縁日。神仏との有縁の日のことで、祭や供養が行われる日の事である。
博麗神社では縁日には、屋台の場所を提供し、その場所代を得ている。
昨今の神社の評判は良く、今回も参拝客が多く訪れるだろう、誰もがそう思っていた。
「な、何で誰も来ないのよー!?」
霊夢は大きく叫んだ。それも無理も無い、何故なら昼頃になっても、博麗神社に訪れた者は殆どいないのである。
「ちょっと妖狐! ちゃんとビラ配ったわよね!?」
「は、はい! ちゃんと配りました!」
「開催日を間違えて宣伝したとか!?」
「いや、それは無い。最終確認はちゃんとしたし、現にサンプルに記載された日時に間違いはなかった」
そう言ってジンが見せたのは、ビラのサンプルであった。そこにはちゃんと今日の日付が書かれていた。
「なら、別の所でイベントをやっていて、皆そっちに行っちゃってるとか?」
「それはないな。イベントが重ならないように、確認しているからな」
「だったら、何で誰も来ないよのー!?」
取り乱す霊夢。ジンも今回の件は不振に思っていた。
幻想郷の住民の殆どが祭り好きである。その為、こういったイベントには目がない。故に、宣伝したのにも関わらず人がまったく来ないのは有り得ないのである。
「人里の様子を見てくる。何かあったかも知れない」
「わかった、気をつけてねジン」
ジンは原因を究明すべく、人里へ向かって行った。
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ジンが人里に向かって暫くした後、神社に妖怪達が来るようになったが、数は少なく、また人は一切訪れていない。
「変ね・・・明らかにおかしいわ」
「そうですね。妖怪の方々は来てはくれていますが、数少ないですし、人の方はまったく来ませんね」
「何かがおかしいわ・・・本当に妨害されているんじゃ」
「貴女の言うとおり、何かしらの力が博麗神社に働いていているわよ」
そう言って現れたのはアリスであった。
「アリスじゃない、魔理沙は一緒じゃないの?」
「魔理沙なら屋台巡りしているわ。ここまで来るのに、結構大変な目にあったらしいから」
「大変な目に?」
「ここに来る途中、とてつもない空腹感に襲われたらしいわ。正直、一人では来れなかったぐらいに」
アリスの話によると、魔理沙に誘われて博麗神社に向かう途中、空腹感に襲われ、神社に近づく度にそれが強まり、飛んでいられない程になった。
「危なっかしいかったから、ここまで運んで来た訳」
「霊夢さん、これは・・・・・・」
「ええ、ヒダル神の仕業ね」
ヒダル神とは、人間に空腹感をもたらす行逢神または浮遊霊の一種である。これに取り憑かれた人間は飢餓に襲われ、身動きが取れなくなり、最悪の場合餓死してしまう恐ろしい悪霊なのである。
「なるほど、道理で空腹感に襲われた訳か」
焼きトウモロコシを食べながらやって来た魔理沙。顔の血色は良くなっており、体調が回復したのを一目で分かった。
「もう大丈夫そうね魔理沙」
「まぁな。でも、原因がそのヒダル神っていう奴なら、さっさとどうにかした方が良いぞ。私でも根を上げる程の空腹感だったから、人里の連中は絶対に来れないぜ」
「そうね、さっさと祓って―――――」
「あぁー!?」
「きゃあ!? もうなんなのいきなり叫んで・・・・・・」
「そう言えばジンさん、人里の様子を見に向かって行っちゃいましたよね・・・・・・?」
「・・・・・・しまったぁー!?」
妖狐の言葉で、霊夢はジンが人里に向かった事を思い出す。もしヒダル神が今回の客足の悪さの原因なら、博麗神社周辺から人里までの道程はヒダル神の影響下あると見て良いだろう。
人里に向かって行ったジンは、行き倒れになっている可能性が高かった。
「急いでジンを探すわよ妖狐!」
「はい! って、あれは!?」
ジンを探しに行こうしたその時、一羽の大鷹が神社に現れ。その背には華仙といかにも調子の悪そうなジンと妹紅がいた。
「霊夢! この二人に何か食べ物を!」
「わかったわ!」
華仙の言葉に直ぐ様従う霊夢。こうして一命をとりとめたジンと妹紅であった。
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ヒダル神を祓って後、博麗神社には数多くの参拝客が訪れるようになった。
飢え死になりそうだったジンと妹紅は、焼きそばやたこ焼等を食べながら、今回の顛末を霊夢と華仙から聞いていた。
「なるほど、そのヒダル神のせいで、神社に近づけなくなっていたのか」
「そういうこと。それにしても無事で良かったわ」
「正直、空腹で倒れてて、何がなんやらなんだが。ところで、妹紅は何で倒れていたんだ?」
「ん? いやな、神社に行こうとしてた連中が次々と倒れるって連絡があってな。その調査で神社に向かおうとしたんだ。ほら私、死んでも死なないし。そんで途中でお前が倒れているのを見つけてな、そのまま神社に運ぼうとして力尽きた」
「そこで華仙に見つけられた訳ってね。所で華仙、貴女は大丈夫なの?」
「ん? 何が?」
「ヒダル神の影響よ。何ともなかったの?」
「んー、少し小腹空いた程度しか感じなかったけど」
「さすが仙人様ってところかしら」
「当然よ、私を誰だと思っているのよ」
そう言って得意気に笑う華仙であった。
その後、ヒダル神を祓った事が更なる宣伝となり、前半の売り上げを取り戻すどころか、いつもの倍以上の売り上げを記録し、霊夢はとても大喜びしたのである。