本当は前編、後編に分ける筈が、クダクダになってしまったので大幅に短くしました。
ある日の事、ジンがいつものように境内を掃除していると、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「ジンいるー?」
「ん? 鈴仙にてゐに輝夜まで・・・神社に来るなんて珍しいな」
「まあね、ジンに用事があったから」
「俺に?」
「そう、二週間後の音楽祭の事は知っているわよね?」
音楽祭。それは秋の半ば頃に人里で行っている祭りの事である。
毎年、多くの人や妖怪が参加している年間行事である。
「ああ、知っているが・・・まさか―――」
「そう、私達も参加するわよ」
(やっぱりな・・・・・・)
音楽祭の事を知った時から、薄々こうなる事になるとジンは予想していた。
特に断る理由も無いので、輝夜の申し出を受ける事にした。
「一応聞くが、今回は曲は決めてあるんだよな?」
「もちろんよ、その辺は抜かりは無いわ。鈴仙」
「は、はい!」
輝夜に言われるがまま、鈴仙はジンに楽譜を渡した。
「これがやる曲か、どれどれ・・・ほう、これは中々おもしろいな」
「気に入って貰えたようね」
「ああ、確かにこれは演奏してみたいな」
ジンの言葉を聞いた輝夜は、何処か勝ち誇ったように笑っていた。
「ん? どうした輝夜?」
「ふふっ、実はね―――」
「それを書いたのは姫様なんだよ」
「え? 輝夜が?」
「そうだよ。この日の為に、作曲したんだよ」
てゐの言葉に、ジンは驚いていた。
ジンの目から見ても、素人が書いたとは思えないほど、しっかりと書かれていたからである。
「ちょっとてゐ! 私が言おうとしてた事を先に言わないでよね!」
輝夜は、自分が言おうとしていた事を先に言われたのが酷く御立腹であった。
しかしてゐは、相変わらず悪ぶれた様子はなかった。
「別に良いじゃないですか、どうせ言うつもりだったんだし」
「そういうのは自分から言うから良いのよ。まったく・・・」
「まあまあ姫様、てゐの悪戯は今に始まったことでは無いですし。ここは落ち着いて―――」
「こうなったら、鈴仙で憂さ晴らしするしか無いわね」
「何故に!?」
「そういう気分なのよ、覚悟を決めなさい!」
「ひえ~助けてジン!」
鈴仙は輝夜をかわし、素早くジンの背後に回る。
輝夜はジンを睨みつけながら言う。
「ジン! 鈴仙を差し出しなさい!」
「差し出しないで!」
前に輝夜、後ろに鈴仙と挟まれる形となっていた。因みにてゐは、その様子をニヤニヤと楽しんでいた。
「はあ・・・取り合えず落ち着いけ、音楽祭に参加するんだろ?」
「それはもちろんよ、その為にジンを誘いに来たんだから。それで返事は?」
「俺で良ければ」
その言葉に、輝夜、鈴仙、てゐの三人は笑顔になった。
―――――――――――
その夜の神社では、ジンは渡された楽譜を見ながら部屋で練習をしていた。
その音を聞いた霊夢は、何となくジンの部屋に訪れた。
「何しているのジン?」
「あ、うるさかったか?」
「いや、そう言うわけじゃないけど、何をしているのかなって」
「今度の音楽祭でやる曲の練習をしているんだ」
「ふーん・・・ちょっと引いてみて」
「お安いご用だ」
そう言ってジンは、引き始める。霊夢はそれを静かに聴いていた。
「良い曲ね・・・・・・」
「ああ・・・輝夜が作曲したらしい」
「へ? あの引きこもりの?」
「引きこもりって・・・まるで輝夜がニートみたいじゃないか」
「違うの? あんまり外じゃ見かけないし」
「色々事情あるんじゃないか? あまりそういう事は言わない方が良いぞ」
「まあ、どっちにしても私には関係ないけどね」
霊夢はどうでもよさそうに呟いた。
それからしばらく、ジンの演奏を聴いていたが、おもむろに口を開いた。
「・・・・・・ねえジン、貴方は優勝を目指しているの?」
その言葉に、ジンは演奏を止めて答える。
「出来れば優勝はしたいが、難しいだろうな」
音楽祭には、毎年優勝をしているプリズムリバー三姉妹だけではなく、以前の異変で誕生した楽器の付喪神である堀川雷鼓、九十九弁々、九十九八橋も参加するらしい。
優勝どころか、準優勝すら難しい現状である。
しかしそれでも、ジンは頑張るのをやめない。そういう人間なのだと、霊夢は知っていた。だから―――。
「まあでも、頑張りなさい。それがあんたの取り柄なんだからさ」
彼女なりのエールを彼に送る。
それを受け取ったジンは―――。
「ああ、そのつもりだ」
そう微笑み返した。
―――――――――――
音楽祭当日、人里の広場では様々な音楽が流れていた。
ジン達は控え場で、自分達の出番を待っていた。
「うわぁ・・・皆上手いな・・・」
