アステロイドは揺るがない   作:夜なべ

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大ッ変遅くなりました
待っててくださった方(もしいましたら)申し訳ありません……
いつにもまして文章がぐだぐだなので、いつも通り何かしらの修正はそのうち入ると思います
「深く考えると頭痛おきるけどよォ~~」といった感じでぜひゆるく読んでください。

また、「人に読んでもらう」用の小説をあまり書いたことのない文字書き初心者です
例えば改行・誤字など、見づらい部分があれば工夫していきますので、ご報告ください

長くなってしまいすみません、では本編をどうぞ~


有名漫画家がやってくる! その②

 刹那。露伴は既に、その眼に『空に向かって飛翔するいくつもの流星』をとらえていた。

 住民が唖然と眺める中、街へと降り注いだ爆弾のうち最初の一つが着弾する――直前だった。

 それは、地上より放たれた星――トリオンの弾丸によって全てがあっけなく打ち砕かれた。爆風と衝撃が周囲に広がっていったが、それは街にほぼ被害を与えずに終わった。それを見届けた和沙の表情が、苦虫を噛み潰したように歪められる。

 

「あーーもう、因縁つーのか宿命なのか……爆弾にいい思い出はないってのによォ〜〜……あ、露伴先生、俺の傍から離れないでくださいよ、逆に危ねーっスからね」

 

この時、露伴は一瞬、『彼はスタンド能力を取り戻したのではないか?』と考えてしまっていた。それはあり得ないのだと聞いたばかりだったというのに、である。それほどに、杜王町で幾度も見た、『スタンドで操ったトリオンでの攻撃方法』と『今の弾丸での攻撃』が似通っていたのだ。

 

 何かの節目に連絡を取ったり、会話をした折に、ボーダーについて興味を示す自分に「マスタークラスっていうのになったんスよ~」やら「A級になったんスよ~」やら近況報告がてらに伝えられ、階級らしきものが異例のスピードで上がっていくことにさすがに疑問を覚えていた――もしくはボーダーとやらがそんなに甘いのかと考えていた――が、ようやく答えの一端にたどり着いた感覚だった。

 

「……なるほどな、道理で【トリガー】とやらを使いこなすのが早かったわけだ」

 

 

露伴のその言葉が何を意味するところなのか、和沙は思い当たらず首を傾げ、しかしすぐに、あ、と目を瞬かせた。この人の前でトリガーを使って攻撃をしてみせたのは初めてだったのだ。

 

 

「ああ~、そっスね。だからこそ『射手(シューター)用』を選んだわけだし……って、嘘だろ、まだあいつ残弾が――」

 

 慌てて駆け出す和沙たちであったが、時すでに遅く。未だ住宅地の空を離れていなかった魚型巨大トリオン兵が再度投下した爆弾によって、建物が崩壊するのが遠目に見えた。向かう足を止めぬままなんとか様子を窺うと、落下した瓦礫によって入り口が塞がれ、何人かの住民が取り残されてしまったようだった。混迷を極める現場に近づくにつれ、子供の泣く声が大きくなってくる。親と離れまいとしているらしい。――そして、さらに響く大きな崩壊音。瓦礫が降ってくる。不運にも、その位置は子供の頭上だった。

 

「! まずいぞッ! あの子供が巻き込まれるッ!」

「見えてますよッ! この距離なら瓦礫を破壊でき――――」

「「は?」」

 

 ふたりは思わず足を止め、気の抜けた声をあげてしまった。和沙にはどこからどう見ても覚えのあるメガネの少年が、子供をかばって瓦礫に打たれたのだ。露伴も隣で不意をつかれた表情をしている。よく見れば少年が白い訓練服を着ていたので、和沙は彼がトリオン体であることを理解していたが、露伴には突然走りこんできた少年が自らの身を犠牲にして子供を救った図にでも見えたのかもしれない。――それはともかく。どうしてこういう時に()()()()が関わってくるのか――いや、『こういう時だからこそ』なのだろう。

 

 そのうち、少年は瓦礫をどかして住民を救出していた。怪我を心配されているような様子の少年に、止めてしまっていた足を再度動かして近寄った。気づいた少年が「あっ」とこちらを見て声を上げた。

 

「あなたは……! じゃなくて、ええとこれは、違反なのは分かっていて……!」

「きみ、よくやった! えーっと三雲くん、だったか? 緊急事態だ俺が許す! 実際この状況じゃ生身のほうが危険だ。あ、爆弾には当たらないようにしろよ」

「えっ……!?」

「ぼくは生身なんだが?」

「先生はいざとなったら自分に書き込んで瓦礫くらい避けるでしょ、てかその分俺が気をつけてますよッ」

 

