東方軌跡録   作:1103

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今回は自警団の話しです。この自警団は、旧作の警察という立ち位置にしましたので、あの旧作キャラを出しました。
あと、自警団の設定は独自と妄想で作りました。


自警団二十四時

人里には、自警団と呼ばれる組織が存在する。自警団の主な活動内容は、人里の治安とそこに住んでいる人を守る事である。

今回の話は、その自警団の話である。

 

―――――――――――

 

人里にある屯所、そこが自警団の本部であった。そこでいつもの朝礼会議が行われていた。

 

「――――以上で私の話は終わりです。他に何か質問は? 無ければこのまま朝の巡回を行います」

 

そう言って、仕切っているのは小兎姫と呼ばれる女性である。

自警団の長を勤めているだけに、それなりに優秀な退魔師でもある。

 

「それじゃ、巡回に行きましょう。明羅、貴女は私と一緒にね」

 

「心得た」

 

そう言って明羅は立ち上がり、小兎姫と共に里の巡回に行くのであった。

 

―――――――――――

 

「それにしても、いきなり帰って来るからびっくりしたわ」

 

巡回中に、小兎姫が明羅に向かってそう言う。それに対して明羅もまた、仏頂面で答える。

 

「まあ色々あってな。今日からまた、自警団として精を出すつもりだ」

 

「あら、博麗の巫女に挑戦しないの?」

 

「もうした。結果は散々だったがな。ところで、その格好はなんだ?」

 

彼女はお姫様の様な和服を着ているが、別に良家の令嬢ではなく、ただの退魔師である。何故そのような格好をしているかというと――――。

 

「これは一般人に扮する為の変装よ」

 

「一般・・・・・・人に?」

 

「ええそうよ」

 

「いやいやいや、逆に目立ち過ぎるではないか?」

 

「そんな事は無いわよ。現にほら、誰も気に止めていないでしょ?」

 

そう言う小兎姫だったが行きゆく人々は、小兎姫と明羅をチラリと見ていた。

 

「いや、どう見ても目立っている様だが・・・・・・」

 

「そうねぇ・・・今日は明羅がいるからかしら?」

 

「絶対に違う」

 

そんな他愛の無い話をしながら、二人は人里を歩き回る。そんな時だった。

 

「むっ」

 

「ん? どうした小兎姫?」

 

「放火魔を見つけたわ」

 

そう言った小兎姫の視線の先には、布都がいた。彼女はキョロキョロしながら、歩いていた。

 

「彼女が?」

 

「ええ、未だに未遂だけど、何度か命蓮寺に火をつけようとした事があったの。一応、自警団の要注意人物の一人としてマークしているわ」

 

「なんとも物騒な人物が幻想入りしたものだな・・・・・・」

 

「あっ、何処かに行くみたいね。後をつけるわよ」

 

こうして二人は、布都の後をこっそりと追跡し始めた。

 

―――――――――――

 

布都の後を追って、命蓮寺に到着した小兎姫と明羅。物影からじっと布都を見ていると、彼女は命蓮寺を見ながらボソッと呟く。

 

「・・・・・・よし、焼こう」

 

その言葉と共に、小兎姫は動き出した。

 

「捕縛!“罪状の捕縛縄”!」

 

小兎姫はスペルカードを発動させ、布都を拘束した。いきなりの事に、布都はなすすべなく捕まった。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「物部布都! 貴女を放火未遂で逮捕するわ!」

 

「なっ! 我はそのような事はしておらぬ!」

 

「いや、さっき寺を見ながら“よし、焼こう”と言っていなかったか?」

 

「寺を焼こうとして何が悪い?」

 

「・・・・・・はぁ」

 

悪びれもせずにそう言い放つ布都に、明羅は頭を抱え、溜め息をついた。

 

「それは自白として受け取って良いのか?」

 

「自白? 何の事じゃ?」

 

「詳しい話は屯所で聞きます。さあ来なさい!」

 

「な、何故じゃ~!?」

 

布都は未だに、自分が捕まった理由がわからず、そのまま小兎姫に連行されるのであった。

その後布都は、身元引き受け人の神子によって無事解放されるのだが、彼女にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。

 

―――――――――――

 

小兎姫と明羅は巡回を再開し、再び人里内を歩き回る。すると今度は、要注意人物のてゐと遭遇する。

 

「むっ、あれは詐欺兎!」

 

「げっ! 変人女!」

 

「誰が変人よ!」

 

「あんた以外にいないと思うけど? 連れの人はどう思う?」

 

「私か? うーん・・・まあ、変わり者ではあると思うがな」

 

「ちょっと明羅! 貴女までなんて言うのよ! ともかく、ここであったが百年目! 今日こそお縄につきなさーい!」

 

「やなこった」

 

そう言って、てゐは走り出した。その後を直ぐ様追い掛ける小兎姫と明羅であったが、追っている最中に梯子が倒れて来たり、馬車が横断したりと、不運な事が重なり、結局取り逃がしてしまった。

 

「また逃げられた!」

 

「うーん・・・何だか不運が重なっている気がする。これがあの兎の能力か?」

 

「ええそうよ、彼女は幸運を操る能力を持っているわ。だから逃げる際に、自身に幸運を集めていたんだと思うわ」

 

「それが本当なら、捕まえられないんじゃ・・・・・・」

 

「いーえ、絶対に捕まえて、これまで犯した罪を償わせてやるんだから!」

 

「余程、あの妖怪兎を目の敵にしているのだな?」

 

「当然じゃない。彼女は私の大切な物を奪っていったのよ・・・・・・」

 

