東方軌跡録   作:1103

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今回タイトルに悩みましたが、これで行こうと思います。
何処かで見たタイトルと思いますが、気にしないでください。


鬼と人と

妖怪山の麓に、萃香と大きめな壺を背負っているジンが訪れていた。

二人はあるものを求め、ここに訪れていたのだ。

 

「さあ! 幻の黄金酒虫をみつけるぞー!」

 

「お、おー・・・」

 

何故こうなっているかと言うと、少し時間を遡る―――。

 

―――――――――――

 

博麗神社、いつもの日課をこなしているジンの元に、萃香がやって来た。

 

「おーい、ジンいるかー?」

 

「お、萃香じゃないか、今日は宴会の予定は無いぞ」

 

「そうじゃないよ、ちょっとジンに手伝って貰いたい事があって」

 

「俺に?」

 

「そう、黄金酒虫って奴を捕まえるのを手伝って欲しいんだ」

 

「黄金・・・酒虫?」

 

「あ、先ずは酒虫について説明した方が良いか」

 

萃香は酒虫について説明し始めた。

話によると、酒虫は酒を産み出す妖で、少量の水で大量の酒を生産する事から、酒好きの鬼は重宝しているのだ。

 

「なるほど、それで黄金酒虫ってのは?」

 

「酒虫の希少種さ。見た目や酒の質、どれも他の酒虫より凌駕してるんだよ」

 

「それを捕まえるって訳か」

 

「その通り。手伝ってくれるよね?」

 

「まあ、出来る範囲なら・・・」

 

「ジンなら承諾してくれると思った。

それじゃ、早速行くよ」

 

「え? 今からか?」

 

「そうだよ! 急がないと、他の奴等に先を越されるよ!」

 

「ちょ、ちょっと待―――」

 

「問答無用!」

 

「う、うわぁ!?」

 

萃香はジンを担ぎ、強引に連れ去っていった。

 

「ジーン、お茶にするわよ。・・・ジン?」

 

霊夢がやって来た時には、境内に箒だけが残されていた。

 

―――――――――――

 

時間を戻し、ジンは萃香に強引に連れて来られ、黄金酒虫の捜索をしていた。

 

「なあ萃香、本当にこんな所にいるのか?」

 

「確かな情報――とは言えないけど、川遊びしていた河童が目撃したんだ。

確か・・・ここ辺りだと思ったんだけどな・・・」

 

「いつ頃目撃したんだ?」

 

「うーん・・・数日前だと思うんだけど・・・」

 

「それじゃ軌跡は残っていないな・・・駄目もとで、見てみるか。

もしかしたら、いつもここを通っているかも知れないし」

 

「流石ジンだ。こういう時頼りになるね」

 

ジンは能力を発動させ、軌跡を視始める。

しかし、肝心な黄金酒虫の姿はなかった。

 

「残念だが、来てはいないようだな」

 

「そうか・・・ガセだったのかな・・・?」

 

「まだ決まった訳では無いだろ。もう少し調べてみよう」

 

ジンは周囲の軌跡を隈無く視始めた。

 

 

それから日が落ちるまで探したが、結局見つかる事はなかった。

 

「萃香、今日はここまでにしよう。これ以上は危険だ」

 

「そう・・・だね・・・」

 

萃香は酷く落胆していた。

それだけ、黄金酒虫を見つけたかったのだろう。

 

「そう落ち込むな萃香、また明日探せば良いだろ」

 

「いや・・・これだけ探しても見つからないなら、河童達の見間違いだよ」

 

「萃香・・・」

 

「無理に付き合わせて悪かったね。

さあ、帰ろうか!」

 

萃香は元気よく言うが、それが見えだという事にジンは気づいていた。

 

「ああそうだな、帰ろう」

 

ジンは、気づかない振りをした。

そして二人は、妖怪山を後にした。

 

―――――――――――

 

博麗神社に戻って来ると、怒り心頭中の霊夢が出迎えた。

 

「・・・何か言いたいことはあるかしら?」

 

「・・・一言、掃除を放り出してすまなかった」

 

「・・・はあ、そんな素直に謝れたら、怒れないじゃない・・・」

 

「悪い事をしたら、素直に謝るのが家訓なんでな」

 

「もう良いわ・・・それで何処に行っていたの?」

 

「ああ、実は―――」

 

