったかーー無い。全てが誰かの、それこそモンスターの力を借りた事もあったではないか。

 

「悲劇のヒロイン気取りか、虫唾が走る」

 

虫に攫われた事が原因で弱気になっていたなど言い訳にもならない。自分の振る舞いに怒りが湧いてきた。

 

「考え方を変えろ、守るのが無理なら攻められる前にこちらから攻めるんだ」

 

そう、今まではランゴスタからどうやって村を守るかを考え続けていた。だがどんなに考えても名案は出てこない。

 

守る事が出来ない、ならば攻める事を考えるべきなのだ。

 

「正攻法では戦力が足りない?だったら奇策でも何でも使えばいいだけの事」

 

馬鹿正直に数を揃える必要は無い。相手は虫、モンスターなのだ。付け入る隙は何処かにある。

 

「目標は奴らを皆殺しにすること」

 

それは自分一人だけでは不可能だ。それなのに自分以外を無意識に戦力外と判断した愚かさ。自分一人で何でも出来ると過信した傲慢さ。

 

身を以て知っている筈だ。人一人が出来ること、考えることには限度があることを。

 

「ありとあらゆる手段を使って」

 

ならば使える物は全て使う。

 

「必ずだ」

 

やるべき事は見つかった。




最初はカムイがランゴスタの情報に追い詰められ正気を失う予定でした。

作者「おぉ、カムイよ。正気を失うとは情け無い(愉悦」

こう言おうとしていたのに気付けばこんな感じに。

それを文書にするのが大変だった。

カムイが勝手に作中で動いてしまうので本当にこの先どうなることやら。
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