東方軌跡録   作:1103

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タイトルで分かるように、深秘録の新キャラである宇佐見董子が今回からでます。
更に、しばらく彼女を中心とした菫子の夏休みシリーズ書く予定です。
秘封倶楽部の夏休みにしようと思ったのですが、混同してしまうのでこっちにしました。

彼女の登場は、東方と秘封倶楽部に波紋を呼びました。そんな彼女について、自分なりに考察し、後書きに書きました。妄想も入っているので、あまり本気にせず気楽に読んでくれると幸いです。



菫子の夏休み。幻想入り編

雨が明け、夏が到来した。

暑い中、ジンは居間で一人の少女の勉強を見ていた。

 

「ここの文章は―――」

 

「あーもう! 何で夢の中でも勉強をしなきゃいけないのよー!」

 

少女は不満そうに叫んだ。

彼女の名前は宇佐見菫子、秘封倶楽部の会長であり、オカルトボールの異変を起こした張本人である。最も、黒幕は別にいたのだが、その話はまた別の機会に話そう。

ともかく彼女は異変を起こし、最終的に霊夢に拘束されたのである。その後、魔理沙、マミゾウ、ジンの温情で、外の世界に無事帰された。しかし、どういう訳か、彼女は寝ている間だけ、精神が幻想郷に訪れる事が出来るようになり、たびたび遊びに来るようになった。

 

(メリーと同じ現象、何より蓮子と同じ名字と名前の倶楽部、そして同じ帽子を持つ・・・果たしてこれは偶然か?)

 

以前夢で会った秘封倶楽部のメンバーである蓮子とメリーと目の前の少女―――菫子と何か関係があるのでは無いかと考え、ジンは彼女に、蓮子とメリーの事を尋ねた。しかし、秘封倶楽部は自分一人の倶楽部だと言い、大学生に知り合いはいないと断言したのである。因みに、彼女には蓮子と同じ名前の親戚がいるらしいが、その子はまだ小学生であるらしい。

 

「ちょ、ちょっとジンさん、そんなに見つめないでよ・・・・・・」

 

「ん? あ、悪い。少し考え事をしていた」

 

「考え事って、例の偽秘封倶楽部の人達?」

 

「偽って・・・偶々名前が似てしまっただけでは?」

 

「いーえ、この名前は私が何日も考え抜いた末に出した名前なのよ。被るなんて考えられないわ。きっと、私を監視している組織の一員なのよきっと! なんたって私は、超能力少女なんだから!」

 

立ち上がりながら、高らかに叫んだ。どうやらこの少女は妄想癖があるらしく、あること無いことを思い込んでしまう傾向がある。いわゆる中二病であるのだ。

 

「組織でも、超能力少女でもいいから、勉強をしろ。この前泣きついたのは一体誰だ?」

 

「うぐっ」

 

ジンのその一言に、菫子は言葉を詰まらせた。

彼女は夢で幻想郷に行ける為、一日を殆ど寝て過ごしていた。当然そんな事をすれば、日常生活に支障来たし、更には学力も低下していった。

彼女が危機感を感じたのは、つい最近の行われた小テストの結果を見てからである。その結果は見るも無惨な結果で、この時ほど菫子は青ざめた事はなかった。

 

『ど、どうしょう! このままだと私、補習になっちゃう! 私の夏休みがぁ~』

 

完全に菫子の自業自得なのだが、彼女を見捨てる事が出来ないジンは、彼女の家庭教師として、こうして彼女の勉強を見ているのである。

 

「さて次は社会だな、教科書は持って来たか?」

 

「もちろん、ちゃんと持って来たわよ」

 

そう言って、彼女は鞄から社会の教科書を出した。原理は分からないが、身につけたまま眠ると、それを幻想郷に持ち込み事が出来るらしい。それを利用して、菫子は学校の教科書を持ち出して来ていた。

 

「どれどれ・・・ほうほう・・・・・・」

 

ジンは興味深そうに、最新の教科書を読んだ。幻想郷にも教科書は流れ着くが、どれも古いものばかりで、こういった新しい物は新鮮に思えたのである。

 

「ところでジンさん、お願いがあるんですけど・・・・・・」

 

