本当は二分割も考えたのですが、片方が短くなってしまうので、このままで行こうと決めました。
秋の半ばを過ぎ、徐々に冬が近づく幻想郷。
ジンは人里でいつものように買い物をしていると、偶然にも魔理沙と鉢合わせする。
「魔理沙? 珍しいな人里に来るなんて」
「私だって用事がある時は、人里に来るんだぜ。
ジンの方は?」
「いつも通りお使いだ。
最近冷えるからな」
「何々、炭に・・・・・芋か!」
「たまにはこういうのも良いかなっと思ってな」
「私も一緒に良いか?」
「歓迎するぞ」
「流石ジン! 話がわかる奴は好きだぜ!」
「そんな大袈裟な・・・・・」
二人は会話に夢中になっていると、本を持った少女とぶつかってしまった。
「キャア!」
「あ! 悪い! 余所見していた!」
ジンは急いで散らばった本を広い集め、少女に渡す。
「いえ、此方こそ―――って、ジンさん?」
「ん? 阿求か?」
少女の名前は稗田阿求。
この幻想郷の記録を作る一族の一人である。
彼女はその九代目である。
「何だ、阿求じゃないか」
「人の顔を見て何だとは、少し失礼じゃありませんか? 魔理沙さん?」
「悪い悪い―――ん?」
魔理沙はふと、地面に落ちていた一冊の本に目が止まる。
「これは・・・・・」
魔理沙は本に手を伸ばそうとすると、それよりも早く阿求が拾い上げる。
「これは借り物ですので」
「ちょっとぐらい見ても良いじゃないか」
「魔理沙さんの場合、そのまま持って行く恐れがあるので。
それでは、私はこれで――」
阿求は広い集めた本を持って、足早に去って行った。
その後、魔理沙はおもむろに呟く。
「あれは・・・・・妖魔本」
―――――――――――
博麗神社。
そこでジンは霊夢と魔理沙に、妖魔本について話を聞いていた。
「つまり、妖怪が書いた本が妖魔本って事か?」
「大体あっているけど、中には妖怪が封じられている本もあるから、危険な物なのよ」
「魔導書も、妖魔本の一種でもあるだぜ」
「それなら・・・・・何で阿求がそんな物を持っていたんだ?」
「借り物って言ってたけど・・・・・あれは希少で中々手に入らない物なんだけどな・・・・・」
「それよりも、人里でそんな物がある事が気になるわ。
もしかして、封じられている妖怪を解き放とうとする人間がいるのかも・・・・・」
「いや、流石にそれは飛躍し過ぎだろう」
「ともかく。
明日、里に行って様子を見て来るわ。
どこで妖魔本を見たの?」
「里の貸本屋は彼処しか無いぜ」
「彼処?」
「そう、里唯一の貸本屋、“鈴奈庵”」
―――――――――――
三人は、人里の鈴奈庵に来ていた。
「ここが鈴奈庵か・・・・・今まで知らなかったな」
「あんたはいつも、紅魔館の図書で本を借りているからね」
「まったく、不公平だぜ。私が来た時は、問答無用で追い帰されるってのに」
「日頃の行いのせいだろ。それよりも、入るぞ」
三人は鈴奈庵に入る。
そこには数多くの本と、店員らしき少女がいた。
「いらっしゃま・・・・・あれ? 魔理沙さんに霊夢さん。それと・・・・・もしかしてジンさん!?」
「ん? 俺の事を知っているのか?」
「勿論です!
