やはり仕事が忙しくなって来たので、投稿スピードが落ちると思います。
八月末。人里では年に一回の夏祭りに向けての準備が行われていた。
その様子を、買い物に来ていたジンと菫子が見ていた。
「何処もかしこも、準備で忙しそうね」
「そりゃ、年に一回夏祭りだ。皆張り切っているんだろう」
菫子とジンは、夏祭りの準備をしている人や妖怪の姿を見てみる。みんな忙しそうにしていたが、何処か楽しげでもあった。
「ふーん・・・祭りって、そんな楽しいものなのかしら?」
菫子のその言葉に、ジンは絶句した。
「・・・もしかして菫子、お前祭りに行った事が無いのか?」
「小さい時に、両親と行った事があるけど、最近は行っていないわ。大抵家でネットをしていたから」
その菫子の言葉に、最近の若者の事が心配になってしまうジンであった。
(確かにネットは、娯楽としては手軽で良いものだが、祭りにだって楽しいものなんだがなぁ・・・よし!)
ジンはある事を思いつき、それを菫子に提案した。
「それなら今度、一緒に夏祭りに行かないか? ここじゃネットは繋がらないし、神社に居ても暇になるだろう」
「え?」
突然の申し出に、菫子は戸惑いを隠せなかった。家族以外に誘われた事がなかった為、こういった誘いには免疫がなかった。
(え、えーと・・・こ、この場合どうすれば良かったんだっけ?・・・って、何うろたえているのよ私!)
菫子は気を取り直して、改めてジンの面に向かって言う。
「そ、それもそうね! 神社に居ても暇なら、行ってみようかしら?」
「よし決まりだな。それじゃあ楽しみにしておいてくれよ」
そう言ってジンは歩き出した。少し惚けていた菫子は、慌ててその後について行った。
―――――――――――
夏祭り当日。菫子はジンに連れられ、稗田の屋敷に訪れていた。
「・・・・・・はい出来ました。きつくはありませんか?」
「大丈夫です。どうもありがとうございます」
菫子は屋敷の使用人に、浴衣の着付けをしてもらっていた。
色鮮やかな菫模様が入った浴衣に、満足な笑みを浮かべる菫子。そんな時に、薄い紫に菊の模様が入った着物を着た阿求が入って来た。
「どう? 着付け終わった?」
「あっ、お嬢様。ただいま終わりました」
そう言って使用人は頭を下げ、部屋を退出した。残された菫子は、阿求に浴衣の御礼を言う。
「ありがとう稗田さん。こんな素敵な浴衣を貸してくれて」
「阿求で結構ですよ宇佐見さん」
「それじゃあ私も、菫子で良いわよ」
そんな言葉を交わし、互いに笑みを浮かべる二人。それはまさに、友人同士の会話であった。
「ところで阿求。一つ聞きたいんだけど、良いかしら?」
「どうぞ」
「この浴衣ってもしかして高い? まさかと思うけど、数万円?」
「数万円!? そんな大金――――って、外の世界の値段の事よねそれって」
「あっ、そうか、外とここじゃ、円の価値が違ったわね。うーん・・・なんだかややこしいわ・・・・・・」
「確か、外の一円はこっちだと0.01銭だから―――菫子がいう値段は、こちらだと数円ってことね」
「それで・・・実際はどうなの?」
恐る恐る尋ねる菫子に対して、阿求はにっこりと答えた。
「安心して頂戴。それは安物だから、多少汚しても問題ないわ」
「本当? 良かった~、高級品だったらどうしょうかと思ったわ~」
心のそこから安堵する菫子。一方阿求は、少し苦笑いをしていた。
(本当は十数円(十数万円)位のものなんだけど、言わない方が良いわね)
そう心に留めておく阿求であった。
―――――――――――
菫子と阿求が屋敷を出ると、外には雑談をしているジンと牡丹模様の浴衣を着た小鈴の姿があった。
「あっ、来た来た。おーい二人ともー」
「あら小鈴、もう来ていたのね」
「まあね、集合は早めにってよく言うじゃない」
