東方軌跡録   作:1103

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 今回は、商売的な話です。
 自分は専門家では無いので、作中みたいに上手くいくとは思っていません。そこ辺りはご都合展開として書いています。


兎と団子屋と福の神

ここは人里にある老夫婦が営む団子屋。

そんな団子屋に、新たな従業員がやって来た。

 

「はい、みたらし団子三つですね。青蘭ー、みたらし団子三つー」

 

「あいよー」

 

そこには青蘭と鈴瑚、二人の玉兎の姿があった。

彼女達は以前の異変が終わった後、幻想郷に移り住んだ玉兎である。

その後色々とあって、現在は人里の団子屋で働いているのである。

 

「ありがとうございましたー」

 

お客様に頭を下げて見送る鈴瑚。かつて彼女は、調査隊の隊長という立場であったが、気楽に暮らせる今の生活が大層気にいっていた。

 

「お疲れ様御二人とも、少し休憩にしないかい?」

 

「「はーい」」

 

団子屋さんのお婆さんが、お茶と団子を出してくれた。

二人はそれを美味しそうに頂いたが、一つだけ懸念があった。

 

「ところでお婆さん、あんまりお客さんが来ないみたいだけど・・・・・・」

 

「ああそれかい・・・・・・」

 

「向かい側の蕎麦屋に、客が取られているからだよ」

 

そう言って、お爺さんが向かい側の蕎麦屋に目線を送る。

向かい側の蕎麦屋、行列が出来る程の繁盛していた。

 

「何でも福の神が来たらしいけど、嫌な話だよ」

 

「本当にねぇ、これまで頑張っていたのが馬鹿みたいよ」

 

そんな風に愚痴り始める老夫婦。それを見ていた青蘭と鈴瑚は、居たたまれない気持ちになった。

 

――――――――――――――――

 

それから翌日、青蘭と鈴瑚はジンと常連の華仙に、この事を相談に乗って貰っていた。

 

「――――てなわけで、何かいい方法は無いかい?」

 

「あの夫婦には、色々とお世話になっているから、せめてものの恩返しがしたいのよ。何かいい方法は無いかしら?」

 

「方法ねぇ・・・宣伝とかかしら?」

 

「一応やってみたけどさ、イマイチなんだよね」

 

「ビラを配ったり、チラシを張ったりしたけど、あまり客が来ないのよ」

 

「うーん・・・私は専門家じゃないから、上手くアドバイス出来ないわね・・・・・・」

 

華仙の言葉に、肩を落とす青蘭と鈴瑚。そんな彼女達為に動くのは、やはりジンであった。

 

「ここはやはり、宣伝にもっと力を入れた方が良いと思うな」

 

「宣伝に?」

 

「ビラやチラシの内容を見たけど、ただ“美味い!” とか“美味しい!”とか、そんな抽象的な表現じゃあ、客には分からないと思う。

客は、本当に美味しい団子が食べたいのだから、しっかりとした情報を与えないと」

 

「どうすればいいの?」

 

「宣伝には新聞を使う」

 

そう言ってジンは、ニヤリと笑うのである。

 

――――――――――――――――

 

「―――――はい、取材させていただきありがとうございます♪」

 

「しっかりとした内容にするから、安心してね」

 

そう言って、文とはたては、老夫婦の団子屋を去っていった。

残されたのは老夫婦、青蘭、鈴瑚、ジン、そして団子のリポートを頼まれた華仙であった。

 

「ふぅ、リポートって意外と大変なのね・・・あんなので良かったのかしら?」

 

「良かったと思う。実際に、ここの団子は美味しいんだから、ああ言った正直なコメントの方が信憑性が高くなる」

 

「それなら良いんだけど」

 

「これで、お客さんがくるのかねぇ?」

 

心配そうに尋ねるお婆さんに対して、ジンは正直な感想を述べる。

 

「多少は来るかも知れないけど、これだけじゃあインパクトが足りない。もっと客が来るような事をしないと」

 

「例えばどんな?」

 

「この店ならではの、“お得感”を出せば良いだけさ」

 

「「「「お得感?」」」」

 

「そう。お客さんは常に、自分が得する方を選ぶんだ。それは“店が近い”、“商品が安い”、“ここでしか買えない”、“特典がついている”そういった店に来てくれる。

例を出すなら、向かい側の蕎麦屋だな」

 

そう言って、向かい側の蕎麦屋を指を差す。相変わらず行列が出来ているその店を、老夫婦は恨めしそうに見ていた。

 

「さて、ここで問題だ。どうして向こうの店が繁盛していると思う?」

 

「そりゃあ、福の神が来ているからだろ。うちにだって来てくれれば―――――」

 

「本当にそれだけか? それだけで、本当に店が繁盛する?」

 

「違うのかい?」

 

お爺さんのその言葉に、ジンは自分自身の考えを述べた。

 

