夜道の中ジンは、気絶している妖夢をおぶり、鈴仙、輝夜、てゐの三人と共に歩いていた。
「まったく、悪趣味にも程があるぞ輝夜!」
「えー、良いアイディアだと思ったんだけどなー」
「確かに着眼点は良いと思うが、下手すればトラウマ物だぞ」
「別に、腕が無いとか、目が飛び出ているぐらいどうって事無いでしょ?」
「お前の感性がおかしい!」
そう、輝夜は自身の不死の特性を利用し、世にもおぞましい姿でオバケ役をやっていたのだ。
当然、耐性の低い妖夢は即気絶。
鈴仙は気絶しなかったものの、先程の光景のせいでずっとジンの側に張り付いている始末である。
これは不味いと判断したジンは、早急にオバケ役を止めさせた。
「妹紅と殺りあっている時は、しょっちゅう何だけど?」
「だからって、あれは駄目だろう・・・・・。
ともかく、今回は諦めてくれ」
「むー、分かったわよ」
「あの輝夜様を説き伏せるとは・・・・・ジンって、意外と凄い奴?」
「大袈裟だぞてゐ。
輝夜は横暴に見えても、聡明な人だ。ちゃんと話せば分かってくれる」
(それは無いかな・・・・・)
(それは無いね・・・・・)
てゐと鈴仙は心の中で密かに呟いた。
それから歩いて行くと、突然輝夜が地面に座り込んだ。
「どうしました姫様?」
「・・・・・疲れた」
「え?」
「もー疲れた、歩きたくない」
「ゴールまで後少しなんだ。頑張れよ」
「やだ、歩きたくない」
「ああ、始まっちゃった。姫様の何時もの悪い癖が・・・・・」
「やれやれ・・・・・どうしたら良いんだ?」
「ジンが私をおぶれば、万事解決よ」
「ちょっと輝夜様、流石に我儘では・・・・・」
「だったら鈴仙がおぶれば良いじゃない」
「わ、私がですが?」
「てぬは小さいから無理でしょ?
ジンも駄目なら、鈴仙しかいないじゃない」
「うっ・・・・・それは・・・・・」
「頑張れ鈴仙。私は応援するぞ」
「他人事だと思って・・・・・」
「おい二人とも、あまり鈴仙を困らせるな」
「何よ、ジンはいっつも鈴仙の味方ばっかするよね」
「たまにはこっちの味方をしろー」
「はあ・・・・・仕方ない。おい、妖夢。そろそろ起きろ」
そうしてジンは、背で寝ている妖夢を揺らし、起こす事にした。
「んっ・・・・・あれ・・・・・?」
「起きたか妖夢?」
「ジンさん・・・・・? って、わわわわわ!?」
妖夢はジンにおぶられている事に気がつくと、慌てて降りた。
「す、すすすすみません!」
「気絶してたんだ、気にするな」
「で、ですが――――あれ? 輝夜さんにてゐ? どうして此処に?」
「ジンにオバケ役を止めさせられてね。
他にやる事も無いから、ジンに同行しているのよ」
「右に同じ」
「そうなんですか・・・・・あれ? 何か忘れているような・・・・・?」
「妖夢、中には忘れたままでいた方が幸せな事だってある」
「そうね・・・・・あれは忘れていた方が身のためよ」
「???」
「さて、妖夢も起きた事だし。輝夜、少し失礼するぞ」
「え? キャア!?」
ジンは座っている輝夜に対して、お姫様抱っこで抱えた。
「ちょ、ちょっとジン!?」
「ん? どうした?」
「どうした? じゃないわよ! 何をしているのよ!」
「先におぶれって言ったのはそっちだろ?」
「だからって、やり方はあるでしょう!
何でお姫様抱っこなんか―――」
「お前は輝夜姫だろ? なら、お姫様抱っこするのが妥当じゃないのか?」
「そ、それはそうなんだけど・・・・・・・・」
(おお! 姫様があんな表情をするとは!)
(・・・・・良いな)
(な、なんて大胆な・・・・・)
てゐ、鈴仙、妖夢の視線を受け、輝夜は羞恥心を感じ始め、無理矢理ジンから降りた。
「もう抱っこは良いわよ馬鹿ジン!
行くわよてゐ!」
「アイアイサー」
怒った輝夜はてゐを連れて、さっさと先に進んで行ってしまった。
「やれやれ・・・・・本当に我が儘なお姫様だな」
「追い掛けなくてよろしいんですか?」
「必要無いだろう。
これに懲りて、少しは我が儘言わなくなれば良いんだが・・・・・」
「もしかして・・・・・わざとやったの?」
「当たり前だろ。
そうでも無ければ、あんなキザな真似なんかしない」
「「・・・・・・・・」」
「どうした二人とも?」
「何でもないです」
「何でもない」
「そうか、それなら先に進もう」
こうして三人は、先に進むのであった。
それから暫く歩いて行くと、ようやく輝夜達に追い付いた。
しかし、何やらサニー達と話していた。
「どうしたんだ? 揉め事か?」
「あ、ジン。ちょうど良かった。
この子達が何か言っているんだけど、イマイチ要領得なくて・・・・・」
「あ! ジンだ!」
ジンの姿を見たサニー達は、彼に駆け寄った。
「どうしたんだお前ら? そんな血相を変えて?」
「出たのよ!」
「出た?」
「オバケよ! オバケよ!」
「あのな、オバケ役が出るのは当たり前だろ」
「違うの! 本物のオバケが出たの!」
「本物のオバケ?」
「そうなのよ!
