東方軌跡録   作:1103

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今回は結構前にあった、たけちゃんさんのリクエストです。
期待通りに書けたかどうかわかりませんが、楽しんで貰えると幸いです。



霊夢の誕生日会

段々と陽気になっていく三月の頭。ジンは遊びに来ていた魔理沙の相手をしていた。

 

「へ? 霊夢の誕生日が今月なのか?」

 

「確かそうだった筈だが・・・・・・お前知らなかったのか?」

 

「ああ、今初めて知った。何で教えてくれなかったんだ?」

 

「単に忘れているだけじゃないか?」

 

それはそれでどうなんだと思ったジンであったが、それよりも霊夢の誕生日をどうするかの方が大事であった。

 

「よし、今年は盛大にやろう。魔理沙、力を貸してくれないか?」

 

「何だかおもしろそうだな。その話乗った!」

 

こうしてジンは、霊夢の為のサプライズパーティをしようと決意した。

 

―――――――――――

 

母屋では、ジン、魔理沙、、妖狐、針妙丸、正邪、サニー、ルナ、スターが集まっていた。

 

「――――というわけで、霊夢の為のサプライズパーティをやろうと思う」

 

「サプライズって、相手にびっくりさせる事よね?」

「ああ。サニー達は以前から霊夢を驚かそうと思っていただろ? 絶好のチャンスだと思うが?」

 

「怒られないかな?」

 

「今回のは霊夢を喜ばすのが目的だから、大丈夫だと思うぞ」

 

「よーし、それならはりきってやるわよー!」

 

サニー達は、普段以上にやる気を見せていた。余程霊夢を驚かせたかったようである。

 

「でっ? 何で私まで呼ばれたんだ? 私には関係ないぞ」

 

正邪はやる気無さそうにしていた。そんな正邪に、ジンはこう言った。

 

「別に、お前は何もしなくても良い。ただ、余計な事を霊夢に言わなければな」

 

「はっ? 一体どういう――――」

 

「そい!」

 

正邪の隙をついて、ジンは彼女にマスクを装着させる。

 

「おい! 何だよこれ!?」

 

「寡黙のマスクだ。装着させた者に、特定の話をさせないようにするマジックアイテムだ」

 

「何で私がそんなの着けなきゃいけないんだ!?」

 

「だってお前、霊夢にこの事を言いふらして、俺達のサプライズパーティーを台無しにする魂胆があるだろ?」

 

「・・・・・・そ、そんな事しないよ」

 

「なら、目を見て話せ」

 

「ぐっ・・・・・・」

 

「まあ取り合えず。そんな訳だから、みんな頼んだぞ」

 

こうしてジン達は、霊夢にサプライズパーティーを企画するのであった。

 

―――――――――――

 

段々と春に近づいた幻想郷。そんなある日、霊夢が今日の仕事を終えて帰ろうとした時の事である。

 

「今日のは簡単だったわね、何かお土産ども買って帰ろうかしら」

 

そんな事を思いながら、市場へと向かう霊夢。そこでジンを見かけた。

 

「ん? ジンじゃない。おー―――!?」

 

そこで霊夢は言葉を止めて、思わず隠れた。何故なら、ジンの隣に魔理沙がいたのである。

 

(な、な、何で!?)

 

霊夢は激しく動揺し、無意識に二人の後をつけて行った。

 

 

ジンが違和感に気づいたのはその時である。誰かの視線を感じ、能力を使ってみると、霊夢がこちらをつけている事がわかった。

 

「・・・・・・不味いな」

 

「どうした?」

 

「霊夢につけられている」

 

「ありゃ、見られたのか。どうする?」

 

「取り合えず、霊夢を引き付けておくから、準備の方を頼む」

 

「任せておくんだぜ」

 

そう言って、二人は別々の場所に別れた。ジンは霊夢がこっちに来ると予想していたのだが、その予想は大きく外れてしまった。

 

(あれ? こっちに来てない。もしかして、魔理沙の方に行ってしまったか?)

