私の新しい仕事はハンターです   作:abc2148

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※前話にあった「error」表記は消しました。お騒がせしまして申し訳ありません。本作は実はゲーム世界という事はありません。

※この話から私が書きたかったモンハンが始まります。今までの物語はプロローグです。見る人によっては受け入れられないと思いますのでご了承下さい。



 



それでもカムイの物語を読みたい人はお読み下さい。


第五章 少年は知る、世界と己を
それが全ての始まりだった


──森へは入ってはいけないよ。

 

それが母さんの答えだった。

 

まだ幼かった僕が抱いた小さな疑問。それに対する答えを求めた時も母さんの表情は変わらなかったと思う。いや、何時もの優しい表情ではなかったかもしれない。そこら辺の記憶はボンヤリしていて分からない。

 

──母さん、どうして?

 

──恐ろしい場所だからね。あそこに入った人は誰も戻って来なかったんだよ。

 

──でも食べ物が沢山あるんじゃないの?

 

森には沢山の食べ物がある。山菜も木の実、食べ物じゃなくても暖を取るための木が沢山ある。それを取って来れれば母さんも、村の皆も喜ぶに違いない。だから分からなかった、何故取らないのか、何故森を怖がるのか、その理由が。

 

──そうだね。

 

だけど母さんの表情は優れなかった。それどころか目を見開いて自分を見つめた後、悲しげな表情で話してくれた。

 

──……昔、ずーっと昔にね、今のお前と同じ事を考えた男がいたんだ。森に入って食べ物を探してこようとしてね。

 

──その人はどうなったの?

 

──……いなくなってしまったよ。

 

あぁ、その人は母さんにとって大切な人だったんだ。今なら分かる、森に入った理由は分からない、でも母さんの大切な人は森に入って帰って来なかったんだ。そんな悲しい記憶を僕は思い出させてしまった。

 

──だから、お前は森へは立ち入ってはいけないよ。母さんとの約束だ、出来るかな?

 

──分かったよ、母さん。

 

言葉に込められた思いを小さな僕は分からなかった。それでも母さんが悲しくなくなるなら、そう思って約束したんだ。

 

だけど約束を破ってしまった。

 

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

 

昨日から煩かった腹の虫は鳴らない、喉の渇きも気付けば消えている。そんな有様で森の中を当てもなく歩く、いや、歩いているのかな?

 

聞こえているけど聞こえていなくて

 

見えているのに見えていなくて

 

ふわふわした感じだけがあって

 

それで、どうして歩いているのかも分からない

 

何故此処にいるのかと考える。すると浮かび上がる記憶があった。

 

怖い人達に襲われて村の皆が逃げていた。隣に住んでいたおじさんも、おばさんも、友達も、村に住んでいた皆が逃げていた。だけど囲まれていて逃げられなくて、その中で塞がれていない所が一つだけあった。

 

それは森へ続く道、村の誰もが、怖い人達も多分知っている。その先に進んだ者は必ずいなくなると。

 

それでも僕は森へ進んだ。誰よりも怖がりで、誰よりも臆病で、怖かったから、怖い人達から直ぐにでも逃げたかったから。走っている時に背後から嗤い声が聞こえた。何を言っているかは分からない、そんな事を気にしていられなかった。

 

走って、走って、走って、走って

 

気が付けば周りにあるのは大きな木だけだった。静かで時々虫の声が聞こえてくる、直ぐに此処が森の中だと嫌でも分かった。

 

だけど眼に映るものを見てそんな事がどうでも良くなった。そこには森の恵みが沢山あったんだ。木の実に山菜、探せば探すだけ見つかる、それこそ両手に抱え切れない位に。

 

──そして恵みを食べる何かがいた。

 

アレがなんなのが知らない。見た事は無かった、けど聞いた事もなかった。だけど自分よりも遥かに大きいソレを見た時は唯怖いとしか感じなかった。

 

身体を小さく丸めた、息を潜めた、正しいのか分からないけど見つからないようにした。

 

でも耳にはアレの息遣いが聞こえてくる、地面がどしどしと揺れる。人がいなくなる理由が分かってしまった。きっとアレに食べられてしまったんだ、そうに違いない。

 

──なら自分はどうなるの?

