東方軌跡録   作:1103

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 絡みが少ないキャラを出して欲しいというリクエストがあったので、今回は地底組の話しを書きました。
今はこれが精一杯ですが、少しづつ増やしていこうと思っています。



地底のアルバイター

 ここは幻想郷の地下に存在する、旧都。

そこの一角の酒場では、旧都の妖怪達が毎日のように賑わっていた。

 

「ねぇ店員さん、博麗酒はもうないの?」

 

 客の一人がそう尋ねた。

彼女の名は黒谷ヤマメ、この旧都に住んでいる妖怪の 一人である。

彼女の問いに、店員は申し訳なさそうに答える。

 

「ごめんねぇ、今品切れなんだよ」

 

 その言葉に、同席していたキスメと水橋パルスィは落胆する。

 

「もう無いんですか・・・・・」

 

「本当は、どこ隠しているんじゃない?」

 

「失敬な! どうしても飲みたいのなら、博麗神社に行くしかないよ」

 

そう言って、他の客の相手に行ってしまった店員。

残された三人は、顔見合わせながら相談をし始めた。

 

「神社か・・・今から行くのもちょっとな」

 

「それに、あそこで売っているのって、純正品だよね?めちゃくちゃ高いんじゃ・・・・・・」

 

「高いじゃなくて、もの凄い高いのよ。今じゃ、純度100%なんて、とても買えないわよ」

 

 当初は、水で薄めず発売していた博麗酒であったが、日に日に購入者が増えて行き、供給が追い付かなくなり、様座な問題が起きてしまった時期があった。

その時ジンは、苦肉の策として、酒を水増しする事でどうにか乗り切ったのである。

それでもやはり、純正品を飲みたい客は後を絶たず、結局酒の価格は沸騰してしまった。

 

「どうにか、お金を掛けずに飲める方法論はないかねぇ・・・・・・」

 

「悪い事は考え無い事ね。酷い目に合いたくなければ」

 

「どういう事?」

 

「実は昔、神社から黄金の酒虫を奪い出そうとした連中がいたらしいのよ」

 

「うわ・・・何て命知らずな奴らだよ」

 

「そうね。私も話を聞いた時はそう思ったわ。博麗の巫女が居るところに、強盗しに行くなんて、新しい自殺の方法かと思ったわ」

 

「その人達はどうなったの?」

 

 キスメがそう尋ねると、パルスィは簡潔に答えた。

 

「勇儀に折檻されたわ。多分、五体満足ではないでしょう」

 

「「あー・・・・・・」」

 

 ヤマメとキスメは、その光景を何となく想像出来てしまった。

自業自得なのだが、少しだけ同情してしまう二人だった。

 

「やっぱり正攻法で行くしかないかな?」

 

「体でも売るの?」

 

「誰が売るかい!・・・いや、待てよ・・・・・・」

 

「ヤマメちゃん?」

 

 ヤマメはしばらく考え込み、そして名案を思い付いた。

 

「そうだよ! 私達の体を使えば良いのよ!」

 

「ええぇぇぇ!?」

 

「貴女正気? さっきの冗談で言ったんだけど」

 

「そっち方面じゃないよ! わたしが言ったのは、アルバイトの方」

 

「ああ、そっちの方ね」

 

「どういう事?」

 

 イマイチ理解していないキスメに、自分の考えを簡潔に説明した。

 

「つまり、博麗神社で働いて、その報酬で博麗酒を貰うって寸法なわけ」

 

「そんな上手くいくかしら?」

 

「やってみなきゃわからないでしょ。よーし、頑張るぞー」

 

 そう言ってヤマメは、残った僅かな酒を飲み干した。

 

――――――――――――――――

 

 次の日、ヤマメとキスメはさっそく博麗神社に訪れ、ここで働きたい事をジンに伝えていた。

因みにパルスィは、“柄じゃない”と言って、ヤマメ達の誘いを断っていた。

 

「なるほどな、理由はともあれ、人手が来てくれるのは助かる。さっそくだが、三人には、今日から働いて貰うからな」

 

「え? 三人?」

 

「私達二人しかいないけど・・・・・・」

 

「・・・・・・そろそろ能力を解いたらどうなんだこいし?」

 

「はーい♪」

 

「「うひゃあ!? 」」

 

 突然の声に、驚くヤマメとキスメ。後ろを振り向くと、そこには屈託の無い笑顔をしているこいしの姿があった。

 

「こ、こいしちゃん!?」

 

「い、いつの間に・・・・・・」

 

「昨日の酒場からだよ。なんだか面白い話をしてたから、つい盗み聞きしちゃって」

 

「そう言えば、代金が一人 分多かったのって・・・・・・」

 

「こいしちゃんの分だったんだね」

 

