期待通りに書けたかどうかわかりませんが、楽しんで貰えると幸いです。
段々と陽気になっていく三月の頭。ジンは遊びに来ていた魔理沙の相手をしていた。
「へ? 霊夢の誕生日が今月なのか?」
「確かそうだった筈だが・・・・・・お前知らなかったのか?」
「ああ、今初めて知った。何で教えてくれなかったんだ?」
「単に忘れているだけじゃないか?」
それはそれでどうなんだと思ったジンであったが、それよりも霊夢の誕生日をどうするかの方が大事であった。
「よし、今年は盛大にやろう。魔理沙、力を貸してくれないか?」
「何だかおもしろそうだな。その話乗った!」
こうしてジンは、霊夢の為のサプライズパーティをしようと決意した。
―――――――――――
母屋では、ジン、魔理沙、、妖狐、針妙丸、正邪、サニー、ルナ、スターが集まっていた。
「――――というわけで、霊夢の為のサプライズパーティをやろうと思う」
「サプライズって、相手にびっくりさせる事よね?」
「ああ。サニー達は以前から霊夢を驚かそうと思っていただろ? 絶好のチャンスだと思うが?」
「怒られないかな?」
「今回のは霊夢を喜ばすのが目的だから、大丈夫だと思うぞ」
「よーし、それならはりきってやるわよー!」
サニー達は、普段以上にやる気を見せていた。余程霊夢を驚かせたかったようである。
「でっ? 何で私まで呼ばれたんだ? 私には関係ないぞ」
正邪はやる気無さそうにしていた。そんな正邪に、ジンはこう言った。
「別に、お前は何もしなくても良い。ただ、余計な事を霊夢に言わなければな」
「はっ? 一体どういう――――」
「そい!」
正邪の隙をついて、ジンは彼女にマスクを装着させる。
「おい! 何だよこれ!?」
「寡黙のマスクだ。装着させた者に、特定の話をさせないようにするマジックアイテムだ」
「何で私がそんなの着けなきゃいけないんだ!?」
「だってお前、霊夢にこの事を言いふらして、俺達のサプライズパーティーを台無しにする魂胆があるだろ?」
「・・・・・・そ、そんな事しないよ」
「なら、目を見て話せ」
「ぐっ・・・・・・」
「まあ取り合えず。そんな訳だから、みんな頼んだぞ」
こうしてジン達は、霊夢にサプライズパーティーを企画するのであった。
―――――――――――
段々と春に近づいた幻想郷。そんなある日、霊夢が今日の仕事を終えて帰ろうとした時の事である。
「今日のは簡単だったわね、何かお土産ども買って帰ろうかしら」
そんな事を思いながら、市場へと向かう霊夢。そこでジンを見かけた。
「ん? ジンじゃない。おー―――!?」
そこで霊夢は言葉を止めて、思わず隠れた。何故なら、ジンの隣に魔理沙がいたのである。
(な、な、何で!?)
霊夢は激しく動揺し、無意識に二人の後をつけて行った。
ジンが違和感に気づいたのはその時である。誰かの視線を感じ、能力を使ってみると、霊夢がこちらをつけている事がわかった。
「・・・・・・不味いな」
「どうした?」
「霊夢につけられている」
「ありゃ、見られたのか。どうする?」
「取り合えず、霊夢を引き付けておくから、準備の方を頼む」
「任せておくんだぜ」
そう言って、二人は別々の場所に別れた。ジンは霊夢がこっちに来ると予想していたのだが、その予想は大きく外れてしまった。
(あれ? こっちに来てない。もしかして、魔理沙の方に行ってしまったか?)
