かなり前から構想していたのですが、話がまとまらず、見送ったものです。
とある漫画のネタがあるのですが、わかる人がいたら嬉しいです。
ここは無縁塚。外来人が不運に命を落とし、埋葬される場所である。
そんな場所に、プリズムリバー楽団と雷鼓率いる九十九楽団が一緒に演奏していた。
「ストップ! ストップ! また音がずれているわよ!」
雷鼓はそう言って、演奏を中断させた。どうやら演奏が上手くいかず、難航しているようである。
「一体何が駄目なんだろう・・・・・・?」
「最初は上手く行くんだけど、だんだんとずれてしまうのよね・・・・・・」
「どうしてなのかしら?」
「そんなの、そっちが旋律を崩しているからでしょ、おかげでこっちも崩れちゃうのよ」
「それはこっちの台詞よ! 貴女達がこっちに合わせないから、音がズレるんでしょうが!」
「何よ! そっちがついて来れないのが悪いじゃない! そんな言い掛かりを言う前に、腕を上げたら?」
「何をー!」
「何よ!」
「リリカやめなさい」
「八橋も喧嘩しない。もう講演まで、時間が無いんだから」
「プリズムリバー楽団と九十九楽団の合同演奏を、楽しみにしている人達が待っているんだから」
「「・・・・・・」」
その言葉に、リリカと八橋は黙ってしまった。
プリズムリバー楽団と九十九楽団の合同演奏はかなり有名となっており、幻想郷中に知れ渡っていた。それなのに、一度も通しが出来ていないことに、誰もが焦りを感じていたのである。
「取り合えず、今日の練習はここまでにしましょ。この状態じゃ、練習に身に入らないでしょうし」
雷鼓の提案により、その日の練習は終わることにした。しかし、誰もが心の内にある不安を振り払えずにいた。
―――――――――――
その日の夜。雷鼓は一人、ミスティアの屋台で飲んでいた。
「ミスちゃん、もう一杯」
「雷鼓さん、少し飲み過ぎじゃない? 何かあったの?」
ミスティアは心配そうに訪ねると、雷鼓は愚痴るように話始めた。
「演奏が上手くいかないのよ、公演まであと少ししかないのに・・・・・・」
「プリズムリバー楽団との? そんなに上手くいってないの?」
「うん・・・・・・」
雷鼓はそう呟き、力なく項垂れる。
「最初は上手くいくと思ったんだけどな・・・・・・見通しが甘かったのかしら?」
「まだ諦めるのは早いわよ雷鼓さん。ほら、雀酒でも飲んで元気出して」
「うん、ありがとうミスちゃん」
ミスティアに出された酒を飲む雷鼓。そんな時、一人の青年がやって来た。
「こんばんわミスティ。ん? 雷鼓もいたのか」
「あら、ジンじゃない」
「いらっしゃいジン。何にするの?」
「いつものヤツメウナギで」
「わかったわ。一緒に雀酒はどう?」
「それも貰おう」
「オーケー、少し待っててね」
そう言って、ミスティアヤツメウナギを焼き始めた。その間ジンは、雷鼓の隣に座って雀酒を飲み始めた。
「こんな所で油売って良いの? 奥さんが心配するじゃない?」
雷鼓はからかうようにそう言うと、ジンはきょとんとした。
「奥さん? 俺はまだ独身だぞ?」
「なに言ってんのよ、博麗の巫女の事よ。男女一つ屋根の下にいるんだから、それなりに進んでいるんでしょ?」
「からかうのはやめてくれ、俺と霊夢はそんな関係じゃない。それに、ちゃんと連絡したから大丈夫だ」
「あら? 怒らせちゃったかしら? ごめんなさい」
「まったく・・・そういう雷鼓はどうなんだ? 美人なんだから、言い寄る男はいるだろ?」
「残念ながら、まだそういうのに興味無いのよね。まだ生まれたてだし」
「そう言えば、小槌の魔力で生まれたんだっけ?」
「そうよ、まだ生まれたてホヤホヤなのよ♪」
「そのわりに、しっかりしているよな」
「そりゃ、道具としての年期は長いから、精神だけが成熟しちゃったのよ」
「なるほど、それだけ大事にされていた訳か」
「そうなのかしら? 道具の時の記憶は曖昧で、よく覚えて無いわ」
そんな他愛の無い話ながら、二人は酒を飲んだ。
そんな中、ジンは雷鼓にある事を訪ねる。
「ところで雷鼓、何か悩みごとでもあるのか?」
「え?」
