東方軌跡録   作:1103

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紺珠伝、完全無欠モードでクリア致しました。

正直今回の難易度が凄まじいです。その一方で、チャプター形式によるチェックポイントは非常に助かりました。ステージの最初でのやり直しより、途中の方が精神負担が軽くなります。その反面、ボムが使いづらくなりましたが・・・・・・。

さて、今回の話しは、自機組が紺珠の薬を渡されず、ジンが代わりに飲んで異変を解決するというものです。
初めての試みなので、少しおかしい所もあるかも知れません。それでも、楽しんで貰えると幸いです。

後書きにも、少し解説を入れているので、そちらもよろしければ読んで欲しいです。


紺珠伝クリア記念 、月の都を救え! 前編

ここは迷いの竹林にある永遠亭。ジンは珍しく、永琳に呼び出されていた。

 

「どうしたんだ永琳、俺なんか呼び出して? 何かあったのか?」

 

「ええ、問題が起きたわ・・・月の民が攻めて来たのよ」

 

「・・・詳しく教えてくれないか?」

 

永琳の 話によると、月の民が幻想郷を遍都しようと、密かに調査隊を送り込んでいるとの事。永琳はこれを阻む為にある薬を作った。

 

「これが“紺珠の薬”。未来を見通し、それを覆す力を得るわ。貴方には、これを使って月の民を追い返して欲しいのよ」

 

そう言って薬を差し出す永琳であったが、ジンはそれを受け取らず、逆に彼女に質問をする。

 

「永琳、本当に月の民が幻想郷を侵略しようとしているのか?」

 

「・・・どういう意味?」

 

「だっておかしいだろ、穢れを嫌がって月に行った連中が、わざわざ穢れに満ちた地上に戻って来る理由が無い。あるとしたら、そうせざるおえない事態になってしまった。違うか?」

 

ジンのこの質問に、永琳は観念したかのような表情をし、本当の事をジンに話始めた。

 

「ええ、貴方の言うとおり。今、月の都は攻め込まれているのよ」

 

「攻め込まれてるって・・・一体誰が攻めているんだ?」

 

「純狐という神霊よ。詳しく話すと長くなるけど?」

 

「聞かせてくれないか?」

 

「わかったわ。彼女は――――」

 

永琳はジンに、純狐について話始めた。ジンはそれを黙って聞いていた。

 

「・・・なるほど、つまりこれは純狐による復讐って訳か」

 

「ええ、そうなるわ。これまでは、月の賢者達が退いて来たけど、今回は――――」

 

「永琳がいないから、結構危ないっての訳か」

 

「そこまで言わないけど、かなり切羽詰まっているのは確かよ。そして、これを打開出来るのは地上人である貴方だけ。身勝手な話かも知れないけど、どうか力を貸して貰え無いかしら?」

 

永琳の言葉を聞いてジンは決断した。いや、最初から答えは決まっていた。彼は何も言わず、紺珠の薬を受け取った。

 

「引き受けてくれるの?」

 

「あんな話を聞かされたら、放っておけない。短い間だったけど、あそこには仲間と恩師がいる。月の都を救う、なんて大層な事より彼女達を助けたい。それが俺の理由だ」

 

そう言って、ジンは薬を飲み干した。すると体から異様な力が沸き上がる。

 

「何だか変な感じだな」

 

「直ぐに慣れるわ。うどんげ」

 

「はい、お呼びですか師匠?」

 

部屋の外で待機していたうどんげが、返事と共に入って来た。

 

「ジンを月の都まで案内してあげなさい。貴女なら出来るでしょ」

 

「へ? 何でジンが?」

 

「彼に頼んだからよ。今回の異変解決を」

 

「ええ!? 私は聞いてませんよ!」

 

「今話したわ」

 

「そもそも、どうしてジン何ですか! 月の民を追い返すなら私が―――――」

 

