今はこれが精一杯ですが、少しづつ増やしていこうと思っています。
ここは幻想郷の地下に存在する、旧都。
そこの一角の酒場では、旧都の妖怪達が毎日のように賑わっていた。
「ねぇ店員さん、博麗酒はもうないの?」
客の一人がそう尋ねた。
彼女の名は黒谷ヤマメ、この旧都に住んでいる妖怪の 一人である。
彼女の問いに、店員は申し訳なさそうに答える。
「ごめんねぇ、今品切れなんだよ」
その言葉に、同席していたキスメと水橋パルスィは落胆する。
「もう無いんですか・・・・・」
「本当は、どこ隠しているんじゃない?」
「失敬な! どうしても飲みたいのなら、博麗神社に行くしかないよ」
そう言って、他の客の相手に行ってしまった店員。
残された三人は、顔見合わせながら相談をし始めた。
「神社か・・・今から行くのもちょっとな」
「それに、あそこで売っているのって、純正品だよね?めちゃくちゃ高いんじゃ・・・・・・」
「高いじゃなくて、もの凄い高いのよ。今じゃ、純度100%なんて、とても買えないわよ」
当初は、水で薄めず発売していた博麗酒であったが、日に日に購入者が増えて行き、供給が追い付かなくなり、様座な問題が起きてしまった時期があった。
その時ジンは、苦肉の策として、酒を水増しする事でどうにか乗り切ったのである。
それでもやはり、純正品を飲みたい客は後を絶たず、結局酒の価格は沸騰してしまった。
「どうにか、お金を掛けずに飲める方法論はないかねぇ・・・・・・」
「悪い事は考え無い事ね。酷い目に合いたくなければ」
「どういう事?」
「実は昔、神社から黄金の酒虫を奪い出そうとした連中がいたらしいのよ」
「うわ・・・何て命知らずな奴らだよ」
「そうね。私も話を聞いた時はそう思ったわ。博麗の巫女が居るところに、強盗しに行くなんて、新しい自殺の方法かと思ったわ」
「その人達はどうなったの?」
キスメがそう尋ねると、パルスィは簡潔に答えた。
「勇儀に折檻されたわ。多分、五体満足ではないでしょう」
「「あー・・・・・・」」
ヤマメとキスメは、その光景を何となく想像出来てしまった。
自業自得なのだが、少しだけ同情してしまう二人だった。
「やっぱり正攻法で行くしかないかな?」
「体でも売るの?」
「誰が売るかい!・・・いや、待てよ・・・・・・」
「ヤマメちゃん?」
ヤマメはしばらく考え込み、そして名案を思い付いた。
「そうだよ! 私達の体を使えば良いのよ!」
「ええぇぇぇ!?」
「貴女正気? さっきの冗談で言ったんだけど」
「そっち方面じゃないよ! わたしが言ったのは、アルバイトの方」
「ああ、そっちの方ね」
「どういう事?」
イマイチ理解していないキスメに、自分の考えを簡潔に説明した。
「つまり、博麗神社で働いて、その報酬で博麗酒を貰うって寸法なわけ」
「そんな上手くいくかしら?」
「やってみなきゃわからないでしょ。よーし、頑張るぞー」
そう言ってヤマメは、残った僅かな酒を飲み干した。
――――――――――――――――
次の日、ヤマメとキスメはさっそく博麗神社に訪れ、ここで働きたい事をジンに伝えていた。
因みにパルスィは、“柄じゃない”と言って、ヤマメ達の誘いを断っていた。
「なるほどな、理由はともあれ、人手が来てくれるのは助かる。さっそくだが、三人には、今日から働いて貰うからな」
「え? 三人?」
「私達二人しかいないけど・・・・・・」
「・・・・・・そろそろ能力を解いたらどうなんだこいし?」
「はーい♪」
「「うひゃあ!? 」」
突然の声に、驚くヤマメとキスメ。後ろを振り向くと、そこには屈託の無い笑顔をしているこいしの姿があった。
「こ、こいしちゃん!?」
「い、いつの間に・・・・・・」
「昨日の酒場からだよ。なんだか面白い話をしてたから、つい盗み聞きしちゃって」
「そう言えば、代金が一人 分多かったのって・・・・・・」
「こいしちゃんの分だったんだね」
「何はともあれ、働くのはこの三人で良いのか?」
ジンがそう尋ねると、三人はしっかりと頷いた。
「よし、それじゃあ仕事の振り分けをするから、しっかりと聞いてくれ。先ずは―――――」