 

書き込むって何だろう……と修は考えていたのだが、和沙たちはそんなことはつゆ知らず、住民の誘導と救助を再開した。修も慌ててそれに続く。

 

 和沙はまたも瓦礫で入口を塞がれた建物の前で、助けを求める住民に声をかけた。原因の大きな柱を検分しながら、聞こえやすいようなるべく声を張り上げる。

 

 

「あーー聞こえます? 今からこれ砕くんで、内部に空間があればここから離れててください! 無ければ……えー信頼して任せてください! そっちが危なくなるようにはしないので!」

 

 

何ともアバウトな注意ではあったが、幸いにして空間に余裕があったのか、閉じ込められている住民は素直に従った。和沙が柱を砕くと言ったのは、戦闘体なので柱を動かせる可能性は高いが、半分にでも割ってしまった方が動かすにしてもまだ楽だろうと考えたからだ。

 

 しかし、住民に被害が及んでは元も子もなく、上手く削って折らなくてはならない。剣トリガーであればあっさり斬って捨てることが可能だが、弾丸ではもちろん難しい。そばにいる露伴に建築知識とか持ってます? と聞くも、すげなく「いや、今役立ちそうなものはわからん」と首を振られてしまった。

 

 

「今度本でも探しておこう。今後活かせるかもしれないからな」

「必要なのは今なんスけどねえーーっ」

「──あの! えっと、ぼく……がわかります!」

 

 

響いた声に、おや、とふたりは振り向いた。修が冷や汗をかきつつこちらを見つめている。

 

 

「きみが? 中学生くらいだろ、親が建築士か何かなのか? …………しかしどうにも親しみの持てる声をしているな……」

「声……?? いえ、父が橋の建築に携わってますけどぼくは……いや、はい! 父に教えてもらいました!」

 

 

露伴の疑問に、体は子供頭脳は大人などこぞの名探偵のような答えをしどろもどろに返しつつ、修は2人に告げた。彼の耳元でちらりと黒い何かが動いているのを和沙も露伴も見逃さなかったが──今は見なかったことにするのが賢明な判断だとは理解していた。重要なのはそこではない。和沙はにっと笑うと、酷く緊張している様子の三雲少年に告げた。

 

 

「わかった。教えてくれ」

 

 

()()の協力により、必要なポイントを判断し、またその部分をわずかも過たず射撃した和沙によって、柱は無事破壊され、救助された住民は礼を言いながら避難していった。未だ人は多いが、こちらの手を貸して救助すべき対象は見当たらない。

 

 さて、と和沙はぐるりと首を回しながら空を見上げた。

 

「どうやらあの『魚』は周回軌道で爆撃をしかけてて、幸いにも標的になってる市街地は川のこちら側だけみてーだが……そろそろ何とかしねーとな」

「きみ、撃ち落とせないのか?」

 

露伴がさも当然のように尋ねてきた。きみにとってそんなことは簡単ではないのか、とでも言いたげな口ぶりに苦笑する。

 

「どうですかね、出来なくはない……かもしれないけど、装甲がわりと厚そうだったから……【飛行するシアーハートアタック】って言ってもいいかもわかりませんぜ。うわっ嫌な例え方しちまったァ……。ああ、シアーハートアタックついでに言えば、『下手に攻撃すると人間を探知して自爆する』とかいう機能が付いてたら面倒ッスね。考えられる方法としては、川の上で動かないよう捕まえてから攻撃するとか……まあ俺の手持ちじゃキツいけど」

「えっ、人間を探知して自爆する……!?」

「ああいや、そういう機能が付いてたら面倒だなって話で……………………なあ、三雲くん、もしかして俺以外に正隊員、もう来てたりする?」

「あの……A級の木虎が来ていて、さっきまで一緒だったんですが……既に【イルガー】……あの『魚』を倒しに向かってて……」

「「………………」」

 

 

ここで問題である。あの【魚】はこれからどうなるか?