「彼には月の民を追い返す他に、もう一つやって貰いたい事があるのよ。だから彼に頼んだ。それだけの事」

 

「だからって・・・・・・」

 

「良いんだ鈴仙、これは俺が決めて引き受けた事だから。それに、紺珠の薬を飲んだからきっと大丈夫」

 

「え! あれを飲んだの!?」

 

「ああ、何だか変な感じがするが、概ね問題は無さそうだ」

 

その言葉を聞いて、永琳の薬を疑いもせずに飲めるなぁと、感心と呆れが入り交じった気持ちになった鈴仙であった。

 

「はぁ、貴方ってそういう人だったわね。わかったわ、私がキッチリとサポートしてあげる」

 

「ああ、頼りにしているよ鈴仙」

 

こうして二人は、異変を解決すべく動き出した。

これがジンが初めて本格的に関わる異変であった。

 

――――――――――――――――

 

妖怪山の麓に到着したジンと鈴仙。そこは既に戦いが始まっていた。

 

「もう何なのよこれ! いつもの激しさじゃないわ!」

 

「ああ確かに、いつものより攻撃が激しいな。それに、見慣れない奴等もいるしな」

 

「まったく、人様の敷地を勝手に占領するなんて、何とも非常識な人達なんでしょう!」

 

そこには霊夢、魔理沙、早苗の三人が既に戦っていた。

ジンと鈴仙は三人と合流する事にした。

 

「みんな!」

 

「え? ジン!? あんた何でここに!?」

 

「話は後だ、先ずはこいつらをどうにかするぞ!」

 

五人は協力し、目の前の障害を蹴散らした。

 

 

一通りの敵を倒し、ようやく一息をつける五人は、改めて情報を共有する事にした。

 

「なるほど。つまり今回の異変は、月の連中が関与しているのね」

 

「ああ、だが今回の異変を解決するには、月の都を攻め込んでいる奴をどうにかしないといけない」

 

「何とも面倒な事だな・・・・・・」

 

「つまり、月の都を攻め込んでいるわるーい黒幕を倒せば、月の人は引き上げるって訳ですね?」

 

「概ねその通りだ」

 

「よーし、この東風谷早苗! 幻想郷の為に、月の都を救いましょう!」

 

「随分やる気だなお前」

 

「だって月に行けるんですよ! こんなチャンスめったに無いじゃないですか♪」

 

「そっちが本音か・・・ところで、黒幕ってのは一体どんな奴なんだ鈴仙?」

 

「え!? 私は知らないわよ。そもそも月の都が攻め込まれているなんて、初めて知ったわ」

 

「何だよ、知らないのか。何にも知らされていないんだなお前は」

 

「うぐっ」

 

「その辺にしておけ魔理沙。黒幕の事なら俺が代わりに―――――避けろ!」

 

ジンの声と共に、全員がその場を飛んだ。五人が居た場所に、強烈な弾幕が降り注いだ。

 

「メーデー! メーデー! 地上人を発見! 直ちに援軍を要請する!」

 

現れたのは身の丈ある杵を持った兎。彼女を見て、鈴仙が声を上げる。

 

「青蘭じゃない。貴女が先見隊?」

 

「おや? 誰かと思えば鈴仙じゃない。おひさー♪」

 

「ええ、本当に久しぶり―――って、呑気に挨拶している場合じゃない!」

 

「知り合いか?」

 

「うん、月に居た頃の同輩」

 

「今は敵同士だけどね。兎同士が争う事になるなんて、世も末だねぇ・・・・・・」

 

「青蘭、お願いなんだけど、そこを通してくれない?」

 

「ダメダメ、素直に通したら私の責任になるんだもん」

 

「五対一でも?」

 

その言葉を聞いて青蘭は改めて、自分が置かれた状況を改めて認識すると、冷や汗をかき始めた。

 

「・・・・・・す、直ぐに援軍が来るわよ! そうなれば、泣きつくの貴方達の方よ!」

 

「本当に来てくれれば良いけどね」

 

