東方軌跡録   作:1103

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月面サマーバケーション 後編

「海だな・・・・・・」

 

月の砂浜で、海に浮かぶロケットの残骸を眺めながらジンは呟いた。

そんなジンに、水着姿の霊夢がやって来た。

 

「なに黄昏てんのよ。せっかく月の海に来たのに」

 

「そうは言ってもな・・・・・・帰りは一体どうするんだ?」

 

「大丈夫よ、当てがあるから。

そんな事よりも、せっかく海に来たんだから、楽しまないと損よ」

 

「お、おい!」

 

霊夢に手を引かれ、みんなの元に行くジン。

そんな様子を、監視する存在がいる事も知らずに――――。

 

 

海で遊ぶとしたら、大体は泳ぐ事であるが、ジンはある疑問を抱いていた。

吸血鬼は海に入れるのかという事である。

 

「二人は、海に入っても大丈夫なのか? それと日光は?」

 

「ダメなのは流水だけだから、水溜まりぐらいは平気だよ」

 

「水溜まりって・・・」

 

「湖や海なんて、凄く大きい水溜まりみたいなものでしょ?

あと日光は、永淋に作らせた、特性日焼け止めを塗ったから大丈夫よ」

 

「そ、そうか・・・・・・大丈夫なら良いが」

 

「よーし! 泳ぐぞ~」

 

「あ、ちゃんと準備運動しないと駄目だぞ」

 

準備運動をしっかりとやり、いよいよ海に入る。

今まで窮屈な思いをしたのか、全員がはしゃぎ始める。

 

「いっちばーん!」

 

「待ってよ~」

 

「うーん♪ 気持ちいいー♪」

 

「それー♪」

 

「わっ! やったわねー!」

 

泳いだり、浮き輪で浮かんだり、水を掛け合ったりと、皆がそれぞれ遊んでいた。

そんな中ジンは、ただ一人荷物番をしている咲夜に気づく。

 

「咲夜、お前は遊ばないのか?」

 

「荷物番は必要でしょ? 私の事は気にしなくて良いから」

 

「そうは言ってな・・・そうだ、俺が代わりに荷物番をしてやるよ」

 

「え? でも・・・・・・」

 

「せっかく海に来たんだから、少しの間だけでも、レミリア達と一緒に遊んで来い」

 

「・・・それじゃ、お言葉に甘えようかしら」

 

咲夜はジンに荷物番を任せ、レミリア達と共に遊び始めた。

ジンはしばらくそれを眺めていたが、やがて睡魔に襲われ、眠りについてしまう。

 

―――――――――――

 

それから暫くすると、ジンは体に奇妙な感覚を覚え始める。

 

「ん・・・なんだ・・・?」

 

そこでジンが見たのは、自分の体を砂で埋めようとしているサニー、ルナ、スター、チルノ、フランの姿であった。

 

「な、なんだこれは?」

 

「あ、起きたよー」

 

「こ、これは一体・・・?」

疑問に思っていると、悪戯な笑みを浮かべたレミリアと咲夜がやって来た。

 

「荷物番をサボって寝ていた罰よ。しばらくそうしてなさい」

 

「いや、ちょっと―――」

 

「あ! 動いちゃ駄目!」

 

「・・・・・・」

 

「ふふ、そういう訳だから、しばらくそうしてなさい」

 

こうしてジンは、しばらく砂に埋もれた状態にいるのであった。

 

 

ようやく解放されたジンであったが、今度は皆のためにかき氷を作るはめになった。

 

「私はイチゴ味よ」

 

「私はレモンだな」

 

「ブルーハワイだ!」

 

「わかったから、少し待ってくれ」

 

注文を受けたジンは、チルノが作り出した氷塊をかき氷機にセットし、ゴリゴリと削っていく。そして、それぞれのシロップを掛け、完成したかき氷を渡す。

 

「はい、どうぞサニー」

 

「ありがと。

う~ん♪ やっぱり夏はかき氷よね♪」

 

「霊夢はなに味にする?」

 

「イチゴ味でお願い」

 

「わかった・・・なあ、霊夢」

 

「なに?」

 

「さっきから妙な視線を感じるのだが・・・」

 

ジンは森の方に視線をやる。

本人達は隠れているつもりであるが、ウサギ耳をした少女達がこちらをうかがっていた。

 

「ああ、気にしなくて良いわよ」

 

「だがな・・・・・・」

 

「大丈夫よ。それよりも、はやくかき氷を作ってよ」

「・・・わかった」

 

ジンは半ば諦めて、かき氷を作り始めた。

しかし、どうにも気になったジンは、カキ氷を作り、少女達に差し出した。

 

「こんな暑いなか大変だろ? これでも食べな」

 

「え? えっと・・・・・・」

 

「あ、もしかして、違う奴が良かったか?」

 