 

そこまで考えて身体が冷たくなった。

 

直ぐにでも此処から離れないといけない、アレは草を食べている、今しかなくて地面に腹這いになって進む。でも逃げた先にもアレと同じ生き物が沢山いて、また腹這いになって逃げる。そんな事を何回もした。

 

だけど限界だった。毎日満足に食べる事が出来なくて、最後に水を飲んだのは何時だったけ?

 

もうどうでも良かった。

 

隠れる事もせず、森を唯々歩く。

 

目的はなくて

 

どうすれば分からなくて

 

どうにも出来ない事だけが分かって

 

茂みを抜けた時に何かを見た気がして目の前が真っ暗になった。

 

もう何も感じなかった。

 

だけど嬉しかった。だって、これで怖い思いも、辛い思いもしなくていいんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目が覚めたか」

 

だから目を覚ました時、目の前に人がいる事が信じられなかった。

 

 

森から連れ帰った子供が目を覚ました、ならば早急に尋も……もとい事情聴取をする必要があった。だが、それ以前に休息が子供には必要だった。

 

倒れた瞬間に急いで子供に駆け寄れば酷い容態だった。呼吸も浅く血の気も無く真っ青な有様、状態を確認するば身体は酷く衰弱していて危険な状態だった。

 

事は急を要すると村に連れ帰り自宅に寝かせた。そして一通りの処置が終わったところで呼んでいたケンジが来たので改めて診断を受けた。それで分かったのは二つ、纏っていた襤褸の下にあったのは骨と皮だけの身体だった事、あそこで助けなければ子供は餓死していた事だ。

 

今は背格好が近いカヤに世話をさせているが容態が安定するには時間が掛かる。それに子供本人がいなくとも、やらなくてはならない事はある。

 

「さて、どうしたものかのぅ……」

 

村の集会所、その上座には村長が座り悩ましげな顔をしている。その左右に自分とアヤメが座り子供の処遇について話し合っている。

 

「勝手な行動をしてしまい申し訳ありません」

 

「お前の事だから見捨てられなかったのだろう。その優しさには儂等も救われておるから何も言わぬ」

 

故にカムイが気にする事は無い、と村長は笑いながら言ってくれた。だかその笑顔を仕舞い込んで再び悩ましげな表情をしてしまう。

 

「それより助けた子供をどうするか、その方が問題だ」

 

「今でも分かるのは此処から離れてはいるけど別の村がある事、その村の子供が何故か森にいた、の二つよね」

 

村長の言葉に次いでアヤメが補足説明を加える。それは集会所に集った三人が共有している情報。

 

連れ帰った子供が自分達の村の所属ではなかった、ならば考えられるのは他所から来た以外に他ならない。ならば子供は何処から来たのか、何故森の中にいたのか。それが此処に集まった三人の頭を悩ませている。

 

「そうだ、その理由によって対処も変わる。だが理由が今は分からないときた」

 

だから情報が欲しいと村長は言外に告げていた。

 

「子供は酷く衰弱しています。二、三日は休ませるべきと」

 

「それに関しては任せる。今此処で伝えたいのは子供の選択肢だ」

 

分からない事だらけの現状でも方針は大雑把にだが立てられる。それ以前に取れる選択肢は限らたものだが。それでも村長が示した選択肢は三つある。

 

・村の一員として迎え入れる。

・子供を住んでいた村まで連れて行く。

・見捨てる。

 

「見捨てるなんてありえないわ」

 

「そうだな、出来れば家族の元に戻してやりたいとは儂も思うが……」

 

そう言いつつも歯切れが悪い。それは冷徹に何が最も村の利益になるかを考えたからだろう。正直な所、子供一人で得られる利益は無い。せいぜい人手が増えた程度だ。

 