「うるさーい! 私の異次元の弾幕を喰らいなさい!」

 

青蘭はやぶれかぶれで、五人に対して攻撃を行った。

 

 

それから少し時間が経過した。戦いは青蘭の敗北で終わり、彼女はボロボロになって、半べそをかいていた。

 

「何で援軍が来ないのよー? もうやだー」

 

「まあその何だ、どんまい」

 

「流石に五対一は卑怯だったか?」

 

「それでも挑んで来たんだから、自業自得でしょ」

 

「そうですね。正義味方は、五対一でも許されるものなんですよ」

 

「もうどっちか悪役か、わかったものじゃないな」

 

「ともかく青蘭、私達はここを通らせて貰うから」

 

「もう好きに通ってどうぞ。私はしばらく職務放棄をしているから」

 

「それで良いのか玉兎・・・・・・」

 

青蘭は、援軍が来なかった事にふてくされ、職務を放棄し始めた。そんな彼女を尻目に、ジン達は調査隊の基地へと向かった。

 

――――――――――――――――

 

調査隊の基地は、守矢神社に近い場所にあった。

 

「うちの神社の近くにあったなんて、全然気がつきませんでした・・・・・・」

 

「大方、月の技術の力でしょうね。それよりもジン」

 

「ん? どうした霊夢?」

 

「どうしたはこっちの台詞よ。あんた一体どうしちゃったのよ?」

 

「だから何が?」

 

「今のあんたは何処か異常よ。いくら軌跡が見えるからって、“無傷”なんて普通にあり得ない」

 

霊夢の言うとおり、この五人の中で唯一ジンだけが無傷であった。それは単純に、“全ての攻撃をかわしきった”結果なのだが、そのジンの姿は端から見れば異様で異常であった。

 

「言うなれば、変態機動ですね」

 

「確かにあれは変だよな。まるで最初から攻略法を知っていたかのようだったぜ」

 

「ああそれは多分、紺珠の薬のおかげだと思う」

 

ジンは三人に、永琳から貰った紺珠の薬の事を話した。

 

「未来を見通す力ねぇ・・・果たしてそれだけかしら?」

 

「どういう事だ?」

 

「未来を知るからと言って、それを回避する事は容易ではないのよ。それは貴方が一番理解しているんじゃない?」

 

霊夢の言うとおり、未来が見える=攻撃をかわせるという訳では無い。いくら先が見えても、かわせない時はかわせない。つまり―――――。

 

「未来を見通す意外に秘密がある筈。じゃないと、あそこまでの回避は出来ないわ。実際にどうなのジン?」

 

霊夢の問いに、ジンは何か心当たりがあるのか、気になる事を口にした。

 

「実は、さっきから妙な感覚を感じるんだ」

 

「妙な?」

 

「ああ。実はさっきの戦い、“何度も被弾していた”筈なんだ」

 

「・・・・・・え?」

 

「ジン、お前大丈夫か?」

 

「言いたい事は分かる。自分でも何を言っているか分からない、でもこれはだけは確かだ。“被弾した瞬間、被弾する前に時間が巻き戻っていたんだ”」

 

「もしかして、紺珠の薬の効果って―――――」

 

「未来を見通すんじゃなくて、“時間を一定に巻き戻す”って事?」

 

「感覚的にはそれが一番近いかも」

 

それは確かに完全無欠であった。自分が勝つまで何度もリトライが出来るこの力はある意味、自分の都合の良い未来(けっか)を生み出す力であった。

 

「因みに、何回リトライしたんだ?」

 

魔理沙は好奇心に駆られてそう聞いて来た。それについてジンは、何でも無いように、やり直した回数を答えた。

 

「たしか、二十そこらだったと思う」

 

「序盤で二十か・・・・・・解決する頃には百はいってそうだな」

 

「馬鹿な事言ってんじゃないわよ。ほら、お出迎えよ」

 