「空の酒瓶がある。全部雷鼓が飲んだんじゃないのか? 不安な時ほど、酒を多く飲むものだ」
雷鼓は改めて、自分が飲んだ酒瓶を見る。その数は既に三本になっていた。鬼や天狗ならまだしも、普通の妖怪はここまで飲まないだろう。
「あー・・・確かに飲み過ぎだわね」
「悩み事があるなら、相談に乗るが?」
「どうせなら話してみない雷鼓さん。もしかしたら、いい案が出るかもよ」
「そうね・・・話すだけなら別にいいかな? 実は―――――」
雷鼓はジンに、演奏が上手くいかない事を話した。
「なるほど・・・音がズレるのか」
「そ、何回やっても途中でズレてしまうのよ」
「うーん・・・こればかりは実際聞いてみないとわからないな。次の練習はいつ頃だ?」
「え? 明日もやるけど・・・・・・聴きに来るの?」
「当然だろ。聴いてみないことには、何も分からないからな。そちらが良ければ、聴かせて欲しい」
「別に構わないけど・・・・・・良いの? そっちにだって、都合があるんじゃない?」
「少しくらいなら大丈夫。それに、困った友人を放っておけない」
「・・・・・・貴方って人は、本当にお節介焼きね」
「良く言われる」
「それじゃ、お願いしてもいいかしら?」
「ああ、どんと来い」
「ふふっ、ありがとうジン」
雷鼓は微笑みながら、ジンに礼を言った。
―――――――――――
翌日。プリズムリバー楽団と九十九楽団の練習場に、ジンの姿があった。
「今日は、彼に私達の演奏を聴いて貰う事にしたわ」
「よろしく頼む」
突然の事に、戸惑いを隠せないメンバー達であった。
「聴いて貰うって・・・・・・」
「まだ通しも成功していないのに?」
「だからこそよ。このまま練習しても、上手くいかないでしょ? それに、聴いて貰う事で分かる事もあるし」
「一理あるね。こういうのって、リスナーの方が色々と気づけると思う」
「まあ、姉さんがそう言うなら・・・・・・」
「話がまとまったところで、さっそく始めるわよ」
雷鼓がそう言うと、メンバー達は演奏の準備を始める。
「ワン、トゥ・・・ワン、トゥ、スリー」
雷鼓の太鼓の音が鳴り響き、それを合図にメンバー達は楽器を鳴らし始める。
流石は演奏のエキスパートと言うべきか、彼女達が奏でる旋律は素晴らしい物だと、ジンはそれを肌で感じていた。しかし――――。
(ん? なんだか、音がだんだんとズレていっているな・・・・・・)
昨夜、雷鼓が言っていた通りに、彼女達の演奏は徐々にズレ始め、先程の美しい旋律は、影も形も無く無惨な雑音となっていった。
これには、演奏者達も耐えられないのか、演奏を途中で止めてしまう。
「どうジン? 聴いてみて、何かわかったかしら?」
「・・・・・・」
雷鼓の問いに、ジンはしばらく考え、静かに口を開いた。
「聴いてみて、というより。“視て”わかった事がある」
「視て?」
「ああ、先程の演奏の音―――旋律を能力で視てみたんだ」
「そんな事も出来るの貴方!?」
「旋律も、言ってみれば音の軌跡だからな、見ようと思えば見れる。それでさっきの続きだが、主な原因は雷鼓にあると思う」
「え? 私?」
「ちょっと! 雷鼓姐さんの演奏にいちゃもんつける気!?」
「いくらジンでも、雷鼓姐さんを侮辱は許さないよ」
八橋と弁々は、ジンを強く睨み付けた。そんな二人を、雷鼓がたしなめる。
「やめなさい二人とも」
「でも!」
「原因が私にあるのなら、それを直さない限り、演奏は上手くいかないわ。まずは話を聞いてみましょう」
「むぅ・・・・・・」
雷鼓の言葉に、二人は渋々下がった。
「さてと、それでジン。私の何がいけなかったの?」
「雷鼓の太鼓演奏は素晴らしいと思う。だけど今回はそれが仇となってしまっている」
「どういうこと?」
「はっきり言うと、雷鼓の演奏がプリズムリバーの演奏の邪魔をしてしまっている」
「ちょっと待ちなさい! さっきから聞いていれば、ずけずけと――――」
「八橋、少し黙っていなさい」
「でも雷鼓姐さん・・・・・・」
「いいから」
「はい・・・・・・」
「それで、私の太鼓がプリズムリバーの演奏を邪魔しているって言ってたけど、具体的にはどんな感じなの?」