 

ジンは直ぐ様引き返し、霊夢の軌跡を追った。

 

 

一方霊夢は、ジンの予想通り、魔理沙の後を追っていた。

 

(今の別れかたわざとらしかった。多分尾行に気づいていたんでしょうけど、普段のジンだったら、絶対に声を掛ける筈なのに・・・これは怪しいわ)

 

怪しいと踏んだ霊夢は、魔理沙の方に何か秘密があると考え、彼女の後を追っていた。しかし、その追跡は直ぐに終わりを迎えてしまった。

 

「何をやっているんだ霊夢?」

 

「ひゃあ!? って、ジン?」

 

そこには先程魔理沙と別れた筈のジンが立っていた。しかも急いで来たかのようで、少し息を切らした。

 

「な、何って、あんたこそ何をしてたのよ?」

 

「え?」

 

「魔理沙と一緒にいるのを見たんだから」

 

「・・・・・・べ、別に一緒にいても良いじゃないか」

 

「そんでもって隠し事をしているし」

 

「な、何を根拠に――――」

 

「魔理沙と一緒にいた理由を話さないじゃない。いつもなら最初に話す筈だし、さっきの時もそう。私がつけているのを知っているのに、わざと気づかないふりして、魔理沙から注意を逸らせようとしたじゃない」

 

(うわぁ・・・見透かされている・・・・・・)

 

霊夢の驚異の洞察力というべきか、勘の鋭さというべきか、彼女に隠し事が出来ないと思ったジンであった。

 

(でも、だからといって、話すわけにはいかないよな。みんな頑張っている訳だし)

 

ジンはそう思い、サプライズパーティーの準備をしている事を絶対に言わない事を決意する。

 

「悪いけど霊夢、今は何も言えない」

 

それが精一杯の返答であった。もちろん、それで納得出来る筈もなかった。

 

「・・・・・・それで私が納得出来ると思うの?」

 

「思わない、でも言えないんだ」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもだ」

 

「・・・・・・わかった。もう何も聞かないわ」

 

そう言って、霊夢はその場を後にした。その後ろ姿は、何処か悲しそうだと、ジンは感じた。

 

―――――――――――

 

次の日、霊夢は部屋でだらけていた。昨日の一件でやる気がまったく出ず、朝から自堕落に布団にうずくまっていた。

 

(そりゃ別にジンとは付き合ってい訳じゃないけど、何で私に対して隠し事するのかな・・・・・・)

 

そんな事を思いながら、ふて寝をする霊夢。そんな彼女の元に、正邪がやって来た。

 

「元気無さそうだな霊夢」

 

「・・・・・・あんたは愉快そうなマスクを着けているわね」

 

「ジンの野郎に着けられたんだよ。なあ、どうにか出来ないか?」

 

「んっ」

 

すると霊夢は、正邪のマスクに触れる。すると何事も無く外れた。

 

「はあ、ようやく外れた」

 

「何でこんな物を着けられたのよ?」

 

「そりゃ、霊夢に告げ口されないようにだよ」

 

「私に?」

 

「私知っているんだぜ、ジン達が霊夢に内緒で何をしているか。知りたいか?」

 

正邪の悪魔のような誘惑に、霊夢は思わず頷いてしまった。それを見た正邪は、ニヤリと笑った。

 

「もちろん教えてやっても良いんだが、条件がある」

 

「条件? 言っておくけど、仲間になれっていう話だったら、問答無用に退治するわよ」

 

「そ、そんな事しないって、ただある甘味処の菓子を奢ってく欲しいだけだ」

 

「・・・・・・本当にそれだけ?」

 

「本当だって! それとも何か? 知りたく無いのか?」

 

「・・・・・・知りたいけど」

 

「なら決まりだ。早速行こうな」

 

「ちょ、ちょっと! 先に着替えさせてよ!」

 

正邪に急かされながら、霊夢は仕度をし、正邪と共に人里に向かった。

 

―――――――――――

 

人里のある高級甘味店、そこで正邪は高級菓子を美味しそうに食べていた。

 

「美味い! やっぱ菓子は高級に限るな~♪」

 

「ちょっとあんた食べ過ぎよ! いくらすると思っているのよ!?」

 

「あれ? 知りたく無いのか? ジンを何を隠しているのか?」

 

「うっ・・・・・・」

 

「すいませーん、御代わり追加で♪」

 

正邪はここぞとばかりに、高級菓子を頼み、それを食べ続けた。彼女が満足する頃には、霊夢の財布がすっからかんになっていた。

 

「今月分のお小遣いが・・・・・・とほほ」

 

「あー、食った食った♪」

 

「満足したでしょ? さあ教えなさい。ジンが何を隠しているか」

 

「良いよ、実はジンは――――」

 

正邪は霊夢に、彼女の為のサプライズパーティーの準備をしている事を暴露しようとしたその時、二人はとんでもない現場を見てしまう。

 

「うそ・・・・・・」

 

「え? マジ?」

 

それはジンが、魔理沙にプレゼントを渡している場面であった。端から見れば、恋人に贈り物をしているように見えた。

 

「っ――――」

 

「あ、おい!?」

 

霊夢はその場を走り去って行ってしまった。残された正邪は、突然の事に戸惑うばかりであった。

 

(えーと・・・この場合どうすれば良いんだろう・・・・・・?)