ジンは萃香と共に黄金酒虫を探していた事を話した。

 

「なるほどね・・・そんな事があったの」

 

「凄く落ち込んでいたなけど、それは黄金酒虫が見つからないだけじゃない気がしたんだが・・・」

 

「もしかして・・・」

 

「何か心当たりが?」

 

「ちょっと・・・ね。昔、萃香が異変を起こした事があるの」

 

霊夢は萃香が起こした異変について話始めた。

彼女は旧都にいる鬼達を呼び戻そうと能力を使い、三日置きの宴会を開き続けた事があった。しかし、それは結局失敗に終わった。

 

「もしかしてだけど、その黄金酒虫を使って、もう一度呼び戻そうとしているんじゃない?」

 

「そうか・・・・・・なあ霊夢」

 

「言っておくけど、協力は出来ないわよ」

 

「まだ何も言っていないだろ」

 

「どうせ、“萃香の為に黄金酒虫を捕まえて、旧都の鬼達を呼んで宴会を開こう“なんて考えているんでしょ?」

 

「うっ・・・」

 

「良いジン? 私は博霊の巫女、自ら妖怪を呼び込むなんて事はしてはいけないの。

どうしてもやりたければ、あんた一人でやりなさい」

 

それは一見ジンを突き放す言葉であったが、裏を返せば、“手伝う事は出来ないけど、邪魔はしない”という意味であった。

 

「・・・ありがとう霊夢」

 

「何のこと? それよりも晩御飯にするわよ」

 

霊夢は何事もなかったかのように、神社に入って行った。ジンも笑みを浮かべ、その後について行った。

 

―――――――――――

 

次の日、ジンは早速黄金酒虫を探し始めた。

山の麓に赴くと、そこに魔理沙とサニー達がそこに居た。

 

「あれ? 魔理沙にサニー達じゃないか、一体どうしたんだこんな所に?」

 

「いや、ちょっと昨日の話を聞かせてもらってな、私達も交ぜて欲しいだぜ」

 

「サニー達は?」

 

「私達は魔理沙さんのお手伝いです」

 

「スターの能力を使えば、直ぐに見つけられるんだから」

 

「ここは私に任せなさい」

 

「そうか、それは心強い。頼りにしている」

 

ジンはスターの頭を撫でると、先に進み始めた。

それを確認すると、魔理沙とサニー達は話始めた。

 

「まったく・・・霊夢の奴も素直じゃないよな、ジンの手伝いをしてくれなんて。

自分で手伝えば良いのに」

 

そう、魔理沙達は霊夢の頼みで探す手伝いをしに来たのである。

 

「ま、まあ、霊夢さんの立場からして、手伝えないんだし。

ここは、私達が霊夢さんの代わりにジンを助けるべきですよ」

 

「お前達の場合は、以前酒虫を盗み出した事をチャラにする為だろ」

 

「うっ・・・」

 

ジンが幻想郷に来る以前、サニー達は酒虫を盗み出した事があった。

その後永淋に騙され、酒虫を奪われてしまった。

その事は、霊夢が酒虫探しの手伝いをサニー達に頼む際に露見してしまった。

 

「そ、それもあるけど、やっぱり本物の酒虫の味を知りたいもんね!」

 

「そうね! 希少種って言うんだから、きっと凄い美味しい筈よ!」

 

「そうだな、私も本物を飲んでみたいぜ」

 

「それじゃ、張り切って黄金酒虫を探しましょう!」

 

「「「おー!」」」

 

「おーい、いつまでそこにいるんだー。日が暮れるぞー」

 

「ああ、今行く!」

 

ジンに呼ばれ、四人はジンの元に急いだ。

こうして、四人の黄金酒虫を探し始めた。

 

―――――――――――

 

それから数日が経過した。

四人の捜索も空しく、黄金酒虫は未だに見つからなかった。

それでも、ジンは諦めずに探し続けていた。

そして今日も、日が落ちはじめていた。

 

「そろそろ日が落ちるな・・・。今日はここまでにしよう」

 

「そうだな・・・おーい、そろそろ帰るぞー」

 

「はーい・・・キャア!?」

 

ルナは足を滑らせ、転がり落ちてしまった。

 

「ルナ!?」

 

「まったく何やってんのよ!」

 

四人は急いで、落ちたルナの元に急いで向かった。

 

