東方軌跡録   作:1103

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年末間近なので、仕事の方が大変になってきました。
もしかすると、投稿ペースが落ちるかもしれません。
目標としては、二週間に一話、出来れば良いと思っています。


妖怪のプラネタリウム

深夜の暗い夜道を歩くジンと霊夢の姿があった。

二人の周囲には、辺りを照らすジンの方術の光があった。

 

「悪いわね、こんな時間にまで付き合わせて」

 

「これくらいお安いご用だ。それにしても、こういう時は幻想郷は不便だな」

 

「確かにね。以前行ってみた外の世界みたいに、明るければいいんだけど」

 

「うーむ・・・流石にそれは難しいと思うな。色々と設備やエネルギーが必要だし」

 

「そうよねぇ・・・・・・あ!」

 

「ん?」

 

二人は不意に、夜空を見上げた。すると夜空に、大きな流れ星が落ちて行った。

あまりにも大きな流れ星に、二人はしばらく、呆気に取られていた。

 

―――――――――――

 

翌日、昨夜の流れ星の事について、遊びに来ていた魔理沙と華仙を交えて話をしていた。

 

「それにしても、昨日の流れ星は凄かったな」

 

「あんな大きな流れ星は初めてみたわ。もしかして、燃え尽きず、何処かに落ちたかも」

 

「それはそれで、被害が凄いと思うんだけ・・・・・・」

 

「でも、落ちていないんじゃないか? もし落ちていたのなら、新聞に載っているはずだ」

 

「載ってなかったの?」

 

「ああ、流れ星が流れたぐらいしか、書かれていない」

 

「でも、あの大きさなら、燃え尽きずに落ちていてもいいと思うんだが・・・・・・」

 

「もしかしたら・・・幻想郷じゃなくて、外の世界に落ちたのかもしれないわね」

 

「そうか、それなら拾いにいけないな・・・・・・。あーあ、貴重な鉱石が手に入ると思ったんだけどな」

 

「え? 何で拾いに行けないの?」

 

「「「え?」」」

 

華仙のその一言に、三人は目を丸くした。

 

「あれ? 私、何か変な事言った?」

 

「変っていうか・・・意外だな、華仙が幻想郷の結界について知らないなんて」

 

「まあ、結界について詳しい奴なんて、紫ぐらいなものよ。

とりあえず説明するけど、幻想郷の結界は、常識と非常識を分ける結界で、そこには明確な壁は無いのよ。

どこまで行っても端には辿り着かない、閉鎖空間なのよ」

 

「流れ星の光は見えたのに、変な話よね」

 

「私も詳しい事は知らないわ。どうしても知りたいのなら、紫にでも聞いてみれば?」

 

「そうね、機会があれば是非教えて貰いたいわ」

 

そう言って華仙は、何処までも透き通る青空を見上げた。

 

―――――――――――

 

それから数日後。ジンは寺子屋から帰る途中、広場で人だかりが出来ていた。

 

「一体何をしているんだ?」

 

興味本意で近づくと、そこには早苗が台の上で、何やら演説をしていたのである。

 

「皆さん! 先日の閃光は妖怪の仕業ではありません! 客星の一種! 神の奇跡なのです!

しかし、安心してはいけません、神の意向に無視すれば、たちまち天罰が下ることでしょう!」

 

早苗は人々に安心させるように言った後、再び不安を煽る。そうして人々の信仰を集めていたのである。

 

(だが、やり方が胡散くさいぞ・・・大丈夫か守矢・・・・・・?)

 

そんな心配をしていると、肩を叩かれる。振り向くとそこにはにとりがいた。

 

「こんなところで何してるのジン?」

 

「にとりか、ちょっと人だかりが気になってね」

 

「あー、守矢の勧誘だね。ちょっと詐欺ぽいけど」

 

「詐欺とまではいかないが、俺から見ても胡散くさげだがな。

それよりも、俺に何か用か?」

 

「まあそうだね。ジンに折り入ってお願いがあるんだ」

 

「俺に?」

 

「ライって電気トカゲいるだろ。それを貸して欲しいんだ」

 

「ライを? 何でまた?」

 

「これを動かす為さ」

 

そう言って、にとりは一枚のチラシを取り出した。そこに書かれていたのは、プラネタリウムの宣伝が書かれていた。

 

「プラネタリウム!? そんな物が幻想入りしたのか!?」

 

「結構前に流れ着いてね。最近ようやく修理が終わったんだ。そしてこの前の流星騒ぎで、人々は良くも悪くも星に関心を持ち始めた。これは商売のチャンスだよ」

 

「そうか、ライを借りたいのは、稼働させる為の電力が欲しいって訳だな」

 

「御名答! 山から離れると、電力の供給がままならないからね」

 

