守矢陣営を絡ませようと色々考えたのですが、中々思い浮かばず、漫画の話しから引っ張りました。
今回も長くなったので、二分割です。
今日も平和な愽麗神社では、霊夢とジンは縁側でお茶をすすっていた。
「平和ねー」
「平和だなー」
「何も起こらないわねー」
「起こらなくて良いじゃないか、のんびり出来て」
「それもそうねー」
そんな穏やかな風景を壊す。一人の少女が現れた。
「ジンさん! 霊夢さんこんにちはー!」
「・・・・・何だ、早苗か」
突然現れた少女の名は、東風谷早苗。
守矢神社の巫女にして、現人神である。
「何だ、では無いですよ!
前から思っていましたけど、私の扱い酷くありませんか?」
「気のせいだ。
それで、何か用なのか?」
「はい、実は御二人に折り入ってお願いが――――」
「断る」
「早!? 責めて話を聞いて下さいよ~」
「そうだぞ霊夢。話を聞いてから断るのが、せめてもの礼儀だろ?」
「結局断るんですかー!?」
「はいはい、分かったわよ。
それじゃ早苗、さっさと用件を言いなさい」
「ううっ・・・・・分かりました。実は――――」
早苗の話によると、この前の大雨によって土砂が崩れ、妖怪山の川が一部塞き止められ、天然のダムが出来てしまったらしい。
「そこでダムを撤去して、そこに新しいダムを作ろうと計画しているんです」
「それで? 私達に何をさせようとしているの?」
「霊夢さんには、埴山姫命に頼んで、ダムの材料を用意して貰います。
ジンさんは、ダム建設の現場監督をお願いします」
「何で俺が現場監督なんだ?
言っておくが、建設の知識は無いぞ?」
「無くても良いんです。
重要なのは、皆を引っ張るリーダーシップなのです」
「どういう事だ?」
「河童の皆さんは協調性が無いので、それをまとめる人が必要なんですよ」
「そういうのは神奈子の方が適任じゃないのか?」
「それが駄目でして・・・・・」
「そ、そうか・・・・・」
「そんな訳で、幻想郷一のカリスマであるジンさんの力が必要なのです!」
「話は大体分かったわ」
「それじゃ協力して――――」
「だが断る」
「そ、そんな~~」
「大体、それに協力して、私達に何の得があるのよ?」
霊夢がそう言うと、早苗は不適に笑い出す。
「ふっふっふ、つまり霊夢さん達に得があれば良いんですね?」
「え? あるの?」
「もちろんあります! これですよ!」
そう言って、早苗が取り出したのは河童のぬいぐるみであった。
「ぬいぐるみ?」
「ちょっと、これの何処が得なのよ?」
「つまりですね。
ダムが出来れば、それ目当てに観光客が集まるじゃないですか」
「な、なるほど! それに便乗すれば、金儲出来るわね!」
「そうでしょう! これなら霊夢さん達にも得しますよね?」
「その話、乗ったわ!」
「ありがとうございます。霊夢さん」
「お前ら・・・・・巫女としてどうなんだ?」
こうしてダムの建設に協力することになった霊夢とジンであった。
―――――――――――
ダム建設の協力する事になったジンは、早速現場に向かった。
そこでは、守矢神社の神の一柱、洩矢諏訪子が現場の様子を眺めていた。
「諏訪子様ー! ジンさんを連れて来ましたー!」
「おお、よくやった早苗。
久し振りだねジン」
「久しぶり。所で、現場の様子は?」
「あれを見てご覧」
そう言って諏訪子が指した方向を見ると、もう一人の神様である八坂神奈子と、河童のまとめ役である河城にとりと揉めていた。
「だーかーら! こんな物じゃ、安全性を確保出来ないでしょうが!」
「うるさいなー、私達には私達のやり方があるんだよ。
口出ししないでくれるかな?」
「だったら、ちゃんとした計画を――――」
「そんなの面倒くさいよ」
「ああもう!」
神奈子は杜撰な作業をしている河童達に、頭を悩ましていた。
「――――とまぁ、こんな状況なんだよね」
「・・・・・確かに、手に負えていないって感じだな」
「このままだと、ダム建設は中止するしかなくなるよ」
「えー! せっかくグッズを作ったのに・・・・・」
「ふむ・・・・・そうだな・・・・・あの手で行くか」
「何か良い考えがあるんですか?」
「まあ・・・・・あるにはあるんだが・・・・・これが少々命懸けで・・・・・」
「「?」」
「取り合えず、ちょっと準備してくるから、少し待ってくれ」
そう言ってジンは、何処かへと飛んで行った。
それからしばらく経つと、ジンは大きな袋を抱えて戻って来た。
しかし、何故かあちらこちらボロボロになっていた。
「ど、どうしたんですか?
