董子の話しは書きやすく、書いていて非常に楽しいです。
これは夏休みが終わって、しばらくした時の出来事。
宇佐見菫子が最初に解決した怪奇事件である。
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ここは都内にある、東深見高校。
その昼休み、菫子が昼寝をしていた時の事である。
「宇佐見さん、宇佐見さんってば」
「う、う~ん・・・・・・」
宇佐見は誰かに揺らされ、目が覚めた。起こした人物を見てみると、そこにはクラスメイトの女子学生がいた。
「一体何よ? 人がせっかく寝ていたのに・・・・・・」
欠伸をしながら、そう言う菫子。どうやら起こされた事に、少しだけ不機嫌になっているようである。
「ごめんなさい宇佐見さん。でも、どうしても宇佐見に相談したい事があるの?」
「相談? 悪いけど人生相談なら、ほかを当たって頂戴。私の門外だから」
そう言って、再び眠りにつこうとする菫子に対して、女子学生は慌て呼び止めた。
「違うの! 人生相談じゃなくて、オカルト的な相談なのよ!」
「なぬ! オカルトですって!」
その一言で、宇佐見は完全に目を覚まし、女子学生の話を聞く事にした。
彼女の話によると、最近奇妙な悪夢を見るようになって、それから様々な不気味な事が起きたという。
「不気味な事って?」
菫子は尋ねてみると、彼女は恐る恐る答えた。
「最初は気のせいだと思ったんだけど、誰かに見られているような気がして、それに朝起きたら、こんな痣が・・・・・・」
そう言って、女子学生の一人が腕をまくる。そこにはくっきりと、歪な痣があった。
「これは・・・・・・」
「医者にも相談したけど、健康面に問題無いから、精神的ストレスが原因って診断されて、今は精神科に通っているんだけど、一向に良くならなくて・・・・・・」
「話は大体わかったわ。だけど、それでオカルトにどう繋がるの?」
そう尋ねる菫子に対して、彼女は躊躇いながらも、質問に答えた。
「実は、夏休みの時に肝試しをやったのよ。
その時に、小さい祠をうっかり壊しちゃって・・・・・・」
当時の彼女は、大したこと無いと思い、その祠を放置してしまったのである。
その話を聞いて、菫子は確信する。
「なるほど、それが原因だと思うわ」
「や、やっぱり? もしかして、祟りとか・・・・・・」
「その可能性は充分あるわね」
その言葉を聞いて、女子学生は顔は青ざめた。
そんな彼女を安心させるように、菫子は微笑んだ。
「大丈夫。この手の専門家の知り合いがいるから、あの人に聞いてみれば、何か解決策が見つかると思うわ」
「ほ、本当?」
「この秘封倶楽部の会長、宇佐見菫子に任せなさい!」
こうして菫子は、女子学生を襲った怪異に挑む事になった。
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ここは幻想郷にある博麗神社。そこで菫子は、学校での話を、霊夢に話していた。
「多分、あんたが思っている通り、その祠を壊してしまった事が原因ね」
菫子の話を聞いていた霊夢も、菫子と同じ結論を出していた。
「やっぱり・・・それで、一体どうすれば良い?」
「先ずは、その祠を調べる事よ。
どんな神様が祭られていたのか。もしくは、どんな妖が封印されていたのか」
「あ、妖?」
「祠はなにも、神様を祭るだけのものじゃないの。時には封印に使う場合があるわ」
「それじゃあもしかして――――」
「封印されていた妖に憑りつかれた可能性があるわ」
それを聞いて、菫子に緊張が走った。
自分がいる世界に妖がいると言われ、しかもそれが身近な人物に憑りつかれていると言われたのである。
「ともかく、動くのなら早い方が良いわよ。こういうのって、時間が経てばたつ程、手遅れになるから」
「わかったわ。それじゃあ―――――」
「待ちなさい。気休めかも知れないけど、魔除けの御札を渡しておくわ」
そう言って、霊夢は数枚の御札を菫子に手渡した。
「それと、あんたが持っている・・・すまほだっけ? それにこの札を張っておいて」
「これは?」
「連絡手段が寝るだとか、いざとなった時に不便でしょ。コレをすまほに張っておけば、私の陰陽玉と連絡出来るようになるから」
「ありがと霊夢さん」
「まっ、博麗の巫女としては当然の事よ。
本当は向こうに直に行ってやりたいけど、紫の奴が最近姿を見せなくてねぇ。まったく、どこで油を売っているのかしら?」
「気持ちだけでも充分。それじゃあまた」
そう言って、菫子は外の世界へと戻って行った。
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ここは都内から離れた場所にある町。菫子はここで、女子学生が肝試しをしたという場所を調査しに訪れていた。
「えっと、確か場所は・・・・・・」
菫子は女子学生から教えて貰った場所を地図で確認する。