そう言った霊夢の視線の先には、月の尖兵達が押し寄せて来た。

 

 

尖兵達を退けた五人の前に、一人の玉兎が現れた。

 

「なるほど、お前らが襲撃者か・・・もぐもぐ」

 

「な、何なのこいつ・・・・・・?」

 

「呑気に団子を食っているぜこいつ」

 

「意地汚い兎ですね」

 

霊夢、魔理沙、早苗の三人には完全に目の前の兎を侮っていた。それを訂正するかのように鈴仙が叫んだ。

 

「気をつけて! こいつは団子を食べれば食べる程、力を増すのよ!」

 

「な、何だって!?」

 

「もう、人の能力をばらさないでよ。そういうのマナー違反だよ鈴仙」

 

「それはお互い様でしょ鈴瑚? 貴女だって私の能力を知っているでしょうに」

 

「まあね、だから既に対策済みだよ。この通り」

 

すると鈴瑚は、懐からサングラスを取り出し、それを掛けた。

 

「これで貴女の“波長を操る能力”は私に効かないわ。他の奴等も、大した能力も無さそうだし」

 

「もしかして、青蘭を捨て駒にしたの?」

 

「情報収集と言って欲しいな。さて、団子を食べて強くなった私に勝てるかな!?」

 

鈴瑚は団子を食べながら、激しい弾幕を放つ。

 

「うわぁっと!?」

 

「こなくそ!!」

 

「あわわわ!!」

 

「ちょっと不味いわね、団子を食べたあいつは、結構強いのよね・・・・・・」

 

「あっはっはっは! 戦いは始まる前から決まっているものだよ。お前達が来る前から、かなりの団子を食べたからね。更にこうして食べ続ければ、私は際限なく強くな―――――あれ?」

 

鈴瑚は改めて自分の手を見てみた。そこには確かに持っていた筈の団子のが無かった。

 

「あ、あれ? 私の団子は?」

 

「もぐもぐ・・・なかなか美味いなこの団子」

 

鈴瑚は声がした方を向いた。するとそこには団子を食べているジンがいた。

 

「あっ!? 私の団子!!」

 

「もぐもぐ・・・悪いな、失敬させて貰った」

 

「返せ!」

 

鈴瑚は団子を取り返そうとジンに掴み掛かろうとするが、ジンはそれを容易にかわし、逆に鈴瑚のあるツボを押した。

 

「な、何を・・・・・・うっ」

 

鈴瑚は突然吐き気に襲われ、堪えきれず嘔吐してしまった。

 

「胃を刺激するツボを付いた。これでお前は、今まで食べた団子を吐き出す。つまり――――」

 

「ただの雑魚に成り下がるってわけね♪」

 

そこに追い討ちを掛けるように、霊夢、魔理沙、早苗の、鈴仙の四人が鈴瑚を取り囲んだ。鈴瑚は迷わず、白旗を上げるのであった。

 

 

敗北を認めた鈴瑚は、あっさりと月への連絡通路をジン達に明け渡していた。

 

「奪っておいて何だが、こんなあっさりで良いのか?」

 

「いいよいいよ。これ以上痛い目に合いたくないし」

 

「これからどうするのあんた?」

 

「地上に残ろうと思う。こっちの方が面白そうだし」

 

「何処か当てはあるのか?」

 

「大丈夫、当てなんて適当に見つけるさ。それよりも、あんた達気をつけた方が良いよ。今の月の都はおかしいから」

 

「ああ知っている。俺達はそれを解決する為に行くんだ」

 

「そうだったのか・・・だったら最初から明け渡したときゃ良かった」

 

そう愚痴りながらも、五人を見送る鈴瑚であった。

 

――――――――――――――――

 

秘密の連絡通路は異様な光景であった。まるで宇宙空間にいるようで、まるで夢を見ているような感じでもあった。

 

「みんなー、はぐれないようについて来てー」

 

