東方軌跡録   作:1103

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 ようやく純狐を出せました。出そう出そうと思いながらも、話の構想に手間取りました。
 彼女のキャラに関しては、かなりキャラが崩壊させています。病デレで尚且つ親ばか的なキャラにしました。


純狐がやって来た

純狐、月の都を攻め入り、幻想郷を巻き込む異変を引き起こした元凶である人物である。その人物は今、幻想郷に引っ越して来たのである。

 

「そういう訳で、今日から永遠亭で御世話になるわ。よろしくね」

 

「・・・・・・え? マジで?」

 

鈴仙は思わずそう言ってしまった。

 

――――――――――――――――

 

純狐の引っ越し作業をしている中、鈴仙は永琳にそっと耳打ちをしていた。

 

「師匠、なんで彼女がうちに住むことになったんですか?」

 

「単純に監視がしやすいからよ。もっとも彼女は、最初は博麗神社に住むつもりだったらしいけど」

 

永琳の話によると、純狐は博麗神社に住むつもりであったが、情勢やその他諸々の事情で、危険だと判断し。永琳の提案の元、永遠亭に住むことになった。

 

「危険って、何です?」

 

「月の都は、未だに純狐を打ち倒したジンを警戒しているのよ。そんな中、純狐が博麗神社に住んでみなさい。火に油を注ぐ事態になるわ」

 

「何でそんなに警戒するんですかねぇ? あの力は師匠の薬があっての力なのに」

 

「それは違うわうどんげ。純狐の力をもってすれば、ジンの力を覚醒させられるわ。月の民はそれを怖れているのよ」

 

純狐を下したジンの力、“現実を夢に変える能力”。あらゆる不都合な現実を夢に変え、自分の都合の良い現実だけを残すという強力無比の能力である。

紺珠の薬を用いたこの能力は、月の都にとっても驚異であり、それを持つジンは排除対象にされているのだが、情勢により直線的な排除が出来ないままでいた。

 

「向こうに残っている私の教え子達が上手くやってはいるけど、あまり刺激するような事があれば、強行策に出る可能性があるわ。だから、なるべく穏便に事を進めたいのよ」

 

「それでうちに住む事に?」

 

「ええ、私が監視役という名目になれば、向こうも多少は安心するでしょ?」

 

「そうですね。師匠の信頼度、未だに最大値みたいですから」

 

月を離反した身でありながらも、八意永琳には絶大な信頼を月の民に寄せられていた。

本来なら今にでも月に連れ戻したいのだが、そんな事をして敵対され、純狐や紫と手を組んで攻め込まれてもしたら、今度こそ月の都は崩壊する。そう思っている重役達は、彼女に手を出せないでいる。

 

「そんな訳で、私達や幻想郷の皆が平和に暮らすために、彼女を手元に置いて置くわけ。わかったかしらうどんげ?」

 

「複雑な外交事情に巻き込まれたって事はわかりました」

 

鈴仙はため息をつきながら、今後の生活に不安を感じるのであった。

 

――――――――――――――――

 

純狐の引っ越し作業が終わり、一息ついた頃。純狐はこんな事を口にした。

 

「引っ越しも終わった事だし、息子(ジン)の所に挨拶にでも行こうかしら」

 

純狐は時々というか、ジンを死んだ息子に重ねて見ている時がある。そのせいで暴走しがちで、ジンと合わせるには細心の注意が必要とされている。

 

「せ、せっかく来たばかりなんですから、少し幻想郷を見て回ってからでも遅くは無いじゃないですか?」

 

「うーん・・・それもそうね、これから住み場所を見るのも良いかも知れない」

 

どうにか逸らす事に成功した事に、鈴仙は安堵の息を漏らす。だが、それも束の間であった。

 

「それじゃあ、案内をよろしくね鈴仙♪」

 

「・・・・・・え?」

 

まさに言い出しっぺの法則。こうして鈴仙は、純狐を案内する羽目になるのである。

 

――――――――――――――――

 

