東方軌跡録   作:1103

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今回の話しはタイトル通りです。
やはり原作をやっていないとキャラが上手く掴めませんね・・・・。


宝塔を探して幾千里

夏が過ぎ、幻想郷は秋に入った。

ジンはこの日は寺子屋で授業をし、その帰りの事である。

 

「ん? あれは星?」

 

ジンが見掛けたのは、命蓮寺に住んでいる寅丸星である。

しかし、その様子は何処か途方に暮れていた。

 

「どうしたんだ星? そんな途方に暮れて」

 

「ジ、ジンくん?」

 

すると星は、徐々に涙目になっていく。

 

「ど、どうした?」

 

「うわぁぁぁん! ジンくーん!!」

 

とうとう泣き出し、ジンに抱きついた。

 

「うわぁ!? おい! いきなり何だ!? 一体どうしたんだ!?」

 

「うわぁぁぁん!!」

 

ジンの言葉は届かず、星は泣き続けた。

 

 

それから暫くが経ち、星はようやく落ち着きを取り戻した。

 

「少しは落ち着いたか?」

 

「すみません・・・・・取り乱してしまって・・・・・」

 

「それで? 一体どうしたんだ?」

 

「実は・・・・・宝塔を無くしてしまって・・・・・

 

「何だ、いつもの事か」

 

「そんな事言わないで下さい・・・・・」

 

「本当の事だろう。

それなら、いつも通りにナズーリンに探して貰え」

 

「それが出来たら苦労しません・・・・・」

 

「ん? 一体どうしたんだ?」

 

「実は―――――」

 

星の話によると、ナズーリンが楽しみにしていたオヤツをうっかり食べてしまい。それが原因で口論に発展してしまった。

現在も喧嘩中であるが為、彼女に頼れないようだ。

 

「どう考えてもお前が悪いだろ。

さっさとナズーリンに謝って来い」

 

「しかし、簡単に従者に頭を下げては、威厳に関わるので――――」

 

「安心しろ。お前の威厳はとうに落ちている」

 

「ジンくん酷いです!

こう見えても私は毘沙門天ですよ!・・・・・代理ですけど」

 

「毘沙門天だろうが、神様だろうが、仏様だろうが、自分の非は認めるべきだと思うが?」

 

「うっ・・・・・正論ですね・・・・・」

 

「一人じゃ不安なら、付き添うが?」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

こうして、星の付き添いで命蓮寺に向かう事になったジンであった。

 

―――――――――――

 

ここは命蓮寺。

以前は船だった物が、寺に変わったという話であるが。

当時の異変に出くわしていないジンにとっては眉唾ものである。

境内に入ると、命蓮寺に出家したばかりの妖怪。幽谷響子が出迎えてくれた。

 

「こんにちはー!」

 

「こんにちは響子。元気そうだな」

 

「うん! ジンも元気そうね!」

 

「響子、ナズーリンいる?」

 

「ナズーリンですか? それなら出掛けていますよ」

 

「行き違いになったか・・・・・。

さて、どうするか・・・・・」

 

「それなら、お茶でもいかが?」

 

「あ、聖様」

 

寺から現れたのは、命蓮寺の実質のトップである聖白蓮であった。

そして、ジンにとっては幽香に続く、苦手とすると人物でもある。

 

「遠慮しておく、こっちは星に頼まれ事があるんで」

 

「頼まれ事?」

 

「ナズーリンとの仲直りだ。

一人じゃ不安って言うから、その付き添いでな」

 

星の名誉の為、ジンは宝塔の事は言わずにおいた。

すると白蓮は、にこやかに微笑んだ。

 

「やはり、貴方は命蓮寺に必要な人ね。

どうです? ここに出家なさっては?」

 

「その話は何度も断っているだろ。

何で俺なんだ?」

 

「貴方の行いを見たからよ。

力の弱い妖精や妖怪に手を差し伸べたり、心無い巫女達から守ったり。

或いは非道な妖怪、妖から人々を守っているでは無いですか。

そう言った行いが、人と妖怪の交流を深め、仲良く暮すようになっているのよ。

夏の肝試しが、それを物語っているわ」

 

