東方軌跡録   作:1103

116 / 194
秘封倶楽部の話がおもしろく、彼女達を出す話を書いてみました。
最新作が待ち遠しいです。



秘封倶楽部の少女達

ある時ジンが目を覚ますと、それはいつもの自分の部屋であったが、何処か違和感もあった。ジンはその違和感で、ある事に気がついた。

 

「・・・・・・これは、俺の夢か」

 

そう呟いて、ジンは夢の世界を眺めた。

 

 

ジンは時折、自分が夢を見ていると自覚が出来た。理由は分からないが、幻想郷に訪れてから自覚出来るようになっていた。

彼の自覚する夢は決まってこの夢の幻想郷である。

 

「暫くぶりだな・・・まあ、その気になればいつでも起きれるし、少しのんびりしていくか」

 

そうして縁側でのんびりしていると、夢の世界の妖狐がお茶と茶菓子を用意してくれた。

 

「ありがとう妖狐」

 

ジンがそう言うと、彼女は何も言わずに会釈して、その場を去って行った。この世界の住民は、現実の幻想郷の住民を模しているが、喋る事はなかった。

これはジンが、夢と現実をはっきりと区別しているが為だと思われる。言わばここは、幻想郷のジオラマなのだ。

 

(まあ、話し相手がいないのは寂しいけどな。こうゆう時に、紫が来てくれたらな)

 

そんな風に思っていると、境内から二人の少女の声が聞こえた。

 

「メリー、ここって博麗神社だよね?」

 

「そうみたいだけど・・・なんだか様子がおかしいわ」

 

「そうね・・・あっ、あそこに巫女さんがいるわよ。話を聞いてみましょう」

 

「あれ? 神社にあんな巫女がいたかしら?」

 

そういった会話が聞こえて来た。

 

(誰だ? ここは俺以外喋らない筈だが・・・・・・)

 

ジンは不振に思い、境内を除き込む。するとそこには見知らぬ女性が、夢の世界の霊夢に何度も話し掛けていた。

 

(知らない奴らだな。一体何者だ?)

 

ジンは暫く様子を見る事にした。

 

「すいませーん! 話を伺いたいのですがー!」

 

「・・・・・・」

 

「あのー! 聞こえていますかー!?」

 

「無駄よ蓮子、この人は幻みたいよ」

 

「え? 何言ってるのメリー、ちゃんと触れるわよ。ほら」

 

そう言って蓮子と呼ばれた少女は、霊夢の頬を触ってみせる。

 

「ほら、少し様子がおかしいけど、触れるでしょ」

 

「何て言うか上手く言えないけど、ここにいる巫女さんは、誰かの記憶で作られた。言わば、触れる立体影像みたいな物よ」

 

「誰かのって・・・メリーのじゃないの? だってこれはメリーの夢なんでしょ?」

 

「うーん、何だが違う気がするの。まるで、誰かの夢の中に迷い込んだような・・・・・・」

 

「多分、その通りだと思う」

 

そう言ってジンは、二人の前から姿を表した。

 

「誰!?」

 

蓮子はメリーという少女の前に出て、現れたジンを睨み付ける。どうやら警戒されているようである。

 

「そんな警戒しないでくれ。俺はこの夢の世界の主だ。君達は?」

 

そう訪ねると、メリーと呼ばれる少女から自己紹介を始めた。

 

「初めまして、私は宇佐見蓮子。秘封倶楽部のメンバーです。こちらがメリー、私と同じメンバーです」

 

「・・・・・・こんにちは」

 

「蓮子とメリーか。俺はジン、幻想郷の博麗神社で住み込みで働いている者だ」

 

「幻想郷の博麗神社?」

 

ジンの言葉に、蓮子は不思議そうに首を傾げた。それを見てジンは、ある予想を立てた。

 

「その様子だと、二人は外来の人間だな」

 

「外来?」

 

「そうだな、立ち話もなんだし、母屋に来ないか? 美味しい御茶と茶菓子があるぞ」

 

「え! いいんですか!?」

 

「ちょっと蓮子」

 

「いいじゃない、どうせこのままじゃ何もわからないんだし。それにこの人、そんな悪い人には見えないし」

 

「だからって・・・・・・」

 

「それに、こんなチャンスは滅多に無いのよ? これを逃す手は無いわ」

 

「・・・・・・わかった。でも、危険になったら直ぐに逃げるわよ」

 

「もう、心配性だなメリーは」

 

こうして蓮子とメリーは、ジンの誘いを受け、母屋に向かう事にした。

 

―――――――――――

 

蓮子とメリーを居間に案内したジンは、二人に人里評判の御茶と茶菓子を馳走していた。

 

「美味しい~♪ この茶菓子、本当に美味しいわ♪」

 

「そうね、この御茶と一緒にいただくと、格段に美味しくなるわ」

 