だからこそ利益よりも不利益に関して考えなければならない。この場合であれば見捨てるのは自分やアヤメ、依頼で一緒にいたアイルー達の心情が悪くなってしまうため出来れば取りたくない。子供を住んでいた村に連れて行く選択肢を選べば人手が必要。そして、それが出来る人員は村の中でも自分達だけだ。しかし代えの効かない人員が村から離れるのは避けたい所。

 

ならば村に迎え入れた方が手間が掛からない。そちらの方が村としても不利益を最小限に抑えられる。

 

「自分は村に迎え入れた方が良いと考えます」

 

だから村長の考えに自分は賛同した。しかし村長は意外だったようで少しだけ驚いていた。

 

「ほぉ、子供を思い遣って村まで連れて行くと思っていたが。して、その心は。カムイの事だ、何かしらの考えがあるのだろう」

 

「はい、村の外から来た子供の身なりは酷いものです。あの子だけが特別酷いか、もしくは村全体が同じ様になっているのか。前者ならばその様な村とは縁を作りたいとは思いません。後者であれば村の存在を知らせるのは危険かと」

 

前者であれば、子供を住んでいた村に返した時に難癖をつけられる可能性がある。無論、可能性の一つに過ぎないが村に何かしらの要求を突き付ける可能性も否めない。

 

後者であれば子供が住んでいた村から人が難民のようになって此方に流れて来る可能性がある。その時の人数はどれくらいになるのか分からない。一人二人なら大丈夫だろう、だが十人、二十人といった数なら。村の許容人数を確実に超えるだろう。

 

まぁ、どれも悲観的な予想を基にした考えだ。間違っている可能性もあるだろう。それでも自分が子供を村に返すのに賛同しないのは──

 

「……嫌な予感がします」

 

理路整然とした思考で出された結果では無く、本能とも呼べる感が訴えてくるのだ。厄介払いとも言える扱いだが深く関わるのは避けたいと思うのが偽りの無い本心だ。

 

「確かにな、だが……」

 

「何かが起こっているなら調査しないと。外での出来事が村に来た時に何も知らなかったのは危な過ぎると思う。それにあの子が家族に一生会えないのは辛いよ」

 

アヤメの意見にも賛同出来る部分はある。今回の様な出来事が一回とは限らず、何時かまた同じ様な事が起きるかもしれない。その時が今回より酷い可能性もあるのだ。その為にも何があるのか、何が起こったのか調査する必要がある。

 

「確かに一理ある、だがカムイの言う事も分かる」

 

どちらの意見も多分正して間違ってはいない。ならばその中から何を選ぶのか決断を下すのは村長の役割だ。

 

村長が目を瞑り考え込むが時間はそれ程掛からなかった。

 

「暫くは様子見に徹する。その子供が知り得る事を知ってからでも遅くはなかろう」

 

そう言って村長は結論を出した。確かに先走った議論であるのは自分もアヤメも承知している。結果としては先送りという形に収まり話し合いは終わった。

 

それから二日後に子供の容体は安定した。早速、話せるようになった子供から事情を聞く事が出来るようになったのだが……。

 

「……もう一度聞くが、君は帰りたいのか?」

 

「村に帰りたい」

 

子供の名前は教えてもらえなかった。そして口を開いて出た言葉は助けてくれた事への感謝の言葉、それと村に帰りたいと言う言葉だった。

 

背丈の小ささから歳はカヤと同じか、もしくは下か。そんな子供が独りだけ、身の回りにいるのは知らない人、現状を理解していない発言も名前を教えないのも置かれた状況と幼さを考慮すれば仕方がないだろう。

 

「そもそも、君は何故森にいた?」

 

「……逃げてきた」

 

「何から?」

 

「……怖い人達から」

 

虐待か、それに近い環境なのか。それでも帰りたいとしか言わないのは。

 

「母さんが心配している」

 

この子供の家族が不遇な環境にいるのは間違いないだろう。もし今の子供の状態で村の一員にしても母親を思って上手くいかない。思い残しがあった状態では村に溶け込むの支障が出る。そしていつか母親に会う為に村から勝手に抜け出してしまうに違いない。何故なら村に居る限り母親には会えないのだから。

 