順番待ちをしている最中、他の参加者の演奏を聴いていた鈴仙はそう呟く。
誰もがこの日の為に練習して来たのが、よくわかる。
どうにも鈴仙は緊張しているようなので、ジンは解そうと声を掛けた。
「他の参加者を気にしても仕方がない。俺達は俺達の演奏をするだけだ。
それに、練習通りにやれば大丈夫だ」
「う、うん・・・そうよね」
ジンの言葉に、鈴仙は落ち着きを取り戻した。
しばらくすると、係りの人から呼ばれる。
「次、永遠亭バントの方」
「来たか。それじゃあ、いつも通りに―――」
「「「「楽しくやろう!」」」」
四人は手を合わせ、大きく掛け声を出した。
一方音楽祭会場の観客席では、博麗神社一行がジンの応援にやって来ていた。
「ジンの出番はまだかな?」
「パンフレットによると、次らしいわ」
「どれどれ――」
霊夢と一緒に来ていたサニー達は、観客全員に配布されたパンフレットを仲良く見ていた。
一方針妙丸は、妖狐の膝の上で介抱されていた。
「大丈夫ですか?」
「うーん・・・音に酔った・・・」
「小さい体ですからね。あまり無茶はしない方が良いですよ」
「少し休めば大丈夫・・・」
そんな強がりを言う彼女に、妖狐はそっと頭を撫でた。
針妙丸を妖狐に任せた霊夢は、隣にいる魔理沙と話をしていた。
「次はジン達か、どんな曲なんだろうか」
「何でも輝夜が作曲したオリジナル曲らしいわよ」
「あの引きこもり姫が? なんか意外だぜ」
「私もそう思うわ。でもこれが思いの外良かったのよね」
「へぇー、それは期待するな」
そんな話をしていると、ジン達がステージに現れる。
司会者が、河童特製マイクで紹介し始める。
《それでは永遠亭バント、竹取飛翔です。どうぞ》
司会者の言葉が終わると、てゐがドラムでリズムを取る。そしてギター、ベース、キーボード、ドラムが一斉に音を奏でる。
「うわ・・・」
「いきなりヒートアップだな・・・持つのかこれ?」
最初から全速力で演奏する四人。霊夢もベースの部分しか聴いていなかったので、これには圧倒された。
そしてそのスピードにつられ、観客達も盛り上がりを見せ始める。
「良いぞー!」
「ヒュー♪ ヒュー♪」
「イエーイ!」
観客達の声援が起きるなか、霊夢はただ見とれていた。
何事も考えずがむしゃらに演奏するジン達の姿に。彼女の目には輝いて見えた。
一方、控え場ではプリズムリバー三姉妹のルナサ、メルラン、リリカがこの演奏を聴いていた。
「へぇー、ジン達もこんな演奏が出来たんだ」
「うん、中々良い音だね」
「聴いていたら、なんかテンション上がって来たよ♪」
一方同じ控え場にいた雷鼓、弁々、八橋も同じ様にジン達の演奏を聴いていた。
「人間にしては中々良い音を出しているじゃない」
「技術はまだまだだけどね」
「でも、凄く楽しそう♪」
結果的にジン達の演奏は、彼女達のモチベーションを上げる事になった。
その後音楽祭は、プリズムラバー三姉妹と雷鼓達の同時優勝なり、残念ながらジン達は上位に食い込むも、優勝とまではいかなかった。
こうして音楽祭は、終わりを告げるのであった。
―――――――――――
音楽祭が終わり、会場だった場所は後片づけをされていた。
そんな様子を、ジンは一人で座って眺めていた。
そこに霊夢がやって来た。
「お疲れさま」
「ん、どうも」
「隣いい?」
「いいぞ」
そう返事をすると、霊夢は静かにジンの隣に座る。
二人はしばらく無言のまま、会場が片づけられていく光景を眺めていた。
「・・・・・・優勝出来なかったわね」
霊夢はおもむろに言った。
ジンは特に気にもせずに、返事をする。
「まあ、こうなるってわかっていたからな」
「悔しく無いの?」
「まあ、少しはな・・・」
それだけ言うと、ジンは黙ってしまう。彼なりに、一番になれなかった事が悔しかったのだろう。
そう思った霊夢は、彼に伝える。
「・・・・・・あのねジン」
「ん?」
「どの参加者よりも、ジンの演奏が一番好きだったから」
「―――――」
ジンは言葉を失った。それは予想外の言葉であり、何よりも嬉しい言葉でもあったからである。
一方霊夢は、自分が恥ずかしい事を言ったのを自覚し、それを誤魔化すように立ち上がる。
「さ、さて! 皆が待っているし、そろそろ行くわよ!」
「あ、おい!」
「今回の打ち上げはあんたが主役なんだからね!」
霊夢はそう言って、走り去った。
ジンはその姿を見て微笑み、その後を歩いて追った。
今回出てきたプリズムリバー三姉妹と輝針城の新規キャラである堀川雷鼓、九十九弁々、九十九八橋の三人は音楽的にキャラが被っていると個人的には思いました。
本当はこの二組が音楽で争う話だったんですが、グダグダ展開になってしまったので没にしました。
けれども、この二組の絡む話を作りたいと思っています。