東方軌跡録   作:1103

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今回は夏祭りの話しです。
ネットで調べてみたら、巫女がやる舞があるらしいので、それを題材にしてみました。


博麗の舞

夏の終り頃、人里は夏祭りに向けて準備をしていた。

そんななか、ジンは屋台の店の配置等を取り仕切っていた。

 

「ミスティはこの場所な」

 

「え~、希望していた場所と違うじゃない」

 

「そこはすまん。だが、ここもそんなに悪い場所では無いだろ?」

 

「まあ・・・ね」

 

「それと・・・リグルには悪いけど、虫すくいは食べ物関係が集中しているここはダメだ。

少し離れるが、ここなら大丈夫だ」

 

「少し残念だけと、仕方ないよね・・・」

 

「サニーはここ、ルナはここ、スターはここだ」

 

「うわ・・・みんなバラバラね」

 

「今回は屋台が多いからな・・・悪いが我慢してくれ」

 

ジンは次々と場所を指定する。

なるべく本人の希望通りにしようと努力はするが、なかなか上手くいかず、妥協案を出すしかなかった。

 

 

一段落すると、次は夏祭りの舞台を視察する。

舞台の製作は、萃香に任せているのだが――――。

 

「いよ~ジン、飲んでるか~?」

 

「飲んでるか? じゃない! 舞台の製作はどうした?」

 

「ん~八割ぐらいは出来ていると思うよ~」

 

「ほう、どれどれ―――」

ジンが萃香が作った舞台を見る。

それはもう、かなり独創的で、とても夏祭りの舞台とは思えない程禍々しいものであった。

 

「・・・作り直し。あと、出来るまで酒は禁止」

 

「ええー!」

 

「当日までに、ちゃんとした舞台が出来なかったら、もう萃香に博麗酒はやらんし、売らないからな」

 

「そ、そんなー!」

 

「だったらちゃんとやる。良いな?」

 

「はーい・・・」

 

萃香は渋々、舞台を立て直し始めた。

それを見届けたジンは、次の場所へと向かう。

 

―――――――――――

 

全ての打ち合わせを終えたジンは、神社に帰って来ていた。

すると境内では、霊夢が巫女舞を練習している最中であった。

 

「違う! 違う! ただ舞っているだけじゃダメよ」

 

霊夢の舞を見ていた紫が、手を叩きながら霊夢の舞を止めさせる。

 

「いい? この舞は、ただ舞うだけじゃ駄目なの。

敬意をはらい、感謝の気持ちを持つように」

 

「・・・それって誰にするのよ?」

 

「それはもちろん、この幻想郷そのものよ。

歴代の巫女達は、感謝と敬意の気持ちを持って、この舞を舞っていたのよ」

 

「あーはいはい、どうせ私には、感謝も敬意も無いわよ」

 

「まったく・・・今日はここまでにしましょう。彼が帰って来たみたいだし」

 

そう言って、ジンの方へと振り向く紫。

そこで霊夢もジンがいる事に気が付き、ばつ悪そうに顔を背けた。

 

「それじゃあジン、後は任せるわよ」

 

それだけ告げると、紫はスキマに入って行った。

ジンは、霊夢のそばまで近寄る。

 

「お疲れ、とりあえず風呂か?」

 

「そうね、もうくたくたよ」

 

「わかった。準備をして来るから、部屋で休んでいてくれ」

 

「え? いいの?」

 

「ああ、霊夢ほど疲れていないから大丈夫だ」

 

霊夢は、それは嘘だと思った。

ジンは、朝からずっと祭りの準備に追われていたのだ。きっと疲れているに違いないと。

だが、それでも自分の事を案じてくれていることに、霊夢は嬉しく思い、素直に好意を受け取る事にした。

 

「・・・それじゃあ、お願いしようかしら」

 

「わかった。出来たら呼ぶからな」

 

ジンはそう言って、風呂場へと向かった。

霊夢はジンの言葉通りに、風呂の準備が終わるまで、部屋で休む事にした。

 

―――――――――――

 

風呂の準備が終わり。霊夢は、疲れを癒す為に風呂に入り、ジンは外から薪をくべながら、湯を沸かしていた。

 

「湯加減はどうだ霊夢?」

 

「良い感じよ。う~ん、動いた後の風呂は格別ね♪」

 

「それは良かった」

 

「でも、どうせなら温泉が方が良かったわ。・・・潰すんじゃなかった」

 

