東方軌跡録   作:1103

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 遅めの大晦日話。本当は大晦日の日に投稿出来れば良かったんですけど。なかなか話が思い浮かばず、四苦八苦で書きました。


幻想郷の大晦日

今年最後の日である大晦日の夜。菫子はこの日、阿求、小鈴と共に命蓮寺にお参りに来ていた。

 

「やっぱこっちでも、寺に人は沢山来ているのね」

 

「比較的新しく出来たお寺だけど、里に近い事から結構人が来るのよね」

 

「私も毎年ここにお参りをしてから、博麗神社に行っているわ」

 

小鈴が何気ないその言葉に、菫子はある疑問が浮かんだ。

 

「あれ? 神社と寺じゃあ宗教違うのよね? そんなにお参りをして罰当たらないのかしら?」

 

「え? そうなの阿求?」

 

「それは――――――」

 

「問題ありませんよ菫子さん」

 

そう言って現れたのは、住職姿の白蓮であった。彼女はいつも通りの口調で話始める。

 

「信仰はそれぞれ自由であると、私は思っておりますので。神社に行くも行かないのも、貴女次第ですよ」

 

「は、はぁ・・・・・・」

 

「それでは私はこれで、来年も良いお年を」

 

そう言って、白蓮は去って行った。

 

「び、びっくりした・・・てっきり何か言われるかと思った」

 

「あの人はそんな小さい事で、いちゃもんつける人では無いわ。一応あれでも、聖人に分類される人よ。まあ、種族が魔法使いになっているから、聖人と言えるかどうかはわからないけど。そもそも成仏出来るかどうか怪しいわ」

 

「なんか辛辣ね阿求。あの人に何か恨みでも」

 

「恨みというか、人種的に相容れない。あの人とは、一生解り合えないでしょうね」

 

そう言って、ややどす黒いオーラを放つ阿求。

そんな彼女に疑問を抱いた菫子は、小鈴に耳打ちをする。

 

「ねえ? 阿求と白蓮さんの間に何かあったの?」

 

「何かあったっていうか、ただの嫉妬なだけなんだよね」

 

「嫉妬?」

 

「あの住職さん、胸が大きいのよ」

 

「あー・・・・・・」

 

小鈴の言葉に、菫子は何となく理解した。自身はあまり気にしていないのだが、やはり気になる人は気にするのだろうと。彼女は思った。

 

「ほら二人とも、さっさと鐘をついて、博麗神社に行きましょ」

 

「あっ、ちょっと待って阿求!」

 

それから三人は、除夜の鐘を大きく鳴り響かせて、博麗神社へと向かう事にした。

 

――――――――――――――――

 

博麗神社へ向かう道中。神社に向かう人や、神社から帰る人達とすれ違う三人。

そんな中、菫子はある事に気がついた。

 

「へぇー、河童の人達が道中を警邏しているのね」

 

「妖怪が警邏しているのは奇妙な事だけど、こんな夜遅くじゃあ、凶暴な妖が出るからね。こうでもしないと、誰も来てくれないのよ」

 

「人件費とかどうなってるのかしら?」

 

「他の所ならいざ知らず、ジンさん相手なら格安にしてくれてるのかも。何だかんだで、河童達に信頼されているからねあの人」

 

そんな話をしていると、段々と神社に近づいて行った。

神社の石段には、多くの妖怪と人が行き来していた。

 

「うわー、凄い人と妖怪の数ね・・・・・・」

 

「少し前までは、大晦日の日でも人は来なかったけどねこの神社」

 

「そうなの?」

 

「そうなのよ。今までは妖怪が寄りつく場所として、人は近寄らなくなったけど、ジンさんが博麗神社に住むようになってから、ちらほら来るようになって、今では御覧の通りよ」

 

「へぇー・・・もしかして、ジンさんって福の神か何かかしら?」

 

「それは・・・否定できないわね。この前里の団子屋の一つを繁盛させたから」

 

「鈴奈庵(うち)にも来てくれないかしら? 売上も上がれば、私のお小遣いも―――――」

 

「やめときなさい小鈴。そんな下心丸出しだと、ジンさんに呆れられわよ。それに、店の売上をちょろまかしている事がばれるわよ」

 