岩を退かしたら、そこから大量のオバケが出たのよ!」
「た、大量のオバケ・・・・・きゅう~」
「あ! 妖夢が気絶した!」
「またか・・・・・それにしても、大量のオバケか・・・・・」
「どうするのジン?」
「ほっとく訳にはいかないだろ。
輝夜達は霊夢を呼んで来てくれないか? アイツは此処にいる筈だから」
そう言ってジンは、地図を刺した。
「ジンは?」
「俺は様子をうかがう」
「え!? 危なくないよ!」
「遠くから様子を見るだけだ。
危なくなったら逃げるから」
「それなら私も行くわ。
一人よりマシでしょ?」
「だったら私も行くよ。
こういう時こそ、私の能力が生きるからね」
「分かった。それじゃ、鈴仙とてゐは、俺とついて来てくれ。
輝夜とサニー達は霊夢を呼んでくれ」
「わかったわ」
「ところで、妖夢さんはどうするの?」
「・・・・・置いていく訳には行かないからな。
仕方ない、俺がおぶって行く。
「それじゃ行って来るわ。三人とも、気を付けて」
「輝夜もな」
こうして輝夜達と別れたジン達は、サニーが目撃した場所に向かうのであった。
サニー達がオバケを目撃した場所に到着するが、大量の幽霊が徘徊している以外、特におかしい所がなかった。
「もしかして、サニー達が見たオバケは幽霊の事か?」
「まあ、妖精だからね。あり得なくはないね」
「でも、ここって墓地からかなり離れているわよ。
墓地でも無いのにこの数は異常よね」
「ふむ、どうやらこの岩に引き寄せられているみたいだ」
「この岩に?」
「呪いの岩だったりして・・・・・」
「呪いか・・・・・迂闊に触らない方が良いな」
「そうでも無いですよ」
すると、いつの間にか起きたのか、妖夢はジンにそう言った。
「起きたのか」
「はい、度々すみません・・・・・よっと」
妖夢はジンの背中から降りると、何時もの調子で説明し始めた。
「これは墓石の一種ですね。
それで、幽霊達が集まっているんですよ」
「墓石って、ここから墓地はかなり離れているぞ?」
「誰かが置いたんじゃない?」
「誰かって・・・・・誰だよ?」
「そんなの分かるわけ無いでしょ」
「こんな時こそ、ジンの能力を使えば良いんじゃない」
「そうだったな。それじゃ――――」
ジンは能力を使い、墓石を犯人の姿を視る。
そこには魔理沙の姿がハッキリと映っていた。
(魔理沙の奴め・・・・・一体何をしているんだ?)
しばらく視ていると、彼女の行動の理由が分かってくる。
「・・・・・なるほど、そういう訳か」
「何か分かったの?」
「ここを掘り起こせば分かる。手伝ってくれ」
「わ、わかりました」
ジンの言う通りに、柳の木下を掘り起こす。
すると西瓜が幾つも埋められていた。
「西瓜? どうしてこんなところに?」
「魔理沙の奴が埋めたんだ。
理由は知らないが、恐らく西瓜を冷やすために墓石を此処に置いたようだ」
「なるほど、幽霊が集まる墓石を利用したのね」
「また幽霊をオモチャに・・・・・」
「それで、この西瓜どうするの?」
「持って行った方が良いだろう。
魔理沙の事だ。肝試しが終わったら、皆に振る舞うつもりだろうしな」
「それにしても、結構な数ね・・・・・」
「確かに四人じゃ持ち切れないが、もうすぐ霊夢達が来るだろうし、大丈夫だろ。
お、噂をすれば」
ジンの視線の先には、輝夜達とオバケ衣装を来た霊夢の姿があった。
「ジン! 大丈夫なの!?」
「そんなに心配するな。俺は大丈夫だ」
「心配させるような事をするからでしょ!
それで、オバケは何処よ?」
「それはだな――――」
ジンはこれまでの経緯を霊夢達に話始めた。
「なるほどね。要は、サニー達の早とちりって訳ね」
「だ、だって、いきなり現れて出て来るんだからビックリしちゃって・・・・・」
「オバケ役が驚いてどうするのよ」
「まあまあ、いきなり大量の幽霊が現れれば、誰だって驚くだろ。
それよりも、運ぶのを手伝ってくれ」
「わかったわよ。ほら、あんた達も運ぶ」
「「「はーい」」」
「え? 私も?」
「当たり前でしょ。お姫様だろうと何だろうが、関係無いわ」
「えー・・・・・鈴仙~」
「鈴仙に頼るな。たまには自分でやる事も大切だぞ」
「だって・・・・・」
「嫌なら別に良いが、その代わりお前の分は無いぞ?」
「わかったわよ! 運べば良いんでしょ! 運べば!」
輝夜は少し膨れながら、西瓜を持ち始めた。
こうしてジン達は、西瓜をゴールの里まで持って行くのであった。
―――――――――――
肝試しは無事終わり、皆で魔理沙が用意した西瓜を食べていた。
「いやー、西瓜を埋めていた事をスッカリ忘れてたぜ」
「そんな事だろうと思った。
ところで、あんな数の西瓜は一体どうしたんだ?」
「ああ、幽香がくれたんだ」
「幽香が?」
「何でも、西瓜の処理に困っていたみたいでな。
快く譲ってくれたぜ」
「ふーん・・・・・幽香らしいと言えばらしいわね・・・・・」
「何はともあれ、無事に終わって良かった」
「そうね・・・・・あ、花火」
夏の夜空に、美しい撃ち上げ花火が上がる。
こうして、愽麗肝試しは終わりを告げるのであった。
これで肝試し編は終わりです。
ややオチが弱かったので、今後の課題にしたいと思います。