東方軌跡録   作:1103

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冬の一日

秋が過ぎ、幻想郷に冬が訪れていた。

博麗神社は昨夜降った雪で、一面雪景色になっていた。

 

「やれやれ・・・・・雪掻きは重労働だなっと」

 

ジンは雪掻きをし、神社の雪を除雪し続けた。

しかし、思いの外時間が掛かってしまい。

終わる頃には、日はすっかり上っていた。

 

 

居間に戻ると、そこにはこたつに入ってだらけている霊夢の姿があった。

 

「ふぁ~・・・・・雪掻きご苦労さん・・・・・」

 

「・・・・・霊夢。少しだらけ過ぎじゃないか?」

 

「だって、こたつが暖かいんだもの」

 

「そんな姿を、参拝客に見せるのか?」

 

「こんな雪が降った後なんか、来るわけ無いわよ」

 

「まあ、それもそうなんだが・・・・・」

 

「正月になったら働くから、それまで神社は休み~」

 

「それで良いのか・・・・・?」

 

「良いのよ」

 

これ以上の説得は無理だと判断したジンは、ため息をつきながら、霊夢が放棄した家事をする事にした。

すると、襖を開けて入って来る人物が現れた。

 

「う~! 寒い寒い!」

 

「ちょっと! 襖をちゃんと閉めなさいよ魔理沙!」

 

「あ、悪い、悪い」

 

魔理沙は、自分が開けた襖を閉め。コートを脱いでこたつに入った。

 

「あれ魔理沙? こんな寒い中来るなんて珍しいな」

 

「私も本当は来る予定はなかったんだが、ストーブの薪が無くなってな」

 

「それで、こっちに避難して来た訳か」

 

「そうなんだぜ」

 

「待っていろ、今お茶出すから」

 

「おお! ありがとなジン!」

 

「ジーン、私にも暖かいお茶頂戴~」

 

「ああ、わかった・・・・・」

 

ジンは二人分のお茶を用意し、二人に差し出す。

二人はそれを飲んだ。

 

「ふぅ~暖まるぜ」

 

「外は寒かったからな。

それで今日は泊まって行くのか?」

 

「そうだな・・・・・帰っても寒いだけだし・・・・・」

 

そう言って、魔理沙は霊夢をチラッと見る。

すると霊夢は、だらしなく欠伸をしながら―――。

 

「ふわぁ~、別に良いわよ。

好きにして頂戴・・・・・」

 

「だ、そうだ」

 

「それなら、お言葉に甘えるぜ」

 

そう言って、魔理沙はこたつの上にあるせんべえを食べた。

 

 

それから更に時刻が進み、こたつには霊夢、魔理沙、ジンの三人がぬっくりとしていた。

 

「・・・・・腹減ったな」

 

「もう昼頃だからな・・・・・」

 

「ジーン、何か作ってー」

 

「別に良いが・・・・・お粥でいいか?」

 

「良いわよー」

 

「わかった。

魔理沙もそれで良いか?」

 

「食えれば何でも良いぜ」

 

「わかった。少し待っていろ」

 

そう言ってジンは立ち上がり、台所に向かった。

 

 

 

「出来たぞ二人とも」

 

ジンはお粥の入ったお茶碗を二つ持って戻って来た。

その香りは、とても食欲をそそるものだった。

 

「う~ん、良い香りだな」

 

「ジンのお粥は絶品よ。

味は、私が保証するわ」

 

「それじゃ、いただきます」

 

魔理沙は、お粥を一口食べる。すると――――。

 

「う・・・・・うまーい!

何だよこれ!? ただのお粥なのに、何でこんなに美味いんだぜ!?」

 

「でしょ? 私も最初に食べた時も、同じ感想だったわ」

 

「これなら、いくらでも食えるぜ!」

 

魔理沙はバクバクとお粥を食べ尽くし、空になったお茶碗をジンに差し出し。

 

「おかわり!」

 

「あ、私も!」

 

霊夢も負けじと、お茶碗を差し出す。

 

「はいはい、まだまだおかわりはあるから、そんなに慌てるな」

 

ジンは、二人のお茶碗を受け取り。再びお粥をついだ。

 

 

それから時間は過ぎ、外はすっかり日が落ちていた。

その間も、霊夢と魔理沙はこたつでぐーたらしていた。

 

「・・・・・ふわぁ~」

 

「ああ・・・・・こたつは人を堕落させる魔具だぜ・・・・・」

 

「二人とも、だらけるのは良いが、晩御飯の事を考えないといけないぞ」

 

「う~ん・・・・・?」

 

「米が無いから、もうお粥は作れないぞ」

 

その言葉に、霊夢は固まってしまう。

 

「ち、ちょっと! 何で米を切らしちゃうのよ!?」

 

「そりゃ、どこぞの誰かさんが、何杯もおかわりするからだろ」

 

「魔理沙・・・・・」

 

「私のせいかよ!

霊夢だっておかわりしていただろう!

