彼女の設定を考えると、早い段階で結婚しないといけないので、結構頻繁にお見合いしているんじゃないかと妄想しながら書きました。
それと鈴奈庵の最新話の内容を読んで、御阿礼の子である阿求の寿命が短いのは、転生の代償や能力の負荷では無く、原因不明だと今さら知りました。
もし医学的原因だったら、永琳がいる今、延命が可能かもしれません。彼女にはもっと長生きして欲しいと思います。
新年が明けた一月のある日。ここは稗田家の屋敷で、現当主である阿求は幻想郷縁起の編集していた。
そんな時、一人の老人が数え切れない程の書状を持ってやって来た。
「九代目、縁談の書状来ておりますぞ」
老人の言葉を聞いて、阿求の筆が止まり、その表情はうんざりしていた。
「また来たの?・・・私は当分結婚するつもりは無いのに」
「そうは言ってものう、跡継ぎを作るのも当主の役目。しかも、御阿礼の子である九代目は、ただでさえその時間も限られておりますので」
「わかっているわ爺、いつも通りなら、後十数年しか生きられ無いもの」
それは稗田阿礼の転生者としての宿命。代々阿礼の転生である御阿礼の子は、約三十までしか生きられないのである。一説では、転生後も記憶を引き継ぐ為の対価と言われているが、本当の原因は不明である。
そしてこの九代目の御阿礼の子である阿求もまた、例外では無いのだ。
「だからこそ、伴侶選びは慎重じゃないといけないの。私が死んだ後も、稗田家と私の子供をしっかり守れる人じゃないと」
「わかっております。だからこそこの爺、縁談の者を厳選しております」
「厳選してその数なの?」
「はい、なかなか悩みましたぞ」
「ふーん・・・・・・」
阿求はそれを受け取り、内容を見てみる。しかし、そこに書かれていたのは見合い相手のプロフィールでは無く、春画であった。しかもどれも、ナイスバディの女性ばかりであった。
「・・・・・・ねぇ爺? 私の目がおかしく無ければ、春画のようだけど?」
「仰る通り、わし秘蔵のコレクションじゃ」
「・・・・・・ふん!」
阿求はそれらを一枚残らず破り捨てた。
「ああ! わしのコレクションが・・・・・・」
「くっだらない物を見せてるんじゃないわよ! しかも全員胸がデカイって、明らかに私に対する嫌がらせよね!?」
「ほんのジョークのつもりじゃったが、つまらんかったかの?」
「馬鹿な事を言ってないで、本物を寄越しなさい!」
「そんなに怒らんでも良いのにのう・・・・・・」
爺は改めて、本物の書状を阿求に手渡した。
「まったく、余計な事をしなければ良いのに」
「老人の茶目っ気じゃよ。ところで、良さそうなのはいたかの?」
「うーん・・・・・・」
阿求は一枚一枚丁寧に見るが、彼女がピンと来る男性はこの中にはいなかった。
「駄目ね、正直言っていまいち」
「写真だけで判断出来んじゃろ。一度会ってみたらどうじゃ?」
「これでも男を見る目はあるわよ。伊達に転生を八回も繰り返しているんだから」
「じゃが、このままでは伴侶が見つからぬまま、寿命を迎えてしまうではないかの?」
「それは・・・・・・」
爺の言葉に、阿求は少し困った表情になった。やはり妥協しなければならないのか、そんな考えが脳裏に過る。すると爺が、こんな事を言い出した。
「のう九代目、実は一人だけ、そなたに相応しい若造がおるんじゃが」
「え? だれ?」
「この書状の中にはおらん。正直に言うが、高貴な血筋ではなく、平民の出じゃが、あやつなら九代目を任せても良いと思う人物じゃ」
「へぇー、爺がそこまで言うなんて、余程の人なんでしょうね」
「興味を持っていただけましたかの?」
「ええ、一度会ってみたいわ。その人、紹介してもらえる?」
「もちろんですじゃ、では早速この話を持ち掛けてみましょう」
そう言って、爺は部屋を出ていった。
この時阿求は、相手の素性を詳しく聞かなかったという、重大なミスしてしまっていたのである。
―――――――――――
お見合い当日、場所は稗田家の別荘で行われた。
この場所を知っているものは少なく、主に密談として使われている場所であった。
(爺ったら、なんでこんな場所を選んだのかしら? いつもの屋敷の離れで良いはずなのに)
そう思いながら、相手が待つ客室に入る。そこには一人の男性が待っていた。
オールバックの髪に晴れ着、そして鋭くも何処か優しい眼差しを持った青年であった。
(あら、爺が言うだけの事はあるわね)
阿求は青年に興味を抱くも、青年の方は阿求を見て驚いていた。
「えっ? 阿求?」
その声に阿求は聞き覚えがあった。そして恐る恐る名前を訪ねた。