「何はともあれ、働くのはこの三人で良いのか?」

 

 ジンがそう尋ねると、三人はしっかりと頷いた。

 

「よし、それじゃあ仕事の振り分けをするから、しっかりと聞いてくれ。先ずは―――――」

 

 ジンは三人に、仕事の振り分けと説明を始めるのであった。

 

――――――――――――――――

 

 仕事を振り分けた結果、キスメはアルバイトの先輩である天子と 一緒に売店の接客を担当する事になった。

 

「い、いらっしゃいませー・・・・・・」

 

「ちょっとあんた、そんな小さい声じゃ、お客様に聞こえないでしょ」

 

「す、すみません・・・・・・」

 

「まあいいわ、私が手本を見せてあげるわ。しっかり見ておきなさい」

 

 そう言って天子は客の一人に笑顔で、接客を始めた。

 

「いらっしゃいませ、何をお求めでしょうか? ――――はい、こちらですね。どうもありがとうございました♪」

 

 見事な接客の仕方に、キスメは舌を巻いた。

 

「す、凄いです・・・・・・」

 

「まあね、こっちの手伝いはそれなりに長いから。あんたもしっかり頑張りなさい」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 こうしてキスメは、天子に色々と教わりながら、しっかりと仕事をこなしていった。

 

――――――――――――――――

 

 ヤマメの担当は刺繍の製作で、針妙丸と共に作業を行っていた。

 

「へぇ、なかなか上手いじゃない」

 

「そりゃあ特技の一つだからね。針を使う事には、私の右に出る人はいないよ」

 

 針妙丸は得意気にそう答え、見事な手捌きで位とを縫い付ける。

しかし、そこで針妙丸は重大なミスに気づく。

 

「あっ! ここに使う糸が足りない! どうしょう・・・・・・」

 

「それなら、私の糸を使うかい?」

 

「それじゃ、そっちが使う分が足りないんじゃあ・・・・・・」

 

「大丈夫、私にはこれがあるから」

 

 そう言って、指先から細い糸を出して見せた。

 

「へ~ヤマメって、糸を出せるんだ」

 

「まあね、これでも土蜘蛛だからね」

 

「ねぇ、その糸見せてよ」

 

「いいよ」

 

 ヤマメは、針妙丸に自分が出した糸を見せた。針妙丸は興味深そうに、ヤマメのって糸を観察し始めた。

 

「細くて綺麗な糸だね」

 

「そ、そうかい?」

 

「うん、私は糸を見る目もあるから、ヤマメの糸は品質がとても良い物だと保証するよ」

 

「そんな事初めて言われたよ。ありがとう針妙丸」

 

 ヤマメは針妙丸のアタマヲ撫でながら、御礼を言った。

針妙丸は、満足そうに笑うのであった。

 

――――――――――――――――

 

 こいしの方はというと、サニー率いる三妖精と共に、神社周辺のゴミ拾いをしていた。

 

「いいこいし? 私達の仕事は、周辺のゴミを拾い集める事よ」

 

「それはわかったけど、何でこんなにゴミが落ちているの?」

 

 こいしがそう尋ねると、ルナが簡単に説明してくれた。

 

「それはね、ここが幻想郷と外の世界の境にある場所だから、外の世界のゴミが入ってくる時があるのよ。だからこうして、ゴミを拾っていかないと駄目なの」

 

「そうなんだ。結構大変そうだね・・・・・・」

 

「それでも、思いの外実りがあるのよ。例えば――――」

 

 そう言ってスターが何やら探し始めた。しばらくするとガラス玉を見つけ、それをこいしに見せた。

 

「こういったお宝も見つかるから、楽しいのよね」

 

「わ~綺麗♪ 私も探そっと♪」

 

「よーし、誰が一番のお宝を見つけるか、競争よ!」

 

「ゴミ拾いも忘れないようにね」

 

こうして四人は、とても楽しそうにお宝集めとゴミ拾いを行うのであった。

 

――――――――――――――――

 

それから時が過ぎ、一日の仕事頑がようやく終わりを告げた。

こいしはそのままサニー達の家にお泊まりに行き、ヤマメとキスメは、霊夢と妖弧が作った夕飯をごちそうになっていた。

 

「う~ん♪ なかなか美味いじゃない。あんたって、料理上手だったんだね」

 

「これでも一人で自炊してたんだから、そりゃいやいやでも上達するわよ」

 

「れ、霊夢さん、その話題はちょっと・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

先ほどの会話で、ジンのテンションが落ちた事に気づいた霊夢は、慌ててフォローを入れる。

 

「あっ! べ、別にジンに対して嫌味を言った訳じゃあ―――――」

 

「良いんだ別に、俺が料理が出来ないのは自分が一番理解しているから・・・・・・」

 