本当は彼女を連れて来た方が早いのだが、万が一の時は一般人の彼女を守りきれる自信がなかったので、菫子は一人で調査をする事にした。
「さて、秘封倶楽部。調査開始よ!」
菫子は意気揚々と歩き出した。
地元の人に尋ねながら、女子学生が壊した祠まで辿り着いた董子。
彼女は早速、霊夢に連絡を取る。
「もしもし霊夢さん、聞こえる?」
《ええ、聞こえるわよ。感度良好って奴ね》
霊夢と連絡出来た事に、菫子は内心安堵した。
《さっそくだけど、状況を教えて貰える?》
「はい。えっとね――――」
菫子は出来る限り詳しく祠の状態や、周囲の様子を霊夢に話した。しかし、言葉だけでは伝えるのは限界があり、捜査は難航していた。
《う~ん・・・やっぱり直接見てみないと、何とも言えないわねぇ・・・何か良い方法は無いかしら?》
《それなら、スマホで写真を取っておけば良いんじゃないか?》
スマホから男性の声が聞こえた。菫子は思わず、その人物の名を口に出す。
「え? ジンさんもそこにいるの?」
《ああ、霊夢から話は聞いた。何が出来るか判らないが、力になろうと思って》
「ありがとうジンさん。なんだか心強いわ」
《ちょっと、私は?》
「もちろん霊夢さんもいてくれて、凄く心強いわよ」
《調子のいいことで・・・まあいいわ。
写真を取った後は、地元の人に聞き込みをして頂戴。その地元特有の武勇伝、怪談、言い伝え、何でも良いから、その祠と結びつける過去を探して》
「わかったわ」
菫子は通話を切り、スマホで写真を撮った後、霊夢の指示通りに、聞き込みを開始するのであった。
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その日の夜。菫子は祠の写真と、幾つかの文献のコピーを持って、博麗神社にやって来た。
霊夢は祠の写真を、しかめっ面をしながら見て、ジンは文献をじっくりと読んでいた。
「うーん・・・やっぱり神様を祭る祠ではなさそうねぇ・・・・・・」
「そういうの分かるの」
「当たり前でしょ、私は巫女なのよ。といっても、半分は勘だけどね」
勘でいいのかと思う菫子であったが、彼女の勘は物凄く当たるので、ほぼ間違い無いと菫子は感じた。
「ジン、そっちはどう?」
「ああ、これは当たりだと思う。ここを見てくれ」
そう言って、文献の一ページを指さした。そこには、“夢喰い”と呼ばれる妖の名前があった。
「これによると、この夢喰いってのは獏の一種で、人に憑りつき、夢を食べるらしい。そして最後はその人の魂を食べて殺すらしい」
「そ、それって本当?」
「文献通りならな」
「それは早急に手を打たないと不味いわね。菫子、この妖がどう退治されたか、わかった?」
霊夢がそう尋ねると、菫子は自信無さげに答えた。
「うーん・・・聞いた話によると、“夢操りし友と共に、見事封印した”って話らしいらしいけど・・・・・・」
「話を聞く限り、夢を操る事が出来る人と一緒に、夢喰いを封印したって話になるが・・・・・・」
「あいにく、私達に夢を操る術は無いわ。
紫なら何とか出来るかも知れないけど、最近連絡出来た取れないし・・・・・・」
「いやでも、夢の世界なら行けるんじゃないか? ほら、月に行った時の通路を使えば―――――」
「鈴仙も言ったでしょ。案内なしで彷徨いたら、二度と帰ってこれなくなるって。それに、人の数だけ夢があるのよ。特定の人の夢に行ける確率は方がゼロよ、分が悪すぎる」
打つ手内心状況に、歯痒い思いをするジン達。
このまま黙って見ているしか無いのかと思ったその時、一つの光明が見えた。
「いや待てよ、最近そういった奴と知り合ったじゃないか。彼女に頼んでみないか?」
「彼女って・・・もしかして、ドレミーの事?」
「誰の事?」
「最近知り合った獏よ。確かにアイツなら、夢を自由に行き来出来るし、何か手立てを知っているかも」
「早速頼んで見るか」
「え!? 今から行くんですか!?」
「ああ、こうしている間にも、その子が苦しんでいるんだろ? なら、一刻も早く解決してやらないと」
「それはそうだけど・・・・・・」
「ジンって奴はこういう奴なのよ。困っている奴とか、苦しんでいる奴を放っておけない、損な性格なのよねぇ」
そう言って、霊夢も立ち上がった。
どうやら彼女もジンに動向するつもりのようである。
「霊夢も来るのか?」
「あら、来ちゃ迷惑かしら?」
「とんでもない。むしろ心強い」
そうして、二人は立ち上がり、直ぐ様行動に移ろうとした。
それを見た菫子も慌てて立ち上がり―――――。
「わ、私も行くわ!」
菫子も二人に同行するごとに
こうして三人は、ドレミーの元に向かうのであった。
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ここは月への連絡通路。そこでジン達は、ドレミーを探していた。