 

当初の目的は、霊夢にサプライズパーティーの事を暴露し、ジンに対して嫌がらせをしようとしたのだが、何だか逆に霊夢の方にダメージがいってしまったのである。

どうするか悩んでいると、ジンと魔理沙が声を掛けて来た。

 

「おっ、正邪じゃないか、こんな所で何をしているんだ?」

 

「って、マスクはどうした? あれは確か一週間は外れない筈だ」

 

「マスクの事はどうでもいい。それよりもジン、お前こそ何をしているんだよ?」

 

「何って?」

 

「霊夢のプレゼントを選んでいたんじゃないのか? 何で魔理沙にプレゼントを買っているんだよ?」

 

「それは誤解だ。魔理沙に渡したのは、プレゼント選びに協力した御礼だ。他意は無い」

 

「あっ、そうなの・・・・・・」

 

考えてみれば当たり前の話であった。ジンは義理堅い男なのだから、協力者にはちゃんと礼をするのは当然の事である。

 

「だがなぁ、タイミングが完全に悪かったな。今の、霊夢に見られたぞ」

 

「・・・・・・マジか」

 

「あらら」

 

ジンは事の重要さに、頭を抱えてしまう。

 

―――――――――――

 

霊夢は人気の無い所で泣いていた。何故泣いているのか、自分でも分からなかった。ただ、信じていた人に裏切れた、そんな感覚に陥っていた。

 

「なによ・・・・・・何が今は言えないよ。結局は・・・・・・」

 

そんな彼女の元に、一人の人物がやって来た。それはジンであった。霊夢は振り向かず、彼に対して敵意を持って言った。

 

「・・・・・・何しに来たのよ?」

 

「・・・・・・誤解を解きに」

 

「誤解? 誤解ってなによ?」

 

「さっき正邪から聞いた。魔理沙と一緒にいた所をまた見たんだろ?」

 

「ええ見たわよ。それもプレゼントを贈っているところを」

 

「霊夢、俺は――――」

 

「聞きたくない! あんたの言い訳なんて聞きたくない!」

 

そう言って、霊夢は耳を塞いだ。ジンはそれで悟った、彼女に喜んで貰おうと思った行動が、些細な不運で傷をつけてしまった事に。

 

「・・・・・・霊夢」

 

「本当は私なんかより、魔理沙の方が良かったんでしょ! だから私に隠れて、魔理沙と逢い引きなんかして――――」

 

「それは違う!」

 

「何が違うのよ!? 何で私に嘘をつくの!? 何で私に隠し事をするのよ!」

 

「・・・・・・誕生日」

 

「え?」

 

「もうすぐ誕生日だろ? だからその準備をしていたんだ」

 

そう言って、霊夢にかんざしを手渡すジン。そのかんざしは精巧に作られている物で、素人の霊夢の目から見ても、高級品だと思う程の物であった。

 

「こ、これって、かなり高い物じゃ・・・・・・」

 

「奮発したんだ。もっとも魔理沙は、“指輪にしろ”なんて言ってたけど」

 

「え?」

 

「魔理沙には、霊夢のプレゼント選びに協力してもらっていたんだ。そしてさっき渡したのは、協力してくれたお礼なんだ」

 

「そ、それじゃあ、全部私の――――」

 

勘違い。そう思った霊夢は、赤面した。

 

(うわぁ・・・・・・もう死にたい・・・・・・)

 

赤っ恥をかいたと思う霊夢であったが、ジンはそんな霊夢に頭を下げた。

 

「ごめん霊夢。本当は驚かすつもりだったんだが、それが逆に傷つけてしまった。本当にごめん」

 

「な、何を謝ってるのよ。こっちこそ、信じてやれなくて・・・・・・ごめんなさい」

 

そう言って、霊夢もジンに頭を下げた。

何とも言えない空気の中、ジンはおもむろに口を開く。

 

「えっと・・・・・・早いけど、誕生日おめでとう霊夢」

 