「こっちだと、五分前行動って言うけど。ところでジンさん」
「ん?」
「どうかな? 似合ってる?」
そう言って、着ている浴衣を見せる菫子。それを見たジンは、何となく察した。
「ああ、とても良く似合ってる。もちろん、阿求も似合ってる」
「あ、ありがとう」
「ど、どう致しまして・・・・・・」
面と向かって褒められた二人は、顔を少し赤くなりなっていた。そんな様子を、小鈴は顔を膨らませていた。
「ちょっとジンさん、私にも何か言う事ありますよね?」
「え? 何かあったか?」
「私だって浴衣を着ているんですよ? “似合ってる”とか、“今日は一段と輝いているね”とか! 言う事あるじゃないですか!」
「いや、それは最初に合った時に言った筈だが?」
「人前で言う事に意味があるんです!」
「なんだそりゃ?」
「いいから言ってください! このままじゃ、私だけ褒められていないみたいじゃないですか!」
小鈴のよく分からないプライドが発動し、ジンはやれやれとため息をつきながら、彼女の要望に答える事にした。
「似合ってるよ小鈴。これでいいか?」
「むぅ~、全然心が込もっていないです。リテイクを要求します」
「勘弁してくれ・・・・・・」
小鈴のわがままに、困り果てるジン。そんな彼に、阿求が助け船を出してくれた。
「小鈴、あまりジンさんを困らせない。ただでさえ、日頃助けてもらっているのに」
「うっ・・・・・・」
「ジンさんも、あまり小鈴を甘やかさない。そうやっていつも甘やかすから、小鈴が付け上がっちゃうのよ」
「別に甘やかしているつもりは無いんだが・・・・・・」
「十分甘やかしていますよ。少し自覚しないと、いざ子育ての時に大変な思いしますよ?」
「そ、そうか・・・気をつける」
「さてと、それじゃあ行きましょうか、もう祭りは始まっていますから」
そう言って阿求は何処か楽しげに歩き出し、ジン達も彼女の後について行くように歩き出した。
―――――――――――
人里では既に、祭りの喧騒で溢れかえっていた。
「わー、凄い人だかりねぇ・・・・・・」
「祭りってのは大抵こんなものだ。それよりも、はぐれないようにしろよ」
「「「はーい」」」
四人ははぐれないように気をつけ、祭りの中を歩いていた。
「ところで、他の神社の人達はどうしたんですか?」
歩いていると、小鈴がジンにそう訪ねて来たので、ジンは話始めた。
「霊夢は祭りの舞をやるからな、妖狐はその付き添いだ。針妙丸は今回、サニー達と一緒に屋台をやるそうだ。正邪は知らん、大方どっかで屋台でもやっているんじゃないのか?」
「そうなんですか」
「あの天邪鬼が何か問題を起こしたりしませんかね?」
心配そうにに言う阿求に、ジンは大丈夫だと言った。
「大丈夫だろ? この祭りはあいつにとっての稼ぎ時でもあるからな。問題を起こすより、稼いだ方が良いと思う筈だ」
「稼ぎ時って・・・例の反逆資金ですか?」
「本人が言うにはな。と言っても、あいつは貯金が出来ないからな」
ジンが言うには、彼女はコツコツと貯めるたり、貯金というものが大嫌いらしい。そういった真面目な行動をしていると、蕁麻疹が起き、衝動的に使ってしまうんだとか。おかげで、彼女の反逆資金は一行に貯まらないのである。
「それを聞いて少し安心しました。またいつかみたいな異変を起こそうしているんじゃないかと思って」
「ん~、それも大丈夫じゃないのか? あいつが何か企んでいるなら、霊夢が容赦なく退治するし。そもそも博麗神社に住んでいるんだから、余計な事が出来なくなっているんじゃないのか?」
「ああ確かに、霊夢さんが側にいると、悪い事出来ないわよね。あの時なんか、本当に容赦なかったわ・・・・・・」
「そう言えば、菫子は異変を起こした側だったわね。今度、その辺りの話を聞かせて頂戴ね」