「ちょ、ちょろまかしてなんかいないわよ! 人聞きの悪いこと言わないで!」

 

「あんたのお小遣いで、あんだけの妖魔本を買える訳無いでしょ。伊達に何年も付き合ってないわ」

 

 阿求に見透かされと悟った小鈴は、必死に懇願し始めた。

 

「お願い! 親とジンさんに黙ってて!」

 

「はぁ・・・妖魔本を集めるのを辞めるって選択しは無いの?」

 

「ない!」

 

キッパリそう言う小鈴に、阿求はやれやれとため息をつく。

 

――――――――――――――――

 

神社の境内に入った三人はお参りをしていると、売店の方から何やら話し声が聞こえて来る。

 

「・・・何で私が縁結びのお守りを売らなくちゃいけないのよ。ああ妬ましい・・・・・・」

 

「私が言うのもなんだけど、土蜘蛛の私が無病息災のお守りを売って良いのかね?」

 

「くじ引きで決まったんだから仕方ないでしょ。愚直っていないでちゃんと売りなさい」

 

「安産のお守りは如何ですかー?」

 

会話をしていたのは、博麗神社にバイトをしに来ていた、パルスィ、ヤマメ、天子、キスメ達であった。

 

「・・・何だか悪意のある配置よね」

 

「何かの力が働いたとしか思えないわ」

 

そんな話をしていると、何やら騒がしくなって来た。

 

「何の騒ぎかしら?」

 

「ああ、天香香背男命討伐の儀式が始まるのね」

 

「あ、あめの・・・・・・」

 

「天香香背男命討伐の儀式。天照大神が、天香香背男に勝てるように祈祷する儀式の事よ。外の世界だと、金星と呼ばれているわ」

 

「ふーん・・・天照大神が負けるとどうなるの?」

 

「妖怪が力を増す年になるわ。要は人間の厄年になるのよ」

 

「それは大変じゃない! それで誰がその儀式を?」

 

「ここの神社の巫女は、一人しかいないじゃない」

 

「それってもしかして―――――」

 

菫子がその人物の名を言おうとしたその時、一際大きい歓声が上がった。

 

「主役の登場ね」

 

そう言った阿求の視線の先には、この神社の巫女、博麗霊夢の姿があった。

 

「ウソ! あれが霊夢さん!?」

 

菫子が驚くのは無理も無い。普段の彼女とは考えられないほど真剣な眼差し、そして普段はしない化粧、この二つが合わさった事で普段出ていない艶やかさが出ていた。

 

「そうよ。この儀式の為に、おめかしをしてるのよ」

 

「最初の頃は、そんな事をしなかったらしいけど、ジンさんの発案で、やるようになったのよね」

 

大勢の前に出るのだから、見栄を良くしようとジンが提案したのだ。

最初は渋っていた霊夢だったが、ジンが上手く丸め込み、この儀式限定という事で落ち着いた。

 

「ふへぇ~、化粧一つであんなに変わるの?」

 

「そうよ。なんなら菫子もやってみる?」

 

「わ、私は遠慮するかな。見てくれ良くないし」

 

「それを良くするのが化粧なのよ。素材が良いんだから、すっごく良くなると思うわ」

 

阿求のその言葉に、少しだけ興味を抱く菫子。

そんな話をしている間に、儀式が始まった。

 

 

儀式は無事終わり、朝日が幻想郷に差し込む。すると、何やら声が聞こえた。

 

「はーい、お屠蘇はまだまだありますから、慌てないでくださーい」

 

「あれって・・・早苗さん?」

 

声の主は早苗であった。守矢神社の人間が、何故ここにいるのだろう?と疑問に抱いている菫子に対し、阿求が説明をした。

 

「ああ、菫子はしらなかったわね。実はね、大晦日と初詣の行事は、博麗神社と守矢神社の合同でやっているのよ」

 

「一応、守矢の分社もあるからね。小さいけど」

 

「へぇー、霊夢さん良く許可したわね」

 

「まあ、大方ジンさんの口添えだと思うけど」

 

「あら? 菫子ちゃんに、小鈴ちゃん、阿求さんではありませんか」

 

