登場人物が多くなると、台詞回しがとても大変です。
春が訪れ、満開の桜が咲き誇る博麗神社。
その下の元で、ジンは境内の掃除をしていた。
「桜が綺麗なのは良いんだが、花びらの掃除は毎年大変だな・・・・・・」
そう呟きながらも、落ちて来る桜の花びらを掃除をするジン。そんな時、お燐がやって来た。
「やっほージン」
「お燐か、今日はどうしたんだ?」
「さとり様からの手紙と本を持って来たよ」
そう言って、お燐は手紙と本をジンに手渡した。
「ああ、いつものか。ありがとうお燐」
「良いって、さとり様も文通を楽しんでいるみたいだから、御礼を言うのはこっちだよ」
ジンとさとりは読書という共通の趣味を持っていた。しかし、さとりの能力のせいで、誰かと趣味を語り合う事が出来なかった。そこでジンは、何気無く文通を勧めてみると―――――――。
『それでしたら、貴方が相手になってくれませんか?』
そんなこんなで、文通を始めるようになった二人。これが思うの他楽しくなり、本の交換や近況など書くようになったのである。
「それじゃ、手紙は後で読ませて貰う」
「ああ出来れば、今読んでくれないかい」
「?」
お燐の頼みに首を傾げながらも、ジンはさとりの手紙を読み始め、すぐに納得した。
――――――――――――――――
掃除を終えたジンは、皆を居間へと呼んでいた。
「どうしたのジン、いきなり呼び出しちゃって。何かあったの?」
霊夢がそう尋ねると、ジンは手紙を取り出しながら説明をし始める。
「ああ実は、さとりから花見の招待を受けてね」
「花見ですか? 旧地獄で花見なんか出来ましたっけ?」
皆は疑問を抱いていた。元地獄とはいえ、あそこに花見が出来るような場所があるとは思えなかった。
その疑問に答えたのはクラウンピースであった。
「もしかして、“石桜”の事かな?」
「「「「石桜?」」」」
「地面に埋められた死体に残った魂が純化し結晶化した物が石桜っていうの。
石桜はゆっくり沈んで行き、地底いっぱいの桜吹雪がふるの」
「へー、そんなのがあるんだ」
「でもあれ、ただのピンク色の石だよ。あんなのより、地上の桜の方が綺麗だと思うなー」
どうやらクラウンピースは、あまり乗り気では無い様子であった。そしてもう一人、気乗りをしない人物がいた。
「私も行く気はしないな。誰が好き好んで鬼がいる場所に行くかよ」
そう言ったの正邪であった。彼女の性格、性質上、鬼とは相容れず、敬遠している。
「行くのならお前らだけで行けよな。私は留守番してる」
「えー、一緒に行こうよ正邪」
「断る。誰がなんて言おうが、絶対に行かない」
針妙丸の言葉でも、頑なに行く事を拒む正邪。それに対してジンは――――――。
「そうか、それなら当日、華仙と一緒に留守番を頼むぞ」
「・・・・・・はっ? なんであの説教仙人が来るんだよ!」
「お前一人に留守番なんて任せられる訳無いだろ。それなら信頼出来る華仙をお目付け役として来て貰らわないと、安心できない」
((((確かに))))
ジンの言葉に、全員が心の中で同意した。
「い、いや! 今回はちゃんと留守番するって! 本当だ!」
「お前のその発言が一番信用出来ん、やはり華仙に来てもらうか」
その言葉に、正邪は頭をかきむしり、やがて観念したかのように叫んだ。
「わかった! 私も行く! あんな説教仙人と一緒に居るくらいなら、旧都に行って花見をした方がマシだ!」
「よし。それじゃあ皆で石桜の花見に行こう。クラウンはどうする?」
「あたい? まあ行っても良いよ。一人で留守番しているより、皆と一緒の方が楽しそうだし」
こうして博麗一同は、地底の花見へと行く事になった。
――――――――――――――――
地底世界にある街、旧都。その中心にある地霊殿のバルコニーに、ジン達は招待されていた。
「凄いなこれ・・・・・・」
「わー! きれーい!」
バルコニーから、天井から降り注ぐ、大量の石桜の光景に、皆が目を奪われていた。
「あたいがいた地獄でも、こんなにたくさん降らなかったわ!」
「今年の石桜の量が多いのと、石花見をしばらく禁止していたので、降石量は年間最高なのよ」
そう答えたのは、地霊殿の主であるさとりであった。
彼女の話によると、昨年からの調べで、石桜をこのまま放置すれば、間欠泉から石桜が飛び出し、少なからず被害が出てしまうといえ報告を受け、今年の石桜を解禁したとの事である。
「なんで今まで禁止していたんだ?」
「まあ、ちょっとした監視の強化期間だったんだけど、それがちょっと裏目に出てしまった訳」
さとりはそう言いながら、手のひらに落ちた石桜を眺める。
すると、一体の怨霊がやってきて、彼女の手にある石を食べ始めた。
「石桜を食った!?」
「石桜は、怨霊の好物なのよ。だからこうして大量に降っても、彼らが後片付けをしてくれるのよ」
「良いな・・・地上の桜は、花びらが残るから大変なんだよな」
「ふふっ、口ではそう言っても。本当は桜が好きなんでしょ?」
「まあな。寧ろ、桜が嫌いな奴なんているのか?」
「さあどうかしら? 少なくとも、私の知り合いにはいないと思うわ」
さとりはそう言いながら、何処か楽しそうな表情をしていた。
「ところで、良かったのかしら? 菫子を連れて来なくて」
「あいつは今日学校だ。連れて行けないって」
「彼女きっと、へそを曲げているわ」
「その辺は心配ない、次のゴールデンウィークで埋め合わせをするって約束したからな」
「貴方も大変ね・・・・・・」
そんな話をしている最中、さとりの表情が突然焦りと変わり、そして叫んだ。
「ちょっと! 石桜は食べ物じゃないわよ!」
「んぐっ!?」
そう叫んだと同時に、何故か石桜をほうばっていたサニーが、石桜を飲み込んでしまった。
「ああもう! 何で飲み込むのかしら貴女は!」
「いやだって、なんか美味しそうに食べていたから・・・・・・」
「結晶化したとはいえ、元は人間の魂なのよ。それを体内に取り込んでしまえば、妖精といえど、妖怪になるわよ」
「え!?」
さとりの言葉に、サニーの脳裏にはある事が浮かんだ。
石桜を食べる
↓
妖怪になる
↓
妖精じゃなくなる
↓
光の三妖精解散
「あわわわ・・・ど、どうしょう!」
(え? 重要なのはそこ?)