「ドレミー、いるかー?」
「いるなら返事をしなさーい」
「ドレミーさーん」
「まったく、騒々しいですね貴方達は。一体何しに来たのですか?」
そこに、やや不機嫌そうなドレミーがやって来た。
そんな彼女に謝りながら、ジンはこれまでの経緯を説明をした。
「―――――ってな訳なんだ。どうにか力を貸してくれないか?」
「良いですよ」
ジンの要請に、ドレミーはあっさり承諾した。
あまりにもあっさり受けたので、霊夢は不審がる。
「いやにあっさり引き受けるのね」
「私は夢を守る立場にある者なので、その秩序を乱す者は、例え同族であっても私の敵なのですよ」
「ふーん、そういうものなのね」
「・・・・・・まあ、それだけでは無いんですがね」
「何か言った?」
「何でもないです。さて、宇佐見菫子」
「は、はい!」
突然名前を呼ばれ、思わず動揺をする菫子。そんな彼女に、ある宝玉を手渡した。
「これを件の少女に渡しなさい。そうすれば、後は私が処理をします」
「そ、それだけ?」
「はい、如何に夢を行き来出来ようとも、目印が無ければ迷います。これがその目印です」
「はあ・・・・・・」
菫子は宝玉をマジマジと見つめる。
果たして、これで解決するかどうかは、少し疑問を抱くのだが 、とりあえず件の女子学生に渡す事にする菫子であった。
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翌日。菫子は憑りつかれた女子学生に宝玉を渡そうと合いに行った。
「おは――――って、貴女大丈夫!?」
彼女の姿を見て、菫子は驚愕したい。
僅か数日の間に彼女はやつれ、とても弱々しい姿になっていたからである。
「宇佐見さん・・・おはよう・・・・・」
「どうしたのそんなにやつれちゃって、一体何があったの?」
「うん、実は―――――」
彼女の話によると、あれ以降悪夢が酷くなり、眠るのが怖くなってしまい、ここ数日寝ていないとの事。
それを聞いた菫子は一大事と思い、ドレミーの宝玉を取り出した。
「それは?」
「えっと・・・この宝玉は悪夢を払うありがたーい宝玉なのよ。
これを肌身離さず持っていれば、もう悪夢を見なくて済むわ」
「・・・・・・それ、本当なの?」
「本当本当、とりあえず試しに持ってなよ。それが駄目だったら、他の手を考えるから」
「うん、わかった」
やや半信半疑の女子学生だったが、菫子のその言葉を聞いて、信じて受け取ってくれたのである。
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宝玉を渡した後、女子学生は悪夢を見ることが無くなり、すっかり元気を取り戻した。
その結果を、菫子はジンと霊夢に話していた。
「―――――ってな訳で、その子すっかり良くなって、滅茶苦茶感謝されたわ。
それと、専門家である霊夢さんに、ありがとうって」
「う~ん、御礼より御賽銭が欲しいんだけどなー」
「文句を言うもんじゃない。そんな事言っていると、参拝客が減るぞ」
「それは嫌だけど・・・やっぱりただ働きっていうのがねぇ・・・・・・」
「その子から、お礼の御菓子を預かっているけど――――」
「それを早く言いなさいよ!」
何とも変わり身の早さに、菫子はジンは苦笑いを浮かべた。
「美味しー♪ これなかなかいけるわ♪」
「うん確かに、これは美味い」
「人助けして良かったー♪」
三人はとても美味しいそうに食べていると、そこにドレミーが姿を見ても現した。
「ご満喫のようですね、お三方」
「あっ、ドレミーさん」
「あんたも食べる? 結構美味しいわよ」
霊夢がそう勧めるが、ドレミーはやんわりと断った。
「ありがたい申し出ですが、今回は遠慮します」
「ええ~? こんなに美味しいのに」
「何処か調子が悪いのか?」
ジンは心配そうに尋ねると、ドレミーは首を横に振った。
「いえ、ただの食べ過ぎです」
「食べ過ぎ?」
「件の夢喰いを食べたばかりなので、今はお腹一杯なのです」
それを聞いて、ジンは納得した。
どうやら、食べた夢喰いを消化しきれていないみたいである。
「大丈夫なのか?」
「ええ。二、三日もすれば、完全に消化出来ますので、ご心配無く」
「それじゃあ何しに来たのよ?」
「今日は皆さんに御礼を申し上げに来たのです」
「御礼? 俺達、何かしたっけ?」
三人は首を傾げるが、思い当たる節がなかった。
そんな三人に対して、ドレミーは昔の事を話始めた。
「昔、あの夢喰いとやりあった事があったのです。
しかし、当時の夢喰いは強く、封印するのがやっとでした。
きっかけは兎も角、雪辱を晴らす機会を与えてくれた事に感謝します」
「もしかして・・・あの文献にあった“友”って―――――」
「ふふ、ご想像にお任せします」
そう言って、ドレミーは姿を消して行った。
謎を幾つか残したままだが、菫子の最初の事件はこうして幕を閉じるのであった。