「わかった、頼んでみる。その代わりと言ってはなんだが・・・・・・」

 

「ん?」

 

「優先チケットくれないか? 是非見てみたいんだ」

 

そう頼むジンに、にとりは笑顔で応じてくれた。

 

「それくらい御安い御用さ、なんなら何人分かの優先チケットをあげるよ。それで皆と見に来てよ」

 

「本当か? ありがとうにとり!」

 

「いえいえ、御越しを快くお待ちします♪」

 

にとりは笑顔で、ジンにチケットを手渡すのであった。

 

―――――――――――

 

神社に帰って来たジンが見た物は、何やらゴムチューブを持っている霊夢と、頭を抱えている華仙の姿があった。

 

「二人とも、一体何をしているんだ?」

 

「ああジン、いいところに。貴方からも何か言ってちょうだい」

 

「へ?」

 

「霊夢がまた、詐欺紛いの商売をしようとしているのよ」

 

「何だって!?」

 

「詐欺とは失礼ね。これはれっきとした商売よ」

 

「何処がよ! 一昔の噂を流し、人々の不安の煽い、それに付け込んで、しょうもないゴムチューブを売りつける! 何処からどう見ても詐欺じゃない!」

 

「詐欺なの?」

 

「詐欺かどうかは、その噂によるが・・・一体どんな噂を流そうとしたんだ?」

 

「えっとね、昔、彗星が近づくと、数分間空気が無くなる噂が流れたらしいじゃない。だから、もう一度その噂を流せば――――」

 

「まさか・・・・・・空気が無くなる対策として、ゴムチューブを売りさばくと?」

 

「その通り!」

 

霊夢の自信満々の声に、ジンと華仙は頭を抱えた。

 

「それは完全な詐欺だぞ霊夢。それに霊夢は、空気が無くなったらどうなるか知っているのか?」

 

「知らないわよ。一体どうなるの?」

 

「まず、気温がマイナス十度以下になる。空気には地球を暖める二酸化炭素があるから、これが無くなると気温が上がらなくなる」

 

「そっか、それなら防寒具も売れそうね」

 

「それどころじゃないわよ! 作物は育たなくなるし、動物の大半は凍死するわ!」

 

「あと、オゾン層も無くなる。

オゾン層には、太陽から発せられる有害な紫外線を防ぐ役割があるんだ。これが無くなると、有害な紫外線が直接地表に照らされる」

 

「照らされるとどうなるの?」

 

「酷い日焼けや、皮膚病になったりする。それに眼だって悪影響が出る」

 

「ふーん、意外と大変なのね」

 

「・・・・・・あと最後に、体が破裂する」

 

「・・・・・・へ?」

 

「は、破裂するの?」

 

体が破裂するという言葉に、霊夢は持っていたゴムチューブを落とし、華仙は戦慄を覚える。

 

「空気が無くなると、気圧も無くなるから、破裂するんだ」

 

「ちょ、ちょっと! それじゃゴムチューブなんか意味ないじゃない!」

 

「だからさっきも言っていただろう? それは詐欺だって」

 

「ど、どうしようジン? もし彗星が来て、空気が無くなったら――――」

 

「地球上の生き物は絶滅だわ!」

 

二人は事の重要さに、慌てふためく。そんな二人を安心させるように、ジンは次の言葉を言う

 

「落ち着け二人とも、そもそも彗星が近づいたら、空気が無くなるというのは、完全なデマだ」

 

「え? そうなの?」

 

「ああ、ハレー彗星が近づいた時も、何の影響もなかったからな」

 

「なーんだ、焦って損しちゃった」

 

「だけど当時は、それなりに騒ぎになってな。それに乗じて詐欺を行う者や、自殺するもの、更には不安に付け込こまれ、邪教徒になってしまった人もいるんだ」

 

「なんか、話を聞いていると、噂を信じてしまった人は哀れね・・・・・・」

 

「そうだな、だから俺としてはこんな商売はして欲しく無いんだ」

 

「・・・・・・はあ、わかったわよ。話を聞いてたら、なんだか馬鹿らしくなったわ」」

 

霊夢はやる気を無くしたように、その場に腰を下ろして座り込んだ。

 

「まあそんな落ち込むなって、こんなのは外から来た俺だから知っていたことなんだ。幻想郷の中じゃ、なかなか知り得ないさ」

 

「それはそうだけどさ・・・・・・」

 

「なんだったら、これから知ればいいんだろ」

 

そう言って、ジンはにとりから貰ったチケットを霊夢に見せる。

 

「それは?」

 

「にとりから貰ったチケットだ。近々プラネタリウムを公開するらしいんだ」

 

「そう言えば、そんなチラシを配っていたわね」

 

「そのプラネタリウムって?」

 