「気に入って貰えて何よりだ。さて、改めて蓮子とメリーに聞くが、二人はどうやって俺の夢に来たんだ?」

 

ジンがそう訪ねると、二人は説明をし始めた。

 

「実は、私には昔から不思議な能力があって、それを使ってここに来たんです」

 

「不思議な能力?」

 

「そう、メリーが持っている“境界を見る”能力を使ってね」

 

「ああなるほど、それなら他人の夢に来れるかもな」

 

「あれ? 驚かないんですか?」

 

「知り合いに似たような能力が持つ者が居てね。時々俺の夢に入って来るんだ」

 

「へぇー、メリーの他にも境界を見る人がいるのね」

 

「いや、彼女の場合は境界を見るんじゃなくて、操る方だからな。そして人じゃなくて、妖怪だ」

 

「え! 妖怪ですって!?」

 

ジンの言葉に、蓮子はますます目を輝かせた。

 

「あのジンさん! そこのところ詳しく教えてくれませんか!?」

 

「ちょ、ちょっと蓮子、少し落ち着いて・・・・・・」

 

「これが落ち着ける!? 妖怪だよ妖怪! 今まで空想の存在だと思われいた物が、実在していたのよ!」

 

蓮子は興奮が押さえ切れないのか、息を荒げながら言った。メリーはそんな蓮子に困りながら、何とか落ち着かせようとする。

 

「わかったから落ち着いて、ジンさんが困っているわよ」

 

「え?」

 

メリーの言葉で、ジンの方を見る。彼は先程から苦笑いを浮かべていた。

 

「あっ、す、すみません!」

 

「いや気にしてないから大丈夫だ。それよりも、先程の話の続きでもしよう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

蓮子はジンに礼を言いながら、彼の語る妖怪と幻想郷の話に耳を傾けた。

 

 

幻想郷とそこに住む人や妖怪の事を話終えると、蓮子はとても楽しそうで、メリーは何やら考えていた。

 

「人と妖怪が共存する世界・・・・・・そんな世界があったなんて」

 

「吸血鬼が住む紅い館・・・月人がいる迷いの竹林・・・もしかして、以前に夢で来ていた所は幻想郷だったのかしら?」

 

「取り合えず、話せるのはこれぐらいだな。他に質問は?」

 

「うーん・・・そうですねぇ・・・・・・」

 

蓮子は次の質問を考えていると、次第に風景がボヤけて来る。

 

「な、なに!?」

 

「どうやら時間切れのようだ。現実の俺が目を覚ますようだ」

 

「ええ!? まだ聞きたいことがたくさんあるのに!」

 

「すまないが今回はこれでお開きだ。この続きまた機会に」

 

「約束ですよ!」

 

「それじゃジンさん、私達はこれで」

 

「ああまたな」

 

蓮子とメリーはジンに別れの言葉を言うと、その姿を消した。

そしてジンは、眠りから覚めるのである。

 

―――――――――――

 

ここは某大学内にあるカフェラテ。そこに蓮子とメリーが一時を過ごしていた。

 

「いつ来ても、ここの紅茶は美味しいわね」

 

「そうね、ところで、蓮子はこの前の夢を覚えている?」

 

「覚えているわよ。ジンさんに幻想郷について色々と聞いたわね」

 

「その事なんだけど。あの人、人間じゃない何かが混じっていたわ」

 

 

「人間じゃない何かって?」

 

「わからないけど・・・・・・あの人、本当に信用出きるの?」

 

「考え過ぎよメリー、もしあの人が悪人の類いだったら、私達は今頃あの夢から帰れていないもの」

 

「それは私達を油断させる罠かも知れないわ」

 

「ああもう、この話はお仕舞い。あの人がどういう人か、今度聞けばいいじゃない」

 

「あっ、ちょっと蓮子!」

蓮子は席を立ち、カフェから出て行ってしまう。

 

「もう、次も無事だとは限らないんだから」

 

メリーは一抹の不安を抱きながら、蓮子の分も払うのであった。

 

―――――――――――

 

その日の夜。メリーは見知らぬ森を歩いていた。

彼女は感覚で理解した。これは自分の夢だと。

 

(また夢か・・・・・・ここは何処なんだろう?)

 

メリーは辺りを見回すが、人の気配は無く、代わりに自分に向けられる嫌な視線を感じる。

 

「・・・・・・っ!」

 

メリーは走り出した。するとその視線の主達もメリーを追いかける。

 

「はっ、はっ、はっ、あっ!?」

 

メリーは思わず足を引っ掛け、転んでしまう。その間に、怪物達が彼女を取り囲む。

 

「グルル・・・・・・」

 

(もう! どうしてこんな時に限って目を覚まさないのよ!)