「兄さん、家族に会えない気持ちは、よく分かる」

 

カヤは悲しげな顔をしている。自分にはカヤがいた、カヤには自分がいた、だが子供の側には誰もいない。仮に子供が村の一員になる事を了承しても村の中でこの子は独りきりだ。

 

「……送り届けたら直ぐに帰る」

 

それは耐えられるものではないだろう。それに見捨てられないなら、連れて帰ってきたならば取れる選択肢は一つだけだ。

 

「いいか、村に連れて行くだけだ。だから君が知っている事を全て話してくれ。分かったか?」

 

「分かった!」

 

「よし、いい返事だ」

 

そうして漸く欲しい情報が手に入る……と思ったのだがそうはいかなかった?まず子供が話す内容が要領を得ない、何かを伝えようとしてくれるのは分かる。だが語彙が少なく正確に理解出来ないのだ。それでも村全体が貧しい事、村の人達は作物を生育して生計を立てている、それを自分達が食べる分以外は何処かに持って行く事しか分からなかった。

 

子供の話を聞いても嫌な予感は変わらない。寧ろ向こうは治安が悪い可能性が出て来た。その中に入り込むなら準備をしておくに越した事はない。

 

其処にはイヤな予感を覆い隠すように頭の中では幾つもの事を考えている自分がいた。

 

 

村を出て森を抜け、廃墟に辿り着く。そして廃墟から先は未知の領域、周辺を警戒しながら小さなハンター達は隊列を組んで森の中を進んでいく。

 

「でも拍子抜けよね、出てくるのはアプノトスやガーグァみたいな大人しいモンスターだけだし」

 

行進の最中であったがアヤメの言葉はカムイ達の気持ちを代弁したものだった。何せ森の中は至って平和、ジャギィはおらず草食のアプノトス等が多くいるのだ。

 

「かと言ってアオアシラやジャギィが出て来ても困るけどな」

 

「……アオアシラはともかくジャギィは出て来ないと思う」

 

「どうしてトビ丸はそう思うの?」

 

「以前の争いで奴等も数を減らした、元に戻るには時間がかかる。それに奴等は此処が俺達の縄張りだと思っている」

 

「縄張りね……」

 

縄張り争いに負け逃げたジャギィが村の周辺に現れない。それは彼等が村の周辺はカムイ達の縄張りだと考えているからか。確かに理屈は通る、ならば此処までジャギィ達がいないのも、反面アプノトス等の草食モンスターが多いのも余波として考えれば肯ける。

 

「だとしたらジャギィが近寄って来ないのも分かるかな。でもそれって」

 

「縄張り争いはまた起きる、でもまだ先の事だと思う」

 

「よかった〜」

 

アヤメとトビ丸は会話を楽しみつつも警戒は怠っていない、だが問題は子供の方だった。アヤメとトビ丸の会話は聞こえていたと思うが、それでも子供は気を張り詰めて辺りを何度も見回している。そのせいで脚の動きは鈍くなり進行速度が落ちている。

 

「……心配するな、この辺のモンスターなら問題無く対処出来る。気を抜けとは言わないが張り詰め過ぎるのも良くないぞ」

 

「はい、すみません……」

 

「いや、責めてる訳では……」

 

「心配しなくても私達は強いのよ」

 

背後からアヤメが子供に優しい言葉を掛ける。その言葉のお陰で子供も多少は安心出来たのか歩みは早くなった。この分なら大丈夫だろう、アヤメのお陰だ。

 

「そんなに気を張ってどうしたのカムイ?確かに『紅毛』みたいのが出て来たら危ないけど、それでも村の周辺には異常は無かったでしょ」

 

アヤメの言う通り村の周辺の警戒にはアイルー達にも協力してもらっている。彼等のお陰で村の周辺に何か異常があれば直ぐに知る事ができるように態勢は整えてある。そんな彼等が異常を見つけていないなら心配する事はないのだろう。

 

「……ごめん」

 

それでも嫌な感じを拭い去る事は出来なかった。村を出てからずっと付き纏うソレのせいで傍目にも分かるくらい気を張っていたらしい。

 