「そうだな、雷鼓のリズムに巻き込まれてしまって、自分達リズムが掻き乱されてるって感じだな。特に、リリカが一番乱されていた」
「そうなのリリカ?」
ルナサがそう訪ねると、リリカも思い当たる事があるのか、頷いて答えた。
「確かに、リズムが引っ張られる感じがした気がする」
「恐らくだが、リリカの音が崩されてせいで、ルナサとメルランの音も崩れてしまった。それがあの不協和音の原因だと思うぞ」
「ちょっと待って! それなら原因は雷鼓姐さんじゃなくて、プリズムリバーの方にあるんじゃないの?」
「そうね、私達は普段通りに演奏出来たもの。雷鼓姐さんのリズムについてこれないのが悪いわ」
「何を!?」
「言わせておけば―――!」
「メルラン、リリカ、落ち着いて」
「八橋と弁々も、口を慎みなさい」
「「でも!!」」
「私達は一緒に音を奏でる仲間なのよ」
「「・・・・・・」」
「ごめんなさい。気を悪くさせちゃって」
「こっちこそ、上手くわせられなくてごめん」
「初めてのセッションだから仕方ないわ。それよりも、どうするかを考える方が先よ」
「そうだね・・・とりあえず演奏をして、音がおかしくなったらジンに指摘してもらう感じでいいかな?」
「それが一番ね。そういう訳でジン、もう少し付き合って貰うわよ」
「俺は別に構わないが・・・良いのか? 俺なんかが口出しして・・・・・・」
「いいのいいの、遠慮無く口出してちょうだい」
「・・・・・・わかった。上手くやれるかどうかは分からないが、やってみよう」
「そうこなくっちゃ♪ それじゃ始めるわよ」
そうして再び、演奏を始める雷鼓達。
演奏は順調に進み、問題の場所に来た瞬間、ジンは口を開いた。
「雷鼓。そこは抑えめで、あまり激しくし過ぎると、リリカが釣られる」
「オーケー」
最初の演奏より抑えめで太鼓を叩く雷鼓。すると、音ズレが起きなかった。
「弁々と八橋、雷鼓についていくだけじゃなくて、ルナサ達に合わせてくれ」
「わかったわ」
「偉そうに言わないで!」
「リリカはそのままで、お前が崩れると、ルナサとメルランも崩れてしまう」
「はーい」
「ルナサとメルランは、いつも通りリリカのフォローを」
「まっかせて♪」
「もちろん」
ジンは次々と指摘をし、旋律を導いていった。そしてとうとう、雷鼓達は演奏しきったのである
「通し・・・出来た・・・・・・」
「結構いい感じじゃない♪」
「でも、まだまだ課題はあるわね。公演に間に合うかしら・・・・・・そうだ!」
雷鼓は何かを閃き、ジンにある提案を出した。
「ねえジン、お願いがあるんだけど・・・・・・いいかしら?」
「ん? まあ、俺に出来る事なら」
「あのね、私達の演奏の指揮を取って貰いたいの」
「・・・・・・は?」
突然の雷鼓の提案に、ジンは茫然してしまった。
「い、いくらなんでも、俺なんかが皆の演奏の指揮なんて・・・・・・」
「私は良いと思う」
「ルナサ?」
「ジンのおかげ通しが出来た。だから、ジンに指揮してもらえば良くなると思う」
「だがな・・・・・・俺は指揮をした事なんて――――」
「これを貸してあげる」
そう言って、ルナサが取り出したのは、一本のタクトであった。それを見て、メルランとリリカは驚いた。
「姉さんそれ―――」
「レイラの―――」
「良いの。たまに使ってあげなきゃ」
ルナサの言葉に、メルランとリリカはそれ以上何も言わなかった。その会話から、そのタクトは三人にとって大切な物だと理解した。
「良いのか? 大切なタクトなんじゃ――――」
「うん、大切な妹のタクト。でも大丈夫、貴方なら信用出来る」
そう言って、ルナサはジンにタクトを手渡した。すると、不思議な力が流れるのを感じた。
「これってもしかして、マジックアイテム?」
「うん。それを使えば、指揮も問題なく出来ると思う」
「そうか・・・・・・」
ジンは試しにタクトを振ってみた。すると驚く程手に馴染み、まるで何十年も使用した愛用のタクトと錯覚する程であった。
「凄いなこれ・・・・・・」
「どう? 出来そう?」
「ああ、これなら出来そうだ。でも良いのか? 俺なんかが指揮者をやって・・・・・・」