「いや、そうじゃなくて・・・・・・」

 

「何をしているかは知らないし、聞く気は無い。

ただこれは、お近づきのしるしみたいな物だ。遠慮しなくて良い」

 

その言葉に、少女達は少し戸惑ったが、やがてジンのカキ氷を受け取った。

 

―――――――――――

 

ジン達が海で遊んでいる頃、一人の女性が海辺まで近づいて来ていた。

彼女の名は綿月依姫。月の防衛隊のリーダーであり、永淋の親戚であるのだ。

 

「確かに奴等が来たの?」

 

「はい、間違いありません。

今は、仲間達が監視しています」

 

部下の玉兎の報告を受け、依姫は少し心配な表情をしていた。

 

(八意様の手紙では、今回は侵略では無いと書いてあるけど・・・やっぱり不安ね)

 

事の発端は数ヵ月前の事である。

ある時、永淋の手紙が彼女の元に来たのが発端である。

その内容は、以前月に来た吸血鬼が、再び月に行く為のロケットを制作しているとのことが書かれていた。

再び侵略して来るのかと思ったが、どうやら違うらしく、ただ月の海で遊に行く為らしい。

 

(まったく、月を観光地か何かと思っているのかしら?)

 

直ぐに地上に追い返そうと思っていた。しかし、浜辺に到着した彼女が見たものは――――。

 

 

「それー!」

 

「わわ!?」

 

「スカーレットチーム、一点」

 

「やったよお姉様♪」

 

「よくやったわフラン」

 

「くっそ~」

 

「ま、まだ勝負はこれからよ!」

 

「負けるなー!」

 

「お嬢様、妹様、頑張って下さい」

 

それは、監視していた玉兎達が地上から来た者達と楽しそうに遊んでいる光景であった。

 

「な、なによこれ・・・」

 

流石の依姫も、これには絶句してしまった。

しばらく呆けていたが、直ぐ様我に帰り、浜辺へと向かう。

 

「貴女達! これは一体どういう事!?」

 

「わわ! 依姫様!?」

 

玉兎達は慌てて整列するが、依姫の怒りは収まらなかった。

 

「私は彼女達を監視しなさいと命じた筈。どうして一緒に遊んでいるのかしら?」

 

「そ、それは―――」

 

「俺が誘ったからだ」

 

そこで一人の青年―――ジンが玉兎達の前に出て来た。

 

「貴方は?」

 

「俺はジン。昨年、幻想郷に移り住んだ外来人だ」

 

「貴方が・・・・・・」

 

「ああ、だから彼女達をあまり怒らないで欲しい」

 

依姫は少し戸惑っていた。

ジンは一切敵意を見せないどころか、出会ったばかりの玉兎達を庇っているからである。

それでも依姫は、威厳を保つためにジンを睨み付ける。

 

「・・・それで? どうして玉兎達を誘ったの?」

 

「なに、楽しいことは皆でするもんだろ?

第一、あんな混ざりたそうな顔をしたら、放っておけない」

 

「放っておけないって・・・・・・」

 

「ジンの悪い癖みたいなものよ。あまり気にしない方が良いわ」

 

「そうなの?・・・じゃなくて!」

 

 

霊夢の一言で思わず場の空気に流されそうになったが、直ぐ様気持ちを切り替え、本来の仕事を全うしようとする。

 

「貴方達! ここは観光地でも、海水浴場でも無いのよ! 今すぐ立ち去りなさい!」

 

「別に良いじゃない、侵略しに来たわけでも無いんだし」

 

「そうよ。ここで遊んでいる分、多目に見なさいよ」

 

「これは忠告よ。さもないと―――」

 

すると依姫は、刀を地面に突き立てる。

すると地面から刃が現れ、霊夢達を取り囲む。

 

「実力で排除するわ」

 

「にゃろー! サイキョーのあたいに喧嘩を売るとはいい度胸だ!」

 

「そうね、以前の雪辱を晴らす絶好のチャンスだわ」

 

「邪魔するなら、ギュッとドカーンしちゃうよ!」

 

依姫の挑発に、チルノ、レミリア、フランの三人は交戦意思を見せ、咲夜は気を伺い、霊夢と魔理沙は我関せず。サニー、ルナ、スター、大妖精達は怯えていた。

 

「あら? やる気なの? またこの前みたいになるわよ?」

 

「以前の私と思ったら大間違いよ?」

 

一触即発の空気が漂う。

事態を危惧したジンは、慌てて止める。

 

「ま、待てよ! 俺達は戦いに来た訳じゃ―――」

 

「悪いけど、こうまでされたら引き下がれないわ!」

「だが―――」

 

「残念だけど、ああなったお嬢様は止められないわ」

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

こうして、依姫との弾幕勝負が始まった。

 

 

その後、チルノ、レミリア、フランの三人は依姫に挑むも、彼女“神霊の依代となる程度の能力”の前に完全敗北したのであった。

 

