東方軌跡録   作:1103

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いきなりですが、皆さんに謝罪したいと思います。
実は今まで、因幡てゐを因幡てぬと勘違いしていました。
一応修正はしましたが、見逃しがあれば、遠慮なく教えてください。
あと、今回バンドの話しになりますが、自分はバンドの経験はありませんので、少しおかしいな所があるかもしれません。



永遠亭バンド

三月になり、花見の季節が徐々に近づいていた。

そんな時に、鈴仙が博麗神社にやって来ていた。

 

「なに? 楽器の使い方を教えてくれだって?」

 

「そうなのよ、頼れそうなのがジンくらいしかいないのよ・・・」

 

「楽器の事なら、プリズムリバー三姉妹の方が詳しいだろ?」

 

「そうだけど・・・あの子達は手を使わず演奏出来るから・・・正直参考にならないのよ」

 

「それは分かるが・・・。

そもそも、何で楽器何だ?」

 

「それは姫様が・・・」

 

「なるほど、輝夜の暇潰しか」

 

ジンの言葉に、鈴仙は静かに頷いた。

 

「外来本を読んで、“私もバンドをしてみたい!”とか言っちゃって、すっかりノリノリなのよ・・・」

 

「相変わらずだな輝夜は・・・だが、何で俺なんだ?」

 

「えっと・・・何でだろう?」

 

「理由も無く来たのか!?」

 

「だって・・・・・・他に当てが無いんだもん!」

 

鈴仙は涙目になって言った。

流石にこれ以上は可哀想だと思い、ジンはやれやれとため息をついた。

 

「わかったから泣くな。

まあ、これでも学生時代にバンドをやっていたから、基本的な事ぐらいなら教えやる」

 

「本当! ありがとうジン!」

 

「支度するから、少し待っていろよ」

 

そう言って、ジンは神社に入って行った。

 

 

ジンは事の経緯を霊夢に話し、永遠亭に行く許可を貰おうとしていた。

 

「そんな訳で、ちょっと永遠亭に行って来る」

 

「行って来るって・・・あんたね・・・」

 

「言いたい事は分かるが、放っても置けないだろ?」

 

「前から思っていたけど、少し鈴仙に甘いんじゃないの?」

 

「そんなつもりは無い・・・多分」

 

「多分って何よ! あんたまさか・・・耳フェチ!? あの兎耳が良いっていうの!?」

 

「違う! 断じて違うぞ!!」

 

「それじゃあ尻尾?」

 

「俺はそんな趣味はない!

ともかく、俺は行くからな」

 

「あ、ちょっと!」

 

ジンは逃げるように、その場を後にした。

 

―――――――――――

 

霊夢を何とか振り切ったジンは、鈴仙と共に永遠亭に来ていた。

 

「姫様ー、言われた通り連れて来ましたよ」

 

「でかした鈴仙―――って、何だジンか」

 

「いきなり酷い言われようだな・・・」

 

「ちょっと鈴仙、私は楽器の使い方に詳しい人を連れて来てって言ったのよ?

貴女の思い人を呼べなんか―――」

 

「わー! わー! 大丈夫です姫様! ジンは昔バンドをやっていたらしいです!」

 

「ほう? バンドをね・・・」

 

すると輝夜は、目をキラリと光らせた。

彼女のこの表情は、大抵ろくな事を考えていない表情である。

 

「そこまで言うなら、テストをするわ」

 

「テスト?」

 

「そう、一曲引いてみて、私達が納得すれば合格。出来なければ不合格見なして、帰って貰うわ」

 

「ちょ―――何を言っているんですか姫様! せっかく来て貰ったのに!」

 

「黙りなさい鈴仙! これは試練よ、私から与えた試練を見事に乗り越えてみなさい!」

 

「そんな無茶苦茶な・・・」

 

「いや、そうでもないさ」

 

「ジン・・・?」

 

「まあ見てな」

 

そう言ってジンは、部屋に置かれていたギターで一曲披露した。

その腕前は中々のもので、輝夜と鈴仙は聞き入ってしまった。

 

「―――こんなものか」

 

「凄いねジン! どうです姫様、これなら文句無いですよね」

 

「そうね・・・よろしい! 貴方を永遠亭バンドの最後のメンバーとして、入れてあげるわ!」

 

「「・・・・・・は?」」

 

