東方軌跡録   作:1103

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 今回は鈴奈庵の話しですが、秘封倶楽部の話しを少し混ぜて作りました。
 今年もいよいよ後僅か、インフルエンザも流行っているので、体調など崩さず来年を迎えたいです。


百話物語と未来の怪談

「百話物語をしたい?」

 

それは唐突な事であった。暑い日の中、鈴奈庵に本を返しに訪れたジンに、小鈴が“百話物語がしたいので、場所として博麗神社を借りたい”との事である。

 

「何で急にそんな事を?」

 

「この外来本を見て、やってみたいと思ったんです」

 

そう言って見せたのは、夏の怪談特集の中にある百話物語の記事に指を差した。

 

「こういう暑い日だからこそ、こういう催し物をやるべきだと思うんです!」

 

力強くそう言う小鈴、余程やりたいようであるが、一つ問題があった。

 

「俺は別に構わないが、霊夢が許可するかな・・・・・・?」

 

それが一番の問題であった。

百話物語するとなると、必然的に夜となる。夜ともなると、人を襲う妖や浮遊霊等が現れる為、必然的に護衛等が必要となる。その為の費用や打合せ等を考えると、霊夢が素直に頷くとは思えなかった。

 

「やっぱり無理ですか・・・・・・?」

 

小鈴は非常に残念そうに俯いた、そんな時である。

 

「ふっふっふ、どうやらこの魔理沙様の出番ようだな」

 

そう言って現れたのは魔理沙であった。

 

「出番って、霊夢を説得出来るのか?」

 

「とうぜん、アイツを説得するなんて朝飯前だぜ」

 

「随分自信満々じゃないか」

 

「こう見えても、霊夢と一番付き合いが長いからな、アイツの性格は良く知っている。まっ、大船に乗ったつもりでいてくれよ」

 

魔理沙は自信あり気にそう言って、鈴奈庵を出ていった。

 

――――――――――――――――

 

それから数日後、博麗神社では何故か屋台等の準備がされており、その光景はまるで縁日の準備であった。

 

「え、えっと、これは一体・・・・・・確か、百話物語をするって話じゃあ?」

 

様子を身に来た小鈴が戸惑っていると、準備の手伝いをしていたジンがやって来た。

 

「小鈴か、もしかして様子を見に来たのか?」

 

「はい、そうなんですけど・・・・・・」

 

「言いたいことは分かる。何で屋台の準備なんかしているかと言うと―――――」

 

ジンの話によると、魔理沙はただ百話物語をやる、というのでは無く、博麗神社主催の百話物語大会という名目にして、神社にも利益が出るように仕向けたのである。

神社に利益が出るという事なので、霊夢も渋ったりしなかった。

 

「まあそんな訳で、百物語の方は任せた。一応そっちがメインなんだから、しっかりやってくれよ」

 

そう言って小鈴の肩を叩いて、再び準備を始めるジン。何だか話が大きくなってしまったなぁと、小鈴は僅かながらプレッシャーを感じた。

 

――――――――――――――――

 

何やかんやで百物語大会当日。宣伝の効果もあって、多くの人々が神社に訪れた。本当は百物語がメインなのだが、端からみれば夏祭りか縁日にしか見えない。まあそれでも、多くの人が来てくれた事に、霊夢は大喜びであった。

そして、いよいよ百物語が始まろうとしていた。

開催場所は先ほどこころが踊っていた櫓の上である。今まであった祭りの灯りは消え去り、残っているのは百物語の参加者と、無数の蝋燭だけであった。

 

「皆さま、今宵はお集まりいただきありがとうございます。それではいよいよ、百物語を始めさせていただきます」

 

小鈴は雰囲気を出しながら、百物語大会の開催を宣言をした。

最初は小鈴から怪談を話し、そこから順番に話して行った。その内容という物はマチマチで、分かりにくい物であったり、自分の怪異(もちねた)だったり、オチがあったりと、百物語としては恐さがあまり無かったが、これはこれで楽しいとジンは思った。

 

「ほらジン、次はあんたの番よ」

 

霊夢に言われ、自分の番が来たかと、ジンは改めて周囲を見回す。そこには人と妖怪が一緒になって、自分の怪談を待ちわびている姿が見えた。これは少し緊張するなと、内心思いながらも、とっておきの話をした。

 