まるで、ボロ雑巾みたいじゃないですか」
「ち、ちょっとな、交渉というバトルをしただけだ・・・・・」
「?」
「それで? その袋の中身が秘策かい?」
「ああ、ちょっと見てな」
そう言ってジンは、神奈子とにとりの所に向かう。
「だから! こちらのいう通りに―――」
「はい、そこまでだ」
「ん? ジンか、ようやく来てくれたか・・・・・」
「あれ? ジン? どうしてここに?」
「早苗達に頼まれてな・・・・・。
取り合えず神奈子、後は任せてくれないか?」
「ああ、頼むよ。私じゃもう手に負えなくて・・・・・」
「了解・・・・・さて」
ジンは持っていた袋を下ろし、中身をにとりに見せた。
「こ、これは!」
「気に入ったようだな。
それじゃ、交渉と行こうか」
こうしてジンの交渉が始まった。
―――――――――――
それからしばらく時間が経ち、霊夢は建設の材料を持ってやって来た。
「頼まれていた物、持って来たわよー」
「ありがとうございます霊夢さん。
これで、ダム建設が始められますね」
「そんな事より、現場の方はどうなっているのよ?」
「あれを見てください」
そう言って指した方には、ジンの指揮に従う河童達の姿があった。
「驚いたわね・・・・・あんな協調性の無い河童達をまとめ上げるとは・・・・・一体どんな手を使ったのよ?」
「それはですね・・・・・これを使ったのです!」
そう言って早苗が出したのは、一本のきゅうりであった。
「きゅうり?」
「はい、ジンさんはこのきゅうりを使って、河童達を懐柔したんですよ」
「たかがきゅうりで簡単に出来るものなの?」
「ジンさんの話によると、幽香さんから譲って貰った物らしいですよ」
「幽香から?」
「そう言ってましたよ」
「まったく、あいつと来たら・・・・・危機感が無いんだから」
「でも、ジンさんらしいと思います。
どんな人間、妖精、妖怪、神であっても対等に扱う。
中々出来る物では無いと思います」
「そうね・・・・・それが惹き付ける要因なのかも」
そう呟きながら、霊夢はジンの様子を眺めていた。
―――――――――――
早朝、ダムの建設現場にはジンが一番乗りしていた。
「さて、今日もやるかー!」
彼の最初の仕事は河童達の点呼である。
決められた時間に集まっているか確認するためである。
「河子! 河子はいないのか?」
「ジンさーん! 河子ちゃんは体調不良で休みでーす!」
「そうか・・・・・河子は欠席と・・・・・」
こうして点呼が終わると、いよいよ作業が始まる。
最も、スムーズに行く訳も無く。あちらこちらトラブルが起きる。
「おい、頼んだ物と違うぞ」
「え? そうだっけ?」
「やり直ししてくれ。
おいそこ! 何を揉めているんだ!」
頼んでいた物とは違う物を作ったり、揉めていたりと、中々作業が進行しなかった。
しかし、それでも河童達は不満を言わずに、ジンの指示に従った。
「水瀬は土台を、卯月は加工を頼む」
「アイアイサー」
「了解」
「ジンさん、こんな感じで良いかな?」
「ん? どれどれ・・・・・ああ、これなら上出来だ。
よくやったな水原、スタンプをやろう」
「やったー♪」
ジンは、河童の水原が持っているスタンプカードにスタンプを押した。
これは河童達のやる気を起こす為の物で、全てにスタンプを押すと、幽香特製きゅうりを多く貰えるシステムである。
これにより、飽き性である河童達のやる気を維持しているのだ。
他にも、こんな気遣いも――――。
「にとり、お前は河子と仲が良いんだったな」
「うん、幼馴染みだけど?」
「それならこれを渡してくれないか?
それと、言伝を頼む。“ちゃんと休めよ”と」
「わかった。ちゃんと伝えとくよ」
欠席をしてしまった河童に差し入れを用意し、気遣う姿勢に、河童の誰もがジンを慕うようなっていった。
―――――――――――
ダム建設が始まってから、ジンの帰りは徐々に遅くなり。
やがて、帰って来ない日も出て来た。
「そう・・・・・今夜も帰れないのね・・・・・」
《ああ、作業が思いの外遅れてな》
「わかったわ。それじゃ、頑張ってね」
そう言って、陰陽玉の通信を切る。
そして、力無く畳に寝転がる。
「・・・・・はあ、何だろう。
やる気・・・・・出ないな・・・・・」
この一ヶ月、霊夢は殆どジンに会っていなかった。
会話など、陰陽玉と浮游玉を経由した通信ぐらいである。
「何か・・・・・神社の中が広く感じる・・・・・」
霊夢は虚しさを感じながら、今夜も一人。神社で過ごすのであった。