やはり原作をやっていないとキャラが上手く掴めませんね・・・・。
夏が過ぎ、幻想郷は秋に入った。
ジンはこの日は寺子屋で授業をし、その帰りの事である。
「ん? あれは星?」
ジンが見掛けたのは、命蓮寺に住んでいる寅丸星である。
しかし、その様子は何処か途方に暮れていた。
「どうしたんだ星? そんな途方に暮れて」
「ジ、ジンくん?」
すると星は、徐々に涙目になっていく。
「ど、どうした?」
「うわぁぁぁん! ジンくーん!!」
とうとう泣き出し、ジンに抱きついた。
「うわぁ!? おい! いきなり何だ!? 一体どうしたんだ!?」
「うわぁぁぁん!!」
ジンの言葉は届かず、星は泣き続けた。
それから暫くが経ち、星はようやく落ち着きを取り戻した。
「少しは落ち着いたか?」
「すみません・・・・・取り乱してしまって・・・・・」
「それで? 一体どうしたんだ?」
「実は・・・・・宝塔を無くしてしまって・・・・・
「何だ、いつもの事か」
「そんな事言わないで下さい・・・・・」
「本当の事だろう。
それなら、いつも通りにナズーリンに探して貰え」
「それが出来たら苦労しません・・・・・」
「ん? 一体どうしたんだ?」
「実は―――――」
星の話によると、ナズーリンが楽しみにしていたオヤツをうっかり食べてしまい。それが原因で口論に発展してしまった。
現在も喧嘩中であるが為、彼女に頼れないようだ。
「どう考えてもお前が悪いだろ。
さっさとナズーリンに謝って来い」
「しかし、簡単に従者に頭を下げては、威厳に関わるので――――」
「安心しろ。お前の威厳はとうに落ちている」
「ジンくん酷いです!
こう見えても私は毘沙門天ですよ!・・・・・代理ですけど」
「毘沙門天だろうが、神様だろうが、仏様だろうが、自分の非は認めるべきだと思うが?」
「うっ・・・・・正論ですね・・・・・」
「一人じゃ不安なら、付き添うが?」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
こうして、星の付き添いで命蓮寺に向かう事になったジンであった。
―――――――――――
ここは命蓮寺。
以前は船だった物が、寺に変わったという話であるが。
当時の異変に出くわしていないジンにとっては眉唾ものである。
境内に入ると、命蓮寺に出家したばかりの妖怪。幽谷響子が出迎えてくれた。
「こんにちはー!」
「こんにちは響子。元気そうだな」
「うん! ジンも元気そうね!」
「響子、ナズーリンいる?」
「ナズーリンですか? それなら出掛けていますよ」
「行き違いになったか・・・・・。
さて、どうするか・・・・・」
「それなら、お茶でもいかが?」
「あ、聖様」
寺から現れたのは、命蓮寺の実質のトップである聖白蓮であった。
そして、ジンにとっては幽香に続く、苦手とすると人物でもある。
「遠慮しておく、こっちは星に頼まれ事があるんで」
「頼まれ事?」
「ナズーリンとの仲直りだ。
一人じゃ不安って言うから、その付き添いでな」
星の名誉の為、ジンは宝塔の事は言わずにおいた。
すると白蓮は、にこやかに微笑んだ。
「やはり、貴方は命蓮寺に必要な人ね。
どうです? ここに出家なさっては?」
「その話は何度も断っているだろ。
何で俺なんだ?」
「貴方の行いを見たからよ。
力の弱い妖精や妖怪に手を差し伸べたり、心無い巫女達から守ったり。
或いは非道な妖怪、妖から人々を守っているでは無いですか。
そう言った行いが、人と妖怪の交流を深め、仲良く暮すようになっているのよ。
夏の肝試しが、それを物語っているわ」
「ただ友人の助けになっただけだ。それ以外の他意は無い。
それに、理不尽な暴力は嫌いでな」
「それは私も同意です。
ですから、暴力の無い平等の世界を共に―――」
「言っておくが、無節操な平等も嫌いなんだよ」
「・・・・・」
「白蓮には白蓮の考えがあるだろうが、俺には俺の考えがある。
その点から見ても、俺と白蓮の考えが一致する事は絶対に無い」
「・・・・・それは、人も妖怪も、神も仏も同じでは無いと考えているからかしら?」
「そうだ。
確かに白蓮の言う通り仏や神は、元を正せば人や妖怪なんだろう。
だが、どんな者でもそれぞれ違う。
足が速い者、力が強い者、そして――――体が弱い者等な。
例え同じ種族であっても、得手不得手があるだろう?」
「・・・・・」
「それは不平等ではなく、個性だと思う。
それを否定してしまえば、その存在自体を否定するんじゃないのか?」
「ですが、それによって争いが起きるのでは無いのでしょうか?