いきなりの事で、呆気にとられてしまう。

 

「な、何を言ってんですか姫様!?」

 

「だって、メンバーが三人だけなんて締まらないでしょ?」

 

「メンバーって・・・?」

 

「鈴仙とてゐよ」

 

「え!? 私、いつの間にメンバーに入れられていたんですか!?」

 

「当たり前じゃない、バンドは一人じゃ出来ないでしょ?」

 

「そんな勝手な・・・」

 

「反論は許さないわよ。

それじゃ、早速練習を始めるわよ!」

 

「一体どうなるんだこれ・・・」

 

いつの間にメンバーに加えられてしまったジンと鈴仙であった。

こうして、永遠亭バンドが結成した。

 

 

永遠亭にある一室で、ジン達は早速楽器選びをしていた。

そこには様々な楽器が並べられていた。

 

「何でも良いから、楽器で演奏した経験はあるか?」

 

「私は琵琶をたしなんでいるわ」

 

「私は太鼓」

 

「なるほど、輝夜とてゐは一応の経験はあるのか・・・鈴仙は?」

 

「わ、私は・・・・・・無いわ」

 

「鈴仙は初心者と・・・」

 

「何かごめんね・・・」

 

鈴仙は申し訳なさそうに、俯いた。

ジンは、そんな鈴仙の頭をそっと撫でた。

 

「気にする事は無い、誰だって最初は初心者なんだから」

 

「うん・・・ありがとう」

 

「はいそこ、イチャつかない。

話が進まないんだから」

 

「べ、別にイチャついてませんよ!」

 

鈴仙は顔を真っ赤にして、反論する。

そんな鈴仙を尻目に、ジンは鈴仙の楽器をどれにするか考えていた。

 

「そうなると、鈴仙はなるべくシンプルな物が良いな・・・キーボードか?」

 

「よくわからないし、ジンに任せるわ」

 

「それじゃ鈴仙はキーボードな。

輝夜とてゐは、何か希望はあるか?」

 

「私はギターとボーカルで」

 

「私はドラムにしようかな」

 

「てゐはともかく、ボーカルとギターを同時にやるのは思った以上にキツいぞ。

それでもやるのか輝夜?」

 

「もちろんよ、バンドはギターとボーカルを同時にやるもんでしょ?」

 

「いや、別にそんな決まりは無いぞ?」

 

「え? この本にはそう書かれているけど?」

 

そう言って、輝夜が取り出したのは一冊の漫画雑誌であった。

それに掲載されていた漫画に、女子高生四人がバンドをやる物があった。

 

「なるほど・・・これの影響か・・・。

止めはしないが、それなりに大変だぞ?」

 

「大丈夫、問題無いわ」

 

「そうか・・・それじゃ、俺はベースにしておくか」

 

こうして楽器選びは終わり、いよいよ練習を始めるのであった。

 

 

最初は、楽器に慣れる事から始めた。

琵琶をやってあいた輝夜は、ものの短時間でギターのコツを掴み。てぬもまた、多少ぎごちないが、徐々に慣れていった。

一方、鈴仙とはいうと―――。

 

「え~と・・・これがこうで・・・それがそうで・・・」

 

楽器に触れた事がない鈴仙は悪戦苦闘していた。

 

「ちょっと鈴仙。そんなんじゃ、いつまで経っても進まないじゃない」

 

「うっ・・・すみません・・・」

 

「仕方ないだろ、鈴仙は初心者なんだから。それに、時間はまだまだあるんだし」

 

「何言ってるのよ、コンサートまで二週間しか無いんだから」

 

「「・・・は?」」

 

ジンと鈴仙は耳を疑った。

 

「あの・・・姫様? 聞き違いで無いなら、二週間後って言いました?」

 

「そうよ、二週間後にコンサートを開いて演奏するんだから」

 

「いや、ちょっと待て、いくらなんでも無茶ぶりだろ。

せめて一ヶ月は欲しいぞ」

 

「それは無理よ、すでに広告を出したから」

 

「いつのまに!?」

 

「よく言うじゃない、“思い立ったら、吉日”ってね」

 

その言葉に、ジンは頭を抱えた。

このままいけば、結果は目に見えている。そこでジンがとった行動とは――――。

 

「仕方がない、鈴仙のパートを少し変えて、初心者でも直ぐに演奏出来るように楽譜を書き換える」

 