「まさか、フランまで負けるとはな・・・」

 

「ああ、あの女の能力は出鱈目だからな・・・・・・」

 

「霊夢の上位置換みたいな物か・・・・・・」

 

「さて、こちらの勝ちね」

 

「くっそ~」

 

「うー・・・・・・」

 

「あーあ、負けちゃった・・・・・・」

 

負けた三人ははとても悔しそうにしていた。

一方、勝った依姫は、再びジンたちの方へ向き直る。

 

「それじゃ、お引き取りして貰うわよ」

 

このままでは本当に帰されてしまうと思ったジンは、ダメもとで依姫に頼む事にした。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「なに?」

 

「せっかく遊びに来たんだ、もう少しいても良いか?」

 

「あのね・・・ここは海水浴場でも観光地でも無いのよ。そんな事――――」

 

「あら、別に良いじゃない」

 

不意に、女性の声がした。振り返ると、そこに一人の女性が立っていた。

その女性を見た依姫は、驚いていた。

 

「お姉様? どうしてここに?」

 

「ふふ、少し散歩をしていたのよ」

 

女性は悪戯っぽく笑いながら言った。

恐らく、自分の後をつけて来たのだと、依姫は思った。

 

「まったく・・・・・・」

 

「さて、改めて自己紹介するわ。私は綿月豊姫、依姫の姉よ」

 

「ご丁寧どうも、俺はジンだ」

 

豊姫とジンは握手を交わす。

こうして、豊姫の許可を貰い、玉兎達と共に海を満喫するのであった。

 

―――――――――――

 

その後、西瓜割りやビーチバレーをして遊び、バーベキューしておおいに盛り上がりを見せた。

そして最後に、花火大会をする事になった。

そんな中、霊夢はジンがいない事に気がつく。

 

「あれ? ジンは?」

 

「さあ? さっきまでそこにいたと思うけど?」

 

「しょうがないわね・・・ちょっと探してくる」

 

霊夢はジンを探しに、浜辺を歩き出す。

少し離れたところで、夜空を見上げているジンを見つける。

 

「もう、こんな所にいたのね」

 

「ん? 霊夢か・・・」

 

「どうしたの? 空なんか見て、星でも見てるの?」

 

「いや、地球を見ていたんだ」

 

「地球?」

 

「ああ、向こうじゃこうやって見れないだろ? だから目に焼き付けたくて」

 

「ふーん・・・」

 

霊夢も同じように地球を見上げる。月と違って、地球は青く輝いていた。

するとジンは、静かに口を開いた。

 

「子供の頃、月に行くのが夢だったんだ」

 

「え?」

 

「昔はよく、“ロケットに乗って、月の兎さんに会い行きたい”って、言っていたみたいだ」

 

ジンは何処か懐かしく、そして寂しそうに話を続けた。

 

「だけど、時間が経つにつれ、月に行く夢を諦めていった」

 

「それは・・・どうして?」

 

「単純に、努力をしなかっただけだ。当時の俺は、努力は絶対に報われない。そう思っていたからな」

 

その言葉は、霊夢にとって意外なものであった。

普段はいろんな事を惜しみなくやるジンから、そんな言葉を聞く事になるとは思わなかったからである。

だからこそ、聞かずにはいられなかった。

 

「だったら・・・どうして今は頑張っているの?」

 

「・・・もう、後悔したくは無いからだ」

 

そう言ってジンは、霊夢の方に向き直る。

 

「大人になってからは、色々と後悔するようになった。

“ああしていれば良かった”“こうしていれば良かった”そんな事考えるようになっていったんだ。だから―――」

 

「だから、後悔しないように頑張るの?」

 

「ああ、やらないより、やった方がスッキリする。

報われる事が重要な事じゃない、やる事が重要なんだ。俺はそう経験した」

 

「・・・・・・そう」

 

「それに、霊夢のおかげで、夢が叶ったんだ」

 

「え?」

 

「ありがとう霊夢、君のおかげで月に来れた。本当に感謝しているよ」

 

ジンは、純粋に霊夢に感謝の言葉を述べた。

霊夢は、そんなジンに何と答えれば良いか分からず、しどろもどろになる。

 

「えっと・・・その・・・」

 

「お、レミリア達、打ち上げ花火をしているぞ」

 

ジンの言葉に、霊夢は振り返る。

そこには、花火が夜空に上がっていた。

 

「・・・・・・綺麗ね」

 

「ああ、月で花火を見た人類なんて、俺達ぐらいだろうな」

 

「そうね・・・・・・」

 

二人はしばらくそこから花火を眺めていた。

その後、後片づけを済まし、豊姫の力で無事幻想郷に帰えるのであった。




正直、ネタが尽きかけています。話しもクダクダ感が否めません・・・。
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