かつて博麗神社には温泉が湧いていた。

それは、とある異変の時に湧き出た物である。

かつて霊夢は、それを利用して、参拝客を呼び込もう画策した。

しかし、当時飽き性の彼女は、温泉をまったく管理せず、温泉は荒れに荒れて、とうとう潰してしまったのである。

 

「なんて勿体ない事を・・・・・・」

 

「だって、参拝客は全然来ないし、温泉は汚くなるし、あまつさえ異臭もして来たのよ。

とてもじゃないけど、耐えられないわ」

 

「ちゃんと管理をしていなかったせいだろ。しかし・・・着眼点は悪く無いと思うぞ」

 

「でしょ♪でしょ♪ 今ならそれなりに当たると思うわ」

 

「そうだな、一度考えてみるのも良いかもな。

だけど、今は夏祭りに集中しないと」

 

「わかっているわよ」

 

霊夢は、何処か楽しそうであった。恐らく、温泉の案が気に入ったのだろうと、ジンは思った。

 

「なあ、話が変わるが、どうして急に舞なんてやろうと思ったんだ? 去年はしなかったのに?」

 

ジンがそう聞くと、霊夢はとても言いづらそうであった。

 

「その・・・大した理由じゃないわよ。ただ―――」

 

「ただ?」

 

「・・・私も、少し頑張ってみようかなって思っただけ」

 

「霊夢・・・」

 

「あ~もう! 何言ってんのよ私は! この話はおしまい!」

 

よほど恥ずかったのか、霊夢は湯船に顔を沈める。

ジンは、霊夢の心境の変化に嬉しく思いながら、薪をくべるのであった。

 

―――――――――――

 

祭りが近づくなか、霊夢の舞の練習は段々と激しくなっていた。

しかし、やればやるほど、霊夢の舞の出来まえは良くなっていった。

 

(流石は霊夢ね・・・僅か短期間でここまで上達するとは・・・普段の修行も、これぐらい頑張って欲しいわ)

 

「どう紫?」

 

「ええ、かなり上手くなっているわ。これなら、本番でも大丈夫よ」

 

「そう? いまいち実感が湧かないんだけど?」

 

「そういうのは、全てを終わらせて初めて実感出来るものなのよ」

 

「そういうものなの・・・?」

 

「そういうものなのよ」

 

霊夢はいまいち納得出来なかったが、考えても仕方ないので、練習を再開した。

その際に、紫がある事を聞いてきた。

 

「ところで、一体どういう風の吹き回し? 今までやらなかった舞を、突然やるなんて」

 

その言葉を聞いた霊夢は舞を止め、少々うんざりしなながら、紫に向き直った。

 

「あんたもそんな事聞くの?」

 

「あら? 誰だって、疑問に思うわよ。

嫌いな言葉が努力と頑張るの貴女が、こうして誰かに言われるまでも無く、巫女舞の練習をしているなんて」

 

「べ、別に良いでしょ! 私だって、頑張る時は頑張るのよ!」

 

「貴女が頑張る時は、必ず利がある時よね・・・目当てはジンかしら?」

 

「な、何を言ってるのよ! そんな訳ないでしょ!」

 

霊夢は大きな声を上げて否定するが、紫はニヤリと笑う。

 

「あらあら、別に誤魔化さなくたって良いじゃない♪」

 

「だから違うって言っているでしょ!」

 

「愛しの彼に、良いところを見せて、好感度アップしようなんて、可愛いところあるじゃない♪」

 

「~~~~!! 夢想封印!」

 

霊夢は耐えきれず、紫に夢想封印を放つが、紫はそれを軽々とかわした。

 

「怖い怖い、ちょっとからかっただけじゃない」

 

「うっさい! これ以上言うと、本気で退治するわよ!」

 

「本当、怖い巫女ね・・・。

これ以上やると、本当に退治されそうだから、今日はこれまでにするわ。ちゃんと練習するようにね」

 

それだけ告げると、紫はスキマに入っていった。

霊夢はしばらく息を切らしていたが、息を整え、やがて顔を赤らめた。

 

「別に・・・そんなんじゃない・・・・・・」

 

霊夢は、誰もいない境内で、小さく呟いた。

 

―――――――――――

 

祭り当日。

人里は、人や妖怪で溢れていた。

そんな中ジンは、自警団の一人として、見回りをしていた。

 

「活気があって良いな。やはり祭りはこうでなくては」

 