「アヤメはこの事どう思ってるんだ」

 

子供を村まで連れて行く、替の効かない自分を村から出した村長は何を考えているのか。親心だけのはずが無い、娘であるアヤメなら何か知らされているかもしれない。

 

「出来れば交流したいとは思っているんじゃない。出来ればだけど」

 

あっさりとアヤメは村長の考えを教えくれた。

 

「もし近くにいるのなら、どんな人達か知らないと危険だと考えたんじゃないかな。例えばの話だけど、偶然会って何かが原因で争うかもしれない、だから未然に防ぐ為に交流……は出来なくても最低限どんな村なのか知りたいと思うってところかな。ちなみに私は名代も兼ねているのよ」

 

もし色良い返事が貰えても交流はずーっと先の話だしね、とアヤメは気安く語ってくれた。

 

「そうか、そうだな自分が過剰に警戒していただけだな」

 

勘違いも甚だしい、村長も村の為に、皆の為に色々考えている。何もかも自分一人で気負う必要はないのだ。

 

「そうよ、気楽にとは言わないけど、肩の力はある程度抜いておかないとね。それに私にトビ丸がいるんだよ。少しは頼って欲しいな」

 

「……姫様の言う通りだ。足手纏いになるつもりは無い」

 

「だから姫様は辞めてよ!」

 

背後ではアヤメとトビ丸が激しく言い争っている。だがその言葉のお陰で大分気楽になった。まぁ、実際はアヤメの口撃をトビ丸がヒラリヒラリと避けておちょくっているのだが。トビ丸はトビ丸でアヤメの事を姫様と言うが間違ってはいない、多少の悪意は籠もっているようだか。

 

……もしかして以前、尻尾を踏まれた事を根に持っていたりする?

 

「なんか、その、凄いですね」

 

「確かにな」

 

多少賑やかになりつつも警戒しながら森を進んでいく。そして森の境目に辿り着き、森を抜けた。

 

そうして森を抜けた先にあったのは草原だった。

 

踏み出した先にあった草原は大きな障害物も無く視界の開けた見晴らしの良い土地だ。確かに此処ならば居を構え易く、村も拡張し易いだろう。見晴らしも良いからモンスターが接近しても直ぐに分かる、畑も作り易いにちがいない。

 

「此処です、此処から暫く行くと村に着きます」

 

子供の顔は笑顔だ。もうすぐで村に帰れる、そうすれば母親に会えるのだから嬉しいのだろう。足取りも更に早くなっている。

 

だが自分は喜ばしい気分にはなれなかった。

 

「……何だ?」

 

「嫌なニオイがする」

 

自分だけでなくトビ丸も同じ臭い感じ取ったようだ。アヤメと子供はまだ気が付いていないようだ。だが村に近づくに連れて嗅ぎ取れるようになったのだろう、表情を険しいものにして草原を進んでいく。

 

何時の間にか自分もアヤメもトビ丸も子供も走り出していた。何も話さず無言で走り続け、そして村の輪郭が見える所まで辿り着いた。

 

「…あ、あ、ああああっ!」

 

村の輪郭を捉えた子供が走る、ナニカを叫びながら。その姿は正気とは言えない、いや、正気を保っていられなかっただけだ。子供の話の通りなら森を抜けた先に平地が広がり、その先に子供の村がある筈……だった。

 

「……何よ、これ」

 

自分とアヤメが脚を止めたその先、其処に村は無かった。

 

そこにあったのは黒、焼け焦げ廃墟と化した村しかなかった。

 

 

此処が終わりの始まり、そして全ての始まりとなる

 

カムイが村の中の小さな世界で閉じ籠っていれば巡り合う事もなかった

 

そこで満たされていれば、そうすれば知らず、目にしないで済んだ

 

だけど、そうはならなかった

 

そしてカムイに絡み付き、縛り、引き摺り墜とそうとするだろう

 

 

 

 

──地獄が。




こんな話を書く自分の頭の中はどうなっているんだ。

でも書きたかったんだ!

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