ジンがそう訪ねると、他のメンバーは次々とその問いに答えた。
「まあ、さっきの指示良かったし、任せても良いと思うわ」
「ちゃんとやるなら、雷鼓姐さんの暴言をチャラにしてあげるわよ」
「ちゃんと音が分かるし、そのタクトを使えるのなら、心配無いよ」
「私は最初から大歓迎よ♪」
弁々、八橋、リリカ、メルラン達は、ジンが指揮者をやることに反対しなかった。
「そういう訳でジン。指揮の方をお願いね♪」
「・・・・・・ああ、ここまで期待されたら、逃げる訳にはいかないな。みんな、よろしく頼む」
こうしてジンは、雷鼓達の演奏に、指揮者として加わる事になった。
―――――――――――
数日後。指揮者が加わった事により、演奏は確実に良くなっていった。しかしそれでも、まだまだ改善する所が多く、ジン達は今日も練習に励むのであった。
「八橋、遅れている! メルラン、飛ばしすぎ! 雷鼓、そこはもう少し抑えて! リリカ、雷鼓に釣られるな!」
音の旋律を見ながら、ジンは的確に指示を出す。幸いにも、彼女達は音楽のエキスパートであった為、ジンの指示通りの演奏を直ぐ様出来た。
「よし! 今のは良い感じだ。これなら公演に間に合いそうだ」
「一時はどうなるかと思ったけどね」
練習の手応えに、メンバー達は笑顔を見せ始めた。
そんな時に、文がその場に降り立った。
「こんにちはー、文々。新聞の物ですー。今日は取材に――――って、ジンさん? どうして貴方がここに?」
「文か、えっとこれは――――」
「彼ね、今度の演奏の指揮者なのよ」
「そうなんですか・・・・・・え? ええー!?」
雷鼓の言葉に、文は驚きの声を上げ、それと同時に歓喜した。
(超特大スケープじゃない! 二つの楽団のセッションに、人間が指揮をする。これは逃せない特ネタだわ!)
「そこ辺りの所を詳しく教えて貰えませんか!?」
「別に構わないが・・・・・・」
「まだ練習途中だから、あまり時間は取れないわよ?」
「構いません! 十分だけでも良いので、教えてください!」
「まあそれくらいなら――――」
「ちょっと待ったー!」
声と共に、今度ははたてがやって来た。どうやら余程急いで来たらしく、息が荒々しかった。
「ああ! 先を越された!」
「あら、はたてじゃない。どうしてここに?」
「念写したら、偶然にもこんな写真が取れて」
そう言って、はたてはカメラの画像を見せる。するとそこには、タクトを振るうジンの姿があった。
「これを見たら気になって、急いで来たわけ。もっとも、文に先を越された訳だけど・・・・・・」
「別に独占インタビューって訳じゃないんだから、聞きたいことがあれば、遠慮なく聞いて構わないわ」
「え? 良いの?」
「ええ、貴女もそれで良いわよね?」
「本当は独占インタビューしたかったんですけど・・・・・・仕方ありませんね」
「あと、時間があまり取れないから、質問は一つずつにしてちょうだい」
「ええわかりました。それでは先ず私から――――」
こうして文とはたては、それぞれ質問をし、それをメモに書き留めた。
「なるほど・・・そういった経緯があったんですね」
「旋律を見る・・・それは共感覚って奴かしら?」
「うーん・・・俺の場合は能力を使って見ている訳だから、本当の共感覚っていう訳では無いと思う」
「疑似共感覚って訳ね、これもネタになりそうだわ。
あ、良かったら練習も見せてくれないかしら?」
「構わないわ。聴いてくれる人がいれば、それだけやる気は出るから。皆も良いわよね?」
雷鼓がそう訪ねると、誰一人反対する者はいなかった。
「良いみたいね。それじゃ、早速始めるわ」
直ぐ様順番に入るメンバー達。そして、ジンのタクトを振ると同時に演奏が始まる。
六つの楽器が、それぞれの音を奏で、ジンのタクトがそれを一つにまとめる。多少粗削りな所があるが、それは見事なメロディーとなっていった。
演奏が終わると、文とはたては拍手を送った。
「いやー! 素晴らしい演奏です! これなら公演も大丈夫そうですね!」
「いいえ、まだ改善する場所もあるから、完成度といえば五割程度よ」