「あっ! 私も聞きたい!」
「また今度ね」
そんな会話をしながら歩いていると、阿求がふと立ち止まった。
「ん? どうした阿求?」
「え? あ、何でも無いです!」
彼女は慌てた風にそう言った。ジンはそんな彼女の様子が気になって、彼女の視線の軌跡を視てみた。すると、射的の景品であるぬいぐるみに視線が移っていた事がわかった。
「アレが欲しいのか阿求?」
ジンがぬいぐるみに指を射すと、阿求はしどろもどろになっていった。
「あ、いや、そういう訳じゃ・・・・・・」
「そういえばあんたって、ああゆうのに目がなかったわよね」
「ちょっと小鈴! 余計な事言わないの!」
「だって本当の事じゃない。それに、別に恥ずかしがる事じゃないわよ。ねぇ菫子?」
「そうね。“可愛いは正義“っていう格言が、外にあるくらいわよ」
「で、でも、ぬいぐるみを倒す事なんて――――」
「やろうと思えば出来るぞ」
「え! 出きるんですか!?」
「まあな。おやっさん、二回分頼む」
「へい毎度!」
ジンは二回分の料金を払い、コルク銃を構える。最初の一発は見事に命中するが、ぬいぐるみはビクともしなかった。
「「「ああ~」」」
「なに、次でちゃんと決める」
そう言って、二発目を構えるジン。この時彼は既に、ぬいぐるみの重心を見抜いていた。最初の一発は、ぬいぐるみの重心を見るためである。放たれたコルクの小さい衝撃が、ぬいぐるみ全体に伝わり、その衝撃の軌跡を見ることにより、全体の重心を探ったのである。
(後は、重心が偏っている方を――――)
二発目のコルクは、ぬいぐるみの右耳に当たった。するとぬいぐるみはストンと落ちた。
「「「おおー!!」」」
ジンは景品を受け取り、阿求に差し出す。
「どうぞ」
「え、えっと・・・ありがとうございます」
少し照れながらも、阿求は嬉しそうにそれを受け取った。そんな様子を、菫子と小鈴は嫉妬の眼差しで見ていた。
「ちょっとジンさん、私達には何も無し?」
「そうですよ! 阿求だけずるい!」
「わかった、わかった。お前らにも一つずつ、欲しい物をやるから」
「やったー♪」
「ジンさん大好き♪」
「おい! そんなに引っ付くな!」
腕に引っ付く小鈴と菫子、そしてそれを振りほどこうとしているジンの姿を見て阿求は―――――。
(まったく、本当に甘い人なんですから・・・・・・)
心の中でそう思いながら、貰ったぬいぐるみをギュッと抱き締めていた。
―――――――――――
その後、様々な場所を廻り、遊び、食べ回る四人。そんな時、奇妙な箱が目に写った。
「あれは何かしら?」
「箱みたいだけど・・・それにしても大きいわよね」
阿求と小鈴は不思議そうに箱を見ていたが、外の世界出身の菫子とジンは、その箱の正体はすぐ理解出来た。
「あれって、クレーンゲームじゃない!」
「本当だ。まさか幻想郷で御目にかかるとは」
「クレーンゲーム?」
「外の世界の遊戯だよ。クレーンを操作して、中の景品をとるゲームなんだ」
「面白そうですね! 少しやって行きませんか?」
「そうだな。俺も久々にやってみたくなった」
こうして四人は、クレーンゲームの方に向かって行った。そして四人を出迎えたのは、案の定にとり率いる河童軍団であった。
「いらっしゃーい・・・って、ジンじゃないか、丁度良かった!」
「ん? 何かあったのか?」
「実は――――」
にとりの話によると、たまたま拾ったクレーンゲームを修理、改造し、これで一儲けを企んだが、肝心な客達がやってくれない為、彼女達は困っていた。
「まあ確かに、いくら珍しい物であっても、やり方がわからないんじゃあ、やらないよな」
「だからジンにデモンストレーションをやって貰いたいんだよ。お代は安くしとくからさ」
