今回から、金銭設定を固めました。これはあくまで個人設定なので、原作とは違うと思います。
ある日のこと、ジンは香霖堂を訪れていた。
ここは掘り出し物が多く、暇さえあれば、使える道具を買う事にしている。
今日も、そんな掘り出し物が無いかと、店の扉を開いた。すると店主の霖之助と魔理沙がいた。
「おやジン、いらっしゃい」
「よおジン、何か買いに来たのか?」
「ああ、掘り出し物が無いかと・・・。ついでに、霊夢の未払いのツケの支払いだな」
「本当助かるよ。魔理沙も少しは見習って貰いたいね」
「おい、何で私だけなんだ? 霊夢だって、大抵ツケだろ」
「最近の神社は金羽振りがいいからね、ツケで済ますのは殆ど無くなったよ。
それに、ジンが払っているツケは、大分前のツケ分だよ」
「ツケってのは、要は借金って事だ。そんなものはとっとと払った方が良い」
借金、という言葉にジンは嫌悪を抱いている事に、霖之助と魔理沙は気づいた。
恐らく、借金をして酷い目か何かにあったのだろうと二人は思い、あまりこの事を詮索しない事にした。
「ところで、ツケって後いくら残ってたっけ?」
「えっと確か・・・・・・」
すると霖之助は帳簿を開き、パラパラとページをめくる。
「残り、二百四十五円三十四銭だね」」
因みに、霖之助が言った額は、外の世界だと245万円3400円である。
これには魔理沙は驚いた。
「霊夢の奴・・・そんなにツケていたのか・・・」
「因みに魔理沙、君はこれの数倍だよ」
「え?」
「額を聞きたいかい?」
「え、遠慮しておくぜ・・・・・・」
霖之助の言葉に、魔理沙は青ざめる。
先程の額の数倍となると、下手すれば桁が一つ増える可能性がある。とてもじゃないが、聞く猛者はいないだろう。
「取り合えず、今回は買い物にも来ているから、これだけだ」
そう言って、テーブルの上に銭を置く。霖之助はそれを数え始める。
「ひー、ふー、みー・・・うん、三十四銭だね」
「偉く中途半端だな」
「そうでもないさ、これで残りは二百四十五円ちょうどになるから、語呂が良くなるよ」
「先はまだまだ長いけどな・・・さて、商品を見るか。店主、お勧めはあるか?」
「そうだね・・・こんなのはどうかい?」
霖之助はジンに商品の紹介を始める。
一方魔理沙は、暇をもて余したのか、店内を見て回っていた。
ふと、奇妙な白い棒を見つける。
「ん? 何だこれ?」
手に取って見るが、イマイチ用途が分からず、霖之助に聞く事にした。
「おい香霖、これは何に使うんだぜ?」
霖之助は一時説明を中断し、魔理沙の方を向く。そして魔理沙が持つ棒を見て、簡潔に答えた。
「ああ、それは―――骨だよ」
「骨?」
「そうだよ。無縁塚に落ちていたのを拾ったんだ」
無縁塚、それは幻想郷に無縁の人間―――つまりは外来人が埋葬される場所である。
幻想郷をさまよい、野垂れ死んだ者や、妖怪の餌食になった者がそこに葬られる。それと同時に、外の道具が落ちている場所でもあるのだ。
かというジンも、もしかしたら無縁塚の一員になっていたかも知れないので、あまり話題としては聞きたくはなかった。
「無縁塚で拾ったのなら、仏の物だろ。何で店にまで持って来たんだ?」
「それなんだけど・・・その骨は余りなんだよ」
「余り? 一体どういう事だ?」
「ああ、実は―――」
霖之助の話によると、いつもの通りに無縁塚で死体の埋葬をしていると、骨の数と仏の数が合わなかったとの事だった。
「それで、その骨を持ち帰った訳か・・・」
「ああ、でもこれだけじゃないんだ。以前にも、同じ骨を拾った事があって」
そう言って、霖之助はもう一つの骨を取り出す。それは魔理沙が手に取っているものとまったく同じ物であった。
「どういう事だこれは?」
「僕にもよくわからないな・・・・・・ただ言えるのは、この持ち主は、腕が二本以上あったって事だよ」
「それは本当に人間なのか?」
「確証は無いけど、無縁塚に埋葬されるのは人間だけだからね。それは間違いないよ」
霖之助はそう断言した。
結局その日は、骨の謎を解明しないまま、ジンは香霖堂を後にした。
―――――――――――
その夜、ジンは香霖堂の出来事を霊夢に話していた。
「ふーん、それは奇妙な話ね・・・」
「だろ? しかも、まったく同じ骨らしいから、不気味なんだよな」
「本当に人間の骨なの?」
「霖之助が言うには、間違いないらしいが・・・」