①たとえシアーハートアタックレベルでも、精鋭であるA級隊員の木虎がひとりで撃破する。

②ほかの隊員が居合わせたので、協力して撃破する。

③降ってきて地上で爆発する。現実は非情である。

 

 

「……まあ、うん、③はないから。俺もいるし、ほかの隊員も近くにいるかもしれないし、ボーダーが何か手を打つだろうし。うん、それにそうそう自爆機能なんてのはついてないだろうから」

 

 

大きなフラグをたててしまったことに気付いているのかいないのか。木虎に連絡とってみるから、と通信をつなぐ和沙である。

 

 

「あー、木虎? 聞こえるか? 周防だが」

『──周防先輩? やっぱりさっきのハウンド、あなただったんですね』

「まあな。てなわけで、今ちょうど市街地にいる。なるべく被害を抑えるようフォローするから」

『……了解。でももう終わりますよ。背面の装甲は切り飛ばせたので、このまま【アステロイド】を撃ち込んで、川の上で落とすつもりです』

「お、そうか。あ、1つ忠告なんだが……そいつが『人間を探知して自爆する』機能がないか注意しといたほうがいい。爆撃だけならカバーできるが、市街地まで突っ込んできて自爆されたら目も当てられねーからな」

『! で、でも自爆なんて機能があるようには……』

「いや、万が一の話だからよォ、もう撃破できるならいいんだ」

『もちろんです。ほら、もう墜とし……、……!? 何!?』

 

 

木虎の声に反応するより先に、空を見上げた和沙につられ、露伴と修も同様にする。

 確かに木虎の言う通り、撃墜寸前といった雰囲気でもうもうと黒煙を上げている、修曰く【イルガー】というトリオン兵。しかし確実に、その巨体はこちらへ向かって落下していた。先ほどまでは見られなかった、柱とも角のようにも見える黒いものが背面部に何本も飛び出し、急所である目を守るためか、口部分も閉じられていた。

 

 

「オイオイオイオイ、本当に自爆機能付きだっていうのか? しかもわざわざこっちに向かっているということはッ!」

「人を巻き込もうとしているってことなのか……!?」

 

 

露伴と修が思わず出してしまった言葉に、避難が済んでいなかった周囲の住民が悲鳴を上げた。は、と周囲の状況を確認した修がシェルターへの移動を大声で促すと、慌てて走り出していたが、状況はまさに切迫している。しかし和沙は周囲には目もくれず、耳元で混乱している様子の木虎の通信を聴きながらも、じっと何かを思案している。

 

 

『こいつ、本当に街を巻き込んで自爆を……!? 全然止まらな……っ』

「いや、()()()()()ッ! そのままダメージを与え続けろ!」

 

 

その指示に、修と木虎は目を見開いた。対して露伴はくいと片眉をあげただけだ。どうするつもりかと思えば、和沙は両の手にトリオンキューブを発現し、そのまま重ね合わせた。完成するものは、そう、『合成弾』である。

 

 

「答えは②だからな。俺が、今からそっちに加勢する」

『!? どうやって、遠すぎます! 弾丸の威力も落ちるし、先輩は移動補助系のトリガーは何も……』

「平気だぜ、それよりもっと『手っ取り早い方法』があるからな」

 

 

和沙は【グラスホッパー】や【テレポーター】などのオプショントリガーを装備していない。その他の現在装備しているトリガーや、戦闘体自体の能力を加味しても、絶対に間に合わない――本来ならば。

 だが、()()()()。それを覆すことのできる『一手』が、今この場には存在している。

 

 

「先生! 俺に『書き込んで』! 『今すぐ【魚】の直上まで吹っ飛ぶ』!」

「――フン、一つ『貸し』にしておくぞッ!」

 

 

そうして露伴は自らのスタンドを発現させた。

 漫画家・岸辺露伴のスタンド。知性ある対象を本にして、記憶を読むことや、命令を書き込むことができる能力。書き込むことのできる内容は実に幅広く、また、書き込まれた人物が命令に逆らうことはできない。さらに彼は、驚くほどの速筆である。『ヘブンズ・ドアー』と自身のスタンドの名を呼ぶと同時に、すでに和沙の体は本と化し、命令は書き終えられていた。

 その瞬間、地上の露伴と修の視界から、和沙の姿は消え失せた。

 

 

「う、おおお…………ッ、さすが、この飛距離はしんどいな! トリオン体だけど!」

 

 

瞬間速度は、時速70キロを優に超えていただろう。鮮やかな夕焼けに染まる空を、学ランの裾をはためかせながら和沙が舞う。まさにミサイルのごとく空中に放り出されながら、しかしなんとか体勢を整えた。

 さすがというべきか、目標には寸分のずれもない。『ヘブンズ・ドアー』は正確に、彼を『(イルガー)』の直上に吹っ飛ばしてくれていた。その証拠に、町全体を見下ろしたその視界の中で、イルガーの背で銃撃を続けていたはずの木虎が、ぽかんとこちらを見上げていたのである。