「大丈夫かルナ?」

 

「いてて・・・大丈夫・・・ん?」

 

「どうしたのルナ?」

 

「彼処に・・・」

 

ルナが指した先には、洞窟があった。

 

「こんな所に洞窟が・・・」

 

「ちょっと調べてみるね」

 

スターは能力を使い、洞窟内に何かいるか調べ始める。すると、洞窟から大きな反応があった。

 

「何かいるみたいね」

 

「一応調べて見るか・・・サニー達はここで待っててくれ。魔理沙、頼む」

 

「任せておけ」

 

「き、気を付けてね」

 

サニー達に見送られたジンと魔理沙は、洞窟に入って行った。

 

 

洞窟に入った二人は、魔理沙のミニ八卦炉で照らしながら進んでいた。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

「出来れば、黄金酒虫が出て来て欲しいな」

 

「それは行ってからのお楽しみ・・・を?」

 

魔理沙は、奥から光が出ている事に気づいた。

その光は、太陽の光と全く異なる物であった。

 

「奥の方に何かあるぜ! 行ってみよう!」

 

「あ、おい! 置いて行くな!」

 

ジンは先に行こうとする魔理沙の後を急いで追った。

すると、そこには光る湖が存在した。

 

「水が・・・光ってる?」

 

「これ・・・全部酒だぜ! 飲んでみろよ!」

 

「どれどれ・・・確かに、酒だな」

 

「するとここは・・・あ!」

 

魔理沙の視線の先には、黄金色に輝く酒虫なの姿があった。

 

「見つけた! あれに間違いないぜ!」

 

魔理沙は泉に入って捕まえようとする。

黄金酒虫は魔理沙が近づいても逃げる気配はなく、簡単に捕まえられた。しかし―――。

 

「むぎぎぎ・・・」

 

見た目に反して酒虫は重く、まったく持ち上がる気配はなかった。

 

「小さいくせに、凄い重いな・・・」

 

「交代だ魔理沙、俺がやってみる」

 

今度はジンが持ち上げようとする。しかし、少し浮く程度で、とてもじゃないが持ち運べそうにもなかった。

 

「駄目だ・・・とてもじゃないが持ち運べない・・・」

 

「こいつらが逃げない訳が、何となくわかって来たぜ・・・」

 

「うーん・・・どうするか・・・」

 

「どうする? 一度戻って萃香を呼ぶか?」

 

「いや、明日もここにいるとは限らない。今持って行きたいんだが・・・」

 

「持って行きたいって、これだけ重いと鬼でないと無理だぜ」

 

「鬼・・・それだ!」

 

何かを閃いたのか、ジンは突然泉の酒を飲み始めた。

 

「ジン!? 一体何を――」

 

「酒を飲んで鬼人になるんだよ。鬼の腕力なら、持ち運べるだろ」

 

「それ確かに・・・けど、酔い潰れるなよ」

 

「ここに来てから、酒に対して耐性がついて来ているから、心配無用だ」

 

そう言って、酒を飲み続けるジン。

その額から、徐々に鬼の角が生えて来る。

 

「これだけ・・・飲めば大丈夫・・・」

 

「おい、何かフラフラだけど、大丈夫か?」

 

「大丈夫・・・だ、問題・・・無い」

 

ジンはおぼつかない足取りで黄金酒虫に近づき、それを軽々と持ち上げた。

 

「それじゃ・・・外に・・・出るぞ・・・」

 

「頼むから、途中でダウンするなよな」

 

魔理沙は、フラフラのジンを支えながら、酒の泉を後にした。

 

―――――――――――

 

萃香は、博麗神社に続く階段を楽しそうに登っていた。

 

(招待状を出すなんて珍しい・・・これは面白い事が起きるかも♪)

 

数日前、萃香はジンから招待状を受け取っていた。

招待状を送るということは今までなかったので、好奇心を抑えられなかった。

 

「とーちゃ・・・・・・」

 

階段を登りきり、境内に足を踏み入れた萃香は言葉を失う。

境内にはいつも通りに人と妖怪が宴会の準備をしていた。

しかし、その中にの鬼の姿もあった事に、萃香は目を疑った。

すると、勇儀が声を掛けて来た。

 

「お、萃香じゃないか、そんな所で突っ立てないで、準備を手伝いなよ」

 