しばらく歩いていると、レミリア、フラン、咲夜の三人が型抜きをしているところを見つける。

 

「あ、失敗しちゃった・・・・・・」

 

「うー・・・・・・これで十回目・・・」

 

慣れない型抜きで、悪戦苦闘するレミリアとフラン。

一方、咲夜は慣れた手付きで綺麗に型を抜いた。

 

「出来ましたわお嬢様、妹様」

 

「流石は咲夜♪ 私の自慢の従者だわ」

 

「すっご~い♪」

 

「それほどではありません」

 

咲夜は謙虚にそう言った。

そして、景品を貰おうとした時、そこで問題が起きる。

 

「カップよカップ! 貰うとしたら、あのコーヒーカップよ!」

 

「ぬいぐるみ! ぬいぐるみの方が可愛いよ!」

 

レミリアとフランはどの景品を貰うかで、揉め始めてしまった。

もし吸血鬼二人がここで暴れてしまえば、大惨事になるのは明白。ジンは慌てて止めに行こうとしたが――――。

 

「お嬢様、ここは妹様にお譲り下さい。

あのカップでしたら、私がもう一度やってとりますから」

 

「うー・・・・・・咲夜がそう言うのなら、今回は譲るわ・・・・・・」

 

「わーい♪ ありがとう咲夜♪」

 

レミリアは咲夜の言葉を素直を聞き、フランに景品を譲った。

 

(流石は咲夜だな。これなら、心配は要らないだろう)

 

ジンはそう思い、他の場所へと移動する事にした。

 

―――――――――――

 

ジンが次に向かったのは射的屋であった。

いや、正確には怪しいと踏んで、調べに来たのである。

 

「それは心外だね。こうして、清く正しく商売しているのに」

 

「どの口がいうだよそれ。

あと、その台詞は射命丸のだ」

 

ジンはてゐに対して容赦無く言う。

彼女が出している時点で、この出店は怪しさ満載なのだ。

 

「と言うか、なんでお前がここで店を出しているんだ? 俺の記憶が正しければ、別の奴の場所だったはず」

 

「ああ・・・ちょっと頼んだら、快く譲ってくれたよ」

 

「・・・・・・まさか、騙していないよな?」

 

「失敬な、ちゃんと交渉して譲って貰ったんだよ」

 

(さっき、快く譲って言わなかったか?)

 

そう思いながら、出店の様子を観察する。

一見すると、ちゃんとした射的屋で、鉄砲の方も普通のコルク銃で、細工等は見受けられなかった。

しかし、ジンはある事に気が付いた。

 

「・・・てゐ、景品を調べさせて貰うぞ」

 

「駄目うさ」

 

「なぜ?」

 

「特に理由は無いけど、駄目うさ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

二人はしばらく睨み合うが、ジンはため息をついて言う。

 

「わかった。その代わり、一回やらせてくれ」

 

「良いよ。一発一銭だよ」

 

ジンはてゐに一銭銅貨を手渡し、鉄砲を受け取る。

景品の中で一番小さい物を狙い打つ。コルクは景品に当たるが、一切微動だしなかった。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

「悪いが調べさせて貰うぞ」

 

「営業妨害うさ~!」

 

てゐは景品を調べようとしたジンを止めようとするが、ジンはそれをかわし、景品を手に取ろうとした。

 

「こ、これは・・・」

 

景品はピクリとも動かなかった。

そこでジンは気づく、景品全てに接着剤で固定されている事に。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・うさ♪」

 

「そんなんで誤魔化せるか」

 

結局、てゐの射的は悪質と判断され、屋台を畳ませる事になった。

 

―――――――――――

 

ジンが見回りをしていると、偶然にも華仙とばったりと出くわした。

 

「あら、ジンじゃない」

 

「華仙か、どうやら祭りを満喫しているようだな」

 

華仙は頭にお面、両手の袋には、屋台の食べ物や景品が大量に入っていた。

 

「べ、別に良いでしょ、私だって、祭りを楽しみたいですから」

 

「別に悪いとは言っていないだろ。楽しんでいて、なによりだ」

 

「そう言う貴方は一体何を?」

 

「自警団の仕事を手伝っているんだ」

 

「ああ・・・確かに、こういう祭りの時は、トラブルが起きやすいのよね」

 

「そうなんだよ・・・って、言っている側から!」

 