ジンは三人に、仕事の振り分けと説明を始めるのであった。
――――――――――――――――
仕事を振り分けた結果、キスメはアルバイトの先輩である天子と 一緒に売店の接客を担当する事になった。
「い、いらっしゃいませー・・・・・・」
「ちょっとあんた、そんな小さい声じゃ、お客様に聞こえないでしょ」
「す、すみません・・・・・・」
「まあいいわ、私が手本を見せてあげるわ。しっかり見ておきなさい」
そう言って天子は客の一人に笑顔で、接客を始めた。
「いらっしゃいませ、何をお求めでしょうか? ――――はい、こちらですね。どうもありがとうございました♪」
見事な接客の仕方に、キスメは舌を巻いた。
「す、凄いです・・・・・・」
「まあね、こっちの手伝いはそれなりに長いから。あんたもしっかり頑張りなさい」
「は、はい! よろしくお願いします!」
こうしてキスメは、天子に色々と教わりながら、しっかりと仕事をこなしていった。
――――――――――――――――
ヤマメの担当は刺繍の製作で、針妙丸と共に作業を行っていた。
「へぇ、なかなか上手いじゃない」
「そりゃあ特技の一つだからね。針を使う事には、私の右に出る人はいないよ」
針妙丸は得意気にそう答え、見事な手捌きで位とを縫い付ける。
しかし、そこで針妙丸は重大なミスに気づく。
「あっ! ここに使う糸が足りない! どうしょう・・・・・・」
「それなら、私の糸を使うかい?」
「それじゃ、そっちが使う分が足りないんじゃあ・・・・・・」
「大丈夫、私にはこれがあるから」
そう言って、指先から細い糸を出して見せた。
「へ~ヤマメって、糸を出せるんだ」
「まあね、これでも土蜘蛛だからね」
「ねぇ、その糸見せてよ」
「いいよ」
ヤマメは、針妙丸に自分が出した糸を見せた。針妙丸は興味深そうに、ヤマメのって糸を観察し始めた。
「細くて綺麗な糸だね」
「そ、そうかい?」
「うん、私は糸を見る目もあるから、ヤマメの糸は品質がとても良い物だと保証するよ」
「そんな事初めて言われたよ。ありがとう針妙丸」
ヤマメは針妙丸のアタマヲ撫でながら、御礼を言った。
針妙丸は、満足そうに笑うのであった。
――――――――――――――――
こいしの方はというと、サニー率いる三妖精と共に、神社周辺のゴミ拾いをしていた。
「いいこいし? 私達の仕事は、周辺のゴミを拾い集める事よ」
「それはわかったけど、何でこんなにゴミが落ちているの?」
こいしがそう尋ねると、ルナが簡単に説明してくれた。
「それはね、ここが幻想郷と外の世界の境にある場所だから、外の世界のゴミが入ってくる時があるのよ。だからこうして、ゴミを拾っていかないと駄目なの」
「そうなんだ。結構大変そうだね・・・・・・」
「それでも、思いの外実りがあるのよ。例えば――――」
そう言ってスターが何やら探し始めた。しばらくするとガラス玉を見つけ、それをこいしに見せた。
「こういったお宝も見つかるから、楽しいのよね」
「わ~綺麗♪ 私も探そっと♪」
「よーし、誰が一番のお宝を見つけるか、競争よ!」
「ゴミ拾いも忘れないようにね」
こうして四人は、とても楽しそうにお宝集めとゴミ拾いを行うのであった。
――――――――――――――――
それから時が過ぎ、一日の仕事頑がようやく終わりを告げた。
こいしはそのままサニー達の家にお泊まりに行き、ヤマメとキスメは、霊夢と妖弧が作った夕飯をごちそうになっていた。
「う~ん♪ なかなか美味いじゃない。あんたって、料理上手だったんだね」
「これでも一人で自炊してたんだから、そりゃいやいやでも上達するわよ」
「れ、霊夢さん、その話題はちょっと・・・・・・」
「・・・・・・」
先ほどの会話で、ジンのテンションが落ちた事に気づいた霊夢は、慌ててフォローを入れる。
「あっ! べ、別にジンに対して嫌味を言った訳じゃあ―――――」
「良いんだ別に、俺が料理が出来ないのは自分が一番理解しているから・・・・・・」
そう言って、ジンは心底落ち込んだ。
そんなジンの姿を、ヤマメとキスメは珍しいそうに見ていた。