教科書を読んでいると、菫子がおずおずと言い出した。ジンは教科書を読みながら、菫子に尋ねる。

 

「なんだ?」

 

「次の期末、良い点を取れたら、御褒美が欲しいなぁって思って・・・・・・」

 

「御褒美? 別に構わないが、出せる褒美なんてたかが知れているぞ」

 

「別に大それた事じゃないから、ただお願いを聞いて欲しいの」

 

「まあ、俺が叶えられる範囲なら、別に構わないが」

 

「やった♪ 今の言葉忘れないでよね?」

 

菫子はとても嬉しそうにしていた。この時ジンは、彼女の願いの内容を聞く事をしなかった。そのせいで、後に少し大変な目にあってしまうのである。

 

―――――――――――

 

それから数週間後、今日は期末テストの結果である。

ジンは境内を掃除しながら、菫子が来るのを待った。すると学生服と鞄を持った菫子がちょうど現れた。

 

「ジンさん! ジンさん!」

 

「おっ、来たか。それでどうだった?」

 

「見てよこれ!」

 

そう言って、菫子はテスト用紙をジンに見せる。その内容は見事な物で、一番低い点数でも、九十点はキープしていた。

 

「凄いじゃないか、これ学年一位取ったんじゃないか?」

 

「まあそこまでじゃないけど、学年五位まで入ったわ」

 

「学年五位か! 凄いじゃないか菫子!」

 

ジンはそう言いながら、菫子の頭を撫でた。それに対して菫子は――――。

 

「ちょ、ちょっとジンさん! 私を子供扱いしないでよね! それに、私が本気を出せば、学年一位なんて余裕で取れるんだから」

 

そう言って、自信過剰にも言える発言をした。少し背伸びしたい年頃なのだろうと、ジンは思った。

 

「それにしたって、学年五位は凄いと思うぞ。俺は一度もこんな点数を取った事は無いからな」

 

「え? そうなの?」

 

「ああ、俺は勉強が嫌いだったし、赤点取らなければそれで良いと思っていたからな。今では少し後悔している」

 

「意外・・・教え方が凄い上手だし、教科書を読んだだけで直ぐに内容を理解するから、てっきり優等生だと思ってた」

 

「本気でやらなければ、どんなに才能があっても腐る物だ。俺の学力は、こっちに来てから鍛えられた物だからな。まっ、数学と英語だけは得意だったけどな。

菫子も、俺みたいになるんじゃないぞ。じゃないと、後悔するぞ」

 

そう言って、ジンは自嘲しながら笑った。その笑顔は、何処か悲しそうだったと、菫子は感じた。

 

「さて、そう言えば御褒美が欲しいって言ってたな。一体何が欲しいんだ?」

 

「あっ、そうだった! 実はジンさんにお願いがあるのよ」

 

「お願い? そういえば言ってな。何をして欲しいんだ? 言っておくが、無理難題な願いは聞けないぞ」

 

「そんな難しい事じゃないわ。夏休みに幻想郷に行きたいから、その根回しをお願いをしたいの」

 

「ん? 幻想郷に行きたいって、今も来ているじゃないか?」

 

「違う違う、夢じゃなくて、現実に行きたいのよ」

 

「なんだそういう事か・・・・・・って、何だって!?」

 

ジンは思わず聞き返すと、彼女は満面の笑顔で言った。

 

「だから、もう一度生身のままで幻想郷に行きたいの。夢だと、途中で親に起こされるから、幻想郷巡りがなかなか出来ないのよね。でも、生身で行けば、邪魔されずに済むじゃない」

 

「それはそうだが・・・・・・」

 

「それじゃあ、お願いねジンさん♪」

 

そう言って、菫子は消えて行ってしまった。ジンは、とんでもない約束をしてしまったと、ため息をついた。

 

―――――――――――

 

菫子との約束について、ジンは霊夢に相談すると、彼女は呆れていた。

 

「あんたねぇ、そんな安請け合いするから、そんな大変な目に合うのよ」

 

「返す言葉もない・・・・・・」

 

「それで? 一体どうするつもりなの?」

 

「もちろん約束は守るつもりだ。他の事はともかく、紫の許可を貰えるかどうか・・・・・・」

 

