東方軌跡録   作:1103

16 / 194
ダム建設計画 後編

ダム建設開始から、一ヶ月経過した頃。

霊夢はジンの代わりに境内の掃除をしていた。

 

「・・・・・はあ」

 

「どうしたの霊夢? 元気無いみたいだけど?」

 

「なんだ、華仙か・・・・・」

 

「本当にどうしたの?

何と言うか・・・・・貴女らしく無いような―――」

 

「うるさいわね、あんたには関係ないでしょ」

 

そう言って、華仙を無視するかのように、掃除を再開させる。

そんな様子を見た華仙は、ある違和感を感じた。

 

「そういえば・・・・・ジンの姿が見えないけど・・・・・?」

 

その言葉に、霊夢はピクッと反応する。

 

「・・・・・アイツなら、ダムの建設現場にいるわよ」

 

「ダムの建設現場? どうしてそんなところに?」

 

「あんたには関係ないでしょ。

用が無いならさっさと帰って」

 

「もしかして・・・・・逃げられたと――――」

 

「そんな訳無いでしょ!」

 

「え!?」

 

「ただダムの建設現場の監督をしているだけよ!

最近工事が遅れているから、泊まり込みをしているだけ! 終われば直ぐに帰って来るわよ!」

 

「え、ええ、そうね・・・・・ごめんなさい・・・・・」

 

「・・・・・いいから帰って、今日はあんまり話す気は無いのよ」

 

そう言って、霊夢は掃除を再開させる。

華仙は、邪魔にならないように神社を後にする。

 

―――――――――――

 

人里にある団子屋で、華仙と魔理沙は最近の霊夢の様子について話していた。

 

「霊夢の様子、どう思う?」

 

「どうもこうも、限界ギリギリって感じだな。

おかげで、皆怖がって神社に近づかなくなっちまったよ」

 

「何が原因かしら・・・・・?」

 

「そりゃ、ジンが原因だろうな。

アイツ、ここ数週間まともに帰っていないらしいぜ」

 

「それだけで、あんなに荒れるかしら?」

 

「そうだな、以前の霊夢なら考えられないが、結構ジンに依存しているぞ」

 

「そうね・・・・・考えてみたら、神社の参拝客を集めたのも、殆ど彼のおかげなのよね」

 

「そうだな、霊夢がやればいつも失敗ばかりしていたもんな。

それで、知らず知らずの内に、依存して行ったんだろう」

 

「そんな彼が、一ヶ月も帰って来ないか・・・・・」

 

「きっと不安なんだろうぜ。

いつ帰って来るか、本当に帰って来るか」

 

「それなら、現場監督を辞めさせればいいじゃない」

 

「そういう訳にもいかないらしい。

何せ、許可出したのは他ならぬ霊夢自身だからな」

 

「え? そうなの?」

 

「ああ、守矢の奴等が河童を統率出来ずにいたらしく。

それで、白羽の矢が立ったのがジンって事だ」

 

「よく霊夢が許可したわね・・・・・」

 

「何でも、ダムが建設されれば、それ目当てに里の人間が見に来るだろ?

それに乗じて、一儲けしようとしたらしいぜ」

 

「呆れた・・・・・そんな俗物な考えで、ジンを行かせたの?」

 

「そうらしいな。

最も、それで苦しんでいるのは本人だけどな」

 

「同情するけど、自業自得ね」

 

「そうだな・・・・・霊夢には悪いが、こればっかりはどうしようも無いしな」

 

そう呟き、団子をほうばる魔理沙。

ふと、空を見上げると、曇り空が広がっていた。

 

「あれ? さっきまで晴れだったのに・・・・・」

 

「季節外れの夕立かしら?」

 

そして雨が振りだす。

二人は店の中に避難するが、雨はだんだんと強まり。視界が見えないほどの豪雨となった。

 

「おいおい! 夕立ってレベルじゃないぞ!」

 

「これは一体・・・・・」

 

豪雨はしばらく続いたが、直ぐに止み、再び快晴となった。

 

「一体何だったんだ?」

 

「さあ?・・・・・って、あれは!?」

 

華仙の視線の先には、凄まじい水柱が起きていた。

 

「何なんだあれは・・・・・」

 

「水柱? いえ、彼処だけ凝縮した雨が降っているみたいね・・・・・」

 

「って、ちょっと待て! あそこはダム建設の現場じゃないか!」

 

