東方軌跡録   作:1103

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紅魔郷EXクリア記念です。

一ステージ分とはいえ、かなりの難易度でした・・・。
残機は最大四つまで、得点によるエクステンド無し、スペルカード発動時ボム無効、これだけ見るとかなりの鬼畜仕様ですね。
何度もゲームオーバーになり、攻略サイトと攻略動画を参考に、ようやくクリアしました!(因みに、残機ゼロというギリギリの状態でした)
これからもこんな難しいのに挑戦するんだろうなぁと思うと、心が折れそうです・・・・・。

さて、今回はそんな記念話ですが、タイトル通りIFストーリーにしました。
もしも、ジンが博麗神社に辿り着けず、レミリアに拾われていたら、という話で作りました。
最後まで読んで頂ければ、幸いです。


番外ifルート、紅魔館編

並行世界。それはほんの少し運命がズレてしまった事で誕生する。限り無く近い他世界である。

今回は、その一つの話である。

 

―――――――――――

 

ここは夜の霧の湖。そこに一人の青年が倒れていた。

左腕はもがれ、右目は潰され。腹部は抉られていた。

いつ死んでもおかしく無い青年の元に、一人の少女が現れた。

 

「ふーん、僅かな細い運命の糸を手繰り寄せ、私の元に来たのね。しかし、片目が潰されているなんて、どう足掻いても、“あやゆる運命を操る能力”は手に入らないみたいね」

 

「―――――」

 

少女が何を言っているのか、青年は理解しなかった。それでも少女の言葉は続いた。

 

「ねえ貴方、生きたい?」

 

少女の問いに、青年は黙って頷いた。

 

「そう、それなら私の物になりなさい。人(ジン)である事を捨て、私の眷族になるのなら、助けてあげるわ」

 

青年は少女の言葉の意味がよくわからなかったが、死にたくない気持ちもあって、少女の提案に頷いて答えた。

 

「わかったわ。貴方を助けてあげるわジン」

 

少女は何故か、まだ名乗っていない青年の名を口にし。彼に自らの血を飲ませた。

こうしてジン呼ばれる青年は、この世界から居なくなり。新たに“待宵良夜”という吸血鬼が誕生したのであった。

それから数年の月日が流れる。

 

―――――――――――

 

ここは紅魔館。かつてジンであった青年は、待宵良夜として紅魔館の見習い執事として働いていた。

彼の朝は早く、毎朝の四時に起き、身支度をし、仕事を行うのだが、この日はちょっとしたトラブルが起きていた。

 

「・・・・・・またか」

 

良夜の視線の先には、壊されたドアと、隣に良夜の腕をしがみついて寝ているフランの姿があった。

 

(まったく、扉を壊さないで貰いたいものだ)

 

そう思いながらも、フランを起こさないようにしがみついている腕を外す。

彼女がしがみついていたのは、精巧に作られた義手であった。

レミリアに拾われた時には既に、片腕と片眼を失っており、そのままだと不便という事で、パチュリーに義眼を、アリスに義手を作って貰ったのである。

その出来は素晴らしく出来であり、ほぼ本物と差し支えない逸品であった。

 

(作って貰った二人には感謝しないとな。今度、何か送り物を送ろうかな)

 

そんな事を考えながら、良夜は片腕で執事服に着替える。

しばらくすると、ベットの中にいたフランがもぞりと動く。

 

「う、う~ん・・・・・・」

 

「ん? ああ、起こしてしまったかフラン」

 

「良夜・・・・・・? あれ?」

 

「しがみついているのは、俺の義手だ。そろそろ返してくれると嬉しいんだが」

「・・・・・・やだ」

 

フランは義手を更に抱きしめ、絶対に離さないと言わんばかりであった。

 

「フラン、それが無いと仕事に支障を来すのだが」

 

「やだ。良夜が一緒に寝てくれないなら、絶対に返さない」

 

これはいつもの、彼女の我が儘であった。何故そんなにも、一緒に寝たがるのかは良夜はわからなかったが、いつまでも我が儘を通す訳にはいかなかった。

 

「はあ・・・いいかフラン。俺はこれからやらなくちゃいけない仕事があるんだ。それをやらないと、他の皆が困るし、咲夜の負担も掛かるんだ。フランだって、咲夜が倒れたら嫌だろ?」

 

「嫌だけど・・・・・・」

 

「なら分かって欲しい。一緒に寝たいのなら、仕事が終わってからなら、いくらでも寝てあげるから」

 

「うん・・・・・・わかった。でも――――」

 

「ん?」

 

「どうせなら寝るより、遊んで欲しい」

 

