東方軌跡録   作:1103

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今回は東方茨歌仙の話しからです。
守矢陣営を絡ませようと色々考えたのですが、中々思い浮かばず、漫画の話しから引っ張りました。
今回も長くなったので、二分割です。


ダム建設計画 前編

今日も平和な愽麗神社では、霊夢とジンは縁側でお茶をすすっていた。

 

「平和ねー」

 

「平和だなー」

 

「何も起こらないわねー」

 

「起こらなくて良いじゃないか、のんびり出来て」

 

「それもそうねー」

 

そんな穏やかな風景を壊す。一人の少女が現れた。

 

「ジンさん! 霊夢さんこんにちはー!」

 

「・・・・・何だ、早苗か」

 

突然現れた少女の名は、東風谷早苗。

守矢神社の巫女にして、現人神である。

 

「何だ、では無いですよ!

前から思っていましたけど、私の扱い酷くありませんか?」

 

「気のせいだ。

それで、何か用なのか?」

 

「はい、実は御二人に折り入ってお願いが――――」

 

「断る」

 

「早!? 責めて話を聞いて下さいよ~」

 

「そうだぞ霊夢。話を聞いてから断るのが、せめてもの礼儀だろ?」

 

「結局断るんですかー!?」

 

「はいはい、分かったわよ。

それじゃ早苗、さっさと用件を言いなさい」

 

「ううっ・・・・・分かりました。実は――――」

 

早苗の話によると、この前の大雨によって土砂が崩れ、妖怪山の川が一部塞き止められ、天然のダムが出来てしまったらしい。

 

「そこでダムを撤去して、そこに新しいダムを作ろうと計画しているんです」

 

「それで? 私達に何をさせようとしているの?」

 

「霊夢さんには、埴山姫命に頼んで、ダムの材料を用意して貰います。

ジンさんは、ダム建設の現場監督をお願いします」

 

「何で俺が現場監督なんだ?

言っておくが、建設の知識は無いぞ?」

 

「無くても良いんです。

重要なのは、皆を引っ張るリーダーシップなのです」

 

「どういう事だ?」

 

「河童の皆さんは協調性が無いので、それをまとめる人が必要なんですよ」

 

「そういうのは神奈子の方が適任じゃないのか?」

 

「それが駄目でして・・・・・」

 

「そ、そうか・・・・・」

 

「そんな訳で、幻想郷一のカリスマであるジンさんの力が必要なのです!」

 

「話は大体分かったわ」

 

「それじゃ協力して――――」

 

「だが断る」

 

「そ、そんな~~」

 

「大体、それに協力して、私達に何の得があるのよ?」

 

霊夢がそう言うと、早苗は不適に笑い出す。

 

「ふっふっふ、つまり霊夢さん達に得があれば良いんですね?」

 

「え? あるの?」

 

「もちろんあります! これですよ!」

 

そう言って、早苗が取り出したのは河童のぬいぐるみであった。

 

「ぬいぐるみ?」

 

「ちょっと、これの何処が得なのよ?」

 

「つまりですね。

ダムが出来れば、それ目当てに観光客が集まるじゃないですか」

 

「な、なるほど! それに便乗すれば、金儲出来るわね!」

 

「そうでしょう! これなら霊夢さん達にも得しますよね?」

 

「その話、乗ったわ!」

 

「ありがとうございます。霊夢さん」

 

「お前ら・・・・・巫女としてどうなんだ?」

 

こうしてダムの建設に協力することになった霊夢とジンであった。

 

―――――――――――

 

ダム建設の協力する事になったジンは、早速現場に向かった。

そこでは、守矢神社の神の一柱、洩矢諏訪子が現場の様子を眺めていた。

 

「諏訪子様ー! ジンさんを連れて来ましたー!」

 

「おお、よくやった早苗。

久し振りだねジン」

 

「久しぶり。所で、現場の様子は?」

 

「あれを見てご覧」

 

そう言って諏訪子が指した方向を見ると、もう一人の神様である八坂神奈子と、河童のまとめ役である河城にとりと揉めていた。

 

「だーかーら! こんな物じゃ、安全性を確保出来ないでしょうが!」

 

「うるさいなー、私達には私達のやり方があるんだよ。

口出ししないでくれるかな?」

 

「だったら、ちゃんとした計画を――――」

 

「そんなの面倒くさいよ」

 

「ああもう!」

 

神奈子は杜撰な作業をしている河童達に、頭を悩ましていた。

 

「――――とまぁ、こんな状況なんだよね」

 

「・・・・・確かに、手に負えていないって感じだな」

 

「このままだと、ダム建設は中止するしかなくなるよ」

 

「えー! せっかくグッズを作ったのに・・・・・」

 

「ふむ・・・・・そうだな・・・・・あの手で行くか」

 

「何か良い考えがあるんですか?」

 

「まあ・・・・・あるにはあるんだが・・・・・これが少々命懸けで・・・・・」

 

「「?」」

 

「取り合えず、ちょっと準備してくるから、少し待ってくれ」

 

そう言ってジンは、何処かへと飛んで行った。

 

 

それからしばらく経つと、ジンは大きな袋を抱えて戻って来た。

しかし、何故かあちらこちらボロボロになっていた。

 

「ど、どうしたんですか?