「何ですって!」

 

「何度も行ったから、間違いない!」

 

「行くわよ魔理沙!」

 

二人は急いで、ダムの建設現場へと向かった。

 

―――――――――――

 

ダムの建設現場は騒然していた。

あちらこちらの河童達が、どうすれば良いかとあたふたしていた。

 

「これは一体・・・・・」

 

「あ、魔理沙! 華仙! ちょうど良かった!」

 

「にとりか、一体これは――――」

 

「お願い! 霊夢さんを止めて!」

 

「霊夢がどうかしたの?」

 

「あの水柱の中に行くって聞かないんだ!」

 

「何だって!」

 

「わかりました。案内して下さい」

 

「こっちだよ!」

 

にとりの案内の元、現場に向かう魔理沙と華仙。

するとそこには、複数の河童達が霊夢を止めようとしていた。

 

「危険ですから、下がって下さい!」

 

「そんなの分かっているわよ!

でも、あの中にアイツが――――」

 

「霊夢! 馬鹿な事は止めろ!」

 

「そうよ。

いくら貴女でも、あの水圧には耐えられないわ。ここは大人しく―――――」

 

「あの中にはジンがいるのよ!」

 

「何ですって!?」

 

「それは本当か!?」

 

「はい・・・・・ジンさんはあの中にいると思います・・・・・」

 

河童達の話によると、先程の豪雨の時、危険だと判断し、作業を中断し、河童達を避難させた。

その時、ダムに入る人影を見て、その人物を連れ戻そうと、自身もダムに入って行った。

 

「その後直ぐに、あの水柱が出たんです・・・・・」

 

「何てこった・・・・・」

 

「なるほど・・・・・ですが、私達ではこの水柱をどうにか出来ないわ。

一旦戻って対策を―――」

 

「そんな悠長な事、言ってらんないわよ! 今すぐ――――」

 

そこで霊夢の言葉は途切れた。

華仙が当て身で、霊夢を気絶させたからである。

 

「悪いけど、少し寝て貰らうわ」

 

「容赦ないな・・・・・。

それにしても、どうしてこんな水柱が?」

 

「もしかして・・・・・ダムを建設していた事に、水龍様がお怒りに・・・・・」

 

「いいえ、これは水鬼鬼神長の仕業ね」

 

「水鬼鬼神長? 何なんだそれは?」

 

「私も話しぐらいしか聞いて無いんだけど、何でも寿命を伸ばしし過ぎた者を殺す為に来たらしいわ」

 

「まさか・・・・・ジンはそれに巻き込まれたのか?」

 

「恐らくね」

 

「どうする?」

 

「これだけの規模の力を行使してもの。

正攻法は無理ね。一旦戻って対策を練りましょう」

 

「そうだな、霊夢の事もあるし、一旦戻るか」

 

「私達も、色々とやってみるよ」

 

「お願いねにとり。

何かあったら直ぐに知らせて」

 

「わかったよ」

 

この場は河童達に任せ、華仙と魔理沙は気絶している霊夢を連れて、一旦愽麗神社に戻る事にした。

 

―――――――――――

 

それから数日が経った今。

水柱は相変わらず、ダム付近に降り注いでいた。

愽麗神社では華仙と魔理沙が、ダム付近の状況を早苗と文から聞いているところであった。

 

「それで? どんな感じなの?」

 

「諏訪子様と神奈子様がどうにかしようとしたんですけど・・・・・駄目でした。

お話を聞く限り、水龍クラスの力らしいですよ」

 

「天狗達の方は完全に静観してますね。

元々、排他的な上に、ジンさんの事を快く思っていない輩が多数いますから」

 

「そう・・・・・ありがとう二人共」

 

「また何か進展あれば、お知らせします」

 

「私も、出来る範囲で協力しますよ」

 

そう言って、早苗と文は帰っていった。

 

「進展なしか・・・・・あれからもう数日だぜ・・・・・」

 

「そうね・・・・・普通の人間なら、生存は絶望的でしょが・・・・・」

 

「ジンは鬼の人妖だからな、まだ生きている可能性はあるな」

 

「ええ・・・・・でも、あの水柱をどうにかしないと、こちらからはどうしようも無いわね」

 

「あの中か・・・・・そう言えば、水鬼鬼神長に狙われている奴は、一体どんな奴なんだ?」

 

「知り合いの死神に聞いたぐらいだけど・・・・・。

何でも邪悪な仙人らしいわ」

 