「・・・・・・わかった。仕事が終わったら遊ぼう。約束だ」

 

「うん! 約束だよ!」

 

そうして二人は、約束の指切りをするのであった。

 

―――――――――――

 

義手を返して貰い、フランを部屋まで送った良夜は、再び自分の部屋の前に戻って来た。

 

「さて、フランが壊したドアを直すか」

 

そう呟いて、良夜は能力を使う。

並行世界のジンである良夜もまた、軌跡を視る事が出来る。しかし、ジンとは異なり、未来の軌跡を視ることは出来ない。それは彼の片眼が潰されているからである。片眼が潰された結果、本来の能力が発揮出来なくなってしまったのである。しかし、その代わりにある能力が付与されていた。

 

「どれどれ・・・・・・」

 

良夜は過去の軌跡を視る。そこにはフランが能力を使って、扉を破壊する軌跡があった。

 

「えっと、これを弄ってと・・・・・・」

 

良夜は、フランが握り潰そうとしている物の目の軌跡を動かし、扉の中に戻した。すると壊されていた扉が、一瞬で元に戻った。これが良夜の能力、“軌跡を弄る程度”の能力である。

この能力は、レミリアの血を貰った事により新たに発現した能力であり、過去の軌跡を弄る事によって、事象書き換える能力である。これを使って、良夜は扉を直したのである。

一件強力に見えるが、実際は様々な制約があった。

 

“一つ、魂がある者の軌跡は弄れない。

二つ、その日の軌跡しか弄れない。

三つ、何かを直す際には、それが壊れたまたは傷を負った場所に向かい、そこで軌跡を弄る必要がある。

四つ、死者の軌跡を弄っても、死体の傷が直るだけで、その者は生き返らない。

五つ、出来るのは軌跡を弄る事だけで、軌跡の抹消は出来ない。故に場所や壊れ方によっては、直すと同時に身代わり必要になる”

 

この五つの制約が存在するのである。

と言っても、良夜は自分の能力を直すだけに使っているので、大して困ってはいなかったのである。

 

「さて、仕事に行くか」

 

やや遅れながらも、良夜は館の仕事を始めるのであった。

 

―――――――――――

 

良夜の最初の仕事は、館の備品のチェックである。

膨大の数の備品を全てチェックするのは大変であるが、良夜は朝早くこなしていた。

 

「これとこれは良し。後は皿だが・・・・・・」

 

良夜は改めて皿のチェックをすると、一枚の皿が欠けていた。

 

「皿が一枚欠けているな・・・・・・咲夜に報告だな」

 

咲夜に報告項目をメモに書き、良夜はワインセラーへと向かった。

 

 

ワインセラーに来た良夜は、ワインの品質を一つ一つ調べていた。

 

「これは・・・まだまだだな。こっちは・・・良し、今日出すのはこれにしよう」

 

良夜は今日出すワインを決めた後、次にワインの残量をチェックする。

 

「おや? こっちの方は残り少ないな。これも咲夜に報告だ」

 

残量が少ないワインのリストをメモに書き止め、ようやく早朝の仕事が終わる。

 

―――――――――――

 

早朝の仕事が終わり、良夜は日課を済ませるために中庭へと足を運ぶ。

 

「いつも時間ピッタリですね良夜さん」

 

待っていたのは美鈴であった。朝の体操として、彼女と一緒に太極拳の演武を行こなうのが、良夜の日課となっていた。

 

「待たせると悪いからな。それじゃ、今日も始めるか」

 

「はい」

 

演武を開始する美鈴。良夜も美鈴と同じ動き追う。

美鈴の動きは軽やかで、素人目から見ても熟練者と分かる程である。一方良夜は、やや動きはぎこちないながらも、しっかりと型が出来ていた。

 

「随分上達しましたね。先生としては鼻が高いです」

 

「いや、まだまだだよ。美鈴に比べたら、子供の児戯だよ」

 

「またまた謙遜しちゃって」

 

「本当だって。それに、美鈴の動きは綺麗だと思うぞ」

 

「そ、そんな綺麗だなんて・・・もう! 口が上手いんだから!」

 

綺麗と言われた事が嬉しかったらしく、美鈴の動きが鋭敏になり、そして思わず気功弾を放ってしまった。

 

「あっ」

 

「え? ああ!?」

 

気功弾は中庭のガーデンに命中、見るも無惨に破壊してしまった。

美鈴は、涙目でジンの方を見る。

 

「ジンさ~ん」

 

「わかったわかった。咲夜には黙っておいてやるから、後直しておくよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

美鈴に感謝されながら、良夜は、美鈴が放った気功弾の軌跡を弄り、ガーデンを修復するのであった。

―――――――――――

 

