東方軌跡録   作:1103

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愽麗肝試し 後編

夜道の中ジンは、気絶している妖夢をおぶり、鈴仙、輝夜、てゐの三人と共に歩いていた。

 

「まったく、悪趣味にも程があるぞ輝夜!」

 

「えー、良いアイディアだと思ったんだけどなー」

 

「確かに着眼点は良いと思うが、下手すればトラウマ物だぞ」

 

「別に、腕が無いとか、目が飛び出ているぐらいどうって事無いでしょ?」

 

「お前の感性がおかしい!」

 

そう、輝夜は自身の不死の特性を利用し、世にもおぞましい姿でオバケ役をやっていたのだ。

当然、耐性の低い妖夢は即気絶。

鈴仙は気絶しなかったものの、先程の光景のせいでずっとジンの側に張り付いている始末である。

これは不味いと判断したジンは、早急にオバケ役を止めさせた。

 

「妹紅と殺りあっている時は、しょっちゅう何だけど?」

 

「だからって、あれは駄目だろう・・・・・。

ともかく、今回は諦めてくれ」

 

「むー、分かったわよ」

 

「あの輝夜様を説き伏せるとは・・・・・ジンって、意外と凄い奴?」

 

「大袈裟だぞてゐ。

輝夜は横暴に見えても、聡明な人だ。ちゃんと話せば分かってくれる」

 

(それは無いかな・・・・・)

(それは無いね・・・・・)

 

てゐと鈴仙は心の中で密かに呟いた。

 

 

それから歩いて行くと、突然輝夜が地面に座り込んだ。

 

「どうしました姫様?」

 

「・・・・・疲れた」

 

「え?」

 

「もー疲れた、歩きたくない」

 

「ゴールまで後少しなんだ。頑張れよ」

 

「やだ、歩きたくない」

 

「ああ、始まっちゃった。姫様の何時もの悪い癖が・・・・・」

 

「やれやれ・・・・・どうしたら良いんだ?」

 

「ジンが私をおぶれば、万事解決よ」

 

「ちょっと輝夜様、流石に我儘では・・・・・」

 

「だったら鈴仙がおぶれば良いじゃない」

 

「わ、私がですが?」

 

「てぬは小さいから無理でしょ?

ジンも駄目なら、鈴仙しかいないじゃない」

 

「うっ・・・・・それは・・・・・」

 

「頑張れ鈴仙。私は応援するぞ」

 

「他人事だと思って・・・・・」

 

「おい二人とも、あまり鈴仙を困らせるな」

 

「何よ、ジンはいっつも鈴仙の味方ばっかするよね」

 

「たまにはこっちの味方をしろー」

 

「はあ・・・・・仕方ない。おい、妖夢。そろそろ起きろ」

 

そうしてジンは、背で寝ている妖夢を揺らし、起こす事にした。

 

「んっ・・・・・あれ・・・・・?」

 

「起きたか妖夢?」

 

「ジンさん・・・・・? って、わわわわわ!?」

 

妖夢はジンにおぶられている事に気がつくと、慌てて降りた。

 

「す、すすすすみません!」

 

「気絶してたんだ、気にするな」

 

「で、ですが――――あれ? 輝夜さんにてゐ? どうして此処に?」

 

「ジンにオバケ役を止めさせられてね。

他にやる事も無いから、ジンに同行しているのよ」

 

「右に同じ」

 

「そうなんですか・・・・・あれ? 何か忘れているような・・・・・?」

 

「妖夢、中には忘れたままでいた方が幸せな事だってある」

 

「そうね・・・・・あれは忘れていた方が身のためよ」

 

「???」

 

「さて、妖夢も起きた事だし。輝夜、少し失礼するぞ」

 

「え? キャア!?」

 

ジンは座っている輝夜に対して、お姫様抱っこで抱えた。

 

「ちょ、ちょっとジン!?」

 

「ん? どうした?」

 

「どうした? じゃないわよ! 何をしているのよ!」

 

「先におぶれって言ったのはそっちだろ?」

 

「だからって、やり方はあるでしょう!

