都市伝説異変から派生した、完全憑依異変という物が起きた。この異変は、依神女苑と依神紫苑という疫病神と貧乏神の双子の姉妹が引き起こしたもので、紫の協力のもと、霊夢が無事に解決を果たすのであった。
退治された双子はというと、妹の女苑は命蓮寺に預けられ、白蓮の監視の元、厳しい修行を課せられていた。彼女いわく、女苑には更生の余地があるとの事。果たして彼女が本当に更生出来るのか? 白蓮の腕の拠り所である。
その一方で、姉の紫苑というと、彼女は博麗神社に預けられていた。
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ここは博麗神社、異変解決を担う巫女が住んでいる場所である。他にも多数の居候が住んでおり、そしてまた一人新たな居候が増えたのである。
「うっ、ぐすん、ごっくん。お、おいしぃ~おいしぃ~よぉ~」
涙を流しながらご飯を食べる貧相な少女。彼女がこの起きた異変の首謀者の一人である、依神紫苑である。
異変解決後、行くあての無い彼女は博麗神社に引き取られる事となり、今はこうして一緒に食事をしていた。
「あんたねぇ、いつも言っているけど、泣きながら食事をするのやめなさいよね」
呆れながらも、霊夢は紫苑のお茶碗に炊きたての白米をよそう。それを受けとる紫苑は、またしても大粒の涙を流す。
「だって、お腹いっぱいに食べるのが夢だったもの。それが叶って嬉しくて涙が……」
「妹の女苑に頼めば良かったんじゃ?」
「女苑は自分以外の事にお金は使いたくないみたいだし、それに私がお金を持つと必ず無くしちゃうから……」
「苦労してるのねあんた」
「まあ、慣れっこだし。それに、なんだがここに来てから調子が出ているのよね」
「調子が良い?」
「理由は分からないけど、この地にかなりの運気が貯まっているみたいなの。そのおかげで、私の能力がかなり抑えられているのよ。じゃなかったら、とっくに貧困生活になっているから」
「サラッと恐ろしい事言わないでちょうだい。それにしても運気か……あっ、そうだ! 良い事を思いついた♪」
先程の話を聞いて、霊夢はある悪巧みを思いついたのであった。
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数日後、博麗神社ではある催し物が行われていた。その名も――――。
「“貧乏神が認める、運気が集まる岩”? またおもしろい物を始めたな霊夢の奴」
遊びに来た魔理沙は、鳥居に掛けられた横断幕を見て呟いた。そして、鳥居を潜るとそこには境内に堂々と飾られた球体の岩がそこにあった。
「これが運気が集まる岩か? 何のへんてつの無いただの岩みたいだが?」
「そうね、この岩自体特別な力は無いわ。それどころか、人為的に作られた岩よ」
魔理沙が岩を見ていると、その後ろから華仙がやって来た。どうやら彼女もまた、岩の話を聞きに来たようである。
「華仙か、人為的に作られたって事は、これは偽物か?」
「そうね、運気が集まる力はこの岩には無いわ。まったく、ジンがいながらこんな詐欺が横行するなんて、これは説教が必要ね」
「詐欺じゃないわよ、人聞きが悪いわね」
すると、主催者である霊夢と、何処か気まずそうなジンが魔理沙と華仙の前に現れた。
「霊夢。貴方はこの岩に運気が集まると御触れを出しているみたいだけど、実際にこの岩にはそんな力は無いわ。これは立派な詐欺よ」
ずばりと指摘をする華仙に対して、霊夢は何故か余裕の表情をしていた。
「ええ、確かにこの岩自体には何の意味は無いわ。あくまで客寄せ用にジンに作らせたから」
「ジン…貴方という人は……」
「ま、待ってくれ華仙。確かにこの岩は術で造ったものだが、別に詐欺をしている訳じゃない…多分」
「多分って、貴方自身、これが欺瞞って事は自覚しているのでしょう? なら何故このような事に手を貸すの?」
「そ、それは……」
「私の為なのよ」
そう言って現れたのは紫苑であった。だが、いつもの彼女とは少しだけ様子が違っていた。
「出た貧乏神!……ん? 何だか少しだけ明るくなったか?」
「うんまぁ、おかげさまで。これ程の運気が集まると、貧乏神の私でも少しはあやかれるって事かな?」
「どういう事だ?」
「紫苑の話によると、自分の能力が抑えられるくらいの運気が、この博麗神社に貯まっているみたいなのよ。それを利用すれば、参拝客も来ると思って。
だけど、ただ土地に運気が貯まっている話だけじゃあ、なかなか信じないでしょ? そこで明確な信仰対象を造った訳」
「それがあの岩って事?」
「その通りよ。ただの岩より、変わった形の方がより信憑性も高まるでしょ? それに、話が広まれば、紫苑の悪評も無くなるでしょ?」
「ああ確かに、貧乏神が無害になるほどともなれば信憑性が高くなるし、怖がらなくなるかもな」
「そんな訳で、ジンに協力して貰えた訳よ」
「騙しているみたいだけど、ギリギリ詐欺じゃないからと思って。それに、紫苑の悪評もどうにかしたかったんだ」
「ううむ…まあでも、お金を取っていないみたいだし、今回は目を瞑りましょう。だけど、このような詐欺まがいはこれっきりにしなさい二人共!」
「わかってるわよ。というか、そんな事をしなくても、私にはジンがいるから大丈夫♪ ねえジン?」
「ははは…期待に応えられるように頑張る」
ジンの腕を組み、微笑む霊夢と照れくさそう笑うジン。そんな二人の回りに運気が集まり出すのを紫苑は見ていた。
(なるほど、この二人に運気が集まっていたのね。さしずめ、幸せの運気。もしかしたら、ここに居れば私でも幸せになれるのかな?)
貧乏神である紫苑は、少しだけ希望を持てたのであった。
それから博麗神社は、貧乏神すら幸せになれる神社として有名となった。