「そんな事出来るの?」

 

「多少はな、他のパートに負担が掛かるが、それは仕方がない」

 

「ジン・・・」

 

「輝夜、今回やる曲を教えてくれ」

 

「え? まだ決めて無いわよ」

 

「・・・・・・もう一度言う、やる曲を教えてくれ」

 

「まだ決めて無いわよ」

 

「―――――な」

 

「ジン?」

 

「何を考えているんだお前はー!!?」

 

ジンはとうとう我慢出来ずに叫んだ。

その叫びに、三人は驚いてしまった。

 

「二週間しか無いのに! 曲もまだ決めていないだと! 準備不足にも程がある!」

 

「だ、だって・・・」

 

「だってもくそもあるか! いくらなんでも無茶ぶりの程がある!」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

あまりにもの気迫に圧され、輝夜は思わず謝った。

 

「姫様が謝っている・・・」

 

「そりゃあんな気迫じゃ、誰だって謝っちゃうよ・・・」

 

「はあ、はあ、はあ、」

 

「あの~・・・ジン?」

 

「・・・取り合えず、現状はわかった。曲の方はこっちで何とかするから、お前達は練習しておいてくれ。

それじゃ、また明日」

 

そう言ってジンは、その場を後にした。

 

―――――――――――

 

永遠亭を後にしたジンが最初に向かったのは、鈴奈庵であった。

そこに入ると、いつも通りに小鈴が出迎えてくれた。

 

「あ、ジンさん。いらっしゃっい、何かお求めですか?」

 

「小鈴、音楽関連の本はあるか?」

 

「えっと・・・それでしたら、こちらになります」

 

そう言って、案内された本棚には昔の音楽雑誌や教科書、さらに楽譜まであった。

 

「少し見させてくれ」

 

「あ、はい、どうぞ」

 

ジンは本を手に取り、それを読み始めた。

 

 

それから数時間が経過した。

ジンはいまだに、楽譜や本を読んでいた。

その時、人間に化けたマミゾウが鈴奈庵に訪れた。

 

「小鈴殿はいるか?」

 

「あ、マミさんじゃないですか。今日は買い取りですか?」

 

「ああ、儂が書いた本じゃ、いくらで買い取る?」

 

「ちょっと待てって下さい。今、査定しますから」

 

小鈴はマミゾウから本を受け取り、査定を始まる。

その間、マミゾウは店内を見ていると、ジンの姿を見つける。

 

「お、ジ―――」

 

声をかけようと思ったが、雰囲気からして、声を掛けては駄目だと感じ、様子を見る事にした。

 

「はい、査定終わりました・・・。ん? 一体どうしましたか?」

 

「あ、いやなに、ジン殿の様子を見ていただけじゃよ。

いつからあそこに居るのじゃ?」

 

「もうかれこれ数時間です。

ずっとあんな調子なんですよ・・・」

 

「ほほう」

 

二人がそんな話をしていると、ジンは本を閉じ、幾つかの楽譜と本を幾つか持って来た。

 

「小鈴、これを全部くれ」

 

「え、えっと・・・これくらいになります・・・」

 

小鈴が提示した金額に、ジンは金を払い、本と楽譜を持って出ていった。

 

「一体何だったんでしょう・・・?」

 

「いやはや、青春だのう」

 

小鈴は呆気にとられ、マミゾウは楽しそうに笑った。

 

―――――――――――

 

神社に帰ったジンは、早速編曲作業に取り掛かった。

一から曲を作る暇は無いので、元からある曲を選び、それをバンド用に編曲する事にしたのだ。

 

「・・・・・・」

 

ジンは黙々と編曲作業に没頭した。

すると、霊夢がジンを呼び出しに来た。

 

「ジン、御飯出来たわよ」

 

「・・・・・・」

 

「ちょっとジン! 聞いているの!」

 

「え? あ、すまない・・・」

 

「まったくもう、御飯出来ているから早く来なさい」

 

「ああ、わかった」

 

ジンはようやく作業を止め、居間に向かい食事を取り始めた。

そんなジンの様子を見て、霊夢は呟いた。

 

「なんか・・・楽しそうね」

 

「ん? そう見えるか?」

 

「ええ、凄く生き生きして見えるわ。

そんなに楽しいものなの?」

 