「簡単に説明すると、星を映し出す機械の事だ」

 

「星なんて、夜になればいつでも見れるじゃない」

 

「季節によっては、見れない星もあるんだ。だけど、プラネタリウムならどんな季節の星をいつでも見れる」

 

「ふーん・・・・・・」

 

「一度でもいいから、見てみないか? どうせタダなんだし」

 

「まあ、それもそうね。試しに行ってみるのも良いわね」

 

「よし決まりだな。華仙も一緒にどうだ? 絶対に損は無いから」

 

そう言って、華仙にチケットの一枚を手渡す。

 

「え? 良いの?」

 

「いいって、こういうのは皆で楽しむ物なんだから」

「そう・・・それならありがたく貰うわ」

 

「ああ、損は無いから、楽しみにしてくれよ」

 

そう言ってジンは、自分は満面の笑顔をするのであった。

 

―――――――――――

 

プラネタリウム公開当日。

人里から少し離れた場所に、巨大な天幕が張られていた。

人々はプラネタリウムを見に、天幕の回りに集まって行く。その中には、博麗神社一行の姿もあった。

 

「結構来ているのね・・・・・・忌々しい事に」

 

「仕方ありませんよ。なんたって、星空を写し出す道具が公開されるんですから、皆さん興味津々なんですよ」

 

「興味ねぇ・・・うちでも何か新しい事でもしようかしら・・・・・・」

 

霊夢と妖狐がそんな話をしていると、サニー達がジンがいない事に気がついた。

「そう言えば、ジンは?」

 

「あれ? いつの間にいなくなってる?」

 

「迷子かな?」

 

そう考えるサニー達に、針妙丸がジンの言伝てを伝える。

 

「ジンなら、少し用があるって、ライを連れて何処かに行っちゃったよ」

 

「まったく、あいつと来たら・・・・・・」

 

「まあ、ジンさんの能力があれば、私達が何処にいるか辿って来れますから、心配無いと思いますよ」

 

「それもそうね、それじゃ今のうちに列に並んでおきましょ」

 

霊夢達は先に、長い列へと並ぶのであった。

 

―――――――――――

 

一方ジンは、ライと共に一足先に天幕の中に入っていた。

 

「充電の方はどうだにとり?」

 

「うん! バッチリだよ! これなら公開中に電源が落ちる事は無いよ」

 

「そうか、お疲れ様ライ」

 

「ギィ」

 

ジンはライに手を差し出すと、ライはそれを伝って肩に昇った。

 

「それじゃにとり、俺は外に戻るからな」

 

「え? 別にここで待ってても良いんだよ?」

 

「他の皆が待っているのに、一人中で待つことなんて出来ない」

 

「ジンって、本当に律儀だね。まあ良いさ、待つのも楽しみの一つだしね」

 

「そういう事だ。それじゃ頑張れよにとり」

 

そう言って、ジンは天幕から外に出た。

 

「さーて、皆の所に戻ると――――ん?」

 

ふと、視線の先に正邪の姿があった。実は彼女も誘ったのだが、行かないと突っぱねられたのである。

 

(大方、留守番がつまらなかったんだろうな。やれやれ、面倒くさい性格だよな・・・・・・)

 

そう思いながら、ジンは正邪に近づいて行った。

 

「正邪」

 

「げっ、ジン・・・・・・」

 

「こんなところで何をしているんだ?」

 

「べ、別にどうだっていいだろ」

 

「やれやれ・・・・・・ほら」

 

そう言ってジンは、チケット一枚を正邪に差し出した。

 

「一枚余ったんだ。いらないから正邪にやる」

 

「は? 私は別に――――」

 

「別にプラネタリウムを見たく無いのなら、その辺の誰かに売っても良いし、捨てても良い。どうするかはお前に任せた」

 

「あ、おい!」

 

ジンは正邪にチケットを手渡すと、さっさと霊夢達がいる場所へと戻って行った。

 

―――――――――――

 

霊夢達のところに戻ると、霊夢達の他に華仙と魔理沙の二人もいた。

 

「あ、ようやく戻って来たわね。一体何処に行ってのジン?」

 

霊夢にそう訪ねられた。どうやら心配させてしまったようである。

 

「いやちょっとライと一緒に、にとりの手伝いをしてな。

それよりも、華仙と魔理沙も来てくれたんだな」

 

「ああ、せっかくチケット貰ったんだし、行かないわけにはいかないぜ」

 

「そうね、私もプラネタリウムには興味があるもの」

 

「それはチケットをプレゼントした甲斐があった物だ」

 

そんな話をしていると、受付の河童の声が響き渡る。

 

「まもなく開演です! 御越しの方は、チケットを持って受付まで御越しください!」

 

その声と共に、列が動き出し、次々と天幕の中に入って行った。

 