鈴仙はこの空間を知っているようで、四人を先導していた。一方、他の人達は戸惑い、好奇心、浮かれていた。

 

「何なのよここは・・・・・・」

 

「何だか変な感じだな。まるで夢心地だぜ」

 

「ああ・・・私は今、宙を飛んでいる・・・・・・」

 

「早苗、少し浮かれ過ぎだぞ。俺達は遊びに来た訳じゃあ――――」

 

「だって! 念願の月に行けるんですよ!? 少しくらい良いじゃないですか!」

 

「まあ、気持ちは分かるが―――」

 

「ちょっと二人とも、あんまり離れないように。ここで迷子になったら、月にも地上にも行けなくなるわよ」

 

「は、はい!」

「わ、わかった」

 

鈴仙の忠告を聞き入れた二人は、彼女には離れないようにした。

そして暫くして、次のが目前になった時、彼女が現れた。

 

「そこまでよジン」

 

現れた女性は、ナイトキャップと寝間着姿の、明らかに場違いな格好をしていた。

 

「誰よあんた?」

 

「ジンの知り合いか?」

 

「いや、こんな人知らないぞ」

 

「貴方は私の事を知らなくとも、私は貴方の事をよーく知っています。ずっと見ていましたから」

 

「もしや・・・ジンさんのストーカーですか!?」

 

「違います」

 

早苗のトンチンカンな答えに、女性はため息をつきながら否定した。

その一方で、鈴仙だけが彼女の正体に気づいた。

 

「ちょっと! 何で第四傀安に獏がいるのよ!?」

 

「獏ですって・・・・・・」

 

「そう、私は獏、ドレミー・スイート。夢の支配者にして、夢の守護者です」

 

「何で獏がこんなところにいるんだ? 夢を喰う妖怪なんだろ?」

 

「はい、だからこそここにいるのです」

 

「?? 意味がいまいち理解出来ないんですけど・・・・・・」

 

「えっとね。実はこの通路、夢の世界で出来ているのよ」

 

「夢の世界・・・もしかして俺達は生身で夢の世界に来ているのか?」

 

「ええその通りです。そしてジン、貴方を排除させて貰います」

 

ドレミーはハッキリとジンに対して明確な敵意を見せた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺が一体何をしたと言うんだ!」

 

「貴方は夢を自覚し、夢を造り出す能力に目覚めかけています。それだけなら未だしも、貴方は現実を夢にしてしまう能力を得てしまった」

 

「現実を・・・夢に?」

 

「気づいているんでしょ? これまでの道中にて、貴方は自分にとって不都合な事を夢にして、都合の良い事を現実にして来た。それは決して許され無い事です。よって、貴方を排除します」

 

そう言って、ドレミーはジンに向けて弾幕を放った。だが――――。

 

「神技!“八方龍殺陣”!」

 

霊夢のスペルカードでそれを防ぐ。そして彼女は、ドレミーに御払い棒を向ける。

 

「あんた、わけわかんない理由でジンに危害を加えるというなら、私が相手よ!」

 

「貴女は何故彼を庇うのです? 彼の能力は、下手をすれば世界を破滅に導く危険性があるのですよ」

 

「現実を夢にする能力が?」

 

「それはあらゆる結果、歴史、世界でさえも夢にし、消し去る能力なのですよ」

 

「それはまた、永琳の薬はとんでもないなぁ・・・・・・」

 

「永琳・・・八意の事ね。彼女でも、彼の能力は想定外だったのでしょう」

 

「どういう事?」

 

「彼の本来の能力―――“軌跡を視る能力”というのは、世界に刻まれた記録を視る、というのが本来の本質。未来の軌跡はその副産物に過ぎません。

そして無意識に蓄積された記録は、彼の夢として新たな世界を創造し始めた。そして紺珠の薬によって、その能力は現実にも及ぶ事になってしまった。」

 

「ますますよくわからんな。もう少し噛み砕いて説明をしてくれ」

 