貴方の武勇伝を知らない人はいませんから!」
「武勇伝って・・・・・そんな大袈裟な・・・・・」
「小鈴ちゃん、悪いけど話は後にして頂戴」
「あ、ごめんさい。私ったらつい・・・・・」
「紹介するわ。
この子が鈴奈庵の店員で、一人娘の小鈴ちゃんよ」
「始めまして、本居小鈴です」
「始めまして、一応知っているかも知れないが、俺はジンだ」
ジンと小鈴は挨拶をし、握手を交わした。
「ところで、本日はどのような御用件で?」
「ええ、小鈴ちゃん。妖魔本って知らない?」
「はい! もちろん知っていますよ!」
すると小鈴は目を輝かせながら、次々と妖魔本を見せ。それらを解説していった。
「こんなにあるのか・・・・・希少って聞いていたが?」
「これらは全部私が集めました。
これでも、幻想郷一の妖魔本コレクターなんですよ」
「ふーん・・・・・しかし、何て書いてあるかチンプンカンプンだな」
ジンが手にした本の内容は、どれも見たことも無い字で書かれていた。
「あ、それは天狗向けの地獄植物の解説本です」
「え? 小鈴ちゃん。これを読めるの?」
「はい。最近ですけど、どんな本でも読めるようになったんです」
「なるほど、あらゆる文字――――いや、この場合は“あらゆる本を読む程度の能力”って言った方が良いか」
「それなら、逆に危険だわ。
読めない人には、ただの本だけど。読める人にはとても危険なの代物よ。
うっかり封印を解いてしまって、妖怪に襲られるかも知れないわよ?」
「その時は、霊夢さん達にお願いしますね♪」
小鈴は満面の笑顔で、三人に言った。
―――――――――――
それから数日後、ジン達は博麗神社で焼き芋をしていた。
「ほら、焼けたぞ」
「「「わーい♪」」」
焼きたての芋を、サニー達に渡すジン。
サニー達は嬉しそうに、焼き芋を受け取る。
するとサニーは、直ぐ様かぶりついた。
「熱っ、熱っ、」
「ほら熱いから気を付けろよ」
「慌てすぎよサニー」
「うるさいな、焼き芋は焼きたてが一番なのよ」
「でも注意しないと火傷するわよ」
「そうだな。
スターの言う通り、少し冷ました方が良いぞ」
「え~、私は今すぐ食べたいのよ!」
「それだったら、俺のをやる。
ちょうど、いい感じの熱さだからな」
ジンは自分の分をサニーに渡す。
渡された焼き芋の温度は熱すぎず、温かさを感じた。
「やったー、ありがとうジン!」
「・・・・・」
そんな様子を、霊夢はじっと見ていた。
「どうした霊夢?」
「別に・・・・・何でも無いわ」
「?」
「ねえジン、次のも早く焼きましょうよ」
「あ、ああ、わかった」
ジンは次の芋を、焚き火に入れようとした瞬間。
ルナが何かに驚いたように叫ぶ。
「み、みんな! 人里が!」
ルナの叫びで、人里の方を見る。
すると、人里から大きな黒煙が上っていた。
「火事か!?」
「サニー! ルナ! スター!あんた達はここにいなさい!
行くわよジン!」
「おう!」
霊夢とジンは、急いで人里に向かった。
―――――――――――
人里についた二人だったが。
いざ来てみると、火の気はまったく感じられなかった。
「おかしいわね・・・・・確かに人里から煙が上がっていたのに・・・・・」
「おーい! 霊夢! ジン!」
空の上から魔理沙が降りて来た。
「二人とも、煙を見て来たのか?」
「魔理沙も見たのね」
「ああ、凄い煙だったから、様子を見て来ようと思ったんだが・・・・・」
魔理沙は辺りを見回すが、やはり何処にも火の気はなかった。
「手分けして聞き込みをするか。
一時間後に集合な」
「わかったわ」
「いいぜ」
三人は手分けして、聞き込みを開始した。
それから一時間後。
聞き込みを終えた三人は、それぞれの情報を話始めた。
「こっちは収穫無し。
誰も煙の事を知らないって」
「こっちもだぜ。
火事どころか、たき火一つも見てなかったみたいだ。
霊夢の方は?」
「私は小鈴ちゃんから聞いたんだけど。
何でも、害虫駆除の為に煙を炊いたらしいわ」
「害虫駆除?」
「そう、何でも特別な煙らしいわ」
「なるほど。
でも、それにしては異常な煙の量だったぞ?」
「そうだな・・・・・火事と勘違いするほどだからな・・・・・」
三人は再び辺りを見回す。
そこには、人里のいつもの平和な風景しかなかった。
「取り合えず。被害も無いようだから、一旦帰りましょ」
里に被害が無いことが確認された為、三人は里を後にした。
しかし、これが事件の始まりであった。
―――――――――――
次の日。
ジンと霊夢は、いつも通りに朝食を取ろうとした時の事。
「ジン! 霊夢! 大丈夫か!?」
突然、魔理沙が入って来て叫んだ。
二人は驚いて、むせてしまう。
「み、水・・・・・」
「わかった! 今、助けるぞ!」
そう言って魔理沙は持っていた桶で、二人に水を掛ける。
「「・・・・・」」
「ふぅ、これで一安心だぜ」
「一体何してんのよーー!!」
霊夢の雷が、魔理沙に直撃するのであった。
その後、霊夢とジンは着替えて、魔理沙に事の経緯を問い詰めた。
「で? 一体どうして朝から水を掛ける事をしたのよ?」
「ああ、いつもの通りに、ここ辺りを飛んでいたら、神社の方から煙が上がっていてな。
もしかしたら火事だと思って、慌てて来たんだぜ」
「火事だったら、呑気に飯を食っていないわよ」
「そもそも、俺は朝から境内を掃除していたが、火の気どころか煙すら見ていないぞ?」
「おかしいな・・・・・確かに見たんだが・・・・・」
魔理沙は首を傾げて呟く。
彼女は頻繁に嘘をつくが、こういう時には嘘をつかない人物だと、二人は理解していたので、本当に煙を見たと理解した。
三人は外を出て、境内と神社の様子を改めて見た。
「やっぱり、どこも火の形跡はない。
そもそも、外にいるジンが気づく筈よ」
「う~ん・・・・・見間違いだったのか?」
魔理沙が唸っているその時、境内に一人の少女――――小鈴がやって来た。
「あれ? もう消えちゃった?」
「小鈴ちゃん? 珍しいわね神社に来るなんて」
「え? あ、いえ。
神社の方から煙が上がっているのを見て・・・・・」
「小鈴も見たのか?」
「見たっていうか・・・・・」
「何か歯切れが悪いな・・・・・?」
「け、煙が見えたので、気になっただです!