「それは人それぞれだ。

楽しいと思う奴もいるし、つまらないと感じる奴もいる。

俺は楽しいと感じてはいるが」

 

「それは良いけど、あまり根を詰めないでよね。

倒れたりしたらどうするの?」

 

「それはそうだが・・・時間があまり無いんだ」

 

「そうだとしても、無理は駄目。わかった?」

 

「・・・わかった、気を付ける」

 

「よろしい。それと、夜食作った方が良い?」

 

「それは助かる、ありがとう霊夢」

 

「お礼は良いから、頑張りなさいよ」

 

「ああ」

 

ジンは部屋に戻り、編曲作業に再び取り掛かるのであった。

 

―――――――――――

 

次の日、バンド用に編曲した楽譜を手に、永遠亭に向かったジン。

そして輝夜達に、それぞれのパートの楽譜を渡す。

 

「一応、やり易いように編曲したから、この曲でいくぞ」

 

「あの~ジン・・・言いづらいんだけど・・・読めないわ」

 

鈴仙は恐る恐る手を上げながら、楽譜が読めない事を言った。

 

「まあ初心者だし、仕方がないか」

 

「ちょっと、私も読めないんだけど」

 

「私もだよ」

 

輝夜、てゐもまた読めない事を告げる。

そこでジンは、自分が重大なミスを犯した事に気づく。

 

「そうか、輝夜達は昔の楽譜しか知らなかったな。これはまずったな・・・」

 

今では西洋式の楽譜が一般であるが、昔は様々な形式の楽譜あった。

輝夜達が知っていたのは、古い東洋式の物であった。

 

「これは全員に一から教える必要があるのか・・・時間足りるか?」

 

「しょうがないわね、少し疲れるけど」

 

そう言って輝夜は指を鳴らす。

すると、部屋一室の色が変わる。

 

「一体何をした!?」

 

「そんなに驚く事じゃないわよ。

私の能力を使って、この部屋の時間と外の時間を切り離したのよ」

 

彼女の能力、“永遠と須臾を操る程度の能力”である。

彼女はその能力を使い、内と外の時間を切り離した。

外での一瞬は、内では数時間となる。

 

「それがあるなら、最初から使ってくれ・・・」

 

「だってこれ、疲れるんだもん」

 

「まあいい・・・ともかく、早速楽譜の読み方を教えるぞ」

 

時間の心配が無くなった為、ジンは丁寧に楽譜の読み方を教える事が出来たのであった。

 

―――――――――――

 

それから一週間後。

輝夜の能力の助けもあり、輝夜達は確実に上手くなっていった。

 

「よーし、一旦休憩にするぞ」

 

ジンの言葉で、一息つく一同。

すると輝夜が、何やら自分の指を見ていた。

 

「どうした輝夜? 怪我でもしたのか?」

 

「ちょっとね、時々爪が割れちゃうのよ。まあ、すぐに直るけどね」

 

「ああ・・・すまん、配慮不足だった。少し待っていろ」

 

ジンは辺りを物色し始め、あるものを輝夜に手渡した。

 

「これは?」

 

「ギターピック、ばちのような物だ。これを使えば、爪を傷つけ無いですむぞ」

 

「もう、これがあるなら最初から渡してよね」

 

「悪かった」

 

「でもまあ、一応ありがとね」

 

輝夜は微笑みながら、ジンに礼を言う。

すると、ジンの指から血が出ているのに気づく。

 

「ジンそれ・・・」

 

「ん? あれ? いつの間に切ったんだ?」

 

「鈴仙、傷薬持って来てちょうだい」

 

「は、はい!」

 

鈴仙は、輝夜に言われた通りに、傷薬を取りに向かった。

 

「別にこんなの大した事じゃないだろ」

 

「“そういう安易な考えが、後々取り返しのつかない事態を招く”。永琳の口癖よ」

 

「確かに、永琳なら言いそうだが・・・」

 

「ともかく、私と違ってジンは不死身じゃないんだから、自分を労りなさい」

 

「わかった、肝に命じておく」

 

「よろしい。それにしても、ずいぶん凄い手ね・・・」

 

輝夜はジンの手を見ながら言った。

彼の手は、あちらこちらにたこが出来ていた。

 

(一体、どんな事をしたらこんなにたこが出来るのかしら?)