「これは友人から聞いた話だが。ある日、自室で寝ていた友人が目を覚ますと、そこは見知らぬ森林の中にいた。そこでは、見た事もない動植物で溢れていて、

友人は好奇心でその場所を探検することにした。だが、そこで友人はおぞましい怪物と出会った。

その怪物の姿はまさに、西洋怪物キマイラその物だったと言う。キマイラは友人の姿を見るやいなや、鋭い爪で襲い掛かった。

そこで友人は目を覚ました。

辺りを見回すと、そこは自分の部屋。『どうやらあれは全て夢だったようだ』 友人はホッと胸をおろす。だが、腕には鋭い爪跡がしっかり残されていた。

それから友人は病院に搬送され、しばらく入院する事になったそうだ」

 

話終えたジンは、蝋燭の灯りを消し、辺りの反応を伺った。

反応は上々であった、怖がる人も居れば、怪談について思案する人もいた。だが誰一人、退屈そうな者が居なかった。

 

(ふぅ、脚色はしたが、それなりに受けたようだな。良かった)

 

こうしてつつがなく百物語は続けられ、最後の絞めでは阿求の怪談と、魔理沙のサプライズで、無事百物語大会は終わりを告げたのである。

 

――――――――――――――――

 

ここは夢の世界の幻想郷。この世界の主であるジンは、もう一つ秘封倶楽部のメンバーである蓮子とメリーの二人に、先日の百物語大会について話していた。

 

「―――――そんな感じで、百物語は盛り上がった」

 

「いいなぁ、私も参加したかったなぁ」

 

「私はどちからというと、トリフネの話をされて恥ずかしいんだけど・・・・・・」

 

「勝手に話したのは悪かったけど、それなりに脚色はしたし、みんな楽しんでくれた。まぁ、個人的にはあまり危険な事はしないで欲しい。友人が知らない間に死んだなんて、気持ちいい事じゃないからな」

 

「ふっふっふっ、ちょっとやそっとの危険で止まるような秘封倶楽部(わたしたち)では無いわ!」

 

「もう蓮子ったら・・・・・・」

 

あまり反省の色を見せない蓮子に、メリーはため息をつく。そんな二人の様子を見て、ジンはあることを考えていた。

衛生トリフネ、テラフォーミングの為の生物実験を目的とした衛生で、様々な動植物を乗せ、宇宙空間での生態系観察実験を行う“予定”の物なのである。

そして蓮子達が話してくれたトリフネは、原因不明のトラブルによって投棄され、今でも独自の生態系を築き上げているトリフネである。

二つのトリフネの食い違い、そして二つの秘封倶楽部、一つしかない菫子の帽子が二つある事実、それから導き出す答えは―――――――。

 

(この二人が、未来からやって来ているって事だよな。それなら色々と、辻褄が合う。

蓮子の帽子は恐らく、菫子が譲ったのだろう。そして、秘封倶楽部の会長の座も。そしてトリフネも恐らく、数年後に打ち出され、原因不明のトラブルで投棄される。そして投棄されたトリフネは、独自の生態系を築き上げた。

そんなトリフネの世界を二人は体験し、その話を過去の人間である俺に話したって事だろうな・・・)

 

いつの間にかSFのタイムトラベル的な事柄に関わっていたのだなぁと、ジンは漠然と思った。

最も、当の本人達は気づいていないのか、気づいていたとしても、目の前にいる自分が過去の人間だと、微塵も思っていないだろう。思っていたならば、きっと対応も違っている筈だとジンは思っていた。

 

「―――――ねぇ、聞いているのジンさん?」

 

不意に、蓮子の声にジンは意識を呼び戻された。どうやら、思考に没頭してしまっていたらしい。

 

「ああ悪い、聞いていなかった」

 

「もうしっかりして聞いてよね。大事な話なんだから」

 

「大事な話?」

 

「大事なというより、蓮子の我儘でしょそれ・・・・・・」

 

蓮子の言葉に、メリーは呆れた顔をして言った。

 

「我儘じゃなくて、同じ秘封倶楽部のメンバーとしての大事な話よ」

 

蓮子の言葉を聞いて、菫子も似たような事を言っていたなぁと、内心思い、思わず笑みを溢した。

 

「どうしたのジンさん?」

 

「いや、何でもない。それよりも、話ってなんだ?」

 

「そうそう。もし、私とメリーがピンチになったら、さっそうと駆けつけてねって話し」

 

「蓮子・・・流石にそれは無茶振りよ」

 

「そうかな? なんかジンさんって、ピンチに駆けつけてくれるヒーローって感じがするのよね」

 

何の根拠のない信頼。それに応えるように、ジンは笑いながら言った。

 

「ああ、二人がピンチになった時は必ず駆けつける。それがどんな遠いところでも、必ずな」

 

「頼んだわよジンさん」

 

笑顔で返す菫子に、やや呆れながらも少し嬉しそうなメリー。

遠い未来の事は分からないが、この時交わした約束は守ろうと、心に誓うジンであった。

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