「簡単に言うと、彼の夢の世界が現実の世界に置き換わろうとしているのです。

そうなってしまったら最後、世界は彼の思うのまま。それがどれだけ危険なのか、わかりますよね?」

 

この話を聞かされて、一番ショックを受けたのはジンであった。異変を解決するために得た力が、実は別の異変を起こしていることに。

 

「わかったのなら、彼の排除の邪魔をしないで貰えますか? 貴女だって、そんな事は黙認出来ないでしょう?」

 

「・・・・・・そうね。確かに黙認は出来ないでしょうね。でも、それはジン以外だったらの場合よ」

 

「え? あ、貴女は私の話を聞いていましたか?」

 

「もちろん聞いていたわよ。でも、こいつが私利私欲で能力を使うなんてあり得ない」

 

「な、何故、断言出来るのです!?」

 

「もうかれこれ何年も一緒に居るのよ。こいつの性格は把握しているわ。

どうしようもなく御人好しで、独占欲も無い、他人の悲しみや痛みに敏感な癖に、自分の事にはとても鈍感。自分よりも他人を優先する大馬鹿よ? 今回だって、月にいる友人を助けに行くのが理由なのよ? 私だって呆れちゃうわよ」

 

「月人に・・・友人? 地上人が?」

 

「ああ、豊姫と依姫、そして玉兎の皆、皆かげがえの無い友人なんだ。俺は彼女達を助ける為に、この力を得た。それ以外に使うつもりは無い」

 

「ふむ・・・・・・」

 

ドレミーは少し考えた。確かに彼女に言うとおり、ジンは私利私欲に能力を使った事は無い。しかし、人間という生き物は、強大な力を得ると豹変してしまうのだ。

だからこそ確かめねばならない、彼がどういった人間なのかを。

 

「良いでしょう。私との弾幕勝負に勝ったのなら、貴方の事は保留いたしましょう」

 

「そんな事で良いのか?」

 

「はい、ただし紺珠の力の使用は禁止です。勝負になりませんから」

 

「わかった、受けて立とう」

 

こうしてジンは、ドレミーとの弾幕勝負に挑むのであった。

 

 

それから少し時間が経ち、ジンはボロボロになりながらも、ドレミーに勝利を納めた。

 

「まさか・・・本当に紺珠の力無しで私に勝つとは・・・・・・」

 

「これで文句は無いわよね?」

 

「はい、私から持ち掛けた話しです。約束は守りましょう。その前に―――――」

 

ドレミーが手をかざすと、ジンの傷は瞬く間に治った。

 

「月を侵略している親玉と戦うには、無傷でなければなりません。これで、彼女にも対抗出来るでしょう」

 

「親玉ってどんな奴なんだ?」

 

魔理沙の質問に、ドレミーは知っている限りの事を話した。

 

「親玉の名は“純狐”、月の民に深い恨みを抱く者です。詳しい話は、サグメから聞くと良いでしょう」

 

「サグメ?」

 

「月の賢者の一人よ。滅多に喋らない人だけど、話は分かる人だから」

 

そうして五人は、ドレミーに道を譲ってもらい。月の都へと向かいだした。その際、ドレミーがジンを引き止める。

 

「ジン」

 

「ん?」

 

「今回は見逃しますが、もし貴方が紺珠の力を悪用したその時、私は全身全霊を掛けて貴方を排除します。ゆめゆめ忘れないように」

 

「ああ、わかった」

 

「貴方がたに、吉夢があらんことを」

 

ドレミーは彼女なりのエールを、五人に送った。




 今回ジンは、紺珠伝におけるプレイヤーと同じ視点を見ています。
薬を使った自機組の場合は、デジャヴ感覚なのですが、ジンの場合はプレイヤー視点なので、失敗した時の記憶を完全に持っています。

 失敗を無かった事にする事を、失敗した現実を夢にするという事にして、上手く表現したつもりなんですが、なかなか難しいです。
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