「もしかして・・・・・・ジンさん?」
その問いに、ジン思わしき青年は小さく頷いた。
「・・・・・・ちょっと待ってて下さい」
そう言うと、阿求は戸を閉め、爺が控えている部屋に急いで向かった。
「爺! これはどういう――――」
しかし、部屋は既に藻抜けの空で、一枚の書き置きが残されていた。そこに書かれていたのは―――――。
“あとは若い者同士、しっぽりと楽しんでおくれ”
「~~~っ! 爺ぃーーー!!!」
阿求は紙を破り捨て、思いっきり叫ぶのであった。
ジンのところに戻った阿求は、ジンに事情を尋ねた。
「いや、あの爺さんに“とある高貴の方とお茶をして欲しい”って頼まれて」
「つまり、それが私とのお見合いだとは、まったく知らなかった訳ですか」
「ああ、阿求が来てびっくりしたぞ」
「もう爺ったら・・・・・・ごめんなさいジンさん。こんな事に巻き込んでしまって、後で爺には、きつく言っておきますので」
「いや気にして無い。それに、こうして晴れ着の阿求を拝める事が出来たんだ。役得だよ」
「もう、おだてても何もありませんよ?」
「おだてたつもりは無いんだが・・・・・・」
「まあ、そういう事にしておきます。取り合えず、今日のところはこの辺で――――」
“御開きにしましょう”と言おうとした阿求の言葉をを遮るように、ジンが言う。
「どうせなら、少しお茶でもしないか? こっちはそのつもりで来たわけなんだし」
「え? でも・・・・・・」
「もしかして、このあと用事でもあるのか?」
「いえ、そういう訳では無いんですけど・・・その、迷惑では?」
「迷惑じゃない。それに爺さんから、“その人の息抜きになるように”とも言われているからな」
「・・・・・・まったく、爺ったら、余計な気遣いを」
「そう言ってやるな。あの人はあの人なりに、阿求の事を思ってやっているんだから」
「ええ、それはわかってますよ。だからこそ、あの人を側に置いているんですから」
その言葉に、阿求は爺に対して信頼を寄せていると、ジンは感じ取った。
前世の二人の関係に興味があったが、それは野暮だとジンは思い、あえて触れないでおく事にした。
その後二人は、のんびりとお茶を飲んでいた。ふと、阿求がジンにこんな事を聞いてきた。
「ところでジンさん、つかぬことをお聞きしますが、好みの女性はどんな方ですか?」
「ん? いきなりどうした?」
「いえ、ただお茶をするだけというのも味気ないので、どうせならお見合いごっこをしてみませんか?」
「まあ、阿求が良いなら、俺は別に構わないが」
「それでは改めて、ジンさんの好みの女性はどんな方ですか?」
「うーんそうだなぁ・・・・・・やっぱり、一緒にいて楽しい人かな」
「一緒にいて楽しい人ですか・・・・・・」
「ああ、やっぱり伴侶にするならそういう人が良いな」
「そうなんですか・・・・・・」
「そういう阿求は? どんな男性が好みなんだ?」
「私ですか? そうですね・・・・・・」
阿求は少し考えてから、ジンの質問に答えた。
「私はやっぱり、子供をちゃんと可愛がってくれる人ですね。じゃないと、安心して子供を託せないですから」
「そっか・・・そうだよな。やっぱり子供を大切にするのが、親の勤めだもんな」
「ええ。私は長くは生きられませんから」
阿求のその言葉を聞いて、ジンは少し表情を暗くしてまう。それを見て阿求は、微笑んで言った。
「そんな顔をしないで下さい。私は自分の境遇を悲観していません。それに、まだ死ぬと決まった訳じゃないんですから」」
「え?」
「御阿礼の子は短命ですが、その原因は未だ不明なんです。だからそれを究明出来れば、延命の可能性があるんですよ。
仮に失敗したとしても、私は転生するだけですから」
「・・・・・・そんな悲しい事を言うなよ。身近な人が死ぬ事は、人間にとって一番辛いんだ」
「ジンさん・・・・・・」
それを聞いて、阿求は半年以上前の事を思い出す。知人の易者が死んだ時、ジンは誰よりも悲しんだ。そしてその易者が、妖怪として復活し霊夢に退治された事件の後も、彼の墓参りに絶えず行っている事も知っていた。
ジンという人物は、あまりにも優しすぎる人だと、阿求はそう感じた。
「何だか湿っぽくなってしまったな。別の話をしよう」
「ええ、そうですね・・・・・・」
二人は暗い空気を変えるべく、話題を変える事にした。
「そう言えばジンさん、胸の小さい女性はどう思います?」
「え?」
「胸の小さい女性ですよ。やっぱりジンさんも、胸の小さい女性より、大きい女性の方が好みなんですか?」
少し迫力を増した阿求の問いに、ジンは圧されながら答えた。