「五割!? 今ので!?」
「どんなに出来が良くても、それで満足してしまえば、それはそこまでの作品になってしまう。これは音楽だけじゃなく、様々な物に言える事なの」
「なるほど・・・それなら、公演当日には、先程の演奏より素晴らしい演奏が出来るという訳ですね?」
「もちろんよ♪ 期待して待っていてね」
そう言った雷鼓の表情は、自身に満ち溢れていた。
―――――――――――
公演当日。会場である紅魔館のパーティーホールでは、プリズムリバー楽団と付喪楽団の演奏を聴こうと、大勢の客が入っていた。
その様子を、雷鼓とルナサはこっそりと見ていた。
「うわぁ・・・・・・凄い数ね」
「うん、これだけの人数は初めてかも」
「でも、それだけ燃えて来るわ。あー、早く太鼓を叩きたい!」
逸る気持ちを抑える雷鼓。そんな時、リリカが慌ててやって来た。
「ルナ姉!」
「リリカ? どうしたの?」
「楽屋が大変な事に・・・・・・ともかく来て! 姉さんが来ないと、どうにもならないから!」
イマイチ事態が把握できないルナサと雷鼓だったが、取り合えずリリカと共に控え室に向かった。
楽屋に戻って来た三人が目にしたのは、超ハイテンションになっているジン、弁々、八橋の姿であった。
「「「イヤッホゥゥゥゥゥゥ!!!」」」
「こ、これは一体・・・・・・?」
「まさか・・・・・・」
「そう、そのまさか。緊張を解そうと、ジンがメル姉に演奏を頼んじゃって・・・・・・」
「少しやりすぎちゃった♪ てへ♪」
「メルラン・・・・・・」
「ともかく、三人を元に戻すよ」
「何だが、不安になって来たわね・・・・・・」
その後三人は、ルナサの演奏によって、無事正気に戻る事が出来た。
「いやー、酷い目にあった・・・・・・」
「それはこっちの台詞よ」
「そうよ! 私達二人は、思いっきり巻き添えを食らったんだからね!」
「わ、悪かったって・・・・・・」
(本当はメルランが悪いんだけど・・・まあいいや)
そんなやり取りをしていると、小悪魔が楽屋に入って来た。
「皆さん、そろそろ開演の時間です」
「お、いよいよか。それじゃあ皆、行こう!」
ジン達は、小悪魔の案内のもと、ステージへと向かった。
―――――――――――
その頃会場では、観客達がステージの開演を待っていた。
「なー、まだ始まんないのかよー?」
「少しは静かにしなさい、周りに迷惑でしょ」
行儀が悪い正邪に、霊夢は注意するが、正邪は聞く耳を持たなかった。
「だってよー、ずっと待ちっぱなしで退屈なんだよー」
「ああもう、こんな時ジンがいてくれれば・・・・・・」
「正邪、霊夢が困らせないの」
「嫌だね、私は人を困らせるのが大好きなんだよ♪」
「駄目ですねこれは・・・・・・」
相変わらずの態度に、針妙丸と妖狐はため息をつく。
それからしばらくすると、、華仙と魔理沙がやって来た。
「騒がしいと思ったら、やはり貴女だったのね正邪」
「よお霊夢」
「華仙に魔理沙じゃない」
「げ、説教仙人・・・・・・」
正邪はあからさまに嫌そうな顔をすると、華仙は正邪に対して説教を始めようした。
「正邪、貴女が天邪鬼であることは、十分に承知をしているわ。けれども、最低限のマナーは守るべきよ」
「あーあー、こんな場所で説教を垂れるのは止めてくれない? 周りの奴が迷惑するだろ?」
((((お前が言うなよ・・・・・・))))
「ご心配なく、周りに迷惑掛けずに説教をするから。ルナ」
「え? 私?」
「貴女の能力で、私と正邪の声が外に漏れないようにして貰えないかしら?」
「げっ!? そこまで説教がしたいのかよ!」
「説教は、相手の事を思って行う物よ。これも貴女の為なんだから」
「そんなのは、余計な御世話だっつーの」
「まったく、貴女は――――」
突然二人の声が聞こえなくなった。ルナが二人の周りに消音の結界を張ったからである。
ようやく静かになったところで、魔理沙が霊夢に話し掛ける。
「ところで、今回はジンが指揮者をやるみたいだが、大丈夫なのか?」
「さあ? でも、アイツは一度決めた事は、何がなんでもやり通す人だから、大丈夫だと思うわ」