何でお姫様抱っこなんか―――」

 

「お前は輝夜姫だろ? なら、お姫様抱っこするのが妥当じゃないのか?」

 

「そ、それはそうなんだけど・・・・・・・・」

 

(おお! 姫様があんな表情をするとは!)

 

(・・・・・良いな)

 

(な、なんて大胆な・・・・・)

 

てゐ、鈴仙、妖夢の視線を受け、輝夜は羞恥心を感じ始め、無理矢理ジンから降りた。

 

「もう抱っこは良いわよ馬鹿ジン!

行くわよてゐ!」

 

「アイアイサー」

 

怒った輝夜はてゐを連れて、さっさと先に進んで行ってしまった。

 

「やれやれ・・・・・本当に我が儘なお姫様だな」

 

「追い掛けなくてよろしいんですか?」

 

「必要無いだろう。

これに懲りて、少しは我が儘言わなくなれば良いんだが・・・・・」

 

「もしかして・・・・・わざとやったの?」

 

「当たり前だろ。

そうでも無ければ、あんなキザな真似なんかしない」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「どうした二人とも?」

 

「何でもないです」

「何でもない」

 

「そうか、それなら先に進もう」

 

こうして三人は、先に進むのであった。

 

 

それから暫く歩いて行くと、ようやく輝夜達に追い付いた。

しかし、何やらサニー達と話していた。

 

「どうしたんだ? 揉め事か?」

 

「あ、ジン。ちょうど良かった。

この子達が何か言っているんだけど、イマイチ要領得なくて・・・・・」

 

「あ! ジンだ!」

 

ジンの姿を見たサニー達は、彼に駆け寄った。

 

「どうしたんだお前ら? そんな血相を変えて?」

 

「出たのよ!」

 

「出た?」

 

「オバケよ! オバケよ!」

 

「あのな、オバケ役が出るのは当たり前だろ」

 

「違うの! 本物のオバケが出たの!」

 

「本物のオバケ?」

 

「そうなのよ!

岩を退かしたら、そこから大量のオバケが出たのよ!」

 

「た、大量のオバケ・・・・・きゅう~」

 

「あ! 妖夢が気絶した!」

 

「またか・・・・・それにしても、大量のオバケか・・・・・」

 

「どうするのジン?」

 

「ほっとく訳にはいかないだろ。

輝夜達は霊夢を呼んで来てくれないか? アイツは此処にいる筈だから」

 

そう言ってジンは、地図を刺した。

 

「ジンは?」

 

「俺は様子をうかがう」

 

「え!? 危なくないよ!」

 

「遠くから様子を見るだけだ。

危なくなったら逃げるから」

 

「それなら私も行くわ。

一人よりマシでしょ?」

 

「だったら私も行くよ。

こういう時こそ、私の能力が生きるからね」

 

「分かった。それじゃ、鈴仙とてゐは、俺とついて来てくれ。

輝夜とサニー達は霊夢を呼んでくれ」

 

「わかったわ」

 

「ところで、妖夢さんはどうするの?」

 

「・・・・・置いていく訳には行かないからな。

仕方ない、俺がおぶって行く。

 

「それじゃ行って来るわ。三人とも、気を付けて」

 

「輝夜もな」

 

こうして輝夜達と別れたジン達は、サニーが目撃した場所に向かうのであった。

 

 

サニー達がオバケを目撃した場所に到着するが、大量の幽霊が徘徊している以外、特におかしい所がなかった。

 

「もしかして、サニー達が見たオバケは幽霊の事か?」

 

「まあ、妖精だからね。あり得なくはないね」

 

「でも、ここって墓地からかなり離れているわよ。

墓地でも無いのにこの数は異常よね」

 

「ふむ、どうやらこの岩に引き寄せられているみたいだ」

 

「この岩に?」

 

「呪いの岩だったりして・・・・・」

 

「呪いか・・・・・迂闊に触らない方が良いな」

 

「そうでも無いですよ」

 

すると、いつの間にか起きたのか、妖夢はジンにそう言った。

 

「起きたのか」

 

「はい、度々すみません・・・・・よっと」

 