「ふーん・・・まあ、仮にそうだとしても、外の事なら、私達の管轄外だし」
「それは・・・そうなんだが・・・」
ジンはどうしても気になった。
外の世界を捨てて、幻想郷の住民となった身だが、それでも生まれ育った世界の事は気になってしまうのであった。
そんな様子をみた霊夢は、やれやれとため息をついた。
「わかった、私がその骨について調べてあげる」
「へ? 霊夢って、骨に詳しいのか?」
「そんな訳無いじゃない。ただ、どんな骨でも、霊魂がこびりついている物よ。
それを見てみれば―――」
「その骨の持ち主の事が、何かわかるかも知れないか・・・流石は霊夢だな」
「当たり前でしょ、私は博麗の巫女なのよ」
霊夢は、得意気にそう言った。
―――――――――――
次の日。
香霖堂では、霖之助が相変わらず骨を調べていた。
(うーん・・・・・・やはり妙だな、どの骨にも生活の跡がない。どれだけ裕福なら、こんな綺麗な骨が出来るんだろうか・・・)
霖之助は骨を観察しながら、あれこれ考察するが、納得出来る答えは出なかった。
しばらくすると、店の扉が開く音がする。霖之助は骨を一旦置き、客に応接をしようとした。
「いらっしゃい。おや? 今日は霊夢と一緒かい」
やって来たのはジンと霊夢であった。
霊夢は店に入るやいなや、霖之助に骨に関することを聞いて来た。
「こんにちは霖之助さん、今日は無縁塚で拾った骨を見せて欲しいんだけど」
「別に良いけど・・・何をするんだい?」
「骨の霊魂を見るのよ。そうすれば、何かわかるかも知れないじゃない」
「そうだね・・・それじゃ、お願いしようか」
「任せて」
霊夢は骨を受け取り、じっと観察し始める。
そして、しかめっ面をしながら言った。
「これ・・・本当に人間の骨なの?」
「どういう事だ?」
「この骨から霊魂がまったく感じられなかったのよ。」
「それはつまり、この骨の持ち主は魂が無いって事?」
「わからないけど・・・少なくとも、生きていた骨じゃないわ」
「生きていた骨じゃない・・・もしかして」
ジンはある答えを思いついた。
それは、この骨が骨格模型の一部か何かという事だった。それが結界を通り越して、無縁塚に落ちていた。
(もしそうなら、色々と説明出来るな)
「ジン? 何かわかったのかい?」
「まあ・・・確証は無いけど、恐らく間違っていないだろう」
ジンは二人に、骨格模型の事を話した。
「外にはそんな物があるのか・・・」
「悪趣味ね・・・」
「まあ・・・確かに不気味だよな。子供の頃、初めて見たときはビビったな」
「しかし、骨格模型か・・・それなら、まったく同じ骨があってもおかしくはないね」
「と言うか、霖之助さんの能力で、骨を調べれば良かったじゃない」
「あ・・・・・・」
「今気づいたの?」
「正直言って、能力を使うまで無いって考えてね・・・」
「まあ、そうだよな。誰が見たって、骨だよな・・・」
ジンは骨を見ながら言う。
その骨はなかなか精巧に出来ており、一目見ただけでは、本物と勘違いする程であった。
「しかし、これで安心したよ。
外の世界で何か悪い事件が起きているんじゃないかと、心配だったけど」
「まあ、そうだな。これで一件落着だな」
「私に感謝しなさいよ」
骨の謎が分かり、一安心する一同。そこに魔理沙が何かを抱えてやって来た。
「おーい、香霖いるかー?」
「なんだ魔理沙じゃない」
「お、霊夢にジンもいるのか、ちょうど良かったぜ。
朱鷺を捕まえたから、一緒に食おうぜ」
「良いわね♪ せっかくだから、鍋にしましょう」
「いいなそれ♪」
霊夢は骨の事をそっちのけで、朱鷺鍋に夢中であった。
そんな二人を見たジンと霖之助は、やれやれと呟く。
「二人にはミステリーより、食い気の方が良いみたいだね」
「そうみたいだな。でも、その方が二人らしい」
「そうだね・・・・・・」
そんな話をしながら、二人は霊夢と魔理沙のやり取りを微笑ましく見守った。
後に、二人は鍋に赤味噌か白味噌かと、言い争いになり、弾幕勝負にまで発展するのだが、それはまた別の話である。
今回出てきた骨の正体は、完全な自己解釈です。
小説では骨の正体が最後までわからなかったので、霖之助の考察や霊夢のセリフで、この骨は人工的に作られたものではないかと考えたからです。
あくまで個人的な解釈なので、間違っていると思いまが、自分はそう考えました。