ジンは直ぐ様引き返し、霊夢の軌跡を追った。
一方霊夢は、ジンの予想通り、魔理沙の後を追っていた。
(今の別れかたわざとらしかった。多分尾行に気づいていたんでしょうけど、普段のジンだったら、絶対に声を掛ける筈なのに・・・これは怪しいわ)
怪しいと踏んだ霊夢は、魔理沙の方に何か秘密があると考え、彼女の後を追っていた。しかし、その追跡は直ぐに終わりを迎えてしまった。
「何をやっているんだ霊夢?」
「ひゃあ!? って、ジン?」
そこには先程魔理沙と別れた筈のジンが立っていた。しかも急いで来たかのようで、少し息を切らした。
「な、何って、あんたこそ何をしてたのよ?」
「え?」
「魔理沙と一緒にいるのを見たんだから」
「・・・・・・べ、別に一緒にいても良いじゃないか」
「そんでもって隠し事をしているし」
「な、何を根拠に――――」
「魔理沙と一緒にいた理由を話さないじゃない。いつもなら最初に話す筈だし、さっきの時もそう。私がつけているのを知っているのに、わざと気づかないふりして、魔理沙から注意を逸らせようとしたじゃない」
(うわぁ・・・見透かされている・・・・・・)
霊夢の驚異の洞察力というべきか、勘の鋭さというべきか、彼女に隠し事が出来ないと思ったジンであった。
(でも、だからといって、話すわけにはいかないよな。みんな頑張っている訳だし)
ジンはそう思い、サプライズパーティーの準備をしている事を絶対に言わない事を決意する。
「悪いけど霊夢、今は何も言えない」
それが精一杯の返答であった。もちろん、それで納得出来る筈もなかった。
「・・・・・・それで私が納得出来ると思うの?」
「思わない、でも言えないんだ」
「どうしても?」
「どうしてもだ」
「・・・・・・わかった。もう何も聞かないわ」
そう言って、霊夢はその場を後にした。その後ろ姿は、何処か悲しそうだと、ジンは感じた。
―――――――――――
次の日、霊夢は部屋でだらけていた。昨日の一件でやる気がまったく出ず、朝から自堕落に布団にうずくまっていた。
(そりゃ別にジンとは付き合ってい訳じゃないけど、何で私に対して隠し事するのかな・・・・・・)
そんな事を思いながら、ふて寝をする霊夢。そんな彼女の元に、正邪がやって来た。
「元気無さそうだな霊夢」
「・・・・・・あんたは愉快そうなマスクを着けているわね」
「ジンの野郎に着けられたんだよ。なあ、どうにか出来ないか?」
「んっ」
すると霊夢は、正邪のマスクに触れる。すると何事も無く外れた。
「はあ、ようやく外れた」
「何でこんな物を着けられたのよ?」
「そりゃ、霊夢に告げ口されないようにだよ」
「私に?」
「私知っているんだぜ、ジン達が霊夢に内緒で何をしているか。知りたいか?」
正邪の悪魔のような誘惑に、霊夢は思わず頷いてしまった。それを見た正邪は、ニヤリと笑った。
「もちろん教えてやっても良いんだが、条件がある」
「条件? 言っておくけど、仲間になれっていう話だったら、問答無用に退治するわよ」
「そ、そんな事しないって、ただある甘味処の菓子を奢ってく欲しいだけだ」
「・・・・・・本当にそれだけ?」
「本当だって! それとも何か? 知りたく無いのか?」
「・・・・・・知りたいけど」
「なら決まりだ。早速行こうな」
「ちょ、ちょっと! 先に着替えさせてよ!」
正邪に急かされながら、霊夢は仕度をし、正邪と共に人里に向かった。
―――――――――――
人里のある高級甘味店、そこで正邪は高級菓子を美味しそうに食べていた。
「美味い! やっぱ菓子は高級に限るな~♪」
「ちょっとあんた食べ過ぎよ! いくらすると思っているのよ!?」
「あれ? 知りたく無いのか? ジンを何を隠しているのか?」
「うっ・・・・・・」
「すいませーん、御代わり追加で♪」
正邪はここぞとばかりに、高級菓子を頼み、それを食べ続けた。彼女が満足する頃には、霊夢の財布がすっからかんになっていた。
「今月分のお小遣いが・・・・・・とほほ」
「あー、食った食った♪」
「満足したでしょ? さあ教えなさい。ジンが何を隠しているか」
「良いよ、実はジンは――――」
正邪は霊夢に、彼女の為のサプライズパーティーの準備をしている事を暴露しようとしたその時、二人はとんでもない現場を見てしまう。
「うそ・・・・・・」
「え? マジ?」
それはジンが、魔理沙にプレゼントを渡している場面であった。端から見れば、恋人に贈り物をしているように見えた。
「っ――――」
「あ、おい!?」
霊夢はその場を走り去って行ってしまった。残された正邪は、突然の事に戸惑うばかりであった。
(えーと・・・この場合どうすれば良いんだろう・・・・・・?)
