東方軌跡録   作:1103

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今回はにわか知識が満載です。あまり気にせず読んでください。


仙人の修行

 

「最近、俗気にまみれていると思うんだけど?」

 

博麗神社に訪れたら華仙が最初に言った言葉である。

これには、ジンと霊夢は首を傾げる。

 

「俗気にまみれてるって・・・」

 

「いきなり来て、最初に言う言葉? 一体何処が俗気まみれなのよ?」

 

「ここ最近の行いがよ。温泉や酒、あまつさえ刺繍品で参拝客を集めているなんて・・・神社としてどうなの?」

 

「神社として不味いのか霊夢?」

 

「全然、参拝客が来てんだから良いじゃない」

 

「貴女という人は・・・本当に巫女としての自覚が無いんだから・・・もう一度修行させようかしら?」

 

「げっ! あんな拷問は二度と御免よ!」

 

余程のトラウマになってしまったのか、霊夢はとても嫌そうな顔をしていた。

そんな中、ジンは神妙なおもむきで、何かを考えていた。

 

「ん? どうしたのジン?」

 

「いや・・・修行すれば、仙人の術の一つや二つ使えるようになるのかなって思って」

 

その言葉に、二人は目をパチクリとさせた。

 

「え? あんた、あんな修行を受けるつもりなの?」

 

「修行の内容はともかく、術が使えるようになるのなら、やってみようかなって考えているけど・・・実際はどうなんだ華仙?」

 

「えっと・・・確かに修行すれば簡単な術を使えるかも知れないけど・・・・・・」

 

「知れないけど?」

 

「仙術は誰でも使えるように訳ではないから、保証は出来ないわよ」

 

「うーん・・・そうか・・・・・・」

 

「辞めときなさいよ、習得出来るかどうか分からない術なんて、やるだけ徒労よ」

 

「霊夢! 修行はやることに意義があるのよ! 徒労とはなんです!」

 

「だってそうでしょ、出来ない事をやらせるなんて、徒労以外何物でも無いわ」

 

「そこまで言うなら良いでしょう」

 

「え?」

「へ?」

 

「私が一週間で、ジンを仙術が使えるようにしてみましょう! 竿打!」

 

華仙が名を呼ぶと、大鷲の竿打が現れ、ジンを捕まえてしまう。

 

「うわぁ!?」

 

「ジン!?」

 

「それじゃ霊夢、ジンを連れて行くわ。一週間、楽しみにしておきなさい!」

 

そう言って、竿打の背に飛び乗り、そのまま飛び去って行ってしまった。

 

「ちょっと! ジンを連れて行くなー!!」

 

霊夢の叫びが、空しく境内に響き渡った。

 

―――――――――――

 

ここは妖怪山に点在している華仙の邸。そこの庭で、華仙は頭を抱えていた。

 

(霊夢にああ啖呵を切ってしまったけど・・・一週間で術を覚えさせれるかしら?)

 

仙術や道術の習得には素養が最も重要視されている。素養が無い者に修行を行わせても、何年経っても習得出来ない事もある。

まさに、霊夢のいう通り徒労で終わってしまう恐れがあったのだ。

 

(駄目よ華仙! ここで失敗したら、霊夢が余計に増長してしまう! こうなったらやるしかないのよ!)

 

華仙は何とか自分を奮い立たせる。すると、彼女の様子を見守っていたジンが声を掛けて来た。

 

「それで、何からやる?」

 

「え?」

 

「修行をやるんだろ? 時間も無いし、何から始めれば良い?」

 

「ジン・・・・・・」

 

ジンは半ば強引に連れ去られた事も、強制的に修行をさせられる事も、何一つ文句を言わなかった。それどころか、積極的に協力する姿勢をとってくれた。

 

(本当なら、文句の一つや二つ言ってもおかしくないのに・・・・・・)

 

華仙は、協力してくれるジンに心から感謝した。

 

 

先ず最初に行った事は、道場の清掃からだった。

 

「清掃とは、修行の初歩にして基本。清掃から全ての修行が始まるのよ。

だから、心して取り組むように」

 

「わかった。掃除なら任せろ、得意分野だ」

 

「私は部屋にいるから、終わったら知らせてちょうだい」

 

そう言って華仙は、道場を後にした。

それから歩きながら、今後のスケジュールを考えていた。

 

(仙術、道術には精神統一が必要不可欠・・・今後は座禅を中心とした修行をすれば良いんだけど・・・ここでの得手不得手で結果がはっきりしちゃうのよね・・・・・・)

 

華仙は不安を拭えなかった。

もし、ジンがこういった事に向かなければ、一週間で術の習得はほぼ不可能だろう。仮に出来たとしても、それは生死に関わる程辛い修行をしなければならない。

因みに、以前修行をしていた霊夢は、修行嫌いが災いしていた為、素養があっても不適格であった。

 

(考えても仕方ないわね、取り合えず今日は様子を見てみましょう)

 