「勇・・・儀? これは・・・?」

 

「ジンの奴が黄金酒虫を捕まえたんだよ。それで皆で飲もうって招待されたんだ。他の奴等も同じだよ」

 

「ジンが・・・」

 

「おっ、噂によれば、おーいジン! 萃香が来たぞ!」

 

勇儀がジンを呼び出す。

その呼び声に応じて、ジンはやって来る。

 

「来たのか萃香」

 

「ジン・・・どうして・・・」

 

「別に他意は無い。ただ、せっかく捕まえたんだから、皆で飲もうと思ってな」

 

「そう・・・なんだ・・・」

 

「まあ、そんな訳で、今日は思いっきり楽しもう」

 

「お、おい!」

 

ジンは萃香の手を引き、宴会の中に入って行った。

 

―――――――――――

 

深夜、宴会騒ぎは収まり、誰もが酔い潰れて寝ていた。

 

「う、うーん・・・」

 

「おや、目が覚めたかい」

 

ジンが目を覚ますと、萃香の顔が見えた。どうやら、彼女に膝枕をされているようだ。

 

「萃香・・・?」

 

「そう、私だよ」

 

ジンは起き上がろうとするが、頭が上手く回らなかった。

 

「無理に起きない方がいいよ。しばらく寝てたな」

 

「あ、ああ・・・」

 

ジンは萃香の言われた通りに、彼女の膝に頭を預けた。

 

「他の皆は?」

 

「大半の奴等は帰ったけど、そのまま寝ちゃった奴等もいるよ」

 

「そうか・・・」

 

それから暫く無言が続いた。

春の優しい風が、二人を優しく撫でる。

 

「・・・少し、昔話を話すよ。

昔、鬼と人は共にあった。鬼は人を攫い、自らを退治に来た人間との勝負を愉しむ。

そして、鬼を倒した人間には鬼の優れた技術や宝を譲り渡す。

これが、鬼と人の交わされた盟約で、互いに手を取り合う関係だったんだ」

 

「・・・なんか、幻想郷の在り方みたいだな」

 

「そうだね、これは一つの信頼関係の形だった。

けど、そう思っていたのは鬼だけだった・・・」

 

そう言うと、萃香は寂しそうに言葉を続けた。

 

「鬼と人の間には、歴然の差があった。そこで人は、鬼が最も嫌う“嘘”を用いて、鬼を討とうしたんだ」

 

「・・・・・・」

 

「そして、人間に失望した鬼達は、地上を去って行ったんだ」

 

「それが、鬼がいなくなった理由か・・・」

 

「そうさ。

それ以来、鬼は忘れ去られてしまった」

 

「・・・なあ、一つ聞いても良いか?」

 

「なんだい?」

 

「それなら、萃香はどうして地上にいるんだ? 他の鬼のように、人を見限らなかったなのか?」

 

その質問に、萃香は何処か言いづらそうに答えた。

 

「その・・・まあ、自分に嘘つけなかったんだ・・・」

 

「自分に?」

 

「ああ、“人と共に在りたい”その気持ちだけは偽れなかったんだ。

そして出来れば、人と鬼のかつての在り方に戻したかった」

 

「それで、霊夢が言っていた異変を起こしたのか・・・」

 

「なんだ、霊夢の奴話したのかい。

そうだよ、私の力で人を集めて、宴会を起こし続ければ、皆が戻って来る。そう思ったんだ。だけど―――」

 

「結局、失敗に終わった・・・」

 

「うん、結局仲間達は戻って来なかった・・・でも」

 

萃香はジンの頭を優しく撫でた。それはまるで、我が子を撫でるかのように―――。

 

「お前の誠実さが、皆をここに呼び戻してくれた。一時でも、私の願いを叶えてくれて、ありがとう」

 

「そんな・・・俺はただ、皆と一緒が良いと思っただけだ」

 

「その思いが、ここにいる皆を集めたんだ。

改めて言うよ、ありがとうジン」

 

その萃香の言葉が、ジンの心に響いた。

その後、二人が何を語り合ったのか、それは桜だけが知っている。




今回は完全ご都合主義です。
それとジンの鬼人化ですが、重要な部分以外は描写していないだけで、宴会などはしょっちゅう鬼人化しています。
いちいち書いてあるとウザイかな?と思っているんですが、一応書いといた方がいいですかね?
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