 最大高度まで飛び上がった和沙は、今度は重力に従いイルガーの背目掛けて落下しながら、にやりと笑みを返してやった。すると木虎が和沙の持つキューブに気付いたのか、目に見えて慌て始める。

 

 

「よし、ダメージ十分、ありがとな! 木虎は降りてろッ! 巻き込まれんぞッ!」

「周防先輩、どうやって、ていうかまさかそのキューブ――――」

「早くしろッ! 爆発で緊急脱出(ベイルアウト)したくなけりゃあなあーーっ」

 

 

木虎はその言葉で何が起こるのかを大体予測できたのか、まさか、という表情を隠さなかった。しかし最後は「任せました」とつぶやき、唇を引き結んでイルガーから飛び降りていった。応、と言葉には出さず。代わりに木虎が空けた、イルガーの背の穴にきっちり照準を合わせる。

 

 対応が早かったおかげで高度は余裕といえる。互いに落下を続けてはいたが、和沙にとっては『動くものを見極めて照準を定める』ということはそう難しいことではない。『強化動体視力』たるサイドエフェクト自体の精度と、その恩恵を受けた攻撃の正確さ……スタンドの能力値で言うなら『精密動作性』は、かの『スタープラチナ』には及ばずとも、Aランクに値するものであったので。

 

 

「『射程』は詰めたし『弾速』もそんなにいらねえ。おかげで十分『威力』にトリオン振れたからなァ~~~~ッ」

 

 

右手に掲げたその巨大なトリオンキューブを、さながらダンクシュートを決めるバスケットボール選手のように、背の穴に思いきり叩き込む。

 

 

「――――【ギムレット】ッ!!」

 

 

無分割、さらにトリオンは『威力』に極振り。木虎によるダメージが蓄積され、さらにその部分に【ギムレット】を撃ち込まれ――背から胸にあたる部分まで、綺麗に弾丸が貫通したイルガーは、ぴしり、とだけ音をたてた後、空中で見事に爆発四散したのであった。

 

 

 

***

 

 

 

「随分な力技だが…………まあ、トリオン量とやらの規格なら、あいつは十分『パワー型』だからな」

あんぐりと空を見上げる住民たちや、冷や汗をかく修の隣で、露伴はぽつりと呟いた。和沙のトリオンを表すその数値は、実に『21』。現時点でボーダーにおけるトップのトリオン量は伊達ではない──もちろんスタンドが関わっているからなのは言うまでもないが──ともかく、トリオンで戦闘を行うボーダーにおいて、これは十分なアドバンテージであった。

 

 

「……分かってたんですか? あの……先輩、がやろうとしていたこと」

「ン! ……まあな。それなりに付き合いはある。あいつにはクソッタレの幼馴染がいるんだが……そいつよりも礼儀はあるし。ぼくの親友ほどじゃあないがね」

 

 

露伴は手をポケットに突っ込んで、こちらに問いかける修をちらと横目で見てから、再度何かを探すように空に視線を走らせた。

 

 

「しかし、あいつすっかり巻き込まれたんじゃあないか? 木虎とかいうのは退避できていたようだが……。んん? あれは……紐……じゃあないな、鎖か? その先に……お、いるじゃあないか。また吹っ飛んでるな。こっちに来るか?」

「(鎖……? あ、ああなるほど……)ということは、無事、みたいですね。良かったです」

「まあな。これで一件落着、というやつかな? さてじゃあきみ、ずっと気になっていたんだが、先ほどきみの耳元で動いてた小さくて黒いのはなんだ? 柱の構造解析はあれだろう? 【トリガー】の一種か? きみだけが持ってるのか?」

「えっ!! いや、あ、あれは……! それはまた後ほどということで、あの、周防先輩や木虎を迎えに行かないと!」

「……まあ、いいだろう。無理に聞き出してもいいが、それはするべきじゃあない。ぼくたちはいい友達になれそうだしな。きみもそう思うだろう?」

(この人本当になんなんだ……)

 

 

 

「あ~~~~~、緊急脱出(ベイルアウト)覚悟したけどなんか助かったな。背後から引っ張られた気がしたが……木虎か?」

「……違いますよ。飛び降りた後、そんな余裕ありませんでしたから。……その、ありがとうございました。……私ひとりじゃ……」

「あ? いや、あれは木虎のおかげでもあるからよォ~、礼はいいよ。ま、なんにせよ、【シアーハートアタック】でも見知らぬトリオン兵でも、『注意深く観察すべし』ってことだな。木虎もありがとな」

「【シアーハートアタック】って何ですか……」

 

 