そう思い、華仙は自室に入り、スケジュールを書き始めた。

 

 

それから数十分後、清掃が終わったと知らされて、華仙は道場の確認をしに再び訪れた。そして、彼女が見た物は驚くべき物だった。

 

「・・・・・・こ、これ、貴方が一人でやったの?」

 

「ああ、普段からキチンと掃除されていたから、楽だったけどな」

 

「楽って・・・これが?」

 

華仙が見た道場は、埃どころか塵一つ残されていない程に完璧に清掃されていた。

 

(ここまで完璧なんて・・・)

 

「駄目な所があったら言ってくれ、直ぐにやり直すから」

 

「ま、まあ、最初にしては上出来よ。清掃はこれくらいにして、早速修行に入るわ」

 

こうして最初の座禅の修行が始まるのだが、ここでまた華仙は驚く事になる。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

(ま、まったく姿勢が崩れてない・・・完璧な座禅だわ)

 

警策を構えた華仙だったが、その必要性が皆無な程、ジンの座禅は終始崩れなかった。

これを見て華仙は思った。

 

(まさに逸材だわ・・・これなら一週間でいけるかも)

 

不安を抱いていた彼女だったが、既にそれは無く、ジンへの期待が膨らむのであった。

 

―――――――――――

 

それから数日後、修行は順調に進み、修行の内容も段々と厳しい物になって来たが、ジンは弱音を吐かずにこなしていた。

今日も、日課となっている動物達のエサやりをしていた。

 

「お前達、ご飯だぞ」

 

ジンがそう言うと、動物達がわらわらと集まって来て、ジンが用意したエサを食べ始める。。

そんな中、一人の人物が声を掛けて来た。

 

「おや? こんな所にいるなんて珍しいねえ」

 

声の方に振り向くと、そこには死神の小町がいた。

 

「小町? どうしてここに?」

 

「それはこっちの台詞だよ。いつも神社にいるあんたが、こんな所にいるなんてさ」

 

「まあ・・・ちょっと事情があってな」

 

ジンはこれまでの経緯を、小町に話した。

 

「なんだい、とんだとばっちりだね」

 

「まあそうだが、折角だし修行を受ける事にしたよ」

 

「それは良いんだけど、あたいとしちゃ、仙人にはなって欲しくは無いねえ、仕事上として」

 

「安心しろ、仙人になるつもりなんて更々無い。人として生き、人として死ぬつもりだ」

 

「そうかい、それなら安心だね」

 

「ところで、小町はどうしてここに?」

 

「あ、えっと・・・ちょっと様子を見にね・・・・・・」

 

「様子を見にって・・・小町は華仙と知り合いなのか?」

 

「ま、まあね、たまに酒を一緒に飲んだりしているよ」

 

この言葉に、ジンは彼女が何かを隠していると感じたが、それを深く追求する事はしなかった。

 

「それなら上がって行くか? 今なら華仙は邸にいるし」

 

「いや、また今度にしておくよ。修行の邪魔しちゃ悪いし」

 

「そうか、それじゃ送ろうか? ここの正路は複雑だからな」

 

「いや大丈夫、あたいの能力なら道なんて無いような物だがら。それじゃまた」

 

そう言って、小町は去って行った。

その後すぐ、華仙がやって来た。

 

「ジン、誰か来たの?」

 

「ああ、小町がやって来たけど・・・直ぐに帰って行った」

 

「小町が? 一体何しに来たのかしら・・・?」

 

「様子を見に来たって言っていたが」

 

「そう・・・まあ良いわ。それよりも今日の修行を始めるわよ」

 

華仙はそう言って、修行場に向かい、ジンはその後をついて行った。

 

 

道場に訪れたジンと華仙。その中央に水が入った瓶が置かれていた。

 

「今日から、水を酒に変える術の修行に入るわ」

 

「もう術の修行に入るのか?」

 

「本来なら、もっと基本的な修行をするんだけど・・・時間があまり無いから・・・・・・」

 

華仙は申し訳無さそうな表情で言った。

本来なら、座禅や瞑想等の修行を数ヵ月行わなければならないのだが、霊夢との約束の一週間は既に半分過ぎ去ってしまっていた。

 

「ごめんなさいね。もう少し時間があれば、正しい手順の修行を行わせるんだけど・・・・・・」

 

「まあ、言ってしまった以上仕方ないだろ。ともかくやってみるさ」

 

「ありがとうジン・・・・・・それじゃ早速瓶の前に座って」

 

華仙に言われるがまま、ジンは瓶の前に座る。

 

「先ずは瞑想し、自然の気を取り込み、その気を瓶の水に注ぎなさい」

 

「・・・・・・」

 

ジンは瞑想し、意識を集中させる。

それから数十分は経過するが、瓶の水は変化しなかった。

 

「・・・・・・やっぱり駄目ね」

 

「悪い華仙・・・・・・」

 