「・・・・・・あ、ありがとう」

 

霊夢は照れくさそうに、そう答えた。

 

―――――――――――

 

誕生日当日。予定外の事もあったが、霊夢の誕生日パーティーは予定通り行われていた。しかし、サニー達はとても不機嫌であった。

 

「機嫌直してくれよ三人とも」

 

「直せる分けないじゃない! こっちはずっと楽しみにしてたのに!」

 

「自分で言っておいて、バラすなんて、酷いわジン!」

 

「そうよそうよ! せっかく霊夢さんを驚かすチャンスだったのに!」

 

「わ、悪かったって、今度埋め合わせするから」

 

「本当?」

 

「ああ、本当だ」

 

「それじゃあ、今度悪戯する時は、手伝って貰うわよ♪」

 

「うっ」

 

「はははは! こりゃ面白い物が見られそうだな針妙丸!」

 

「もう、正邪飲み過ぎだよ・・・・・・」

 

「はい霊夢さん、どうぞ」

 

「ありがとう妖狐」

 

「今日は霊夢さんが主役なんですから、楽しんでくださいね」

 

「うん、とっても楽しんでいるわ」

 

そう言って、妖狐が注いでくれたお酒を飲む霊夢。そんな中、ジンは彼女にある疑問を尋ねた。

 

「ところで、何で誕生日の事を黙っていたんだ? 教えてくれれば、毎年祝ってやったのに」

 

「別に黙っていた訳じゃないけど、自分から言うのも引けたし、何より忘れてた」

 

「おいおい・・・・・・魔理沙が覚えていて、何で自分は忘れているんだ?」

 

「仕方ないじゃない。頻繁に宴会をやってたりすると、感覚が少しおかしくなるのよ。あっ、そう言えば・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「一年に一回、必ず決まった日に宴会をする時があるのよ。そう言えば今日が――――」

 

「今日がその宴会の日よ霊夢」

 

「「「「「うわぁ!?」」」」」

 

突然現れた紫に、全員が驚いた。

 

「ちょっと紫! いきなり現れて来ないでよ!」

 

「別にいいじゃない、私と貴女の仲でしょ♪」

 

「はあ・・・・・・今日は一体何のようなの?」

 

「今日はいつものように、皆で貴女を祝いに来たのよ」

 

「皆?」

 

「外を見てご覧なさい」

 

紫に言われて、境内の方を見てみると、そこにはいつも宴会に来ている妖怪達が、楽しそうに宴会をしていた。

 

「こ、これは・・・・・・」

 

「貴女は宴会だと思っていたようだけど、毎年決まったこの日に必ず宴会をするのは、本当は貴女の誕生日を祝う為なのよ」

 

「え!? そうだったの!?」

 

「でもこれじゃ、誕生日パーティーというより、ただの宴会だよな」

 

「そうとも言うわ。結局皆、バカ騒ぎがしたいのよ」

 

「おーい霊夢ー! そんな所にいないで、こっちに来て飲めよー!」

 

妖怪に交じって、宴会を楽しんでいた魔理沙が、手を振りながら霊夢を呼んでいた。

戸惑う霊夢に、ジンは背中を叩いた。

 

「行って来いよ」

 

「え?」

 

「この宴会は恐らく紫のプレゼントだ。なら、楽しまないと失礼だろ?」

 

「・・・・・・それもそうね。よーし! 今日はとことん飲むぞー!」

 

「「「「おー!」」」」

 

霊夢達は走るように、宴会の輪に入って行った。その様子を眺めながら、ジンは紫に尋ねた。

 

「ところで紫、一ついいか?」

 

「何かしら?」

 

「何で誕生日会を宴会という形にしたんだ?」

 

「それはね・・・・・・霊夢が恥ずかしがらないようによ」

 

「霊夢が?」

 

「あの子は意地っ張りな所があるから、普通に誕生日パーティーなんか開いたら、照れ隠しして怒るのよ。だから宴会という形で、今まで祝って上げてたのよ。

まあそのせいで、自分の誕生日を忘れかけていたみたいだけどね」

 

「確かな、頻繁に宴会をやってたりしているからな。感覚が麻痺するのは仕方ないな」

 

「でもこれからは、別の形で祝おうかしら」

 

そう言って、紫は宴会を楽しむ霊夢を見つめた。その眼差しは、我が子を見守る母親のように思えた。

こうして霊夢は、無事誕生日を迎えた。

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