妖夢はジンの背中から降りると、何時もの調子で説明し始めた。

 

「これは墓石の一種ですね。

それで、幽霊達が集まっているんですよ」

 

「墓石って、ここから墓地はかなり離れているぞ?」

 

「誰かが置いたんじゃない?」

 

「誰かって・・・・・誰だよ?」

 

「そんなの分かるわけ無いでしょ」

 

「こんな時こそ、ジンの能力を使えば良いんじゃない」

 

「そうだったな。それじゃ――――」

 

ジンは能力を使い、墓石を犯人の姿を視る。

そこには魔理沙の姿がハッキリと映っていた。

 

(魔理沙の奴め・・・・・一体何をしているんだ?)

 

しばらく視ていると、彼女の行動の理由が分かってくる。

 

「・・・・・なるほど、そういう訳か」

 

「何か分かったの?」

 

「ここを掘り起こせば分かる。手伝ってくれ」

 

「わ、わかりました」

 

ジンの言う通りに、柳の木下を掘り起こす。

すると西瓜が幾つも埋められていた。

 

「西瓜? どうしてこんなところに?」

 

「魔理沙の奴が埋めたんだ。

理由は知らないが、恐らく西瓜を冷やすために墓石を此処に置いたようだ」

 

「なるほど、幽霊が集まる墓石を利用したのね」

 

「また幽霊をオモチャに・・・・・」

 

「それで、この西瓜どうするの?」

 

「持って行った方が良いだろう。

魔理沙の事だ。肝試しが終わったら、皆に振る舞うつもりだろうしな」

 

「それにしても、結構な数ね・・・・・」

 

「確かに四人じゃ持ち切れないが、もうすぐ霊夢達が来るだろうし、大丈夫だろ。

お、噂をすれば」

 

ジンの視線の先には、輝夜達とオバケ衣装を来た霊夢の姿があった。

 

「ジン! 大丈夫なの!?」

 

「そんなに心配するな。俺は大丈夫だ」

 

「心配させるような事をするからでしょ!

それで、オバケは何処よ?」

 

「それはだな――――」

 

ジンはこれまでの経緯を霊夢達に話始めた。

 

「なるほどね。要は、サニー達の早とちりって訳ね」

 

「だ、だって、いきなり現れて出て来るんだからビックリしちゃって・・・・・」

 

「オバケ役が驚いてどうするのよ」

 

「まあまあ、いきなり大量の幽霊が現れれば、誰だって驚くだろ。

それよりも、運ぶのを手伝ってくれ」

 

「わかったわよ。ほら、あんた達も運ぶ」

 

「「「はーい」」」

 

「え? 私も?」

 

「当たり前でしょ。お姫様だろうと何だろうが、関係無いわ」

 

「えー・・・・・鈴仙~」

 

「鈴仙に頼るな。たまには自分でやる事も大切だぞ」

 

「だって・・・・・」

 

「嫌なら別に良いが、その代わりお前の分は無いぞ?」

 

「わかったわよ! 運べば良いんでしょ! 運べば!」

 

輝夜は少し膨れながら、西瓜を持ち始めた。

こうしてジン達は、西瓜をゴールの里まで持って行くのであった。

 

―――――――――――

 

肝試しは無事終わり、皆で魔理沙が用意した西瓜を食べていた。

 

「いやー、西瓜を埋めていた事をスッカリ忘れてたぜ」

 

「そんな事だろうと思った。

ところで、あんな数の西瓜は一体どうしたんだ?」

 

「ああ、幽香がくれたんだ」

 

「幽香が?」

 

「何でも、西瓜の処理に困っていたみたいでな。

快く譲ってくれたぜ」

 

「ふーん・・・・・幽香らしいと言えばらしいわね・・・・・」

 

「何はともあれ、無事に終わって良かった」

 

「そうね・・・・・あ、花火」

 

夏の夜空に、美しい撃ち上げ花火が上がる。

こうして、愽麗肝試しは終わりを告げるのであった。




これで肝試し編は終わりです。
ややオチが弱かったので、今後の課題にしたいと思います。
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