「貴方が謝る必要は無いわ。それに、仙術というのは一朝一夕で習得出来る物では無いもの」

 

「だが――――」

 

「今日の修行はここまでしましょう。そんな状態では、修行に身に入らないでしょうから」

 

そう言って、華仙は道場を出て行った。

残されたジンは、瓶をただ眺めていた。

 

―――――――――――

 

その夜、華仙は部屋で今後の事に悩んでいた。

 

(流石に無理があったのかしら・・・一番簡単であるあの術でも、習得には数ヵ月―――完全に使いこなすには数年の修行が必要なのに・・・・・・)

 

水を酒に変える術は、仙術の中でも最も習得が容易な物ではあり、熟練者なら高級酒に変える事が出来る。しかし、それにはちゃんとした修行を数ヵ月こなす必要がある。

 

(はあ、やっぱり霊夢の言う通り、徒労に終わるのかしら・・・・・・)

 

そんなネガティブな考えをしている華仙。すると、部屋の戸が開かれた。

 

「華仙、少しいいか?」

 

「え? どうしたの?」

 

「ちょっと見て貰いたいんだ」

 

「一体どうしたの?」

 

「いいから来てくれ」

 

そう言ってジンは、華仙の手を引き、道場に向かった。

 

 

道場に着いた二人。ジンは置かれていた瓶の前に華仙を連れた。

 

「この瓶がどうしたの?」

 

「少し舐めてみてくれ」

 

「? 良いけど・・・・・・」

 

華仙は怪訝そうに、瓶の中にある水を舐める。すると――――。

 

「こ、これは!?」

 

「ああ、かなり薄いけど、酒になっているだろ?」

 

華仙はもう一度確かめるように舐める

かなり薄い味ではあるが、確かに酒になっていた。

 

「これは一体・・・・・・」

 

「あの後ずっとやっていたんだ。そしたら、少しだけだけど、酒の味がしたから、もしかしたらと思って」

 

「え!? ずっとやっていたの!?」

 

「ああ、出来ないなんて、悔しいと思ったから意地で」

 

華仙は呆れながらも、ジンの事を感心した。

 

「もう少しやってみようと思うんだが・・・いいか?」

 

「・・・・・・本当貴方は、何事も熱心なのね」

 

「駄目か?」

 

「良いわよ、私も付き合うから」

 

その後二人は、夜遅くまで修行をするのであった。

 

―――――――――――

 

その更に数日後、一週間の修行を終えたジンは、神社に戻りその成果を披露していた。

境内には霊夢達の他、サニー達や魔理沙、萃香も来ていた。

 

「・・・・・・出来たぞ」

 

「おお! 出来たのか!」

 

「それじゃ早速―――」

 

それぞれ瓶の酒をすくい、それを口にする。しかし、誰もが微妙な顔つきになった。

 

「確かにお酒だけど・・・・・・」

 

「味薄い・・・・・・」

 

「微妙・・・・・・」

 

「かなり薄めた酒ですね・・・・・・」

 

「こんなの酒とは言えないよ」

 

確かに術は成功したのだが、味はとても不評であった。

 

「修行をして、これぐらいしか出来ないの?」

 

「仕方ないじゃない、一週間そこらではこれが限界よ。むしろ、一週間でここまで出来るようになった事が凄いのよ」

 

「でもなあ・・・これじゃ、そこらの安酒を買った方がマシだぜ」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

華仙は反論出来なかった、それほどまで、ジンの酒は美味しくはなかった。

するとジンは―――。

 

「逆に言えば、もっと修行を積めば、美味しい酒になるって事だろ」

 

「って、あんたまだ修行を続けるつもりなの?」

 

「ああ、せっかく出来るようになったんだから、皆に美味しい酒を飲んで欲しいんだ」

 

「よく言いましたジン! それでは早速戻って修行を――――」

 

「ちょっと待ちなさいよ! 一週間という約束でしょ!」

 

「本人がやる気になっているんだから、続行です」

 

「却下よ、ジンには神社の仕事があるんだから」

 

「それは貴女がやれば良いでしょ、人手は足りているのだから、何の問題はない筈よ」

 

「ジンじゃないと駄目なのよ! ともかく、修行は約束通り一週間で終わり!」

 

「なんと身勝手な・・・ジンは貴女の物では無いのよ!」

 

「私がひろったのだから、私の所有物よ! 文句ある!?」

 

「何という・・・人権無視にも甚だしい!」

 

霊夢と華仙は、ジンの事で口論を始めてしまう。

そんな二人の口論に、ジンはオロオロしていた。

 

「お、おい、止めなくて良いのか?」

 

「放っておけ、近づくだけ損だぜ」

 

「そうだね、私達は酒でも飲んでいよう」

 

「良いのかそれで・・・・・・」

 

「良いんだよ。さあ、飲もうか!」

 

萃香達は、霊夢と華仙はそっちのけで酒盛を始めてしまった。

その後、霊夢と華仙は夜遅くまで口論を続けたのであった。

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