朝食を済ませた良夜は、次に地下図書館に向かい、パチュリーの手伝いをしていた。

 

「良夜、魔法薬事典第六十六巻が欲しいのだけど」

 

「それならこれです」

 

そう言って、良夜は目当ての本をパチュリーに手渡す。すると今度は小悪魔が、何冊もの本を持ってやって来た。

 

「良夜さーん、この本は何処でしたー?」

 

「右から三つ目の本棚の、四段目だ」

 

「はーい」

 

良夜は荒れていた紅魔館の図書を、種類別に整理する事によって、より調べやすい環境に作る事に成功していた。

と言っても、この広大の図書全てを整理するには、まだまだ時間は必要であるが、それでも格段と利用しやすくなっていた。

 

「良夜が来てくれたおかげで、調べ安くなったわ」

 

「本当ですよ。前なんか、目当ての本を探すのに、何ヵ月も掛かる時もありましたから」

 

「お褒めに預かり、光栄です」

 

「・・・・・・その口調止めたら? はっきり言って似合って無いわよ」

 

「そう仰られても、メイド長の命令なので。勤務中は丁寧語で話すようにと」

 

「やれやれ、余程怖い目にあったのね・・・・・・」

 

「まあ確かに、咲夜さんは怖い所もありますから・・・・・・」

 

「あら、何処が怖いのかしら?」

 

「え?」

 

小悪魔が後ろを恐る恐る振り返る。するとそこには、いつの間にか咲夜が立っていた。

 

「さ、咲夜さん!? いつからそこに!?」

 

「“咲夜さんは、怖い所もありますから”って辺りからよ」

 

「ひぃ!? 聞かれてる~!?」

 

涙目になりながら叫ぶ小悪魔。そんな小悪魔を助けようと、良夜は話題を変えようとした。

 

「メイド長、パチュリー様に何か御用では?」

 

「いいえ。パチュリー様じゃなく、貴方に用があるのよ」

 

「私に?」

 

「ええ、買い物に行くんだけど、荷物持ちをして欲しいのよ」

 

「わかりました。直ぐに準備いたしますので、門で待ってて下さい」

 

「わかったわ。それと小悪魔」

 

「はい?」

 

「後で覚えておきなさい♪」

 

「ひぃ~!」

 

咲夜の笑顔の死刑宣告に、小悪魔は大きく悲鳴を上げた。

そんな小悪魔に同情しながらも、良夜は出掛ける準備をしに行くのであった。

 

―――――――――――

 

人里の市場。そこで二人が買い物をしている姿があった。

唐突だが、吸血鬼には二種類存在する。

一つは、生まれながらの吸血鬼。主に純血種と呼ばれる者。

二つ目は、純血種によって吸血鬼にされた者、後天的な吸血鬼なった者を混血種と呼ばれている。

混血種の吸血鬼は、純血種より弱いが、その分純血種のように弱点は無い。

これは吸血鬼としての部分が、純血種より少ないからである。

比率で言うならば、人間の部分が四、吸血鬼の部分が六程度だからである。因みに良夜の場合、人の部分が五、吸血鬼の部分が三、鬼の部分が二という比率である。

 

「えっと、後は・・・・・・」

 

「まだ買うのですか?」

 

「ええ、せっかく荷物持ちがいるんもの。出来るだけ買いだめしておかないと」

 

「これ以上持てと?」

 

そう訪ねる良夜。彼の両手には何袋の買い物袋が掛かっており、背中にパンパンの巨大なリュックを背負っていた。

それに対して、咲夜は笑顔で言う。

 

「男の子でしょ、頑張りなさい」

 

「人使い荒いですね・・・・・・ん?」

 

ふと、良夜の目に写ったのは、紫と黄色の硝子のペンダントだった。

 

「メイド長。あのペンダントを買ってもよろしいですか?」

 

「え?」

 

「レミリアとフランのお土産にと」

 

「ああ、なるほど。別に構わないわ。ただし――――」

 

次の瞬間、良夜の眉間にナイフが刺さっていた。

 

「いってぇー!?」

 

「呼び捨てにしない。わかったかしら?」

 

「い、イエスマム・・・・・・」

 

「分かればよろしい」

 

こうして良夜は、痛い目に合いながらも、レミリアとフランのお土産を手にいれる事が出来た。

 

―――――――――――

 

 

咲夜の買い物を済ませた後、良夜はフランの部屋に訪れていた。

 

「もう! 待ちくたびれたよ良夜! 約束を忘れちゃったかと思ったよ!」

 