当初の目的は、霊夢にサプライズパーティーの事を暴露し、ジンに対して嫌がらせをしようとしたのだが、何だか逆に霊夢の方にダメージがいってしまったのである。
どうするか悩んでいると、ジンと魔理沙が声を掛けて来た。
「おっ、正邪じゃないか、こんな所で何をしているんだ?」
「って、マスクはどうした? あれは確か一週間は外れない筈だ」
「マスクの事はどうでもいい。それよりもジン、お前こそ何をしているんだよ?」
「何って?」
「霊夢のプレゼントを選んでいたんじゃないのか? 何で魔理沙にプレゼントを買っているんだよ?」
「それは誤解だ。魔理沙に渡したのは、プレゼント選びに協力した御礼だ。他意は無い」
「あっ、そうなの・・・・・・」
考えてみれば当たり前の話であった。ジンは義理堅い男なのだから、協力者にはちゃんと礼をするのは当然の事である。
「だがなぁ、タイミングが完全に悪かったな。今の、霊夢に見られたぞ」
「・・・・・・マジか」
「あらら」
ジンは事の重要さに、頭を抱えてしまう。
―――――――――――
霊夢は人気の無い所で泣いていた。何故泣いているのか、自分でも分からなかった。ただ、信じていた人に裏切れた、そんな感覚に陥っていた。
「なによ・・・・・・何が今は言えないよ。結局は・・・・・・」
そんな彼女の元に、一人の人物がやって来た。それはジンであった。霊夢は振り向かず、彼に対して敵意を持って言った。
「・・・・・・何しに来たのよ?」
「・・・・・・誤解を解きに」
「誤解? 誤解ってなによ?」
「さっき正邪から聞いた。魔理沙と一緒にいた所をまた見たんだろ?」
「ええ見たわよ。それもプレゼントを贈っているところを」
「霊夢、俺は――――」
「聞きたくない! あんたの言い訳なんて聞きたくない!」
そう言って、霊夢は耳を塞いだ。ジンはそれで悟った、彼女に喜んで貰おうと思った行動が、些細な不運で傷をつけてしまった事に。
「・・・・・・霊夢」
「本当は私なんかより、魔理沙の方が良かったんでしょ! だから私に隠れて、魔理沙と逢い引きなんかして――――」
「それは違う!」
「何が違うのよ!? 何で私に嘘をつくの!? 何で私に隠し事をするのよ!」
「・・・・・・誕生日」
「え?」
「もうすぐ誕生日だろ? だからその準備をしていたんだ」
そう言って、霊夢にかんざしを手渡すジン。そのかんざしは精巧に作られている物で、素人の霊夢の目から見ても、高級品だと思う程の物であった。
「こ、これって、かなり高い物じゃ・・・・・・」
「奮発したんだ。もっとも魔理沙は、“指輪にしろ”なんて言ってたけど」
「え?」
「魔理沙には、霊夢のプレゼント選びに協力してもらっていたんだ。そしてさっき渡したのは、協力してくれたお礼なんだ」
「そ、それじゃあ、全部私の――――」
勘違い。そう思った霊夢は、赤面した。
(うわぁ・・・・・・もう死にたい・・・・・・)
赤っ恥をかいたと思う霊夢であったが、ジンはそんな霊夢に頭を下げた。
「ごめん霊夢。本当は驚かすつもりだったんだが、それが逆に傷つけてしまった。本当にごめん」
「な、何を謝ってるのよ。こっちこそ、信じてやれなくて・・・・・・ごめんなさい」
そう言って、霊夢もジンに頭を下げた。
何とも言えない空気の中、ジンはおもむろに口を開く。
「えっと・・・・・・早いけど、誕生日おめでとう霊夢」
「・・・・・・あ、ありがとう」
霊夢は照れくさそうに、そう答えた。
―――――――――――