サニーの思考を読んださとりは、思わず心の中でツッコミを入れた。
――――――――――――――――
さて、光の三妖精解散の危機に陥った現在。案が幾つが出された。
先ずは霊夢案から。
「そんなの、腹をぶっ叩いて吐かせれば良いでしょ」
「あの、その、出来れば穏便に・・・・・・」
「やーよ、めんどくさい。ほら、さっさと腹だしなさい」
「ひ、ひいぃぃー!」
本気でやりかねなかったので、急いでジンが止めに入った。どうやら酒が回ってしまっているようだ。
次に妖弧案。
「針妙丸が小さくなって、直接体内に入って出させる方法はいかがですか? 御先祖様もそうやって鬼を退治したんですし」
「いやいやいや! いくら何でも人様の体の中には入りたくないよー!」
「私もちょっとそれは・・・・・・」
「そもそも、サイズ的にきつくないか?」
針妙丸の本来の大きさは手のひらサイズである。そして、飲み込んだ石桜の大きさも手のひらサイズ。自分と同じ大きさの石を持ち運べる訳がなかった。
次に正邪案。
「下剤でも飲めば一発解決すんじゃね?」
「妖精はトイレに行かないの!」
一昔のアイドルみたいな発言をするサニー。本来妖精は食事をしないので、わりと信憑性がある。
次にスター案。
「諦めて妖怪になるってのはどうかしら?」
「何言ってるのよスタァァァ! 私が妖怪になったら、三妖精解散なのよ!」
「大丈夫よサニー。三妖精は解散しないわ」
「え?」
「クラウンを新しいメンバーに加えるから大丈夫♪」
「ぜんぜん大丈夫じゃなあわよー! ジン! お願いだからどうにかしてー!」
とうとうジンに泣きつくサニー。ジンはそんな彼女の頭を撫でながら、諭すように言った。
「わかったわかった。ちょっと辛いかも知れないが、我満しろよ。
そう言って、ジンはサニーの体にある経穴を指で押した。
「うっ・・・・・・」
「はい、ゲロ袋」
「おっ、ありがとう」
ジンはさとりが既に用意していたゲロ袋を受け取り、それをサニーの口に近づけた。
「ほら、この中に全部吐け」
サニーは言われるがまま、ゲロ袋に胃の中の物を吐いた。
――――――――――――――――
石花見から数日後、一騒動があった物の、ジン達を楽しませる事が出来たさとりは、非常に満足していた。
そんな時、お燐が部屋にやって来た。
「さとり様、ジンから手紙と贈り物を預かって来ました」
「贈り物?」
「はい、これです」
そう言ってお燐が持っていた物は、盆栽であった。
だが、普通とは異なり、その盆栽には、桜の花が咲いていた。
「あらこれ、桜盆栽じゃない。初めてみるわ」
さとりは知識で、桜の盆栽という物があるというのは知っていたが、実物を見るのは初めてであった。
そして手紙には、こう書かれていた。
“さとりへ この前、石花見に誘ってくれてありがとう。ちょっとトラブルがあったけど、皆楽しかったって言っていた。正邪も、口には出さないけど、楽しんでいたと思う。
地底の桜を見せてくれたのだから、御礼に地上の桜を見せようと思い、この桜盆栽を贈る事にした。
最初は桜の枝でも贈ろうと思ったんだが、幽香に鬼のように怒られた。正直、人生終わるかと思った。
彼女に相談を持ち掛けると、桜盆栽という物を教えられた。これなら室内でも楽しめるとの事。
更に、その桜は特別な品種で、地底でも育てられる桜なんだそうだ。だから大切に育てて欲しい。
PS、いつか機会があれば、今度は地上の桜で一緒に花見をしよう”
手紙を読み終えると、さとりはいつにも増して笑みを溢した。
「そうね・・・せっかくの誘いだから、久々に地上に行ってみようかしら?」
そう呟きながら、満開の花を咲かす桜盆栽を眺めるさとりであった。