フランはご機嫌斜めであった。いつも決まった時間に、今朝フランと遊ぶ約束をしていたのだが、今回はその時間を僅かばかり遅れてしまったようである。

 

「悪い・・・・・・」

 

「約束を破っちゃ駄目だ。って、言ったのは良夜でしょ?」

 

「ああ、その通りだ・・・・・・ごめんなフラン」

 

非がこちらにある以上、良夜は謝る事しか出来なかった。そんな良夜に、フランは妖艶な笑みを浮かべた。

 

「こういう場合、誠意を見せなきゃ駄目よね?」

 

「と言うと?」

 

「えい!」

 

するとフランは、良夜をベットに押し倒した。

 

「フラン何を――――」

 

「えへへ、良夜の・・・ちょうだい♪」

 

そう言って、良夜の首筋を噛みついた。

 

「んっ・・・・・・ちゅう」

 

「うっ・・・・・・」

 

そしてゆっくりと血を吸い始めた。

本来、吸血鬼は同族の血は吸わない。何故なら、大抵は拒絶反応を起こすからである。しかし、良夜の血は人間、吸血鬼、鬼の三種類の血が混じりあっており、吸っても拒絶反応が起きにくく、しかも鬼の血を取り込む事によって力も増す場合もある。そのせいか、病みつきになるらしい。

だが、あくまで拒絶反応が起きにくいので、起きる事を考えて、あまり良夜の血を飲まない方が良いと、パチュリーも言っていた。

 

「ふぅ~・・・・・・ごちそうさま♪」

 

「フラン・・・・・・あまり俺の血を吸うな。拒絶反応を起こして、お腹を壊したらどうするんだ?」

 

「だって、良夜の血美味しいんだもん」

 

「美味しいからって駄目だ。健康に良くない」

 

「むぅ~、そんな事言うなら、もっと吸っちゃうから」

 

「それならこっちにも考えがある。用意したプレゼント、フランにあげないで、レミリアだけにやるから」

 

「ええっ!? そんなー!」

 

「フランが良い子にしてたら、あげようと思ったけど、悪い子には必要無いよな?」

 

「ううっ・・・良い子にするから・・・・・・」

 

「本当か?」

 

「本当!」

 

「もう俺の血を吸わないか?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

良夜にそう訪ねられたフランは、思わず口ごもる。そして、上目遣いをしながら言った。

 

「・・・・・・たまにじゃ駄目?」

 

「・・・・・・ふぅ、たまにで尚且つ、少量ぐらいなら」

 

「やったー♪」

 

自分でも甘いなぁ、と良夜は思いながら、プレゼントのペンダントをフランに手渡した。

 

「ありがとう良夜! 大好きー♪」

 

フランは満面の笑顔で、良夜に抱き付くのであった。

 

―――――――――――

 

フランの遊びに付き合った後、良夜は咲夜の紅茶の指導を受けていた。

 

「ただ淹れるだけじゃ駄目よ。ゴールデンルールをちゃんと守らないと、美味しい紅茶は出来ないわ」

 

咲夜が言うゴールデンルールとは、紅茶を美味しくするための手順と言える物である。これを守る事によって、美味しい紅茶が出来上がるのである。

しかし、これをこなすのは非常に難しく、良夜は未だに完璧に出来てはいなかった。

 

「どうぞ・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

良夜が差し出した紅茶を、咲夜は無言で飲み、評価をくだす。

 

「駄目ね、熱湯の温度が高すぎ、ポットの暖めかたが甘い、空気の含ませ方が駄目、あと葉の入れすぎよ」

 

「ぐっ・・・・・・」

 

「多少はマシになったけど、合格点には程遠いわね」

 

「そうか・・・咲夜の域に達するのは、時間は掛かりそうだな・・・・・・」

 

「そうね。出来れば、私が生きている間にマスターして欲しいわ」

 

そう手厳しく言う咲夜の言葉に、良夜はめげずに新たな紅茶を用意し始める。

その様子を見て、咲夜は少し微笑む。

 

(頑張るわね。この頑張りを、他の人にも分けて欲しいわ)

 

咲夜は彼が、夜遅くまで紅茶の入れ方の練習をしていたのを知っていた。

どんな時でも妥協せず、努力するその姿を、咲夜は好ましいと感じていた。

そんな事を考えていると、新たな紅茶が出来上がった。

 

「今度はどうだ?」

 

「どれどれ・・・・・・」

 

そう言って、新しく入れられた紅茶を飲む。

 

「・・・・・・まだまだだけど、さっきよりは上手くなったわ」

 

そう言って、笑みを浮かべながらそう答えた。

 

―――――――――――

 

その日の夜。レミリアは不機嫌であった。何故なら、自分の眷族である良夜が、朝の朝食以降、自分の所に来てくれなかったからである。

 

(まったく・・・主を蔑ろにするなんて、良い度胸だわ。ここは一つ、ビシッと言ってやるんだから!)

