秋が過ぎ、幻想郷に冬が訪れていた。
博麗神社は昨夜降った雪で、一面雪景色になっていた。
「やれやれ・・・・・雪掻きは重労働だなっと」
ジンは雪掻きをし、神社の雪を除雪し続けた。
しかし、思いの外時間が掛かってしまい。
終わる頃には、日はすっかり上っていた。
居間に戻ると、そこにはこたつに入ってだらけている霊夢の姿があった。
「ふぁ~・・・・・雪掻きご苦労さん・・・・・」
「・・・・・霊夢。少しだらけ過ぎじゃないか?」
「だって、こたつが暖かいんだもの」
「そんな姿を、参拝客に見せるのか?」
「こんな雪が降った後なんか、来るわけ無いわよ」
「まあ、それもそうなんだが・・・・・」
「正月になったら働くから、それまで神社は休み~」
「それで良いのか・・・・・?」
「良いのよ」
これ以上の説得は無理だと判断したジンは、ため息をつきながら、霊夢が放棄した家事をする事にした。
すると、襖を開けて入って来る人物が現れた。
「う~! 寒い寒い!」
「ちょっと! 襖をちゃんと閉めなさいよ魔理沙!」
「あ、悪い、悪い」
魔理沙は、自分が開けた襖を閉め。コートを脱いでこたつに入った。
「あれ魔理沙? こんな寒い中来るなんて珍しいな」
「私も本当は来る予定はなかったんだが、ストーブの薪が無くなってな」
「それで、こっちに避難して来た訳か」
「そうなんだぜ」
「待っていろ、今お茶出すから」
「おお! ありがとなジン!」
「ジーン、私にも暖かいお茶頂戴~」
「ああ、わかった・・・・・」
ジンは二人分のお茶を用意し、二人に差し出す。
二人はそれを飲んだ。
「ふぅ~暖まるぜ」
「外は寒かったからな。
それで今日は泊まって行くのか?」
「そうだな・・・・・帰っても寒いだけだし・・・・・」
そう言って、魔理沙は霊夢をチラッと見る。
すると霊夢は、だらしなく欠伸をしながら―――。
「ふわぁ~、別に良いわよ。
好きにして頂戴・・・・・」
「だ、そうだ」
「それなら、お言葉に甘えるぜ」
そう言って、魔理沙はこたつの上にあるせんべえを食べた。
それから更に時刻が進み、こたつには霊夢、魔理沙、ジンの三人がぬっくりとしていた。
「・・・・・腹減ったな」
「もう昼頃だからな・・・・・」
「ジーン、何か作ってー」
「別に良いが・・・・・お粥でいいか?」
「良いわよー」
「わかった。
魔理沙もそれで良いか?」
「食えれば何でも良いぜ」
「わかった。少し待っていろ」
そう言ってジンは立ち上がり、台所に向かった。
「出来たぞ二人とも」
ジンはお粥の入ったお茶碗を二つ持って戻って来た。
その香りは、とても食欲をそそるものだった。
「う~ん、良い香りだな」
「ジンのお粥は絶品よ。
味は、私が保証するわ」
「それじゃ、いただきます」
魔理沙は、お粥を一口食べる。すると――――。
「う・・・・・うまーい!
何だよこれ!? ただのお粥なのに、何でこんなに美味いんだぜ!?」
「でしょ? 私も最初に食べた時も、同じ感想だったわ」
「これなら、いくらでも食えるぜ!」
魔理沙はバクバクとお粥を食べ尽くし、空になったお茶碗をジンに差し出し。
「おかわり!」
「あ、私も!」
霊夢も負けじと、お茶碗を差し出す。
「はいはい、まだまだおかわりはあるから、そんなに慌てるな」
ジンは、二人のお茶碗を受け取り。再びお粥をついだ。
それから時間は過ぎ、外はすっかり日が落ちていた。
その間も、霊夢と魔理沙はこたつでぐーたらしていた。
「・・・・・ふわぁ~」
「ああ・・・・・こたつは人を堕落させる魔具だぜ・・・・・」
「二人とも、だらけるのは良いが、晩御飯の事を考えないといけないぞ」
「う~ん・・・・・?」
「米が無いから、もうお粥は作れないぞ」
その言葉に、霊夢は固まってしまう。
「ち、ちょっと! 何で米を切らしちゃうのよ!?」
「そりゃ、どこぞの誰かさんが、何杯もおかわりするからだろ」
「魔理沙・・・・・」
「私のせいかよ!
霊夢だっておかわりしていただろう!