どうやらこちらに気づいたようで、早苗がパタパタとこちらにやって来た。

 

「あっ、早苗さん。明けましておめでとうございます」

 

「明けましておめでとう♪ 三人も初詣に?」

 

「はい、これからおみくじを引こうと思ってます」

 

「そうですか。あっ、その前に“お屠蘇”をどうぞ」

 

「お屠蘇?」

 

「新年を祝う、縁起物のお酒ですよ。一年の邪気を払い、長寿を願うお酒なんです」

 

「へぇーって、私未成年だけど、飲める?」

 

「もちろんですよ。いくらジンさんでも、新年のめでたい日にそんなうるさい事は言わないでしょう」

 

「ならお言葉に甘えて―――――」

 

菫子は早苗からお酒を受け取り、それを一口飲み。

子供も飲むように配慮されているのか、お酒自体はあまり強くなく、とても飲みやすかった。

 

「やっぱ何度飲んでも美味しいわねぇ」

 

「そうね。さすが博麗神社の酒っと言ったところかしら?」

 

「早苗さん! もう一杯!」

 

「駄目ですよ、一人一杯までなんです。どうしても欲しいのなら、自分で買ってください。もう売り切れていますけど」

 

「ううっ、やっぱ庶民には手が届かない代物なのね・・・・・・」

 

「ま、まあ、お酒の事は置いといて、おみくじでも引きましょ」

 

そんなこんなで三人は、おみくじを引き、初詣を無事過ごすのであった。

 

――――――――――――――――

 

一方母屋では、霊夢が化粧を落としていた。

 

「ふぅ、スッキリした」

 

「なんだ、もう落としたのか」

 

そう言って現れたのは、お屠蘇を持って来たジンであった。

彼は、霊夢が化粧を落とした事に、残念と感じていた。

 

「あんまり好きじゃないのよねぇ。ファンデーションっていうの? 何ていうか、煩わしいのよね」

 

「そんな事を言うなよ。せっかく紫がやってくれたのに」

 

「ただ単に面白がってただけでしょ」

 

「それは否定はしないが、それでも綺麗だったぞ」

 

「・・・それって、普段は綺麗じゃないって事?」

 

霊夢は顔を覗かせながら、ジンに問い詰めた。

ジンは動揺しながらも、どうにか答えようとする。

 

「まあその・・・・・・」

 

「その?」

 

「・・・・・・化粧しなくても、霊夢は綺麗だと思ってる」

 

「・・・・・・そっ」

 

その答えに満足したのか、霊夢はジンから離れる。そして、お屠蘇が入ったコップを受け取り、半分飲んで差し出す。

 

「ほらあんたも」

 

「へ?」

 

「まだ飲んでいないんでしょ?」

 

「ああ、そうだが。別に霊夢のじゃなくても、他の所から―――――」

 

「残念だけど、お屠蘇はもう残っていないわ。妖狐の話によると、萃香と勇儀がたらふく飲んじゃって残りが無いんだってさ」

 

「え? そうなのか?」

 

「そうじゃなかったら、とっくに飲んでいるわよ私」

 

「ううむ・・・参拝客の皆には配り渡ったのか?」

 

「幸いにも、多く作っておいたから、配る分はどうにか足りたみたいだけど」

 

「そうか・・・後であの二人にたっぷり請求しておくか」

 

「それでどうするの? 飲むの飲まないの?」

 

霊夢はそう言って、ジンに飲み掛けのコップをつき渡す。

ジンは色々と考えたが、霊夢の真っ赤な顔を見て、意を決する。

 

「そ、それじゃあ、ありがたく・・・・・・」

 

ジンはコップを受け取り、それを一気に飲み干す。そして、改めて霊夢の顔を見ると、さっきより更に顔を赤くしていた。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

長い沈黙、気まずい空気が流れる中、霊夢は踵返した。

 

「私寝るわ。儀式で疲れちゃったから」

 

「ああ、わかった。おやすみ霊夢・・・いや、明けましておめでとう霊夢」

 

「うん、明けましておめでとうジン」

 

それだけの言葉を交わして、霊夢は自室へと向かって行った。

ジンは霊夢を見送った後、これから初詣に来る参拝客に備える為に、動くのであった。

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