川べりでぽたぽたと水を滴らせながら会話しているうちに、修や露伴がやって来たので、手を振ってこたえた。また、そこで、住居を破壊されてしまった住民や、修と木虎、さらに白い髪の少年(やっぱりいたのか……と和沙は目元を抑えた)の間でひと悶着あったのだが、広報部隊の面目躍如たる堂々さで木虎が住民をなだめて話をおさめ、修たちの間でも一段落したようであった。修は露伴に絡まれかけていたが、和沙がうまいこと救出し、木虎たちと本部に出頭しにいくというのでその場で別れ。その露伴も帰路につくということで、駅まで見送りに立った。

 

 道中、案内しきれなかった部分などを解説していると、あっという間に駅に到着してしまった。物寂しさを感じていると、改札前までやってきたところで、露伴がこちらをまっすぐに見据えて「善意から言っておいてやるが」と前置きをしたうえで話し出した。このような時、念のため周囲を気にして声を落とすという配慮をしてくれる彼に対して、ありがたいことだな、と思うのだが、さておいて。

 

 

「気をつけろよ。身近で体験して改めてわかったが……あれはもはや災害と呼ぶべきもの。まあ君達のような対抗手段があるだけ良いとは思うが……おそらく、これで駄目ならより強力なものを送り込んでくるだろうな。近いうち、その……『人型』でも来るんじゃあないか」

「…………本当に、敵いませんね。仰る通り、しばらく危ないので、俺が連絡するまでこの町には近寄らんでくださいね。まあ起これば全国ニュースにでもなるでしょうが」

「……康一くんやクソッタレ仗助には」

「言う必要もないでしょ。あとクソッタレってつけなくていいから……。じゃあなくて。『もしも』はもちろんあるけど、確率はとても低いらしいっスから。そのくらいの危険は承知でやってるし、実際……その……2年前の杜王町の危険度くらいだと思うし…………」

「……そう言われるとこのぼくでも何とも反応に困るが……きみがそう言うのなら、ま、平気なんだろう。きみもまた、この『超常現象』に対する『プロ』と言えるんだからな」

 

 

露伴は『プロの漫画家』としての誇りを持っているし、和沙ももちろん尊敬している。扱っているものは違えど、そんな彼に同じように『プロ』の存在として認められていると思う時、『誇り高い』気持ちになれる。それは、故郷にいる幼馴染や友人たちとともにいる時と何ら変わりはない。そして、その心配と信頼を心から嬉しいと感じるのだ。だから、混じり気のない笑顔を浮かべてしまう。露伴は思いきり顔をしかめるが。

 

 

「ありがとうございます、露伴先生。じゃあまた。あ、でも年末年始は帰りますんで、そこは仗助たちにもよろしくお願いします」

「そのくらい自分で言えよな。土産は『みかどみかん』でいいぞ」

「箱ごと送れってことかなァ……」

 

 

改札を抜けて人混みに消えていく露伴を見送る。年末年始の帰省は今のところ予定通りで、それはいい。自分が故郷に帰る分には。しかし、もし故郷の彼らがこちらに来るときは、なるべく安全な時に来てほしい。迅曰く、忙しくなるのは年明けらしいので、それが解決したあとは、自分もまた、彼らに並び立てる『誇り』を胸に会えればいい。

 

 ボーダー用の携帯端末が震える。メッセージの受信だ。露伴の見送りに立つ前に、今回の状況報告と三雲修についての嘆願を忍田本部長に。【イレギュラー(ゲート)】における『超常現象』の観点から見た見解を鬼怒田開発室長に送っておいたのだが、はてさて。

 

 

「って、また迅さんからじゃあねーか……明日ァ?」

 

 

これは招集というのか、なんなのか。また暗躍をしているのだろうか。まあ、手伝えることがあるのならもちろん協力は惜しまないのだが。案の定の怒涛の日々、しかし自分の『覚悟』と、この町の『誇りと平和』のために。決めたことだけは揺らがないように。その決意だけは新たに、学ランを翻して、和沙はその場を立ち去った。

 




遅れてしまったので今後の予定というか展望みたいなものを少し

とりあえず本編は第二次大規模侵攻編で一区切りとして構成を考えています
B級ランク戦以降は「The Asteroid 〜world trigger another day〜(適当)」とか「猫かぶりのキラークイーン(仮)」とかそんな感じで後日談的に書いていきたいな、と現時点では思っております

あと主人公のトリガーセットやプロフィールなんかは、BBF風として後々1話分使って紹介したいと思っていますので、もう少々お待ちください


ではまた次回!(話が……話が進まない……!!)

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