 

そんな事を考えていると、ジンは嫌そう呟く。

 

「もういいだろ、こんな汚い手を見たって何の特にもならないぞ」

 

「・・・・・・てい」

 

何を思ったのか、輝夜はジンの手の甲を思いっきりつねった。

 

「いててて! 何をするんだ輝夜!」

 

「何って、自虐的なジンにお仕置きしているのよ」

 

「自虐的って・・・」

 

「ジン、貴方の手は汚い物じゃないわ。この手は貴方の積み重ねた人生そのものよ。

だから、自分の人生を否定しないで頂戴」

 

「・・・・・・すまない、気をつける」

 

「分かればよろしい」

 

ジンの言葉を聞いた輝夜は、満足そうに微笑んだ。

 

(うわぁ・・・凄く居づらい・・・早く戻ってきて鈴仙ー!)

 

てゐはとても居づらそうに、鈴仙の帰還を願っていた。

 

―――――――――――

 

演奏会当日。

永遠亭には広告を見てやって来た沢山の人や妖怪でいっぱいであった。

 

「ひ、姫様! いっぱい来てますよ~!」

 

「おお・・・これはまた・・・」

 

「落ち着きなさい鈴仙、あれだけ練習したのだから、絶対に大丈夫よ」

 

「姫様・・・震えている状態で言っても説得力無いですよ・・・」

 

「こ、これは武者震いよ!」

 

「みんな落ち着け。

いいか、バンドをやるに至って重大な事を教えるぞ」

 

「おお! 成功する秘訣って奴かい?」

 

「ああ、バンドに限らず、何に対してもそうだが、一番重要な事は――――楽しむ事だ」

 

「楽しむ事?」

 

「そうだ、ようは楽しんだ者の勝ちって事だな」

 

「つまり、いつも通りって事ね」

 

「姫様はいつも楽しんでいますよね・・・」

 

「そりゃそうよ、わからない明日より、今を楽しく生きるのが私のモットーだから」

 

「ははは、何とも前向きな生き方だな」

 

「そうでもなきゃ、不死人なんかやってられないわよ」

 

「違いない。さて、そろそろ時間だ。行くぞみんな」

 

「ええ」

「うん」

「おうよ」

 

四人はステージに上がる。

大勢の観客に怖じ気ず、演奏を始めるのであった。

 

―――――――――――

 

演奏会は無事に終わり、永遠亭では打ち上げが行われていた。

それに便乗する者も多数おり、打ち上げというより宴会と言った方が正しい。

そんな中ジンは、縁側で月を見ながら酒を飲んでいた。

そんな時に、輝夜が側にやって来た。

 

「ジン、ここにいたの?」

 

「・・・まあ、な」

 

「こんなところで飲んでないで、皆と一緒に飲めば良いのに」

 

「そうしたいのはやまやまだが、霊夢が先に酔っぱらってな」

 

ジンの視線の先には、かなり出来上がっている霊夢の姿があった。

 

「俺はまで潰れたら、帰れなくなるだろ?

だからここで待機しているんだ」

 

「ふーん、鬼の血を継いでいる割りに、お酒に弱いわねジンは」

 

「これでも強くなった方だ。

前は、一杯飲んだだけでダウンしたからな」

 

「うわぁ・・・」

 

「今では、数杯飲んでも潰れなくなった。まったく、昔の俺では想像出来ないな」

 

ジンは、昔を懐かしむように、酒を一口飲んだ。

 

「ところで、輝夜は向こうに混ざらないのか?」

 

「私はジンに用があるのよ」

 

「俺に?」

 

「そう、お礼がしたくてね」

 

そう言って、ジンの横に座る輝夜。

そして、ジンの目を見て言う。

 

「演奏会に付き合ってくれてありがとう」

 

「・・・・・・」

 

「な、何よ、その意外そうな顔をして・・・」

 

「いや、我が儘姫からそんな言葉を聴くとは思わなくてな」

 

「ひっどい! 私だって、感謝ぐらいはするわよ!」

 

「ははっ、それは悪かったな」

 

「笑ってごまかさないでよもう!」

 

輝夜はやや不機嫌そうに、お酒を飲む。

それを見たジンは、微笑みながら言った。

 

「お礼を言うのはこっちだ輝夜。

誘ってくれて、ありがとう」

 

「・・・ふふ、どういたしまして」

 

二人は静かに杯を当てる。

その二人の様子を、月だけが見ていた。

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