それに、米が無くても他の食材があるだろ!?」

 

「霊夢が作ってくれるのならな・・・・・」

 

ジンは霊夢に視線を送るが、霊夢は視線を逸らす。

 

「どうやらやる気は無いようだ・・・・・」

 

「ジンが作れば良いだろう」

 

魔理沙の何気ない言葉だったが、霊夢にとっては恐怖の一言であった。

 

「止めなさいよ! ジンがお粥以外の料理を作るなんて・・・・・想像するだけで怖いわ!」

 

そう言って、霊夢はこたつの中に逃げてしまう。

 

「一体何なんだ・・・・・?」

 

「魔理沙、俺はお粥以外は作れない。

無理に作ろうとすると、何故か殺人料理が出来てしまうんだ」

 

「え?」

 

「あれはそう、幻想郷に来たばかりの事だった―――」

 

ジンは語り出す。あの悪夢の出来事を。

 

 

半年以上前、ジンのお粥を初めて食べた霊夢は、彼を料理番にしようとした。

料理が出来ないジンは、当然拒否をしたが、霊夢は聞き入れなかった。

そこで、渋々料理を作る事にした。

出来上がった料理を見て霊夢は――――。

 

『何よ、ちゃんと出来るじゃない。

いただきまーす♪』

 

見た目に騙された霊夢は、料理を口にした。すると―――。

 

『うっ・・・・・ぐぅ・・・・・がぁ・・・・・ぶほぉ!』

 

強烈な味に、霊夢は耐えきれず。料理を吹き出し、そのまま気絶してしまったのだ。

 

 

 

「―――それから、霊夢が目覚めたのは三日後だった」

 

「・・・・・・・・・・」

 

その話を聞いた魔理沙は、背筋が凍る恐怖を感じた。

 

「今の話を聞いても、食べたいか?」

 

「全力で遠慮するぜ・・・・・」

 

「それが良いだろう。

しかし・・・・・晩御飯はどうしたものか・・・・・」

 

ジンが晩御飯をどうするか考えていると。

何処からか、歌声が聞こえて来た。

 

「・・・・・ん? この歌声は・・・・・。

ちょっと待っていろ!」

 

そう言ってジンは、外に駆け出した。

 

 

神社の縁側で、一代の屋台が止まっていた。

屋台の主は夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライである。

彼女の屋台はヤツメウナギを出しており、これを目当てに訪れる者は少なくない。

その彼女は今、家の中で料理を振る舞っていた。

 

「はいどうぞ~、おでんもあるからね」

 

「「「いただきます!」」」

 

三人は、それぞれおでんやヤツメウナギの串焼きを食べ、秘蔵のお酒を飲んだ。。

 

「くぅ~、ミスティアの酒はやっぱ良いぜ」

 

「そうね、里の物とは違った味わいね」

 

「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいわ」

 

「酒も良いが、俺はやっぱりこれだな」

 

そう言ってジンは、ヤツメウナギの串焼きをほうばる。

 

「う~ん♪ 美味い!

幻想郷に来て、一番よかったのは、こうして鰻を食べられる事だな」

 

「たかが鰻ぐらいで大袈裟な・・・・・」

 

「言っておくが、俺が外にいた頃。鰻は高価格で、中々食べられなかったんだぞ」

 

「どれくらいなの?」

 

「そうだな・・・・・ざっとこれぐらい?」

 

「高!? ぼったくりにも程があるぜ!」

 

「そうだろ?

だからこそ、幻想郷は良いんだ。安く、鰻を食べれるから」

 

そう言ってジンは嬉しそうに、ヤツメウナギの串焼きを食べる。

するとミスティアは、少し申し訳なさそうに言った。

 

「あの~・・・・・盛り上がっているところ悪いんだけど、ヤツメウナギは別に鰻の仲間じゃないよ」

 

「・・・・・・・・・・マジ?」

 

「うん、マジ」

 

「ウナギってついているのに?」

 

「ついているけど、まったく違う生き物よ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

暫しの沈黙の後、ジンは何も事もなかったように、再び食べ始める。

 

「・・・・・まあ、どっちにしても美味い事には変わらないか」

 

「そうね、美味しい事には変わらないわ」

 

「細かいことを気にしては駄目なんだぜ!」

 

「そうと決まれば、とことん飲んで食べるぞー!」

 

「「おー♪」」

 

こうして三人は、夜遅くまで飲んで食べるのであった。

 

―――――――――――

 

次の日、ジンはいつも通りに境内を掃除しようと、外に出ると。

そこには、上機嫌な霊夢の姿があった。

 

「~~♪」

 

「れ、霊夢? 一体どうしたんだ?」

 

「いや何か、気分が良くてね。

体を動かしたくなるのよ」

 

「そ、そうなのか・・・・・」

 

その変貌に驚いていると、魔理沙も起きてきて、霊夢と同様に上機嫌で挨拶をした。

 

「おっはよー!」

 

「あ、魔理沙。おっはよー!」

 

二人はハイタッチを交わし、挨拶した。

その光景は、何処か異常に思えたのだが―――。

 

「・・・・・まあ、いいか。

こたつに籠られるよりは」

 

ジンは特に気にせず、いつも通りに掃除を始めた。

後に、これがミスティアの秘蔵のお酒――――雀酒のせいだと知ったのであった。




ジンの料理の腕に関してですが、お粥に関しては世界一ですが、他の料理は殺人クラスの不味さです。
これはというと、ヒロインが料理下手なのは結構ありきたりなので、ここは主人公が料理下手にしてみました。
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