自分より優れている者を妬み、自分より幸せな者を憎み、自分より強い者を恐れる。
私は何度も、そんな風景を見て来ました」
「確かにな、人は嫉妬し、憎む生き物だが、手を取り合う事が出来る生き物だと思う。
そして、不平等だからこそ、幸せを掴むために、一生懸命に生きているんだと思う」
ジンの考えを聞いた白蓮は、益々笑顔になっていった。
「な、何だよ? そんなにおかしかったのか?」
「いいえ、貴方はやはり立派な人だと思っただけですよ」
「俺はそんな立派な人間じゃない。普通の―――とは言い違いが、ただの人妖だ」
「あら、謙虚なのね。
その謙虚さを、博麗と守矢の巫女にも見習って欲しいですね」
「謙虚の無さも、あの二人の個性だ。
アレを直すのは、生半可な事じゃ無理だろ」
「そうね、それも貴方が言う個性かしら?」
「そうに違いない」
「ふふ、今回は引きますけど、私は諦めませんよ。
貴方と私の考えは正反対でも、求める物は同じだと思いますから」
「それについては同意だ。
せっかく同じ幻想郷に住んでいるんだ。
出来れば、仲良く暮らしたいさ」
「そうですね」
「何か悪いな、せっかく寺に来たのに批判して」
「別に良いわよ。貴方には貴方の考えがあるんですもの」
「そう言って貰えると助かる。
あと、勧誘を諦めてくれるともっと助かるんだが・・・・・」
「先も言った通り、私は諦めませんよ」
白蓮は笑顔でそう言った。
命蓮寺を後にした二人は、今後の事について話始めた。
「さて、次はどうする?
俺としては、宝塔の探索を始めた方が良いと思うが?」
「え? ナズーリンはどうするですか?」
「ナズーリンなら時間が経てば、命蓮寺に帰って来るだろう。
だが、宝塔は違う。
モタモタしていると、誰かに盗られる可能性が高い」
「そ、そうかも知れないけど・・・・・ナズーリン無しで見つけられるかな?」
「そこは俺の能力を使えば問題ないだろう」
「え? 探すの手伝ってくれるの?」
「乗り掛かった船だ。
最後まで付き合う」
「ありがとう~ジンくん~」
「だから泣くなって・・・・・それじゃ行くぞ」
こうして宝塔探索が始まった。
―――――――――――
二人は軌跡を辿り、魔法の森の入口にある。香林堂に辿りついていた。
「魔理沙の奴・・・・・まさか拾った宝塔をここに持って行くとは・・・・・」
「もしかして・・・・・売られちゃった?」
「十中八九間違いないだろう。
大方、新しい魔導書欲しさにやったんだろう」
「お金・・・・・足りるかな・・・・・?」
「それは霖乃助との交渉次第だろうな。
行くぞ」
ジンは香林堂の扉を開く。
するとそこには店長の森近霖乃助とナズーリンが、何かを言い争いをしていた。
「盗品を売るとは、店としてどうなんだい?」
「それを言われると痛いが、これは既に売り物なんだよ」
「そう言って、吹っ掛けるつもりかい?
そういうのは悪徳商売って言うんだよ」
「僕としては、物を良く無くす君の御主人が悪いんじゃないのかな?」
「おい、私の御主人を悪く言うんじゃない!」
一触即発の雰囲気に、ジンは二人の間に入る。
「二人ともそこまで、少し落ち着け」
「ジン・・・・・」
「ジンに・・・・・御主人!? どうしてここに!?」
「ナズーリンこそ、どうしてここに?」
「そ、それは・・・・・」
「取り合えず、事情を説明してくれないか? 霖乃助」
「わかった。実は――――」
霖乃助はこれまでの経緯を話始めた。
いつも通り霖乃助が香林堂を開いていると、魔理沙がやって来て、宝塔を買い取ってくれと言われたらしい。
最初は断ったが、魔理沙の強引さに負け、結局買い取ってしまったらしい。
次にナズーリンがやって来て、宝塔を返して欲しいと言って来た。
しかし、このままタダで返してしまえば、こちらが大損してしまうので、適正価格を提示したら、ナズーリンが盗品を売るのかと、霖乃助に抗議したらしい。
「なるほど、取り合えず霖乃助。
いくら魔理沙相手でも、盗品を買い取るなよ」
「それは分かっていたんだけど・・・・・あの切羽詰まった表情を見てつい・・・・・」
「魔理沙には、とことん弱いな・・・・・ところで、やはり返してはくれないのか?」
「流石にタダでは無理だね。
こっちも商売だから」
「盗品を売っての商売かい?」
「ナズーリン! すみません、この子が失礼な事を・・・・・」
「いや、こちらにも非があるからね。
出来れば返して上げたいけど・・・・・このまま返したら、結構な損害になるからね」
「そんなに酷いのか?」
「物が物だからね、かなりの額で買い取ったんだ」
そう言って霖乃助が言った額は、驚く程の高さであった。
「いくらなんでも高過ぎだろう!?」
「僕もそう思うけど、能力で鑑定する限り、それが妥当な額なんだよ・・・・・」
「流石財宝を産み出す力を持つことだけはあるな・・・・・」
「でもどうしましょう・・・・・流石にそんな額は払えませんし・・・・・」
「元々こっちの物なんだ。
奪い返せば良いさ」
「流石にそれは駄目だろ」
「じゃあどうするんだい?