二人が最初に訪れたのは、人里であった。

日用品や必需品等が揃えられているこの場所は、これから住むにあたって御世話になる場所である。

 

「なかなか良い場所ね、こういう風情が良い場所は好きよ」

 

純狐は人里の事を大層気に入っていた。一方鈴仙は、純狐の挙動をいちいち気にしており、それどころではなかった。

 

(のほほんとしているけど、月の都を攻め、豊姫と依姫を追い詰めた存在。これは気が抜けないわね)

 

警戒バリバリの鈴仙を他所に、純狐は人里観光を楽しんでいた。するとそこに―――――――。

 

「あれ? 鈴仙に・・・純狐?」

 

間の悪い事に、寺子屋帰りのジンと出くわしてしまった。

 

(ぎゃあー!? 何でよりによって合っちゃうのよー!?)

 

心の中で叫ぶ鈴仙。恐る恐る純狐ね様子を見ると――――――。

 

「合いたかったわよジーン♪」

 

目にハートマークを浮かべ、ジンに抱きつこうとしていた。

 

「うわっと!?」

 

ジンは反射的にそれをかわしてしまい、純狐はそのまま地面に転んでしまう。

 

(うわ~、顔面にモロ・・・痛そ~)

 

「し、しまったつい! 大丈夫か純狐!?」

 

ジンは倒れている純狐に声を掛けると、彼女は倒れた状態で泣きながら答えた。

 

「うっ、うっ、ひ、酷いわジン・・・母のスキンシップを避けるなんて、そんなにお母さんの事きらいなの・・・・・・?」

 

「いやちょっと待ってくれ、俺はあんたの息子じゃあ―――――――」

 

「うわ~ん! ジンに絶縁されたー! もうやだー!」

 

今度はジタバタしながら、まるで子供のように泣き言を言い始めるその姿に、ジンと鈴仙はますます困り果てた。

 

「うっ・・・うっ・・・こうなったのも、やはり嫦娥のせいね! 許すまじ嫦娥! やはり月の都を滅ぼし、この手で始末を――――――」

 

「何でそうなるんだよ!?」

「何でそうなるのよ!?」

 

あまりにも酷い責任転嫁に、ジンと鈴仙は思わず突っ込みを入れる。

このままだと、再び月の都に攻め行きそうなので、ジンはやむ無く秘策を出す事にした。

 

「いい加減にしてくれ“母さん”!」

 

「!?」

 

ジンのその言葉に、純狐はピクリと動きを止めた。ジンはそのまま言葉を続ける。

 

「あまり我が儘言うなら、もう母さんと口を聞かないからな!」

 

「ああ、ごめんなさい! 私が悪かったわ! だから口を聞かないなんて言わないで~!」

 

純狐は直ぐ様起き上がり、懇願するようにジンに言った。死んだ息子の振りをするのは心苦しいが、そうでもしないと、純狐がまた暴走すると思い、断腸の思いで彼女の息子を演じるジンであった。

 

――――――――――――――――

 

ここは老舗の団子屋、先程の騒動からようやく落ち着きを取り戻した純狐は、ジンと鈴仙に深く謝罪していた。

 

「二人ともごめんなさいね、あんなみっともない所を見せて・・・・・・」

 

「あまり気にするな、そりゃちょっと驚いたけど、今まで寂しい思いをしてきた分、甘えたかったんだな」

 

「まあそれが、赤の他人のジンっていうのが問題だけどね」

 

「・・・・・・」

 

「どうかした?」

 

「いいえ、何でもないわ。それよりも、この店の団子は美味しいわね」

 

「そりゃ、その手のプロが作っているから」

 

そう言ったジンの視線の先には、普通に接客している清蘭と、こちらを密かに監視している鈴瑚の姿があった。

 

(上から話は聞いて居たけど、本当に幻想郷に住むみたいだね。いやはや、上の心中察するよ)

 

月の都の上層部に同情しつつも、鈴瑚はせっせと団子を作るのであった。

 

 