 

内心悪態をつく彼女だったが、それでも悪夢は覚めなかった。

そうこうしている内に、怪物の一匹がメリーに飛び掛かる。

 

「っ!」

 

メリーは思わず目を瞑る。夢ならここで目が覚める筈、そう思いながら強く瞑った。

すると、何やら獣声と、それを薙ぎ払う音が聞こえた。

 

「え?」

 

恐る恐る目を開けると、そこにはいつしか夢であったジンと土の獣が、メリーを守るように立っていた。

 

「彼女に手を出すな。俺の客人だ」

 

ジンが怪物達に睨み付けると、怪物達は恐れを為してその場から立ち去った。

 

「ふう、大丈夫かメリー」

 

そう言って、ジンはメリーに手を差し伸べる。

 

「え? あ、はい・・・・・・」

 

メリーはおずおずとジンの手を取り、彼の助けで何とか起き上がる。

 

「それにしても、変わった体質だな。幽体離脱してこっちに来るなんて」

 

「え?」

 

「どうやら気づいていないようだな。今の君は意識だけがここに来ている状態なんだ」

 

ジンの話によると、今のメリーは意識だけの存在で、肉体は外の世界にあるらしい。恐らく先日の夢の中の邂逅も、同じ状態だったとジンは言った。

 

「それじゃ、これは私の夢じゃないんですか?」

 

「いや、これは君の夢だ。君は夢の中で、現実の幻想郷を訪れているだけだ」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

「よく分からないか、まああまり気にしない方がいい」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「あ、いえ・・・・・・私、戻れるかなって」

 

「夢はいずれ覚めるものだ。その間は俺が守ってやる」

 

恥ずかしい台詞を良く言えるなぁと思う一方、とても頼りになると感じるメリーであった。すると、彼女の体に異変が起きた。

 

「あれ? 体が・・・・・・」

 

メリーの体が徐々に透けていったのである。

 

「どうやら、夢から覚めるようだ。もう大丈夫だな」

 

「あ、あの! ありがとうございます!」

 

メリーはそう御礼を言うと、ジンは微笑みながら――――。

 

「どういたしまして、蓮子にもよろしく伝えておいてくれ」

 

そう彼の言葉が聞こえたところで、メリーは夢から覚めた。

 

―――――――――――

 

Message body

 

翌日。メリーは昨夜見た夢を蓮子に話していた。

 

「――――という夢を見ていたの」

 

「むぅ~、メリーだけ幻想郷に行くなんてずるい」

 

「ずるいって・・・こっちは食べられそうになったのよ?」

 

「でも無事だったじゃない。ジンさんに感謝しないとね」

 

「そうね・・・・・・」

 

「どうしたのメリー? 浮かない顔をして」

 

「・・・・・・何となくだけど、あの人以前に何処かであった事がある気がするのよ」

 

「え? 一体どこで?」

 

「それが良くわからなくて・・・・・・」

 

「気のせいじゃない?」

 

「うーん・・・・・・」

 

「そんなに気になるんだったら、今度夢であったら聞いてみなよ。また会う約束したんだから」

 

「それもそうね。あっ、この前蓮子の分まで払ったんだから、今回は蓮子の奢りね」

 

「え!? 私今月ピンチなのに・・・・・・」

 

項垂れる蓮子、そんな彼女を見て、少し楽しそうなメリーであった。

 

―――――――――――

 

これは本筋には関わらない、ほんの些細な物語の一つである。

その昔、ジンがまだ幻想入りしておらず、借金も背負っていない時の事をである。

彼がいつものように買い物を済ませ、住んでいるアパートに帰ろうとした時、泣いている幼い少女を見つけた。ブロンド髪からして、恐らく外国の子だとジンは思った。

 

『ひっぐ・・・・・・えっぐ・・・・・・』

 

(迷子か?)

 

元々世話好きで子供好きの彼は、その少女に話し掛けた。

 

『どうした? 迷子か?』

 

『?』

 

少女は声を掛けられたジンを見て、少し怯えていた。ジンは彼女を安心させる為、買って来た飴玉を手渡す。

 

『そう怖がらなくて良い。俺は悪い奴じゃないから』

 

自分から言っても、説得力無いと分かっていたが、それ以外掛ける言葉がなかった。すると少女は――――。

 

『Don't I understand Japanese.(私、日本語がわからないの)

I don't know so what you'er talking about.(だから、貴方が何を言っているかわからない)』

 

少女の言葉を聞いて、ジンは自分の失敗に気づき、直ぐ様彼女と同じ言葉で言った。

 

『Because safeness and I understand your word.(大丈夫、俺は君の言葉がわかるから)』

 

その言葉を聞いた途端、少女から安堵の笑みが溢れた。

それからジンは、彼女の親を探し、送り届けた。

その少女が、メリーだったとは、当時のジンは知らず。メリーもその事をおぼろ気にしか覚えていなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。