ジンは人だかりを見つける。

人だかりは、十中八九トラブルが起きている証拠である。

 

「私も行くわ」

 

「助かる」

 

ジンと華仙は人だかりの方へと走って行った。

 

 

華仙の活躍により騒ぎは収まり、祭りは無事に続けられていた。

 

「ありがとうな華仙、おかげで助かった」

 

「いいえ、仙人として当然の事をしたまでよ」

 

「それにしても、流石は仙人だな。よく説き伏せれたな」

 

「まあ・・・原因があまりにもくだらなかったから、つい熱が入っちゃったわ」

 

二人がそんな話をしていると、人々が里の広場に集まって行った。そこでジンは、ある事を思い出す。

 

「そうか、もうすぐ霊夢の幻想綺想舞が始まるんだった」

 

「え? 霊夢が舞をするの?」

 

「ああ、確か広場の舞台で披露するんだった。

俺は行くが、華仙はどうする?」

 

「・・・そうね、私も行こうかしら」

 

「それじゃ、一緒に行くか」

 

二人は、他の人々同様に、里の広場へと足を運ぶのであった。

 

 

広場に到着すると、そこは人や妖怪で溢れていた。

その中央には、萃香が建てた舞台と、その上には霊夢が立っていた。

 

「何とか間に合ったか・・・」

 

ジンと華仙は、舞台からやや遠い場所で見ていた。

しばらくすると、霊夢が音楽と共に舞始める。

ゆったりと流れるように、それは穏やかな水面を連想させるものであった。

その舞に、誰もが魅了されていた。

 

「あの霊夢が・・・・・・」

 

「・・・・・・綺麗だ」

 

霊夢の舞を見て、華仙は素直に驚き、ジンは見惚れていた。

その間も、霊夢は舞続けた。

そして、舞は最後の瞬間を迎える。

 

「――――ふう」

 

霊夢は舞終わり、観客達に御辞儀をする。すると観客達は霊夢に盛大な拍手を送くられた。

 

―――――――――――

 

祭りが無事に終わり、ジンと霊夢は帰路についていた。

 

「うぃ~もうのめな~い・・・・・・」

 

「おい、しっかりしろ」

 

あの後、打ち上げと表して、霊夢は大いに酒を飲み、ベロベロに酔っていた。よほど酒が回っているのか、普段では絶対に言わない事を言言い続けていた。

ジンは、そんな霊夢を支えながら、夜道を歩いていた。

 

「まったく、飲みすぎだ。いくらなんでも羽目を外し過ぎ」

 

「べつにいいでしょ~、ずっとがんばったんだからー、すこしはねぎらってよー」

 

「わかった、霊夢はよく頑張った。偉いぞ」

 

「えへへ」

 

霊夢はジンの言葉で機嫌をよくしたらしく、嬉しそうに笑う。

それからしばらく歩くと、突然霊夢は、岩に腰をかけた。

 

「おい霊夢、こんなところで座るなよ」

 

「だってー、つかれたんだもん」

 

「後少しで神社に着くんだから、もう少し我慢しろ」

 

「ぶぅー、すこしはやさしくしてもいいじゃないー」

霊夢は頬を膨らませながら、立ち上がろうとはしなかった。

このまま放置する訳にもいかず、ジンは霊夢に背中を見せて腰を落とす。

 

「ほれ、神社までおぶってやるから」

 

「ありがとう♪」

 

霊夢は躊躇無く、ジンの背中に乗った。ジンは霊夢をしっかり背負い、再び夜道を歩き出した。

 

「うふふ♪ らくちん♪ らくちん♪」

 

「やれやれ・・・」

 

上機嫌な霊夢をよそに、ジンは歩き続けた。

しばらく会話がなかったが、ふと霊夢が話し掛けて来た。

 

「ねえ・・・? わたしのまいはどうだった?」

 

「どうだったって?」

 

「ほらあるじゃない、すごいとか、うまかったとか」

 

「・・・・・・そうだな」

 

ジンは少し恥ずかしいかったが、霊夢に素直な感想を伝えた。

 

「・・・綺麗だった。俺が知る限り、一番輝いていたと思う」

 

「・・・・・・」

 

「霊夢?」

 

「スー・・・・・・スー・・・・・・」

 

「なんだ、寝たのか・・・仕方ないお姫様だ」

 

そう呟きながら、ジンは神社に向かって歩いて行った。

こうして、今年の夏は終わりを告げた。

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