「大切な物? それは一体―――――」

 

明羅がそう尋ねると、彼女は重い口を開く。

 

「それは・・・・・・私がこつこつ貯めた貯金よ!」

 

「・・・・・・は?」

 

「アイツは、幸運グッズと偽り、私に高額で売りつけて大切な貯金を奪っていったのよ! 酷いと思わない!?」

 

実際はてゐの話術にはまり、まんまと買わされてしまったのが真実である。

 

「ま、まあ・・・・・・」

 

「今度見つけたら、絶対に返品してお金を取り戻すんだから!」

 

そう決意する小兎姫だったが、実は幸運グッズの効果は確かな物で、ただ単に効果時間が極端に短いだけなのである。

そうとも知らない小兎姫は、騙されたと思い込み、てゐを捕まえようと決意を固めるのであった。

 

―――――――――――

 

ていを逃がした後も、小兎姫と明羅は巡回を続けた。そして再び、要注意妖怪と出会う。

 

「むむっ、あれは!」

 

小兎姫が見つけたのは正邪であった。彼女は店の前で辺りを見回していた。

 

「鬼人正邪か、確か要注意リストに入っていたな」

 

「ええ、彼女もまた悪事を働く妖怪よ。しかも狡猾で、迂闊に捕まえようとするとこちらが酷い目に合うわ」

 

そう言って、小兎姫は昔の事を思い出す。

その昔、正邪が万引きをしている所を見て、彼女を捕まえるのだが、肝心な万引きした品を見つけられず、仕方なく解放したという屈辱的な過去あったのである。

 

「今度こそ、証拠を掴んで捕まえてやるわ!」

 

再び決意を燃やす小兎姫。その時、正邪が店の品を手に取り、ポケットに入れる仕草をし、立ち去ろうとした。

 

「今よ!」

 

そう叫びながら、小兎姫は正邪に向かって縄を放つ。

 

「捕縛! “罪状の縄”!」

 

すると縄は瞬く間に正邪を拘束する。

 

「おわぁ!? 何だ一体!?」

 

「捕まえたわよ天邪鬼! 今日こそ、貴女を牢屋に入れてやるわ!」

 

「なんだまたお前か、言い掛かりも程々にしろよ」

 

「言い掛かりでは無いわ。貴女がポケットにしまった所をちゃんと見て――――」

 

そう言って、正邪のポケットをまさぐる小兎姫だったが、何故か万引きした品物がなかった。

 

「あ、あれ?」

 

「ほれ見ろ、私は万引きなんかしてないだろ?」

 

「そ、そんな筈は・・・・・・」

 

「ああ、確かに万引きした所は私も見た」

 

「でも実際は無い。なら、私は万引きしていないって事だよ。あーはっはっはっ!」

 

勝ち誇るように笑う正邪。しかし、彼女は背後から近づいて来る人影に気づかなかった。

 

「こいつが物を取る時は、いつも隠しポケットに入れるんだよ」

 

そう言って、正邪の隠しポケットから品を取り出す人影はジンであった。

 

「あっ! てめぇいつの間に!」

 

正邪は直ぐ様後ろを振り返り、ジンを睨み付ける。一方ジンは、やれやれと溜め息を漏らす。

 

「お前なぁ、こんなしょうも無い事をするな。金持っているんだろ?」

 

「へん、全部反逆資金にしてるから、使う金なんて無い」

 

「はあっ・・・どうやら少し頭を冷やした方が良いようだな。二人とも、こいつを連れて行って良いぞ」

 

「なぁ!? おい見捨てるのか!」

 

「見捨てるも何も、今回はお前が悪い。少しは牢屋で反省していろ。じゃあな」

 

「薄情ものー!」

 

正邪の叫びは響くものの、ジンは無情にも去って行ってしまった。その後正邪は、小兎姫と明羅に連行されて行ってしまうのであった。

 

―――――――――――

 

それから巡回は難なく終わり、夜が訪れる。この夜の巡回こそが、自警団の本当の役目である。

明羅と小兎姫は、里の外周を警邏していた。

 

「里の外周は・・・・・・今のところ異常は――――」

 

「いえ、どうやら招かざる客が来たようね」

 

そう言って、札を構える小兎姫。彼女の視線の先には、凶暴な妖の姿があった。

 

「やれやれ、今も昔も、妖は人を襲う物だな」

 

そう呟きながら、明羅は刀を抜く。それと同時に妖達が襲いかかった。

今の幻想郷では、人里の人間に手を出してはいけない決まりが存在する。これは、結界の維持の為に人間の存在が必要不可欠な為である。その為の処置ではあるが、中にはそのルールを破る妖怪も存在する。更には妖――――知性がまったく無い妖怪は、ルールを守る事すら出来ない。その為こうして、時々人里に襲撃を掛けて来るのである。そんな妖から、人々を守るのが自警団の役目である。

 

「せいっ!」

 

「はあっ!」

 

小兎姫が放つ御札で、妖の動きを止め、その隙に明羅が刀で妖達を切り裂く。

妖程度では彼女達の相手は勤まらず、瞬く間に撃退していった。

 

「他愛の無いな。これならその辺の妖怪の方がまだマシだぞ」

 

「そう言わないの。おかげで、里は今でも平和なんだから」

 

「それもそうだな。さて、そろそろ交代の時間だ。戻ろう小兎姫」

 

「ええそうね」

 

こうして二人は、人里に戻っていった。

自警団――――あまり知名度は低いが、彼女達は陰ながら人里を守る守護者である。

今日も人里の平和は、自警団によって守られているだろう。

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