東方軌跡録   作:1103

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今回も旧作キャラが出ます。タイトル通り、出るのは旧作キャラにして初代騒霊少女です。

旧作は今では入手が困難ですが、もっと知名度が上がってほしいと思っています。


騒霊少女の演奏会

春が過ぎ去り、もうすぐ夏が近づいて来る幻想郷。そんなある日、珍しくプリズムリバー三姉妹がジンの元に訪れていた。

 

「え? 音楽を教えて欲しい?」

 

「うん、ジンが適任だと思うから」

 

「いや、どう考えても俺が三人に教えられる事なんて――――」

 

「私達じゃなくて、カナっていう同じ騒霊に教えて欲しいの」

 

メルランの話によると、彼女達が暮らしている屋敷に、自分達以外の騒霊――――カナ・アナベラルという少女が最近住み着いたということである。と言っても、住み着いた事に特に問題は無く、普通に仲良く暮らしている。

そんなある日、カナは三人の演奏を聞いて―――。

 

『私も演奏をしてみたい!』

 

そう言ったのである。

 

「それなら、別に俺じゃなくて――――って、何か似たようなやり取りがあったような・・・・・・」

 

「私達の場合は、能力で演奏をしているから、教えるのが非常に難しいのよ。だから、ジンにお願いしたい」

 

そう言って、ルナサは真剣な眼差しでジンを見つめた。するとジンは、こう返事をした。

 

「・・・・・・わかった。出来る限りの事はやってみよう」

困った人を見逃せないジンは、ルナサ達の頼みを引き受けるのであった。

 

―――――――――――

 

ここはプリズムリバー三姉妹の屋敷。その一室で、ジンとカナは対面していた。

 

「今日から俺が、君に音楽を教えるジンだ。よろしくな」

 

「私、カナ・アナベラル。よろしくね♪」

 

「それじゃあ早速だけど、カナは音楽についてどれだけ知っている?」

 

「よくわからないけど、楽器で音を出すんでしょ?」

 

「まあ遠からずだけど、大体合ってはいるな。だけど、音を出すだけじゃない。様々な音を組み合わせて、音色を生み出し、人々を楽しませる。それが音楽だ。試しにやってみるぞ」

 

そう言って、ジンは持って来た数個のハンドベルを駆使し、単純な音色を出して見せた。

 

「凄い凄い! それが音色なんのね!」

 

「ああ、単体だと音にしかならないけど、複数種類の音を組み合わせれば、ベルだけでも音色は生み出せるんだ」

 

「ねぇ、やってみても良い?」

 

「ああ、良いぞ」

 

そう言って、ジンはハンドベルをカナに貸してあげた。カナは楽しそうに、ハンドベルを鳴らす。

 

「結構楽しいね♪」

 

「これで満足するのはまだ早い。次はこれだ」

 

そう言って、ジンが次に出したのは、鍵盤ハーモニカであった。カナは興味津々で、それを眺めた。

 

「それって、リリカのキーボードに似てるね」

 

「まあそうだが、正式には鍵盤ハーモニカと呼ばれる物だ」

 

「ハーモニカって、あのハーモニカ?」

 

「ああそうだ。ハーモニカの演奏が難しいから、それを手軽に出来るように考案された楽器で、とても扱いやすく、初心者うってつけだ。俺も最初に扱ったのが、これなんだ」

 

 

「そうなんだ。それじゃあ頑張れば、ルナサ達見たいな音色を出せるようになる?」

 

「それはカナの頑張り次第だ。頑張れば、皆と一緒に演奏が出来るかもしれないな」

 

「本当!? 私頑張る!」

 

カナはとてもやる気をみせ、鍵盤ハーモニカの練習を始めた。

 

―――――――――――

 

それから数週間が過ぎ去った。ジンの指導のもと、カナは上達していき、簡単な物なら演奏が出来るようになっていた。

 

「よし、上手くなったなカナ」

 

「えへへ♪」

 

ジンに誉められた事に、カナは嬉しそうに微笑む。そんな彼女に、ジンはある提案を出した。

 

「なあカナ、今度発表会をしてみないか?」

 

「発表会?」

 

「そうだ。ルナサ達と演奏をしたいのなら、人前でも演奏が出来るようにならないとな」

 

それは決して、避けては通れない課題であった。

演奏だけなら誰でも出来る。しかし、人前で演奏をするというプレッシャーに勝てなければ、本当の演奏者にはなれないのである。

 

「無理にとは言わない、自信が無ければ次の機会に――――」

 

「私やる! 発表会やってみたい!」

 

カナは迷いを一切みせず、無邪気な声でそう言った。

カナの言葉を真摯に受け止めたジンは―――――。

 

「わかった。それじゃ二人で頑張って、発表会を成功させような」

 

「うん!」

 

こうして二人は、発表会に向けてひたすら練習をするのであった。

 

―――――――――――

 

それからカナは、発表会に向けてひたすら練習をした。ジンも、彼女の指導をしながらも、発表会の準備に奔走していた。

 

「ありがとうな幽香、ここを会場として使わせてくれて」

 