 

そう心に誓うレミリア。そんな時、ドアをノックする音がした。

 

「誰?」

 

「良夜です」

 

「入って来て良いわよ」

 

「失礼しま――――」

 

「遅い! いつまで待たせるのよ!」

 

良夜が入った瞬間、レミリアの怒声を浴びせられた。

 

「貴方は私の下部なのよ? なら、主である私を優先するのが筋じゃないの?」

 

「うっ・・・わ、悪い・・・・・・」

 

「悪いと思っているのなら、誠意を見せなきゃ駄目よ」

 

(あ、嫌な予感が・・・・・・)

 

良夜の予感は的中し、レミリアは良夜をベットに押し倒し、そのまま首筋に顔を近づいていく。その時、フランが噛みついた痕を見てしまう。

 

「・・・・・・ねえ? 首筋に噛みついた痕があるんだけど、一体どうしたのかしら?」

 

「え? あっ、やば――――」

 

「主を放っておいて、随分と楽しい事をしていたようね・・・・・・」

 

「違うんだレミリア! これは――――」

 

「血を吸うだけにしようと思ったけど、それだけじゃ駄目なようね」

 

「レミリア! 落ち着け!」

 

「黙りなさい!」

 

「―――――!?」

 

レミリアの一言で、良夜は声を発する事が出来なくなった。そして、妖艶な目で良夜を見つめる。

 

「二度とあの子に吸われないように、一滴残らず吸い取って、あ、げ、る♪」

 

そう言って、レミリアは良夜に口づけをするのであった。

 

 

それから数十分後、ベットの上ではお腹を押さえながら呻くレミリアと彼女に膝枕をし、頭を優しく撫でる良夜の姿があった。

 

「うー・・・・・・御腹痛い・・・・・・」

 

「自業自得だ。いくら人間の部分が多くても、俺も一応吸血鬼なんだぞ」

 

良夜はため息をつきながら、レミリアに言った。

彼女の腹痛の原因は、吸血鬼の血を吸った反動で起きた拒絶反応である。いくら起きる確率が低くても、起きる時は起きる。それが偶々レミリアに起きてしまったのである。

 

「ほら大丈夫か?」

 

「う、う~ん・・・・・・」

 

「仕方ないな・・・どれ―――」

 

良夜は眼を見開いた。

彼が視ていたのは過去の軌跡、それはレミリアが良夜の血を吸い、体内に入れる軌跡であった。その軌跡に手を入れ、自分の血液の軌跡を取り除く。

 

「・・・・・・あれ? 痛くない?」

 

「腹痛の原因の軌跡を取り除いた。もう大丈夫だ」

 

「ありがとう―――って、良夜!? その手は!?」

 

そう叫んだレミリアの目には、先程まで普通だった彼の手が、真っ赤な血で染まっていた。

 

「ん? ああこれは、さっきまでレミリアの体内に入っていた俺の血だ。だから大丈夫」

 

「そ、そうなの? 良かった・・・・・・」

 

安堵の表情を浮かべるレミリア。そんな彼女の表情を見て、良夜はある事を思い出す。

 

「あ、そうだ。レミリアにプレゼントがあるんだ」

 

「プレゼント?」

 

「ほらこれ、咲夜と買い物行った時に買ったやつなんだ。レミリアに似合うと思って」

 

そう言って、レミリアに買ったペンダントを手渡した。

 

「もう、それがあるなら先に言いなさいよね」

 

「言う前に襲ったのはそっちだろ?」

 

「だ、だいたい良夜が悪いのよ! 私を放っておいて、フランばかりに構って! もう少し私に構いなさい!」

 

「・・・・・・そうだな。確かにフランに構いすぎたかも知れない。わかった、今夜の俺はレミリア専用だ」

 

「本当?」

 

「ああ、本当だ」

 

「それじゃあ、今夜は一緒に寝なさい」

 

「そんな事で良いのか?」

 

「ええ、貴方の温もりを感じて寝たいの。駄目かしら?」

 

「・・・仰せのままに、我が主よ」

 

 

良夜はレミリアに跪き、彼女の手の甲に口づけした。それを見たレミリアは、嬉しそうに微笑んだ。

それからも良夜は、ずっとレミリアに仕え、生きていくのであった。

 

―――――――――――

 

紅魔館END 紅魔館の見習い吸血鬼

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