他に良い案が有るとでも?」
「・・・・・仕方が無いか」
そう言ってジンは、いつも着けていた腕時計を取り外し、霖乃助の前に置いた。
「霖乃助。これを鑑定してくれないか?」
「ジンくん?」
「これで足りるかどうか分からないが、足しになれば」
「いや、君にそこまでして貰うつもりは―――」
「霖乃助もナズーリンも、俺の友人だからな。
どっちも損して欲しくは無い」
「ジン・・・・・」
「良いのかい?」
「良いんだ。鑑定を頼む」
「君がそう言うなら・・・・・どれどれ」
霖乃助は腕時計を鑑定し始める。
すると霖乃助は表情を変える。
「これは・・・・・確かにこれなら・・・・・でも、本当に良いのかい? これは君の―――」
「大丈夫だ。それよりこれで足りるのか?」
「まあ、差額は多少残るけど・・・・・それはオマケしよう」
そう言って、霖乃助は宝塔をジンに渡した。
ジンはそれを星に渡す。
「もう無くさないように」
「はい! ありがとうジンくん!」
「私からも礼を言うよ。
本当に君には助けられるよ」
「どういたしまして。
ところで、どうしてナズーリンはここに?」
「そ、それは・・・・・」
「それは?」
「途方に暮れている御主人を見て、痛ましくてな。それで―――」
「それでこっそり宝塔を探していたのか」
「ナズーリン・・・・・ごめんなさい!」
「ご、御主人?」
「私は貴女のオヤツを食べてしまったのに、貴女は――――」
「顔を上げてくれ御主人。
貴女は毘沙門天だ。そんな簡単に頭を下げてはいけないよ」
「いえ、毘沙門天だろうとなんだろうと、自分の非は認めないといけません。
本当すみませんでした」
「ああもう、だから頭を下げるなと―――ジンも何かを言ってやってくれ」
「別に良いじゃないか、これで丸く収まった事だし。
俺は帰らせて貰う」
「おい、ちょっと待―――行ってしまったか・・・・・」
「ナズーリン。少しジンくんの様子おかしくなかった?」
「そう言えばそうだな・・・・・おい店長、何か知っているか?」
「・・・・・そうだね、別に口止めされている訳では無いからね。
原因はこの腕時計さ」
「この腕時計がどうかしたのかい?」
「これはね、ジンの―――」
霖乃助は二人に腕時計の曰くを話すのであった。
―――――――――――
それから数日後、ジンはいつも通りに境内を掃除をしていた。
しかし、その姿は何処か元気がなかった。
(はあ・・・・・ああは言ったものの、やはり未練があるな・・・・・)
腕時計を手放した事に後悔はなかったが、やはり未練があった。
それほどあの腕時計が大切な物であったのだ。
(考えても仕方ない。時計の事は考えないようにしよう・・・・・)
時計の事は諦める。そう思った時、神社に星、ナズーリン、そして魔理沙がやって来た。
「ん? 星にナズーリンに・・・・・魔理沙? 珍しい組み合わせだな」
「ま、まあな・・・・・」
「? どうした魔理沙? 何か変だぞ」
「そ、それはだな・・・・・」
何処か歯切れ悪そうな魔理沙に変わって、ナズーリンが言葉を続ける。
「なに、この前の宝塔の件での御礼がしたくてな」
「別に礼なんて―――」
「そんな事言わず、受け取って下さい。ほら、魔理沙さん」
「お、おう・・・・・これだぜ!」
「そ、それは・・・・・」
魔理沙がジンに差し出したのは、香林堂で手放した腕時計であった。
「どうしてこれが?」
「駄目じゃないですか、親御さん贈り物なんでしょ?」
「どうしてそれを・・・・・」
「霖乃助さんが話してくれたんです」
星の話によると。
能力で鑑定した結果、特注で作られた腕時計で、しかも親から贈られた物だと分かったらしい。
「霖乃助の能力で、そこまで分かるのか・・・・・」
「それで私とナズーリン、事情を知った魔理沙さんの三人で買い戻したんです」
「何もそこまでしなくても・・・・・」
「それはこちらの台詞さ。
そんな大切な物を手放す事は無いだろうし、少しは自分の事を考えた方が良いんじゃないか?」
「はは・・・・・霊夢によく言われている」
「悪かったなジン。
まさかそんな事になっているとは思わなくて・・・・・」
「別に良いさ。それよりも、今後は盗品を押し売るなよ」
「善処するぜ」
「ところで、金はどうしたんだ?
それなりの金額だった筈だが・・・・・」
「それについては御主人に考えがあったようでな」
「はい、宝塔を売って買い戻しました」
「「「・・・・・・・・・・は?」」」
「ですから、宝塔を売りました」
「「「な、何だってーーー!!??」」」
三人の声が境内に響く。
こうして再び、宝塔を買い戻す事になり、更に一騒動起こるのだが、それはまた別の話である。
今回出てきたナズーリンですが、設定を少しいじって、命蓮寺で星と一緒に暮らしている事にしています。
その方が、書きやすかったので。
今後も、書きやすいように原作の設定を変えたりするかも知れません。