美味しい団子を食べながら、楽しい談笑をしているジン達。そんな時、ある人物が団子屋に入って来た。

 

「さーて、今日のオススメはっと・・・ん?」

 

「あっ、華仙」

 

「ジンじゃない、奇遇ね」

 

この団子屋の常連にして、ジンの仙術の師匠の華仙であった。

華仙はジンの姿を見ると、彼の席に向かう。

 

「鈴仙も一緒だったのね、そちらの方は?」

 

「彼女は―――――」

 

「初めまして、私は純狐。この度幻想郷に越して来た者よ」

 

幻想郷に来て初めて理性的な姿勢を見せた純狐、それを見ていたジンと鈴仙は、内心驚いていた。

 

「御丁寧にどうも。私は茨華仙、仙人をしている者です」

 

華仙もそれに対応して、同じ様に礼儀正しく自己紹介をした。その一方で、純狐の並みならぬ力を感じた。

 

(抑えてはいるけど、物凄い力を持っているわね。守矢の神なんか比較にならないくらい・・・下手をしたら、“あの姉妹”より強いかも・・・・・・)

 

かつてまだ仙人ではなかった頃、鬼の四天王と共にある場所に攻めいった時に戦った姉妹の事を思い出す。最も、二度と会うことは無いだろうと、彼女自身は思っている。

 

「仙人ですか・・・変わった仙人もいるようね」

 

「それはどういう意味?」

 

「だって貴女―――――」

 

「ストップ」

 

純狐が何かを口にしようとした時、ジンが口を挟む。その表情は、少し不機嫌であった。

 

「純狐、人にはそれぞれ事情がある。華仙がどんな存在であっても、彼女は仙人だ。それを貶める事は許さない」

 

ジンが厳しくハッキリ言うと、純狐はしをらしくなる。

 

「・・・・・・それもそうね、ごめんなさい。不躾な事を言ってしまって」

 

「いえ、お気になさらず。知り合いには良く変だと言われていますので」

 

華仙はそう軽く言い、優しげに笑った。

淀んだ空気がなくなり、穏やかな雰囲気になった。これで場が収まると、ジンと鈴仙も一安心―――――そう思っていた。

 

「ところで、ジンと親しいみたいですけど、どういった関係で?」

 

純狐の言葉を聞いて、鈴仙は不味いと感じた。何故なら、親バカという者は、子の人間関係に非常に敏感なのである。その事に気づいていたのは、残念ながら鈴仙だけであった。

 

「ちょっと待っ――――――」

 

「彼の師匠をしています」

 

鈴仙の制止の声は届かず、華仙は自慢気にそう答えた。その瞬間、空気が一気に冷えた。

 

「・・・・・・少しばかり、お話を聞かせて貰えないかしら?」

 

純狐は笑顔でそう言った。だが、その笑顔はとても狂気的だったと、後に鈴仙は答えた。

 

 

夕暮れ、人々が家へと帰路につくなか、団子屋では未だに純狐と華仙の口論は続いていた。

 

「だから何度も言っているじゃない! 私とジンは、健全な師弟関係よ!」

 

「そんな安い言葉に騙される私じゃないわ! 男女の師弟で、しかも仙人! 何て如何わしい!」

 

「いやいやいや、何で如何わしいんだ? 俺と華仙は普通の――――――」

 

「きっと難癖つけて、房中術の修行をさせているんでしょ、何て卑猥な仙人なの!」

 

「ぶほぉ! そ、そんな訳無いじゃない! そ、そういう事は、御互い愛し合った―――――」

 

「愛し合った!? もうそんなとこまで行ったの!? もう許さん! 嫦娥の前に、お前から消し去ってくれる!」

 

「ああもう! 落ち着いてくれ!」

 

騒動は収まらず、自警団が駆り出される事態となった。

更にこの騒動によって、華仙は暫くの間、とても不名誉な称号をつけられてしまうのであった。。

 

「どうしてこうなるのよー!?」

 

華仙の悲痛の叫びが、幻想郷に響き渡ったのは、言うまでもない。

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