大丈夫そうだから、私は失礼しますね!」
そう言って、小鈴は慌てて帰って行った。
小鈴が帰った後、三人は居間でせんべえとお茶を飲みながら、件の煙について話していた。
「なあ霊夢。
これって、昨日と同じじゃないか?」
「昨日って・・・・・あの人里の?」
「ああ、煙を見たと思って行ったら、どこも火の気はなかった。
偶然にしちゃ、出来すぎている」
「う~ん・・・・・そうね・・・・・」
「それに小鈴の様子もおかしかったぜ。
普段は神社に来るような奴じゃないのに・・・・・」
「確かにね。
人里からここは結構離れているのに、煙を見ただけで来るなんて・・・・・」
「どちらかというと、煙自体に関心があったような感じだな。
それも、神社に来るほどに」
「そう言えば思い出したんだけど。
昨日煙が上がっていたところって、鈴奈庵の近くだったのよね・・・・・」
「「「・・・・・」」」
しばしの沈黙の後、魔理沙は立ち上がり、帰る支度をした。
「悪いな二人とも。
用事を思い出したんで、ここいらで帰らせてもらうぜ」
「お、おお、気を付けてな」
そうして魔理沙は帰って行った。
その後霊夢も、何処かに出掛ける準備をする。
「霊夢? 何処かに出掛けるのか?」
「ええ、妖怪退治――――いえ、妖退治をしにね」
「妖? もしかして、煙の正体が分かったのか?」
「確証は無いけど、恐らく煙々羅でしょうね」
「煙々羅?」
「私も詳しい事は知らないけど。
人に取り憑いて、その人の家を火事にする。失敗すると、近くの人間にまた取り憑く、厄介な妖よ」
「なるほど・・・・・って、待てよ。
その話が本当なら、魔理沙の家が狙われるんじゃないか?」
「そうよ。
だから、これから魔理沙の家に行って退治するのよ」
「俺も一緒に行くか?」
「大した相手じゃないし、一人で十分よ。
ジンは留守番していてね」
そう言って、霊夢は飛び立って行った。
「本当に大丈夫か・・・・・?」
ジンは少し不安を感じながらも、神社の仕事をする事にした。
それから数時間が経過したが、霊夢は未だに帰って来なかった。
(少し遅いような気もするが・・・・・寄り道でもしているのか?)
そんな事を考えていると。
意外な人物が来訪して来た。
「こんにちはジン」
「ん? 咲夜か。
珍しいな、お前が神社に来るなんて」
「ちょっと近くに寄り掛かっただけ。
それよりも大丈夫なの?」
「え? 何が?」
「神社から凄い煙が上がっていたわよ。
流石に心配になったから、様子を見に来たけど・・・・・杞憂だったみたいね」
「ちょっと待ってくれ。それってまさか――――」
「ジン! 大丈夫!?」
ジンが言葉を言う前に。物凄い形相をした霊夢がやって来た。
そしてジンの安否を確認するように、体を触りだす。
「火傷してない? 大丈夫?」
「た、大丈夫だ。
それより、一体何があったんだ?」
「それは――――」
「ふぅ、やっと追いついたぜ」
「速すぎですよ霊夢さん~」
霊夢の後を追って来たのか、魔理沙と小鈴が箒を乗ってやって来た。
かなりのスピードで来たのか、小鈴はぐったりとしていた。
「随分、慌ててたみたいだけど。一体何があったの?」
「あれ? 咲夜?