「お、俺はどちらかと言うと、控えめの方が好みだが・・・・・・」
「本当ですか?」
「嘘じゃないって、どうしてそんな事を聞くんだ?」
そう訪ねると、阿求は少し恥ずかしそうに答え始める。
「その・・・・・・私の転生する体は決まって、胸の発育が良くないんです。だから、その・・・胸に関してコンプレックスがあるんです」
それは転生を繰り返す御阿礼の子らの最大のコンプレックスであった。そんな彼女に、ジンはこう言った。
「別にそんな気にしなくても良いと思うが・・・そもそも、胸が女性のすべての魅力って訳じゃないだろ。胸が小さくても、魅力的な女性はいると思うが」
「・・・・・・その言葉、爺にも聞かせて欲しいわ」
阿求はため息をつきながら紅茶を飲み、談笑を続けた。
二人が談笑しているその時、天井裏からその爺が、二人の様子を見ていた。
(九代目が楽しそうでなによりじゃが、もう少し刺激が欲しいのう)
そう思った爺は、懐から玩具の毛虫を取り出す。
(すまんのう九代目、これもそなたとジンをくっつける為なんじゃ)
そしてその玩具の毛虫を、阿求の着物の中に落とした。
「―――――それでですね・・・キャア!?」
「ど、どうした?」
「き、着物に何か入って・・・ヒャア!?」
阿求が動けば動く程、彼女の着物に入った玩具の毛虫は動き回る。阿求は堪らず着物を脱ぎ始める。
「お、おい阿求! なんで着物を脱ぐんだ!?」
「が、我慢出来ないんです! 何かが着物の中でモゾモゾ動くんです!」
「それなら動くな! 俺が取る。木獸!」
ジンは木獸を喚び寄せ、阿求の中に入った何か(玩具の毛虫)の軌跡を見極めた。
「そこだ!」
木獸が持つ触手が阿求の着物隙間に入り込み、それを瞬時に捕まえ、外に放り出した。
「け、毛虫!?」
「いや、これはよく似た玩具だな。犯人は・・・そこだ!」
ジンはすかさず、木獸で天井を攻撃する。しかし、天井裏は既に藻抜けの空であった。
「ったく、逃げ足の早い爺さんだな」
「え?」
「爺さんが、天井裏に潜んでいたんだよ。しかもそこで、この玩具を阿求の着物に落としたんだ」
「な、何でそんな事を?」
「それは本人に聞いてくれ。それよりもその・・・着物を着直した方が良いじゃないか?」
「え?・・・って、キャア!?」
阿求はようやくそこで、自分の姿に気づく。あちらこちらで着物が乱れ、肌が僅かに露出している事に。
「む、向こう向いてください!」
「わ、わかった。早いとこ直してくれ」
ジンは阿求に言われた通り、向こうを向いてくれた。阿求は顔を真っ赤にしながら、着物を着直し始めた。
(う~、恥ずかしい・・・爺め! 後で絶対に殴ってやる!)
そう心に誓う阿求であった。
こうして、トラブルに合いながらも、二人のお見合いはこうして終わりを迎えた
―――――――――――
翌日。阿求がいつも通りに幻想郷縁起を編集をしていると、大きなたんこぶを頭に持った爺が、またしても大量の書状を持ってやって来た。
「九代目、お見合いの書状が来ておりますぞ」
「・・・・・・今なら、輝夜姫の気持ちが充分理解出来る気がするわ」
「それでしたら今度、お茶に誘ってはいかがかな?」
「やめておくわ。向こうの従者が迷惑するもの」
「おや、それは残念じゃのう・・・・・・」
爺は至極残念そうに、阿求に書状を手渡すが、彼女はそれを見ず、机の横に置いた。
「おや? 見ないのですか?」
「なんか、そんな気にならないのよね・・・・・・」
「もしや、あの若造の事が気に入りましたかの? それでしたら、婚姻の書状を―――――」
「待って爺、私は彼と婚姻するつもりは無いわ」
「おや? 気に入りませんでしたか?」
「気に入らないって訳じゃないんだけど、横恋慕をするのが気が引けるのよ・・・・・・」
「そうかのう? 阿礼の子は、代々寿命が短い。それぐらいのわがままは許されると思うのじゃが?」
「倫理的にはどうなのよ? それに、生まれて来る子供の事を考えると、そういう事をしたくないの」
「儂としては、おなごの一人や二人どんと来いなんじゃが・・・・・・」
「それは貴方みたいな好色家だけよ。まっ、そういう男性は大抵はろくな最後にならないけど」
「それは甲斐性なしのろくでなしの場合じゃ、あやつは違うじゃろ」
「だからこそ、私のわがままで、あの人を振り回していけないと思うのよ。これは私と稗田家の問題だから」
「九代目・・・・・・」
「そんな顔をしないで、時間はまだあるもの。きっと、ジンさんみたいな素敵な人と巡り会うわ」
そう微笑みながら、阿求は幻想郷縁起を書き記し続けるのであった。