「ただ友人の助けになっただけだ。それ以外の他意は無い。

それに、理不尽な暴力は嫌いでな」

 

「それは私も同意です。

ですから、暴力の無い平等の世界を共に―――」

 

「言っておくが、無節操な平等も嫌いなんだよ」

 

「・・・・・」

 

「白蓮には白蓮の考えがあるだろうが、俺には俺の考えがある。

その点から見ても、俺と白蓮の考えが一致する事は絶対に無い」

 

「・・・・・それは、人も妖怪も、神も仏も同じでは無いと考えているからかしら?」

 

「そうだ。

確かに白蓮の言う通り仏や神は、元を正せば人や妖怪なんだろう。

だが、どんな者でもそれぞれ違う。

足が速い者、力が強い者、そして――――体が弱い者等な。

例え同じ種族であっても、得手不得手があるだろう?」

 

「・・・・・」

 

「それは不平等ではなく、個性だと思う。

それを否定してしまえば、その存在自体を否定するんじゃないのか?」

 

「ですが、それによって争いが起きるのでは無いのでしょうか?

自分より優れている者を妬み、自分より幸せな者を憎み、自分より強い者を恐れる。

私は何度も、そんな風景を見て来ました」

 

「確かにな、人は嫉妬し、憎む生き物だが、手を取り合う事が出来る生き物だと思う。

そして、不平等だからこそ、幸せを掴むために、一生懸命に生きているんだと思う」

 

ジンの考えを聞いた白蓮は、益々笑顔になっていった。

 

「な、何だよ? そんなにおかしかったのか?」

 

「いいえ、貴方はやはり立派な人だと思っただけですよ」

 

「俺はそんな立派な人間じゃない。普通の―――とは言い違いが、ただの人妖だ」

 

「あら、謙虚なのね。

その謙虚さを、博麗と守矢の巫女にも見習って欲しいですね」

 

「謙虚の無さも、あの二人の個性だ。

アレを直すのは、生半可な事じゃ無理だろ」

 

「そうね、それも貴方が言う個性かしら?」

 

「そうに違いない」

 

「ふふ、今回は引きますけど、私は諦めませんよ。

貴方と私の考えは正反対でも、求める物は同じだと思いますから」

 

「それについては同意だ。

せっかく同じ幻想郷に住んでいるんだ。

出来れば、仲良く暮らしたいさ」

 

「そうですね」

 

「何か悪いな、せっかく寺に来たのに批判して」

 

「別に良いわよ。貴方には貴方の考えがあるんですもの」

 

「そう言って貰えると助かる。

あと、勧誘を諦めてくれるともっと助かるんだが・・・・・」

 

「先も言った通り、私は諦めませんよ」

 

白蓮は笑顔でそう言った。

 

 

命蓮寺を後にした二人は、今後の事について話始めた。

 

「さて、次はどうする?

俺としては、宝塔の探索を始めた方が良いと思うが?」

 

「え? ナズーリンはどうするですか?」

 

「ナズーリンなら時間が経てば、命蓮寺に帰って来るだろう。

だが、宝塔は違う。

モタモタしていると、誰かに盗られる可能性が高い」

 

「そ、そうかも知れないけど・・・・・ナズーリン無しで見つけられるかな?」

 

「そこは俺の能力を使えば問題ないだろう」

 

「え? 探すの手伝ってくれるの?」

 

「乗り掛かった船だ。

最後まで付き合う」

 

「ありがとう~ジンくん~」

 

「だから泣くなって・・・・・それじゃ行くぞ」

 

こうして宝塔探索が始まった。

 

―――――――――――

 

二人は軌跡を辿り、魔法の森の入口にある。香林堂に辿りついていた。

 

「魔理沙の奴・・・・・まさか拾った宝塔をここに持って行くとは・・・・・」

 

「もしかして・・・・・売られちゃった?」

 

「十中八九間違いないだろう。

大方、新しい魔導書欲しさにやったんだろう」

 

「お金・・・・・足りるかな・・・・・?」

 

「それは霖乃助との交渉次第だろうな。

行くぞ」

 

ジンは香林堂の扉を開く。

するとそこには店長の森近霖乃助とナズーリンが、何かを言い争いをしていた。

 

「盗品を売るとは、店としてどうなんだい?」

 

「それを言われると痛いが、これは既に売り物なんだよ」

 

「そう言って、吹っ掛けるつもりかい?