それに、米が無くても他の食材があるだろ!?」
「霊夢が作ってくれるのならな・・・・・」
ジンは霊夢に視線を送るが、霊夢は視線を逸らす。
「どうやらやる気は無いようだ・・・・・」
「ジンが作れば良いだろう」
魔理沙の何気ない言葉だったが、霊夢にとっては恐怖の一言であった。
「止めなさいよ! ジンがお粥以外の料理を作るなんて・・・・・想像するだけで怖いわ!」
そう言って、霊夢はこたつの中に逃げてしまう。
「一体何なんだ・・・・・?」
「魔理沙、俺はお粥以外は作れない。
無理に作ろうとすると、何故か殺人料理が出来てしまうんだ」
「え?」
「あれはそう、幻想郷に来たばかりの事だった―――」
ジンは語り出す。あの悪夢の出来事を。
半年以上前、ジンのお粥を初めて食べた霊夢は、彼を料理番にしようとした。
料理が出来ないジンは、当然拒否をしたが、霊夢は聞き入れなかった。
そこで、渋々料理を作る事にした。
出来上がった料理を見て霊夢は――――。
『何よ、ちゃんと出来るじゃない。
いただきまーす♪』
見た目に騙された霊夢は、料理を口にした。すると―――。
『うっ・・・・・ぐぅ・・・・・がぁ・・・・・ぶほぉ!』
強烈な味に、霊夢は耐えきれず。料理を吹き出し、そのまま気絶してしまったのだ。
「―――それから、霊夢が目覚めたのは三日後だった」
「・・・・・・・・・・」
その話を聞いた魔理沙は、背筋が凍る恐怖を感じた。
「今の話を聞いても、食べたいか?」
「全力で遠慮するぜ・・・・・」
「それが良いだろう。
しかし・・・・・晩御飯はどうしたものか・・・・・」
ジンが晩御飯をどうするか考えていると。
何処からか、歌声が聞こえて来た。
「・・・・・ん? この歌声は・・・・・。
ちょっと待っていろ!」
そう言ってジンは、外に駆け出した。
神社の縁側で、一代の屋台が止まっていた。
屋台の主は夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライである。
彼女の屋台はヤツメウナギを出しており、これを目当てに訪れる者は少なくない。
その彼女は今、家の中で料理を振る舞っていた。
「はいどうぞ~、おでんもあるからね」
「「「いただきます!」」」
三人は、それぞれおでんやヤツメウナギの串焼きを食べ、秘蔵のお酒を飲んだ。。
「くぅ~、ミスティアの酒はやっぱ良いぜ」
「そうね、里の物とは違った味わいね」
「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいわ」
「酒も良いが、俺はやっぱりこれだな」
そう言ってジンは、ヤツメウナギの串焼きをほうばる。
「う~ん♪ 美味い!
幻想郷に来て、一番よかったのは、こうして鰻を食べられる事だな」
「たかが鰻ぐらいで大袈裟な・・・・・」
「言っておくが、俺が外にいた頃。鰻は高価格で、中々食べられなかったんだぞ」
「どれくらいなの?」
「そうだな・・・・・ざっとこれぐらい?」
「高!? ぼったくりにも程があるぜ!」
「そうだろ?
だからこそ、幻想郷は良いんだ。安く、鰻を食べれるから」
そう言ってジンは嬉しそうに、ヤツメウナギの串焼きを食べる。
するとミスティアは、少し申し訳なさそうに言った。
「あの~・・・・・盛り上がっているところ悪いんだけど、ヤツメウナギは別に鰻の仲間じゃないよ」
「・・・・・・・・・・マジ?」
「うん、マジ」
「ウナギってついているのに?」
「ついているけど、まったく違う生き物よ」
「・・・・・・・・・・」
暫しの沈黙の後、ジンは何も事もなかったように、再び食べ始める。
「・・・・・まあ、どっちにしても美味い事には変わらないか」
「そうね、美味しい事には変わらないわ」
「細かいことを気にしては駄目なんだぜ!」
「そうと決まれば、とことん飲んで食べるぞー!」
「「おー♪」」
こうして三人は、夜遅くまで飲んで食べるのであった。
―――――――――――
次の日、ジンはいつも通りに境内を掃除しようと、外に出ると。
そこには、上機嫌な霊夢の姿があった。
「~~♪」
「れ、霊夢? 一体どうしたんだ?」
「いや何か、気分が良くてね。
体を動かしたくなるのよ」
「そ、そうなのか・・・・・」
その変貌に驚いていると、魔理沙も起きてきて、霊夢と同様に上機嫌で挨拶をした。
「おっはよー!」
「あ、魔理沙。おっはよー!」
二人はハイタッチを交わし、挨拶した。
その光景は、何処か異常に思えたのだが―――。
「・・・・・まあ、いいか。
こたつに籠られるよりは」
ジンは特に気にせず、いつも通りに掃除を始めた。
後に、これがミスティアの秘蔵のお酒――――雀酒のせいだと知ったのであった。
ジンの料理の腕に関してですが、お粥に関しては世界一ですが、他の料理は殺人クラスの不味さです。
これはというと、ヒロインが料理下手なのは結構ありきたりなので、ここは主人公が料理下手にしてみました。