まるで、ボロ雑巾みたいじゃないですか」

 

「ち、ちょっとな、交渉というバトルをしただけだ・・・・・」

 

「?」

 

「それで? その袋の中身が秘策かい?」

 

「ああ、ちょっと見てな」

 

そう言ってジンは、神奈子とにとりの所に向かう。

 

 

 

「だから! こちらのいう通りに―――」

 

「はい、そこまでだ」

 

「ん? ジンか、ようやく来てくれたか・・・・・」

 

「あれ? ジン? どうしてここに?」

 

「早苗達に頼まれてな・・・・・。

取り合えず神奈子、後は任せてくれないか?」

 

「ああ、頼むよ。私じゃもう手に負えなくて・・・・・」

 

「了解・・・・・さて」

 

ジンは持っていた袋を下ろし、中身をにとりに見せた。

 

「こ、これは!」

 

「気に入ったようだな。

それじゃ、交渉と行こうか」

 

こうしてジンの交渉が始まった。

 

―――――――――――

 

それからしばらく時間が経ち、霊夢は建設の材料を持ってやって来た。

 

「頼まれていた物、持って来たわよー」

 

「ありがとうございます霊夢さん。

これで、ダム建設が始められますね」

 

「そんな事より、現場の方はどうなっているのよ?」

 

「あれを見てください」

 

そう言って指した方には、ジンの指揮に従う河童達の姿があった。

 

「驚いたわね・・・・・あんな協調性の無い河童達をまとめ上げるとは・・・・・一体どんな手を使ったのよ?」

 

「それはですね・・・・・これを使ったのです!」

 

そう言って早苗が出したのは、一本のきゅうりであった。

 

「きゅうり?」

 

「はい、ジンさんはこのきゅうりを使って、河童達を懐柔したんですよ」

 

「たかがきゅうりで簡単に出来るものなの?」

 

「ジンさんの話によると、幽香さんから譲って貰った物らしいですよ」

 

「幽香から?」

 

「そう言ってましたよ」

 

「まったく、あいつと来たら・・・・・危機感が無いんだから」

 

「でも、ジンさんらしいと思います。

どんな人間、妖精、妖怪、神であっても対等に扱う。

中々出来る物では無いと思います」

 

「そうね・・・・・それが惹き付ける要因なのかも」

 

そう呟きながら、霊夢はジンの様子を眺めていた。

 

―――――――――――

 

早朝、ダムの建設現場にはジンが一番乗りしていた。

 

「さて、今日もやるかー!」

 

彼の最初の仕事は河童達の点呼である。

決められた時間に集まっているか確認するためである。

 

「河子! 河子はいないのか?」

 

「ジンさーん! 河子ちゃんは体調不良で休みでーす!」

 

「そうか・・・・・河子は欠席と・・・・・」

 

こうして点呼が終わると、いよいよ作業が始まる。

最も、スムーズに行く訳も無く。あちらこちらトラブルが起きる。

 

「おい、頼んだ物と違うぞ」

 

「え? そうだっけ?」

 

「やり直ししてくれ。

おいそこ! 何を揉めているんだ!」

 

頼んでいた物とは違う物を作ったり、揉めていたりと、中々作業が進行しなかった。

しかし、それでも河童達は不満を言わずに、ジンの指示に従った。

 

「水瀬は土台を、卯月は加工を頼む」

 

「アイアイサー」

「了解」

 

「ジンさん、こんな感じで良いかな?」

 

「ん? どれどれ・・・・・ああ、これなら上出来だ。

よくやったな水原、スタンプをやろう」

 

「やったー♪」

 

ジンは、河童の水原が持っているスタンプカードにスタンプを押した。

これは河童達のやる気を起こす為の物で、全てにスタンプを押すと、幽香特製きゅうりを多く貰えるシステムである。

これにより、飽き性である河童達のやる気を維持しているのだ。

他にも、こんな気遣いも――――。

 

「にとり、お前は河子と仲が良いんだったな」

 

「うん、幼馴染みだけど?」

 

「それならこれを渡してくれないか?

それと、言伝を頼む。“ちゃんと休めよ”と」

 

「わかった。ちゃんと伝えとくよ」

 

欠席をしてしまった河童に差し入れを用意し、気遣う姿勢に、河童の誰もがジンを慕うようなっていった。

 

―――――――――――

 

ダム建設が始まってから、ジンの帰りは徐々に遅くなり。

やがて、帰って来ない日も出て来た。

 

「そう・・・・・今夜も帰れないのね・・・・・」

 

《ああ、作業が思いの外遅れてな》

 

「わかったわ。それじゃ、頑張ってね」

 

そう言って、陰陽玉の通信を切る。

そして、力無く畳に寝転がる。

 

「・・・・・はあ、何だろう。

やる気・・・・・出ないな・・・・・」

 

この一ヶ月、霊夢は殆どジンに会っていなかった。

会話など、陰陽玉と浮游玉を経由した通信ぐらいである。

 

「何か・・・・・神社の中が広く感じる・・・・・」

 

霊夢は虚しさを感じながら、今夜も一人。神社で過ごすのであった。

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