いつからここにいるの?」
「ついさっきよ。
神社に煙が上がっていたから、様子を見に来たのよ」
「ま、マジか!」
「こうしてはいられないわ!直ぐに紅魔館に行くわよ!」
「え? 一体どういう―――」
「説明は後!」
霊夢と魔理沙は、現状を把握仕切れていない咲夜を連れて、何処かへと飛んで行った。
神社には、ジンと小鈴の二人が残されていた。
「一体何があったのか、事情を説明してくれないか?」
「えっとですね・・・・・」
小鈴は、これまでの経緯を話始めた。
今回の煙々羅は、元々妖魔本に封印されていた妖だった。
しかし、字喰い虫という妖虫のせいで、煙々羅のページが食べられてしまい、封印が解かれてしまったらしい。
「なるほど、字喰い虫か・・・・・」
「そうなんですよ。もう大変で――――」
「字喰い虫が原因ってのは嘘だな?」
ジンの言葉に、小鈴のギョッとした。
その小さな変化を、ジンは見逃なかった。
「な、何を根拠にそんな事を言うの!」
「根拠は色々あるが、一番の理由は煙々羅の封印が解かれているのにも関わらず、どうして霊夢や魔理沙に退治の依頼をしなかった?」
「そ、それは・・・・・」
「言えないのなら、代わりに答えてやる。
煙々羅は封印が解かれたんじゃない。小鈴、お前が封印を解いたからだ」
「うっ・・・・・」
「それと、字喰い虫は文字を食べるから字喰い虫と呼ばれるんであって、絵は食べない。
墓穴を掘ったな小鈴」
「ご、ごめんなさ~い!」
小鈴は頭を下げて謝った。
本当の話はこうだった。
親友の阿救に頼まれて、一つの書物を鑑定を依頼された。
その結果、字喰い虫という幼虫が原因だとわかり、駆除するために煙々羅を復活させたという。
「なるほどな、復活させたのは良かったが、封印の方法がわからず、今日まで野放しと」
「はい・・・・・そうです・・・・・」
「はっきり言うが、軽率にも程がある。
下手すれば、里や他の家で大火事になったかも知れないんだぞ?」
「すみません・・・・・」
「やれやれ・・・・・処遇は霊夢達が煙々羅を退治した後で、決めるか」
「あ、あの! 差し出がましいのですが!どうか霊夢さん達には内密に――――」
「知られたら、今まで集めた妖魔本を没収されるからか?」
「は、はい・・・・・」
「悪いがそれは出来ない。
今回は、お前の軽率な行動で起きた事件だからな。
しっかりと報告はする」
「そ、そんな~」
「だが、どうしてと言うのなら条件が二つある」
「条件?」
「ああ。
一つ目は、今回の詫びを兼ねて、霊夢と魔理沙にそれぞれ報酬を用意する事。
二つ目は、今後妖魔本の封印を解く必要がある時は、必ず再封印の仕方をちゃんと調べておき、霊夢の許可をちゃんと取る事だ。
この二つを守れるか?」
「はい! ちゃんと守ります!」
「それなら良い。
今回だけは目を瞑るが、次は無いぞ? わかったな?」
「はい! ありがとうございますジンさん!」
こうして、小鈴は嬉しそうに頭を下げて帰って行った。
―――――――――――
それから数日後。
霊夢と魔理沙は煙々羅に翻弄されながらも、何とか再封印に成功した。
そして二人は、勤め明けの一杯を神社で行っていた。
「いや~今回は大変だったぜ」
「本当ね・・・・・あっちこっちに取り憑くんだから、幻想郷中飛び回ったわよ」
「だけど、思わぬ報酬を貰えたな」
そう言って、魔理沙は一冊の本を見る。
それは以前から、魔理沙が欲しかった魔導書であった。
今回の報酬として、受け取ったのである。
「それにしても・・・・・少し気前が良すぎない?
このお酒だって、かなりの高級品よ?」
そう言って、霊夢が取り出したのは、一瓶の酒であった。
それは里一番の酒で、かなりの額をする物であった。
「言われてみればそうだな・・・・・」
「でしょ? 何か引っ掛かるのよね・・・・・」
「何が引っ掛かるんだ?」
そこに、ツマミを買いに行っていたジンが戻って来た。
「いやね、報酬が気前が良すぎないか?って話よ」
「・・・・・気にしすぎじゃないか?
それよりも、ツマミを買って来たぞ」
「おお! 待っていました!」
「うーん・・・・・何か釈然としないけど・・・・・まあいっか」
こうして事件は、無事に幕を下ろすのであった。
今回、小鈴の扱いが悪いとは思いましたが。
彼女の行動を考えると、これが妥当かな?っと思い、そのまま書きました。