「福の神が来ているから繁盛するって事は無いと思うな。

例えば、向かい側の蕎麦屋が、もの凄く不味かったら、福の神がいても来ようと思うか?」

 

「そりゃあ―――――」

 

「いかないわねぇ・・・・・・」

 

「ああ、客は来なくなると思うな。いくら縁起が良くても、不味い蕎麦だったら、いずれは客足は遠退く。どんな奴だって、不味いよりは美味い方が良いだろうし」

 

「それじゃあ、なんでうちの団子屋は繁盛しないんた? 味にだって、それなりに自信かあるのに」

 

「確かに、お爺さんの団子は、青蘭の団子より美味しいね」

 

「悔しいけど、そこらの玉兎より美味しい・・・・・正直、自信が無くなりそう」

 

「繁盛してないのが不思議なくらいね。どうしてこうなったのかしら?」

 

「その答えは、一昔の博麗神社だ」

 

「博麗神社が?」

 

「ああ。質問するが華仙、何故博麗神社に参拝客が来なかったか? その理由は分かるか?」

 

「それは、人里から距離が離れているから?」

 

「それも一つの要因だ。だけど、これない距離では無いと思うな」

 

博麗神社と人里の距離は、それなりに離れてはいる。しかし、それは半日掛かるという訳では無く、来ようと思えば行ける距離なのだ。

現に小鈴や最近の里の人達は、それなりに参拝に来てくれているのだから。

 

「妖怪達の溜まり場だから?」

 

「今でもそうだろ」

 

「それじゃあ・・・“知名度が低くかった”から?」

 

華仙の言葉に、ジンは頷いて答えた。

 

「正解。実際に、神社の事を知らない人がいたんだから、これには心底驚いた。

だから最初に俺は、博麗神社の事を知って貰おうと、色々と宣伝をしたりしたんだ」

 

博麗神社の知名度の低さの要因は、霊夢自身にあった。

彼女の巫女としての実力はずば抜けており、現人神である早苗を凌駕している。

その一方で、彼女は自分の力を自慢したり、得意気に話したりしないのである。

それは美徳でもあるが、その反面知名度が上がらず、彼女の巫女としての力は、正当に評価されず、結果として、博麗神社は参拝客が減っていったのである。

 

(でも、根本的な原因は、霊夢の面倒臭がり屋だと思うのだけれどねぇ・・・・・・)

 

そう思うと、ジンと霊夢は相性が良いのだと、華仙のは思った。

霊夢に足りない所をジンが補う形で、今の博麗神社が存在している。

まるで、欠けた破片が上手く収まった。そんな風に感じる華仙であった。

 

「――――――それで、こういった風にしたいと思うんだが、華仙はどう思う?」

 

考え事に没頭していた華仙は、ジンの話を聞きそびれていた。

彼女は少し恥ずかしそうに、ジンに謝る。

 

「ご、ごめんなさい、聞きそびれていたわ」

 

「それならもう一回話す。新聞の宣伝だけじゃあ、インパクトが足りないから、広告を出そうと思って」

 

「広告を?」

 

「ああ、その広告ってのは――――――」

 

――――――――――――――――

 

それから数週間後。老夫婦の団子屋に、蕎麦屋に負けない位の行列があった。

 

「はい、三色団子を四つですね」

 

鈴瑚とお婆さんが、注文を取り、せっせと団子を運んでいた。

だが、何故か注文した数より一つ多く持って行っていたのである。

しかしこれが、ジンが思いついたサービスであった。

 

「はい、三色団子四つです。そして、サービスにお一つ付けますね」

 

ジンが考えたサービスとは、“団子を四つ事に、団子一つ分が無料サービスされる”というものである。

三つなら、一つサービスされ、八つなら、二つ、十二なら三つと、頼めば頼む程、サービスが増えるという仕組みとなっている。

 

「なかなか面白いサービスだけど、ちゃんと儲かるの?」

 

華仙はそう言いながら、向かい席に座るジンに尋ねた。

 

「儲かる。実際に、このサービスの本当の目的は達しているし」

 

「本当の目的?」

 

「例えば、さっき華仙は団子を八つ頼んだよな?」

 

「ええ、みたらしと三色をそれぞれ四つずつ頼んだわよ」

 

「二つとか三つとかじゃなくて?」

 

「二つ三つ買うより、四つずつ買う方がお得―――――あっ」

 

そこで華仙は気づいた。

このサービスのお陰で、客は四倍数分の団子しか頼まなくなっていた。そうなることにより、売り上げがそれなりに安定する事実に。

 

「もしかして、これが貴方の目論み?」

 

華仙の言葉に、ジンはニヤリと笑った。

 

「外の世界の商売を参考にしただけだ。正直言って上手く行くかどうかは、不安だったけど」

 

「貴方って、本当に商売上手よね。博麗神社が繁盛するわけよ」

 

華仙は心底感心していた。

もしかしたら、彼は本当に福の神なのではないのかと、華仙はそう思いながらも、団子を口にするのだった。

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