誕生日当日。予定外の事もあったが、霊夢の誕生日パーティーは予定通り行われていた。しかし、サニー達はとても不機嫌であった。
「機嫌直してくれよ三人とも」
「直せる分けないじゃない! こっちはずっと楽しみにしてたのに!」
「自分で言っておいて、バラすなんて、酷いわジン!」
「そうよそうよ! せっかく霊夢さんを驚かすチャンスだったのに!」
「わ、悪かったって、今度埋め合わせするから」
「本当?」
「ああ、本当だ」
「それじゃあ、今度悪戯する時は、手伝って貰うわよ♪」
「うっ」
「はははは! こりゃ面白い物が見られそうだな針妙丸!」
「もう、正邪飲み過ぎだよ・・・・・・」
「はい霊夢さん、どうぞ」
「ありがとう妖狐」
「今日は霊夢さんが主役なんですから、楽しんでくださいね」
「うん、とっても楽しんでいるわ」
そう言って、妖狐が注いでくれたお酒を飲む霊夢。そんな中、ジンは彼女にある疑問を尋ねた。
「ところで、何で誕生日の事を黙っていたんだ? 教えてくれれば、毎年祝ってやったのに」
「別に黙っていた訳じゃないけど、自分から言うのも引けたし、何より忘れてた」
「おいおい・・・・・・魔理沙が覚えていて、何で自分は忘れているんだ?」
「仕方ないじゃない。頻繁に宴会をやってたりすると、感覚が少しおかしくなるのよ。あっ、そう言えば・・・・・・」
「どうした?」
「一年に一回、必ず決まった日に宴会をする時があるのよ。そう言えば今日が――――」
「今日がその宴会の日よ霊夢」
「「「「「うわぁ!?」」」」」
突然現れた紫に、全員が驚いた。
「ちょっと紫! いきなり現れて来ないでよ!」
「別にいいじゃない、私と貴女の仲でしょ♪」
「はあ・・・・・・今日は一体何のようなの?」
「今日はいつものように、皆で貴女を祝いに来たのよ」
「皆?」
「外を見てご覧なさい」
紫に言われて、境内の方を見てみると、そこにはいつも宴会に来ている妖怪達が、楽しそうに宴会をしていた。
「こ、これは・・・・・・」
「貴女は宴会だと思っていたようだけど、毎年決まったこの日に必ず宴会をするのは、本当は貴女の誕生日を祝う為なのよ」
「え!? そうだったの!?」
「でもこれじゃ、誕生日パーティーというより、ただの宴会だよな」
「そうとも言うわ。結局皆、バカ騒ぎがしたいのよ」
「おーい霊夢ー! そんな所にいないで、こっちに来て飲めよー!」
妖怪に交じって、宴会を楽しんでいた魔理沙が、手を振りながら霊夢を呼んでいた。
戸惑う霊夢に、ジンは背中を叩いた。
「行って来いよ」
「え?」
「この宴会は恐らく紫のプレゼントだ。なら、楽しまないと失礼だろ?」
「・・・・・・それもそうね。よーし! 今日はとことん飲むぞー!」
「「「「おー!」」」」
霊夢達は走るように、宴会の輪に入って行った。その様子を眺めながら、ジンは紫に尋ねた。
「ところで紫、一ついいか?」
「何かしら?」
「何で誕生日会を宴会という形にしたんだ?」
「それはね・・・・・・霊夢が恥ずかしがらないようによ」
「霊夢が?」
「あの子は意地っ張りな所があるから、普通に誕生日パーティーなんか開いたら、照れ隠しして怒るのよ。だから宴会という形で、今まで祝って上げてたのよ。
まあそのせいで、自分の誕生日を忘れかけていたみたいだけどね」
「確かな、頻繁に宴会をやってたりしているからな。感覚が麻痺するのは仕方ないな」
「でもこれからは、別の形で祝おうかしら」
そう言って、紫は宴会を楽しむ霊夢を見つめた。その眼差しは、我が子を見守る母親のように思えた。
こうして霊夢は、無事誕生日を迎えた。