 そう言って、ジンは心底落ち込んだ。

そんなジンの姿を、ヤマメとキスメは珍しいそうに見ていた。

 

「へぇ、ジンも落ち込む時があるんだ」

 

「俺だって人間だ、落ち込む時ぐらいある」

 

「いや、そうじゃなくて、“自分の事で落ち込むんだ”っていう一番」

 

「・・・ああ、なるほどね」

 

ヤマメの言葉を聞いて、天子は彼女が何を言おうとしているか理解出来た。

 

「確かにジンって、自分の事で落ち込んだりしないよね。あるとしたら、誰が絡んだ時ぐらいだもの」

 

「そうなのよね。自分より他人を優先する傾向があるから、色々と首を突っ込んだり、お節介をしたりするのよね」

 

「でも、そういう所がジンの良いところだと思うんだけど?」

 

「確かに良いところだと思うわ。でも、行き過ぎは駄目なのよ」

 

「どういう事?」

 

「あまりにも自分を蔑ろにしてはいけないって事よ。誰か為であっても、幸福を自ら手放す事は、とてつもなく愚行なのよ。そういった人間は、自分も回りも不幸するだけ。もし、誰かを助けたいのなら、自分もその助けたい人も幸せにしなきゃ、結局不幸しか残らないものなのよ」

 

「わかってる。自己満足の救いは、かえって相手を不幸にするだけだって、身にもって理解したから」

 

「それならもう少し、自分の為に何かやったらどうなの? あんたを見ていると、他人の世話しかしていないように見えるんだけど?」

 

「そんな事は・・・無いと思う」

 

「怪しいわねぇ、少しは正邪みたいに自由気ままにしてみれば良いじゃない」

 

「あん? 私がどうかしたか?」

 

 するとそこに、凄い寝癖がついている正邪がやって来た。その様子から、今まで寝ていた事が分かる。

そんなだらしない姿を見て、霊夢は考えを改める。

 

「・・・・・・やった、正邪みたいにってのは訂正するわ」

 

「だな。いくら自由気ままにと言っても、あそこまでだらしなくなりたくは無い」

 

「おまえら、一体何の話をしているんだ?」

 

「何でも無いわ。それよりも、さっさと食べなさいよね。片付かないから」

 

「はいはいっと・・・ん? 何だか今日は人数が多い気がするな」

 

「ああ、実は――――」

 

 その後も談笑を続ける一同。この日の博麗神社は、いつもより賑わった。

 

――――――――――――――――

 

翌日。ヤマメ宅では、ヤマメとキスメの二人が、昨日の出来事をパルスィに話していた。

 

「へぇ、あの男でも、自分の事で落ち込んだりするのね。てっきり、嫉妬心の無いつまらない男だと思っていたわ」

 

「もしかして、パルスィってジンの事嫌いなの?」

 

「ええ、大っ嫌いよ。嫉妬心が無い人間はね。

いい? 嫉妬心が無い奴等は、あらゆる事に諦め、妥協する奴らなのよ。相手に嫉妬するから、その人近づきたい、その人に負けたくない、その人に勝ちたい。そういった上昇思考になり、より自分を成長期させる。嫉妬心を無くした奴は停滞し、後は落ちるだけ。そんな人間見ても、つまらないでしょ?」

 

「まあ確かにそうだけど、ジンはそれなりに頑張っているよ?」

 

「それは、あの巫女の為にでしょ? 彼は自分の為に頑張ろうとしていない。いわば霊夢に依存しているのよ。拠り所が無くなれば、あっという間に崩れるでしょうね」

 

「それはちょっと言い過ぎじゃあ――――」

 

「まあでも、多少の嫉妬が出来るのなら、改善は出来るんじゃ無いかしら。彼はもう少し、自分の為に頑張るべきよ」

 

「霊夢もそんな事言ってたね」

 

「具体的にはどんな事?」

 

「さあ? それは当事者が探すべき事よ。私達があれこれ考える事じゃないわ」

 

「ずいぶんと冷たいンダネ」

 

「当たり前でしょ、嫌いなんだから。

それよりも、バイトの成果はどうなの?」

 

「ふふ、実はバイト代としてこれを貰ったんだ」

 

 そう言って、一つの小瓶を取り出した。

 

「それは?」

 

「これは黄金酒虫のエキスだよ。これ一滴で一瓶の水を酒に変えられる代物なんだよ。と言ってもまだまだ試作段階らしいけど」

 

「へぇ、かなり太っ腹なのね。普通バイト代ででないわよ」

 

「私もそう思ったけど、試作品だからこそ、様々な人の意見を取り入れたいって」

 

「なるほどね。まあ、向こうがそう言うのなら遠慮なくいただきましょうか」

 

 その後三人は、酒虫エキスの酒を美味しくいただくのであった。

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