「そういうなら、やってみるか。みんなも良いか?」
ジンが三人に尋ねると、三人は特に反対する事はなかった。
それから、ジン達のやっている姿を見て、次第に客達が来るようになった。これには、にとりは大喜びをした。
「いや~助かったよ。おかげで赤字を免れる」
「こっちも色々と楽しめたから、お互い様だ」
「そうだ! 良かったらこれあげる」
そう言って、一冊の本をジンに手渡した。
「これは?」
「これは我ら河童の魔導書だよ。まあ、流石にオリジナルは渡せないけどね」
「魔導書ですって!?」
にとりの言葉に、物凄い勢いで食いつく小鈴。彼女は目を輝かせながら、その本について尋ねた。
「それってどんな内容なんですか!?」
「中身は至って普通の胡瓜のレシピや保存法のマニュアルさ。だけど、それ以外にもすっごい効果があるんだよ」
「一体どんな効果が!?」
「なんと! この本を手に魔力を込めれば、誰でも簡単に胡瓜を加工出来る代物なのだ!」
そう言って、自慢気に答えるにとりであった。
それを聞いていた小鈴は興奮し、ジンは素直に感心した。しかし、菫子と阿求だけが、何とも微妙な顔をしていた。
「胡瓜の加工って・・・それ以外は何か出来ないの?」
「出来ない! 胡瓜の加工一点に絞った魔導書だからね」
「それって、あまり用途が無いんじゃ・・・・・・」
「甘いなぁ、胡瓜の加工ってのは、案外手間暇かかるんだよ。それを一瞬で済ませられる。こんな便利な物は無いんだから」
にとりは自慢気にそう言ったが、菫子と阿求はますます微妙な気持ちになっていった。
(別に、キュウリしか食べる訳じゃないから、あまり必要性が感じられないわ・・・・・・)
(まあ確かに、河童に達にとっては便利な物ではあるんでしょうけど・・・・・・)
この魔導書の価値をあまり感じない菫子と阿求であったが、妖魔本コレクターの小鈴にとっては、まさに宝物であった。
「あのにとりさん! 是非この魔導書を私に譲ってくれませんか!?」
「え? いや駄目だよ! これは盟友であるジンの贈り物なんだから。他のじゃあ駄目?」
「私はこれが良いんです! どうかお願いします! 何でもしますから!」
「そうは言ってもねぇ・・・写本でも貴重品だし・・・あっそうだ!」
にとりは何かを閃き、ある提案を出した。
「確かおまえって貸本屋で、本の印刷とかもしていたよね?」
「ええまあ、阿求の幻想縁起もうちで印刷していますよ」
「だったら今度、本を出すからその印刷を引き受けてくれないか? 版木はこっちで用意しておくからさ」
「それくらいなら御安い御用です!」
妖魔本欲しさに、安請け合いする小鈴。しかし、それに対して待ったを言うジンであった。
「いやちょっと待ってくれ。妖怪の本を製本したら、流石の霊夢も黙っていないんじゃないか? ただでさえ、あそこには妖魔本が溢れかえっているんだし」
ジンの心配を他所に、にとりは余裕の表情で答える。
「ちっちっち、甘いなぁジンは。逆だよ逆、あそこは妖魔本が多数あるから、妖魔本を作っても、妖気が紛れるからかえってバレない。それに、普通の人間本の様にカモフラージュするからね」
「・・・・・・その本って、危ない物じゃないだろうな?」
「大丈夫。この本と同じ効果が出る物だから、危険性はないよ」
「危険性が無いのなら、俺はこれ以上何も言わない。後は小鈴の判断だからな。といっても、受ける気満々みたいだな」
「もっちろん! それだけで妖魔本が手に入るのなら、安いものです! にとりさん! やらせていただきます!」
「商談成立♪ よろしくね小鈴」
そう言って、握手を交わすにとりと小鈴。
後に小鈴は、“胡瓜遣”という名の本を大量に製本し、これを期に河童達と交流を深めるのだが、それはまた別の話である。
―――――――――――
