あと、自警団の設定は独自と妄想で作りました。
人里には、自警団と呼ばれる組織が存在する。自警団の主な活動内容は、人里の治安とそこに住んでいる人を守る事である。
今回の話は、その自警団の話である。
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人里にある屯所、そこが自警団の本部であった。そこでいつもの朝礼会議が行われていた。
「――――以上で私の話は終わりです。他に何か質問は? 無ければこのまま朝の巡回を行います」
そう言って、仕切っているのは小兎姫と呼ばれる女性である。
自警団の長を勤めているだけに、それなりに優秀な退魔師でもある。
「それじゃ、巡回に行きましょう。明羅、貴女は私と一緒にね」
「心得た」
そう言って明羅は立ち上がり、小兎姫と共に里の巡回に行くのであった。
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「それにしても、いきなり帰って来るからびっくりしたわ」
巡回中に、小兎姫が明羅に向かってそう言う。それに対して明羅もまた、仏頂面で答える。
「まあ色々あってな。今日からまた、自警団として精を出すつもりだ」
「あら、博麗の巫女に挑戦しないの?」
「もうした。結果は散々だったがな。ところで、その格好はなんだ?」
彼女はお姫様の様な和服を着ているが、別に良家の令嬢ではなく、ただの退魔師である。何故そのような格好をしているかというと――――。
「これは一般人に扮する為の変装よ」
「一般・・・・・・人に?」
「ええそうよ」
「いやいやいや、逆に目立ち過ぎるではないか?」
「そんな事は無いわよ。現にほら、誰も気に止めていないでしょ?」
そう言う小兎姫だったが行きゆく人々は、小兎姫と明羅をチラリと見ていた。
「いや、どう見ても目立っている様だが・・・・・・」
「そうねぇ・・・今日は明羅がいるからかしら?」
「絶対に違う」
そんな他愛の無い話をしながら、二人は人里を歩き回る。そんな時だった。
「むっ」
「ん? どうした小兎姫?」
「放火魔を見つけたわ」
そう言った小兎姫の視線の先には、布都がいた。彼女はキョロキョロしながら、歩いていた。
「彼女が?」
「ええ、未だに未遂だけど、何度か命蓮寺に火をつけようとした事があったの。一応、自警団の要注意人物の一人としてマークしているわ」
「なんとも物騒な人物が幻想入りしたものだな・・・・・・」
「あっ、何処かに行くみたいね。後をつけるわよ」
こうして二人は、布都の後をこっそりと追跡し始めた。
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布都の後を追って、命蓮寺に到着した小兎姫と明羅。物影からじっと布都を見ていると、彼女は命蓮寺を見ながらボソッと呟く。
「・・・・・・よし、焼こう」
その言葉と共に、小兎姫は動き出した。
「捕縛!“罪状の捕縛縄”!」
小兎姫はスペルカードを発動させ、布都を拘束した。いきなりの事に、布都はなすすべなく捕まった。
「な、なんだこれは!?」
「物部布都! 貴女を放火未遂で逮捕するわ!」
「なっ! 我はそのような事はしておらぬ!」
「いや、さっき寺を見ながら“よし、焼こう”と言っていなかったか?」
「寺を焼こうとして何が悪い?」
「・・・・・・はぁ」
悪びれもせずにそう言い放つ布都に、明羅は頭を抱え、溜め息をついた。
「それは自白として受け取って良いのか?」
「自白? 何の事じゃ?」
「詳しい話は屯所で聞きます。さあ来なさい!」
「な、何故じゃ~!?」
布都は未だに、自分が捕まった理由がわからず、そのまま小兎姫に連行されるのであった。
その後布都は、身元引き受け人の神子によって無事解放されるのだが、彼女にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
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小兎姫と明羅は巡回を再開し、再び人里内を歩き回る。すると今度は、要注意人物のてゐと遭遇する。
「むっ、あれは詐欺兎!」
「げっ! 変人女!」
「誰が変人よ!」
「あんた以外にいないと思うけど? 連れの人はどう思う?」
「私か? うーん・・・まあ、変わり者ではあると思うがな」
「ちょっと明羅! 貴女までなんて言うのよ! ともかく、ここであったが百年目! 今日こそお縄につきなさーい!」
「やなこった」
そう言って、てゐは走り出した。その後を直ぐ様追い掛ける小兎姫と明羅であったが、追っている最中に梯子が倒れて来たり、馬車が横断したりと、不運な事が重なり、結局取り逃がしてしまった。
「また逃げられた!」
「うーん・・・何だか不運が重なっている気がする。これがあの兎の能力か?」
「ええそうよ、彼女は幸運を操る能力を持っているわ。だから逃げる際に、自身に幸運を集めていたんだと思うわ」
「それが本当なら、捕まえられないんじゃ・・・・・・」