そういうのは悪徳商売って言うんだよ」

 

「僕としては、物を良く無くす君の御主人が悪いんじゃないのかな?」

 

「おい、私の御主人を悪く言うんじゃない!」

 

一触即発の雰囲気に、ジンは二人の間に入る。

 

「二人ともそこまで、少し落ち着け」

 

「ジン・・・・・」

 

「ジンに・・・・・御主人!? どうしてここに!?」

 

「ナズーリンこそ、どうしてここに?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「取り合えず、事情を説明してくれないか? 霖乃助」

 

「わかった。実は――――」

 

霖乃助はこれまでの経緯を話始めた。

 

 

いつも通り霖乃助が香林堂を開いていると、魔理沙がやって来て、宝塔を買い取ってくれと言われたらしい。

最初は断ったが、魔理沙の強引さに負け、結局買い取ってしまったらしい。

 

次にナズーリンがやって来て、宝塔を返して欲しいと言って来た。

しかし、このままタダで返してしまえば、こちらが大損してしまうので、適正価格を提示したら、ナズーリンが盗品を売るのかと、霖乃助に抗議したらしい。

 

「なるほど、取り合えず霖乃助。

いくら魔理沙相手でも、盗品を買い取るなよ」

 

「それは分かっていたんだけど・・・・・あの切羽詰まった表情を見てつい・・・・・」

 

「魔理沙には、とことん弱いな・・・・・ところで、やはり返してはくれないのか?」

 

「流石にタダでは無理だね。

こっちも商売だから」

 

「盗品を売っての商売かい?」

 

「ナズーリン! すみません、この子が失礼な事を・・・・・」

 

「いや、こちらにも非があるからね。

出来れば返して上げたいけど・・・・・このまま返したら、結構な損害になるからね」

 

「そんなに酷いのか?」

 

「物が物だからね、かなりの額で買い取ったんだ」

 

そう言って霖乃助が言った額は、驚く程の高さであった。

 

「いくらなんでも高過ぎだろう!?」

 

「僕もそう思うけど、能力で鑑定する限り、それが妥当な額なんだよ・・・・・」

 

「流石財宝を産み出す力を持つことだけはあるな・・・・・」

 

「でもどうしましょう・・・・・流石にそんな額は払えませんし・・・・・」

 

「元々こっちの物なんだ。

奪い返せば良いさ」

 

「流石にそれは駄目だろ」

 

「じゃあどうするんだい?

他に良い案が有るとでも?」

 

「・・・・・仕方が無いか」

 

そう言ってジンは、いつも着けていた腕時計を取り外し、霖乃助の前に置いた。

 

「霖乃助。これを鑑定してくれないか?」

 

「ジンくん?」

 

「これで足りるかどうか分からないが、足しになれば」

 

「いや、君にそこまでして貰うつもりは―――」

 

「霖乃助もナズーリンも、俺の友人だからな。

どっちも損して欲しくは無い」

 

「ジン・・・・・」

 

「良いのかい?」

 

「良いんだ。鑑定を頼む」

 

「君がそう言うなら・・・・・どれどれ」

 

霖乃助は腕時計を鑑定し始める。

すると霖乃助は表情を変える。

 

「これは・・・・・確かにこれなら・・・・・でも、本当に良いのかい? これは君の―――」

 

「大丈夫だ。それよりこれで足りるのか?」

 

「まあ、差額は多少残るけど・・・・・それはオマケしよう」

 

そう言って、霖乃助は宝塔をジンに渡した。

ジンはそれを星に渡す。

 

「もう無くさないように」

 

「はい! ありがとうジンくん!」

 

「私からも礼を言うよ。

本当に君には助けられるよ」

 

「どういたしまして。

ところで、どうしてナズーリンはここに?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「それは?」

 