「難しいでしょうね。あの子は悪戯に結界を壊そうとしていたし、そんな彼女を紫が受け入れてくれるとは思わ―――――」

 

「あら、別に構わないわよ」

 

すると何処からともなく、紫がスキマの間から顔を出して、そう言った。

 

「うわぁ!? 驚かすなよ・・・・・・」

 

「その神出鬼没さ、どうにかならないの?」

 

「それが私の売りなのよ♪ さて、さっきの話の件だけど、私は別に構わないわ」

 

予想外の答えに、ジンは驚いていた。一方霊夢は、彼女が何か企んでいないかと疑っていた。

 

「一体何を企んでいるのよ紫?」

 

「別に企んでいないわ。ただ、幻想郷は全てを受け入れる。ここはそう言った場所なのよ」

 

「だから、菫子も受け入れるって訳?」

 

「そうよ。・・・・・・と言っても、彼女に関してはそれだけじゃないけど」

 

「何か言った?」

 

「何でも無いわよ。それと、彼女を迎え入れるのなら面倒はちゃんと見なさい。この前みたいの異変みたいに、自棄で結界を壊そうとしないようにね」

 

そう言って、紫はスキマの中に消えていった。

 

「な~んか、隠しているわね」

 

「彼女が隠し事をするのは、今に始まった事じゃないだろ。話さないって事は、何か事情があるだと思う」

 

「単に説明するのが面倒だから、はぐらかしているだけじゃない?」

 

「そうかも知れないな。さてと、紫の許可も出た事だし、こっちはこっちで準備しないとな」

 

「あんたの世話焼きも、筋金入りよねぇ・・・・・・」

 

こうして、ジンは菫子の為に様々な手配をし、彼女を迎え入れる準備をするのであった。

 

―――――――――――

 

それから数日後。ここは外の世界にある博麗神社、そこに菫子が大きな荷物を持ってやって来た。

 

「確か、ここに来れば良かったわよね」

 

そう呟いて、辺りを見回す。幻想郷の博麗神社とは多少違うが、確かにここが博麗神社だと、菫子は感じた。

 

「来たのは良いけど、一体どうすれば―――――」

 

その時、一際強い風が吹いた。その風は、菫子の帽子を吹き飛ばす。

 

「あっ! 帽子――――」

 

その時、彼女の視界がぐにゃりと一瞬歪む。そして次の瞬間、彼女は幻想郷の博麗神社に来ていた。

 

「えっ?」

 

一体何が起きたのか理解できず、呆然と立っていると、一人の青年が声を掛けてきた。

 

「ほら、大切な帽子なんだろ?」

 

その声は菫子の知っているものであった。

 

「ジンさん・・・・・・?」

 

「ようこそ、幻想郷へ」

 

そう言って、ジンは菫子に帽子を返した。

こうして菫子の、摩訶不思議な夏休みが始まるのであった。




さて考察についてですが、最初に董子と蓮子の関係について幾つか考えました。
軌跡録では、本文で分かるように叔母と姪にしていますが、これは単なる独自設定なので気にしないでください。

秘封と東方は、年代的に離れているので、祖先や祖父母の兄弟縁者である大伯母と考えるのが妥当だと思います。最も、宇佐見家が良家であるのなら、婿養子を取っている可能性を考慮して、祖母という可能性もあります。案外大穴で、母親というのも有るかも知れません。

次にメリーと同じ現象についてですが、こちらは情報不足なので何とも言えません。
ただ、エンディングだと体はすり抜けましたが、VSモードの勝利台詞だと実体を持っています。これについては単に、能力が成長し実体を持つようになったと解釈しています。

そして最後に、荒唐無稽の妄想ですが、もしかしたら宇佐見家自体が博麗家に関わり合いを持っているんじゃないかと思いました。
これについては、オカルトボールを幻想郷に送り込んだり、限定的ではあるが幻想郷に出入りしていた事を考えると、幻想郷の結界に干渉できる力を備わっているということになります。霊夢も結界を緩めたりすることが出来るので、何か関わり合いがあるのではないかと思いました。まあ、結界の抜け道を使ったという可能性もあるのですけどね。

さて、ここまで自分の妄想考察を長々と読んで下さってありがとうございます。
いつか、彼女たちの関係が明かされると良いですね。
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