「いーえ、絶対に捕まえて、これまで犯した罪を償わせてやるんだから!」
「余程、あの妖怪兎を目の敵にしているのだな?」
「当然じゃない。彼女は私の大切な物を奪っていったのよ・・・・・・」
「大切な物? それは一体―――――」
明羅がそう尋ねると、彼女は重い口を開く。
「それは・・・・・・私がこつこつ貯めた貯金よ!」
「・・・・・・は?」
「アイツは、幸運グッズと偽り、私に高額で売りつけて大切な貯金を奪っていったのよ! 酷いと思わない!?」
実際はてゐの話術にはまり、まんまと買わされてしまったのが真実である。
「ま、まあ・・・・・・」
「今度見つけたら、絶対に返品してお金を取り戻すんだから!」
そう決意する小兎姫だったが、実は幸運グッズの効果は確かな物で、ただ単に効果時間が極端に短いだけなのである。
そうとも知らない小兎姫は、騙されたと思い込み、てゐを捕まえようと決意を固めるのであった。
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ていを逃がした後も、小兎姫と明羅は巡回を続けた。そして再び、要注意妖怪と出会う。
「むむっ、あれは!」
小兎姫が見つけたのは正邪であった。彼女は店の前で辺りを見回していた。
「鬼人正邪か、確か要注意リストに入っていたな」
「ええ、彼女もまた悪事を働く妖怪よ。しかも狡猾で、迂闊に捕まえようとするとこちらが酷い目に合うわ」
そう言って、小兎姫は昔の事を思い出す。
その昔、正邪が万引きをしている所を見て、彼女を捕まえるのだが、肝心な万引きした品を見つけられず、仕方なく解放したという屈辱的な過去あったのである。
「今度こそ、証拠を掴んで捕まえてやるわ!」
再び決意を燃やす小兎姫。その時、正邪が店の品を手に取り、ポケットに入れる仕草をし、立ち去ろうとした。
「今よ!」
そう叫びながら、小兎姫は正邪に向かって縄を放つ。
「捕縛! “罪状の縄”!」
すると縄は瞬く間に正邪を拘束する。
「おわぁ!? 何だ一体!?」
「捕まえたわよ天邪鬼! 今日こそ、貴女を牢屋に入れてやるわ!」
「なんだまたお前か、言い掛かりも程々にしろよ」
「言い掛かりでは無いわ。貴女がポケットにしまった所をちゃんと見て――――」
そう言って、正邪のポケットをまさぐる小兎姫だったが、何故か万引きした品物がなかった。
「あ、あれ?」
「ほれ見ろ、私は万引きなんかしてないだろ?」
「そ、そんな筈は・・・・・・」
「ああ、確かに万引きした所は私も見た」
「でも実際は無い。なら、私は万引きしていないって事だよ。あーはっはっはっ!」
勝ち誇るように笑う正邪。しかし、彼女は背後から近づいて来る人影に気づかなかった。
「こいつが物を取る時は、いつも隠しポケットに入れるんだよ」
そう言って、正邪の隠しポケットから品を取り出す人影はジンであった。
「あっ! てめぇいつの間に!」
正邪は直ぐ様後ろを振り返り、ジンを睨み付ける。一方ジンは、やれやれと溜め息を漏らす。
「お前なぁ、こんなしょうも無い事をするな。金持っているんだろ?」
「へん、全部反逆資金にしてるから、使う金なんて無い」
「はあっ・・・どうやら少し頭を冷やした方が良いようだな。二人とも、こいつを連れて行って良いぞ」
「なぁ!? おい見捨てるのか!」
「見捨てるも何も、今回はお前が悪い。少しは牢屋で反省していろ。じゃあな」
「薄情ものー!」
正邪の叫びは響くものの、ジンは無情にも去って行ってしまった。その後正邪は、小兎姫と明羅に連行されて行ってしまうのであった。
―――――――――――
それから巡回は難なく終わり、夜が訪れる。この夜の巡回こそが、自警団の本当の役目である。
明羅と小兎姫は、里の外周を警邏していた。
「里の外周は・・・・・・今のところ異常は――――」
「いえ、どうやら招かざる客が来たようね」
そう言って、札を構える小兎姫。彼女の視線の先には、凶暴な妖の姿があった。
「やれやれ、今も昔も、妖は人を襲う物だな」
そう呟きながら、明羅は刀を抜く。それと同時に妖達が襲いかかった。
今の幻想郷では、人里の人間に手を出してはいけない決まりが存在する。これは、結界の維持の為に人間の存在が必要不可欠な為である。その為の処置ではあるが、中にはそのルールを破る妖怪も存在する。更には妖――――知性がまったく無い妖怪は、ルールを守る事すら出来ない。その為こうして、時々人里に襲撃を掛けて来るのである。そんな妖から、人々を守るのが自警団の役目である。
「せいっ!」
「はあっ!」
小兎姫が放つ御札で、妖の動きを止め、その隙に明羅が刀で妖達を切り裂く。
妖程度では彼女達の相手は勤まらず、瞬く間に撃退していった。
「他愛の無いな。これならその辺の妖怪の方がまだマシだぞ」
「そう言わないの。おかげで、里は今でも平和なんだから」
「それもそうだな。さて、そろそろ交代の時間だ。戻ろう小兎姫」
「ええそうね」
こうして二人は、人里に戻っていった。
自警団――――あまり知名度は低いが、彼女達は陰ながら人里を守る守護者である。
今日も人里の平和は、自警団によって守られているだろう。