ジンが会場として選んだのは、幽香の向日葵畑であった。紅魔舘のホールも一応候補としてあったのだが、諸事情で改装中で使えず、人里の広場も、雷鼓達が先に予約していたのである。

紅魔舘、人里が駄目だったので、次の候補である太陽の畑に赴き、幽香と交渉の末、無事に場所を使わせて貰える事が出来た。

 

「いつもルナサ達に使わせているから、これぐらい御安い御用よ。それよりも大丈夫なの?」

 

「何が?」

 

「もうすぐ梅雨入りよ。雨が降ったら、ライブは中止になっちゃうけど」

 

「・・・・・・そうだな。それが一番の心配だ」

 

そう言って、ジンは空を見上げた。今日は快晴、この日が続くのを、ジンは祈るのであった。

 

―――――――――――

 

それから数日後。運悪く雨が続いた。このまま雨が降り続けば、明日の発表会は中止になってしまうだろう。

 

「まいったなこれは・・・・・・」

 

ジンは部屋で雨が降る外を眺めていた。てるてる坊主も一応下げてはいるのだが、それでも止む気配は無かった。

 

(明日一日で良いんだ。晴れてくれないか・・・・・・)

 

そう願うジンであったが、それをあざけ笑うように雨は強くなる。そんなとき、ジンはある考えが浮かぶ。

 

「そうだ! 会場を結界で覆えば、雨が降ってもやれるかも知れない!」

 

そう思ったジンは、強い雨の中。太陽の畑へと向かった。

 

―――――――――――

 

太陽の畑に到着したジンは、幽香に結界を張る許可をもらっていた。

 

「え? 会場に雨避けの結界を張りたいですって?」

 

「ああ。そうすれば、雨が降っても演奏出来るだろ? だから――――」

 

「悪いけどジン、そんな事をしても無駄だと思うわ。会場に雨避けの結界を張ったとしても、雨の中ここまで来る人がいるかしら?」

 

それは幽香の言う通りである。有名ならともかく、無名のカナの演奏を、雨の中を歩いても来てくれる人がいるかどうか、わからないからである。それでもジンは―――――。

 

「そうだとしても、何もしないままでは居られないんだ。無駄でも構わない、やらせて欲しい」

 

そう迷い無く、はっきりと答えた。それに対して、幽香は溜め息をついた。

 

「言っても無駄のようね・・・わかったわ。気がすむまでやりなさい」

 

「ありがとう幽香!」

 

ジンは礼を言って、会場に雨避けの結界を張る作業を始めた。その様子を、幽香は遠くから見守った。

 

 

ジンが結界を張る作業を始めてから、しばらく経つと、鈴仙とてゐがたまたま通り掛かった。

 

「あれ? こんな所で何しているの幽香?」

 

「あら、鈴仙じゃない。ここは私のテリトリーなのよ。居てもおかしく無いわ」

 

「いや、そういう事じゃなくて、この雨の中、何をしているのかなって思っただけで・・・・・・」

 

「きっとあれを見ているんだよ鈴仙」

 

そう言って、てゐが指をさした方向には、雨の中作業をしているジンの姿があった。

 

「え? ジン? 何しているの彼?」

 

「明日の演奏会の為の、雨避けの結界を張っているところなのよ」

 

「ええ!? でも、そんな事をしても・・・・・・」

 

「お客さんは来ないだろうね。こんな雨の中来るやつなんて、よほど奇特だよ」

 

「私もそう言ったわ。でも彼は、“何もしないままでは居られないんだ。無駄でも構わない、やらせて欲しい”って言ったわ」

 

「ジン・・・・・・」

 

「馬鹿だねぇ。よくそんな無駄な労力をするのか、私には理解出来ないよ」

 

「ちょっとてゐ!」

 

「だって本当の事でしょ? こんな事をしても所詮付け焼き刃、お客さんだって来ないさ」

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

「でもね、嫌いでは無いよ私は、誰かの為に幸せを願い、その為に行動するのは」

 

そう言って、てゐは指を振った。

 

「そんじゃ行こうか鈴仙」

 

「てい、貴女今何かした?」

 

「それは明日になればわかるよ」

 

「あっ、ちょっと待ちなさい」

 

てゐはその場を走って去り、鈴仙はそのあとを急いで追った。

そんな二人を見送った幽香は―――――。

 

「幸せを呼ぶ兎は、誰かを幸せにする人が好きなのかしら?」

 

そう言って、小さく微笑むのであった。

 

―――――――――――

 

翌日。昨日までの雨が嘘かのように快晴になった。雨避けの結界は無駄となってしまったが、ジンにとってそれは些細な事である。

会場にはそれなりに人が集まっており、カナの演奏を待っていた。

 

「さて、準備はいいかカナ?」

 

「う、うん。だ、大丈夫・・・・・・」

 

「そんな緊張しなくて大丈夫。カナならちゃんとやれる」

 

「そうそう、楽しんでやれば良いんだから♪」

 

「頑張ってねカナ」

 

ジン、ルナサ、メルラン、リリカの励ましの言葉を受け、カナはステージの上に立つ。

今この時、彼女は新たな一歩を踏み出したのである。

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