「まあ確かに、途中で放り出す奴では無いな。お、そろそろ始まるみたいだ」
照明が徐々に暗くなる。いよいよカーテンコールである。
暗くなった会場に、ステージのカーテンが開かれる。そこにはプリズムリバー楽団と付喪楽団の姿、そして中央にタクトを持ったジンの姿があった。
ジンは観客の方を向き、御辞儀をしてから、改めて演奏メンバーの方を向く。そして、タクトを振り上げた。
最初に力強い雷鼓の太鼓、それに続くように五つの楽器が音を奏でる。そしてジンが、その音をタクトを振って一つに纏めあげる。
「うわぁ・・・・・・」
「これは・・・・・・」
「綺麗・・・・・・」
観客達は息を飲む。何故なら、彼らの旋律が会場を虹色に染め上げていったからである。その光景は幻想的で、会場の誰もが心を奪われた。
この現象は、ジンの借りたタクトの効果であった。これは使用者の思いを形ちどる効力があり、かつての使用者はこれで三人の騒霊を生み出し、ジンは会場を覆う虹を生み出した。もっとも、指揮に夢中になっているジンは、虹が出ている事に気づく事はなかった。
そうして最後まで演奏をしきり、改めて観客の方を向くと―――――。
「ブラボー! ブラボー!」
「凄く良かったわよー!」
「もう一曲頼むー!」
拍手喝采の声が会場中に巻き起こった。
それからジンは、予定以上の曲を演奏し、観客達を満足させるのであった。
―――――――――――
それから数日後、ジンは新聞を読んで、何やら複雑そうな顔をしていた。
「“虹の指揮者誕生!”か・・・文の奴、いくらなんでも、大袈裟過ぎるぞ・・・・・・」
「あら、実際にあの演奏で虹を見たんだから、あながち嘘では無いでしょ?」
霊夢はお茶を啜りながら、にこやかにそう言った。
「それはそうだが・・・あれはルナサから借りたタクトの力だ。俺自身の力じゃない」
「ルナサ言ってたわよ。“確かにタクトの効果ではあるけど、あの虹を出したのは間違いなくジンの力”だって」
「買い被りだ。実際、あのタクト無しじゃ、あそこまで出来なかった」
「謙虚ね・・・もう少し見栄を張ったら?」
「見栄を張りすぎると、それは虚構になるからな。虚構は身を滅ぼす」
「やれやれ・・・・・・正邪みたいな自信があれば良いのに」
「まあな・・・・・・ところで、その正邪は? 最近姿が見えないが?」
「華仙に捕まった」
「ああ・・・そうか・・・・・・」
それからしばらく会話も無く、のんびり過ごしていると、突然境内の方から大声が聞こえて来た。
「ジーン! いるー!?」
「この声って・・・・・・」
「輝夜か?」
二人は急いで境内の方へと向かう。するとそこには輝夜の姿と、大勢の妖怪達がいた。
「うわ!? どうしたんだこれ!?」
「まさか、宣戦布告!?」
「違うわよ。皆メンバーよ」
「メンバーって・・・何の?」
「オーケストラよ」
「「オーケストラ?」」
イマイチ事態が把握出来ていないジンに、鈴仙が説明をした。
「実は、この前の演奏を聞いて、姫様が“私達もやろう!”と言い出して・・・・・・」
「それなら別に、バンドのメンバーでいいだろ? 何故オーケストラなんだ」
「ジンに指揮者をして貰いたかったのよ」
「俺の?」
「あの虹は綺麗だったから、もっと凄いのがみたいなって思って」
「あれはタクトのおかげであって、タクト無しじゃ無理だ」
「それなら大丈夫、プリズムリバーの人達にも声をかけたから」
「あ、そうですか・・・・・・」
「そんな訳で練習よジン。さあ行きましょう!」
「ち、ちょっと待て! 受けるとは言って――――」
「受けてくれないの?」
「・・・・・・やります」
「それでよろしい。それじゃ霊夢、ジンを借りていくから」
そう言って輝夜は、ジンの手を引き、強引に何処かへ連れて行ってしまった。
「あ! ちょっと!? まったくもう・・・ジンには、人の頼みを断る事を教えないといけないわね・・・・・・無理だと思うけど」
霊夢は大きく溜め息をつきながら、母屋へと戻っていった。
その後、妖怪オーケストラというのが公演され、ジンは指揮者としてさらに有名になるのだが、それはまた別の話である。