「途方に暮れている御主人を見て、痛ましくてな。それで―――」

 

「それでこっそり宝塔を探していたのか」

 

「ナズーリン・・・・・ごめんなさい!」

 

「ご、御主人?」

 

「私は貴女のオヤツを食べてしまったのに、貴女は――――」

 

「顔を上げてくれ御主人。

貴女は毘沙門天だ。そんな簡単に頭を下げてはいけないよ」

 

「いえ、毘沙門天だろうとなんだろうと、自分の非は認めないといけません。

本当すみませんでした」

 

「ああもう、だから頭を下げるなと―――ジンも何かを言ってやってくれ」

 

「別に良いじゃないか、これで丸く収まった事だし。

俺は帰らせて貰う」

 

「おい、ちょっと待―――行ってしまったか・・・・・」

 

「ナズーリン。少しジンくんの様子おかしくなかった?」

 

「そう言えばそうだな・・・・・おい店長、何か知っているか?」

 

「・・・・・そうだね、別に口止めされている訳では無いからね。

原因はこの腕時計さ」

 

「この腕時計がどうかしたのかい?」

 

「これはね、ジンの―――」

 

霖乃助は二人に腕時計の曰くを話すのであった。

 

―――――――――――

 

それから数日後、ジンはいつも通りに境内を掃除をしていた。

しかし、その姿は何処か元気がなかった。

 

(はあ・・・・・ああは言ったものの、やはり未練があるな・・・・・)

 

腕時計を手放した事に後悔はなかったが、やはり未練があった。

それほどあの腕時計が大切な物であったのだ。

 

(考えても仕方ない。時計の事は考えないようにしよう・・・・・)

 

時計の事は諦める。そう思った時、神社に星、ナズーリン、そして魔理沙がやって来た。

 

「ん? 星にナズーリンに・・・・・魔理沙? 珍しい組み合わせだな」

 

「ま、まあな・・・・・」

 

「? どうした魔理沙? 何か変だぞ」

 

「そ、それはだな・・・・・」

 

何処か歯切れ悪そうな魔理沙に変わって、ナズーリンが言葉を続ける。

 

「なに、この前の宝塔の件での御礼がしたくてな」

 

「別に礼なんて―――」

 

「そんな事言わず、受け取って下さい。ほら、魔理沙さん」

 

「お、おう・・・・・これだぜ!」

 

「そ、それは・・・・・」

 

魔理沙がジンに差し出したのは、香林堂で手放した腕時計であった。

 

「どうしてこれが?」

 

「駄目じゃないですか、親御さん贈り物なんでしょ?」

 

「どうしてそれを・・・・・」

 

「霖乃助さんが話してくれたんです」

 

星の話によると。

能力で鑑定した結果、特注で作られた腕時計で、しかも親から贈られた物だと分かったらしい。

 

「霖乃助の能力で、そこまで分かるのか・・・・・」

 

「それで私とナズーリン、事情を知った魔理沙さんの三人で買い戻したんです」

 

「何もそこまでしなくても・・・・・」

 

「それはこちらの台詞さ。

そんな大切な物を手放す事は無いだろうし、少しは自分の事を考えた方が良いんじゃないか?」

 

「はは・・・・・霊夢によく言われている」

 

「悪かったなジン。

まさかそんな事になっているとは思わなくて・・・・・」

 

「別に良いさ。それよりも、今後は盗品を押し売るなよ」

 

「善処するぜ」

 

「ところで、金はどうしたんだ?

それなりの金額だった筈だが・・・・・」

 

「それについては御主人に考えがあったようでな」

 

「はい、宝塔を売って買い戻しました」

 

「「「・・・・・・・・・・は?」」」

 

「ですから、宝塔を売りました」

 

「「「な、何だってーーー!!??」」」

 

三人の声が境内に響く。

こうして再び、宝塔を買い戻す事になり、更に一騒動起こるのだが、それはまた別の話である。




今回出てきたナズーリンですが、設定を少しいじって、命蓮寺で星と一緒に暮らしている事にしています。
その方が、書きやすかったので。
今後も、書きやすいように原作の設定を変えたりするかも知れません。
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