「・・・・・そんな奴と一緒に閉じ込められて、大丈夫なのか?」

 

「どうだろう・・・・・?」

 

「ますます不安になっていくな・・・・・。

ところで霊夢の奴はどうしてる?」

 

「あまりにも暴れるから、毒を打っておいたわ」

 

「え!? 毒って――――」

 

「大丈夫。毒といっても、やる気を奪う毒だから、大して害にならないわ」

 

「そ、そうか・・・・・何にしても、大人しくして―――って、霊夢!?」

 

「え!?」

 

魔理沙の視線の先には、だるそうにしながらも、何処かに行こうとしている霊夢の姿があった。

 

「そんな! 雷獣の毒を受けて、動けるなんて!」

 

「これしき・・・・・どうって事・・・・・無いわよ・・・・・」

 

「強がるな霊夢。

動くだけで精一杯だろ?」

 

「そうだとしても・・・・・私は行かないといけないのよ・・・・・」

 

「霊夢。貴女がそうまでする理由があるの?」

 

「・・・・・わからないわ。

だけど、あいつを見殺しにはしたくないの・・・・・」

 

「・・・・・霊夢」

 

「霊夢。気持ちは分かるが、闇雲に行っても――――うわ!?」

 

突然、魔理沙の足元近くに、丸い穴が開いた。

そこから一人の女性が現れる。

 

「よっと、ようやく外に出られたわ~」

 

「あんたは確か・・・・・青娥?」

 

「あら、覚えてくれて嬉しいわ霊夢」

 

彼女の名は霍青娥。またの名を青我娘々である。

かつて霊夢と対峙した仙人で、一般的には邪仙と部類されている仙人である。

 

「何で青我がここにいるんだぜ?」

 

「それはね―――」

 

「おーい青我! 早く引き上げてくれー!」

 

「あ、いけない。連れがいるんだったわ」

 

「連れ? それに今の声・・・・・」

 

「ちょっと待っててジン。

今引き上げるから」

 

「「「ジン!?」」」

 

霊夢、魔理沙、華仙の三人は、急いで穴を覗く。

そこには、ボロボロになりながらも、確かに生きているジンの姿があった。

 

―――――――――――

 

それから数日後、ジンは神社で文々新聞を読んでいた。

 

「“ジン、奇跡の生還”って、文も大袈裟だな・・・・・」

 

「あのね、実際は大騒ぎだったのよ。

中には、あんたの無事を祈っている人だっていたんだから」

 

「そ、それは悪かった。

俺もまさか、あんな事に巻き込まれるとは思わなかったからな」

 

事の発端は、地獄の水鬼鬼神長が青娥を狙っていた事から始まった。

彼女を殺す為に、幻想郷中の雨を一ヶ所に凝縮させて降らせた。

青娥はというと、建設中のダムに興味を持ち、侵入する機会をうかがっていた。

そして、水鬼鬼神長が降らせた雨に乗じて、ダムに侵入し、物色を始めたのである。

ジンは、そんな彼女を避難させようとして、巻き込まれたのである。

 

「小町の話しによると、水鬼鬼神長って奴は、手段を選ばない奴らしいわよ。

周囲の被害は勿論、無関係な者だって、平気で巻き込むって話よ」

 

「最悪だなそいつ・・・・・」

 

「でも、今回はやり過ぎたみたいで、謹慎処分を受けたって」

 

「そうか、それなら安心だな。

ところで、何を燃やしているんだ?」

 

「観光グッズ。

ダム建設計画が中止になっちゃったからね。もう必要無いわ」

 

水鬼鬼神長が起こした水柱によって、建設中のダムは破壊されてしまい、ダム計画は中止になってしまった。

 

「そうか・・・・・せっかく作ったのにな」

 

「良いのよ。

・・・・・本当に大事なものが、無事だったんだから」

 

「え? 今何て――――」

 

「何でも無いわ。

それよりも、お粥が食べたい。作ってちょうだい」

 

「お粥って、何もそんな貧相な食べなくても―――」

 

「お粥が食べたい気分なの!

良いから作りなさい!」

 

「わかったって、そう急かすなよ」

 

こうして、ダム計画は中止になったものの、愽麗神社にいつもの風景が戻って来たのである。




今回はシリアスになってしまいました。
一応これでも、ほのぼの系の話しにしたいと思っているのですが、なかなか難しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。