「おっ、ようやく入れるみたいだな。それじゃ皆、行こうか」

 

ジン達は長い列の動きに沿って、受付へと向う

受付にチケットを見せ、中に入り用意された席に座る。

しばらくすると、ブザー音が響くと同時に、天幕の灯りが落とされ、辺りは闇に包まれる。

しばらくすると、天井に星が映し出された。

 

「うわぁ・・・・・・」

 

「すごーい! 本物みたいー!」

 

「偽物の星だと思っていたけど、中々の良いできね」

 

「これは凄いですね・・・・・・」

 

「うん! 凄く綺麗だね!」

 

「確かにな、下手すれば本物の夜空より凄いかも知れんな」

 

「外の技術は凄いものかも知れないけど、それを直す河童の技術も相当な物ね」

 

「・・・・・・」

 

初めて見るプラネタリウムに、一同は呆気に取られていた。

しばらくすると、星座が映し出された。

 

《こちらに見えるのは伊吹童子座。冬に見れる三つ星が有名な星座で―――》

 

「伊吹童子座? オリオン座じゃなくて?」

 

解説を聞いているジンは、首を傾げた。自分が知っている星座と、まったく違う星座が紹介されていたのだから。そんな疑問を抱いていると、魔理沙が教えてくれた。

 

「どうやら、このプラネタリウムでは、妖怪の星座を教えているみたいだな」

 

「妖怪の星座? そんなのがあるのか?」

 

「そうだぜ。と言っても、星座に正解もへったくれも無いがな」

 

「妖怪の星座か・・・それは面白そうだな」

 

妖怪の星座を興味を持つジン。その間にも、プラネタリウムは次々と妖怪星座を写し出していった。

 

《そして最後に紹介するのは天龍座。これは他の星座と異なり、今も生きている龍なのです》

 

「今も生きている・・・本当に?」

 

「流石に与太話だろこれは」

 

「与太話なんかじゃないわ」

 

「華仙?」

 

「これは本当の話よ。龍は地面から空を昇り、天を支配しようと今も昇り続けているのよ」

 

「今もって・・・何処まで行くんだ?」

 

「それは解説を聞いてれば、分かるわよ」

 

そう言って、華仙はプラネタリウムを見続けた。ジンと魔理沙も、解説に耳を傾けた。

 

《この龍は、北の空に輝く天の星―――北極星、またの名を不動星を喰らいに行こうとしている最中なのです。そして――――》

 

すると今まで微動だしなかった天龍座が突如動きだし、光輝く不動星を喰らう。

《天龍が不動星に食らいついた時、天下を揺るがす何かが起きるでしょう》

 

その瞬間に、暗い星空が割れ、光が天幕内に照らされた。

 

―――――――――――

 

プラネタリウムが終わり、ジン達は天幕の外に出た。

 

「いやー、凄かったなー。特に最後の天龍座」

 

「そうね。まさか動くとは思わなかったわ」

 

「中々の迫力だったな」

 

「ギィギィ!」

 

「ライもそう思うか、お前もいつか立派な龍になれると良いな」

 

「ギィ!」

 

「ところで、霊夢の姿が見えないんだけど」

 

「霊夢さんなら、サニー達や針妙丸と一緒に、天体グッズを買いに行きましたよ」

 

「あの子ったら・・・・・・」

 

「まあ何はともあれ、霊夢にも喜んでくれたようで、良かった。ところで華仙」

 

「ん? なにかしら?」

 

「さっきの解説が本当なら、あの龍が不動星を喰らうのはいつ頃なんだ?」

 

「さあね、明日かも知れないし。十年後かも知れないし、百年―――いえ、千年後かも知れないかも知れないわね」

 

「千年後か・・・・・・それじゃ、何が起こるかわからないな。人間の寿命は百未満だからな」

 

「そうねぇ・・・・・・」

 

「なら不老不死になれば良いだろ? 華仙に修行を受けているそうじゃないか」

 

そう言う魔理沙に対して、ジンは首を横に振った。

 

「いや、俺は人間のままで良い。長生きし過ぎると、また大切な家族を失う悲しみを味わいそうで、怖いからな」

 

「ジン・・・・・・」

 

「おーいみんなー」

 

すると霊夢の呼ぶ声がした。彼女の所に行くと、天体暦表を見せながらある提案をした。

 

「今度みんなで、流星群を見ない? この日辺りにふるらしいって」

 

「そうなのか? だったら見に行かないと損するな」

 

「そうだ、せっかくだから香霖の奴も呼んで、流星群を見る会を開こうぜ」

 

「「さんせーい」」

 

すっかりノリノリのジンと霊夢と魔理沙の姿を見て、華仙は微笑ましく思うのであった。

 

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