にとりと別れた後、ジン達は祭りを楽しんだ。
魔理沙がチルノと大妖精と共に開いたかき氷屋や、サニー達と針妙丸の屋台。密かに屋台を出していた正邪との遭遇。霊夢の舞いを見たりと、夏祭りを堪能していた。そんな時である―――。
「・・・・・・痛っ」
歩いていると、菫子からそんな言葉が出た。不思議に思ったジンは、菫子に尋ねた。
「ん? どうした菫子?」
「な、なんでもない! 気にしないで!」
そう強がる菫子だったが、足を庇って歩いているようである。
「足をどうかしたのか?」
「何でもないって!・・・・・・痛っ!」
「何でも無くは無いだろ、足を見せてみろ」
「あっ、ちょっと!」
ジンは菫子の足を見る。すると彼女の足は赤くなっており、何とも痛々しかった。
「これは酷い・・・・・・」
「うわぁ・・・痛そう・・・・・・」
「慣れていない下駄を履いていたせいだな・・・すっかり失念していた」
現代の日本人は、下駄や草鞋を履かなくなってしまった為、足の甲の皮膚が弱くなってしまった。その為、履き慣れていないと、こうして足を痛めてしまう。
「大丈夫か?」
「う、うん、ちょっと痛いけど、大丈夫」
「確かこの先に、永遠亭の仮設診療所があったと思います。そこまで行けば、治療して貰える筈です」
「菫子歩ける?」
「な、何とか・・・・・・痛っ!」
一歩動く度に、足に激痛が走り、次第に足の歩が小さくなっていった。
それを見ていられないジンは、彼女をおぶる事にした。
「菫子、俺の背に乗れ」
「え? いや、そんな悪いし・・・・・・」
「無理をして足を悪くしたらどうする? 良いから乗れ」
「わ、わかった・・・・・・」
菫子は戸惑いながらも、ジンの背中に乗る。
(大きな背中・・・ゴツゴツしているけど、ちょっとだけ安心出来る。何でだろう?)
そんな事を思いながら、菫子はジンの背中に顔をうずくまった。
―――――――――――
ここは永遠亭の仮設診療所。祭りの最中は、人々は浮かれやすく、また怪我もしやすい為、永遠亭が出張して来てくれているのである。
「はい、これでもう大丈夫よ。あまり無理しないように」
「ありがとうございます」
「どう致しまして。それじゃあお大事に」
そう言って、鈴仙はその場を去って行った。
菫子は改めて自分の足を見る。包帯をされ、少し大袈裟に思えた。
(う~ん、包帯ちょっと大袈裟な気もするけど・・・・・・)
そんな事を思っていると、ジンがラムネを持って戻って来た。
「ほら菫子、飲み物を持って来たぞ」
「ありがとう。他の皆は?」
「付き添いは俺がやるといって、祭りに行かせた。全員がここに居てもしょうがないと思ってな」
「そうね、私のせいで祭りを楽しめないのは、忍びないしね」
菫子は笑顔でそう言った。どうやらこの機会で、小鈴と阿求とそれなりに仲良くなったようで、良い兆候だとジンは思った。
(一時は、“友達なんかいらない”なんて言っていたから不安だったが、これなら大丈夫そうだな)
そう、密かに安心するジンであった。その時、夜空に花火が打ち上がった。
「おっ、花火か」
「綺麗・・・・・・」
二人はしばらくそこで花火を眺めた。すると、菫子が口を開いた。
「・・・・・・ありがとうねジンさん」
「ん?」
「祭りに誘ってくれて。もしジンさんと出会わなかったら、こんな楽しい事だと知らないままでいたかも」
「それは少し大袈裟だ。俺と出会わなくても、いつか誰かとこうして祭りを楽しんでいたかもしれないだろ?」
「それでも、私は貴方に感謝している。いろいろわがまま言ったけど、嫌な顔を一つせずに聞いてくれた。本当にありがとう」
「・・・・・・どういたしまして」
菫子は照れくさそうにそう言って笑い、ジンも釣られて笑うのであった。
そんな二人の姿を花火が照らした。