「へぇ、ジンも落ち込む時があるんだ」
「俺だって人間だ、落ち込む時ぐらいある」
「いや、そうじゃなくて、“自分の事で落ち込むんだ”っていう一番」
「・・・ああ、なるほどね」
ヤマメの言葉を聞いて、天子は彼女が何を言おうとしているか理解出来た。
「確かにジンって、自分の事で落ち込んだりしないよね。あるとしたら、誰が絡んだ時ぐらいだもの」
「そうなのよね。自分より他人を優先する傾向があるから、色々と首を突っ込んだり、お節介をしたりするのよね」
「でも、そういう所がジンの良いところだと思うんだけど?」
「確かに良いところだと思うわ。でも、行き過ぎは駄目なのよ」
「どういう事?」
「あまりにも自分を蔑ろにしてはいけないって事よ。誰か為であっても、幸福を自ら手放す事は、とてつもなく愚行なのよ。そういった人間は、自分も回りも不幸するだけ。もし、誰かを助けたいのなら、自分もその助けたい人も幸せにしなきゃ、結局不幸しか残らないものなのよ」
「わかってる。自己満足の救いは、かえって相手を不幸にするだけだって、身にもって理解したから」
「それならもう少し、自分の為に何かやったらどうなの? あんたを見ていると、他人の世話しかしていないように見えるんだけど?」
「そんな事は・・・無いと思う」
「怪しいわねぇ、少しは正邪みたいに自由気ままにしてみれば良いじゃない」
「あん? 私がどうかしたか?」
するとそこに、凄い寝癖がついている正邪がやって来た。その様子から、今まで寝ていた事が分かる。
そんなだらしない姿を見て、霊夢は考えを改める。
「・・・・・・やった、正邪みたいにってのは訂正するわ」
「だな。いくら自由気ままにと言っても、あそこまでだらしなくなりたくは無い」
「おまえら、一体何の話をしているんだ?」
「何でも無いわ。それよりも、さっさと食べなさいよね。片付かないから」
「はいはいっと・・・ん? 何だか今日は人数が多い気がするな」
「ああ、実は――――」
その後も談笑を続ける一同。この日の博麗神社は、いつもより賑わった。
――――――――――――――――
翌日。ヤマメ宅では、ヤマメとキスメの二人が、昨日の出来事をパルスィに話していた。
「へぇ、あの男でも、自分の事で落ち込んだりするのね。てっきり、嫉妬心の無いつまらない男だと思っていたわ」
「もしかして、パルスィってジンの事嫌いなの?」
「ええ、大っ嫌いよ。嫉妬心が無い人間はね。
いい? 嫉妬心が無い奴等は、あらゆる事に諦め、妥協する奴らなのよ。相手に嫉妬するから、その人近づきたい、その人に負けたくない、その人に勝ちたい。そういった上昇思考になり、より自分を成長期させる。嫉妬心を無くした奴は停滞し、後は落ちるだけ。そんな人間見ても、つまらないでしょ?」
「まあ確かにそうだけど、ジンはそれなりに頑張っているよ?」
「それは、あの巫女の為にでしょ? 彼は自分の為に頑張ろうとしていない。いわば霊夢に依存しているのよ。拠り所が無くなれば、あっという間に崩れるでしょうね」
「それはちょっと言い過ぎじゃあ――――」
「まあでも、多少の嫉妬が出来るのなら、改善は出来るんじゃ無いかしら。彼はもう少し、自分の為に頑張るべきよ」
「霊夢もそんな事言ってたね」
「具体的にはどんな事?」
「さあ? それは当事者が探すべき事よ。私達があれこれ考える事じゃないわ」
「ずいぶんと冷たいンダネ」
「当たり前でしょ、嫌いなんだから。
それよりも、バイトの成果はどうなの?」
「ふふ、実はバイト代としてこれを貰ったんだ」
そう言って、一つの小瓶を取り出した。
「それは?」
「これは黄金酒虫のエキスだよ。これ一滴で一瓶の水を酒に変えられる代物なんだよ。と言ってもまだまだ試作段階らしいけど」
「へぇ、かなり太っ腹なのね。普通バイト代ででないわよ」
「私もそう思ったけど、試作品だからこそ、様々な人の意見を取り入れたいって」
「なるほどね。まあ、向こうがそう言うのなら遠慮なくいただきましょうか」
その後三人は、酒虫エキスの酒を美味しくいただくのであった。