そして、正邪自機おめでとう! 彼女が主役になるなんて完全に予想外でした。
やった事は外道ですが、何故か憎めない魅力があると自分は思っています。
冬の寒さは過ぎ去り、春の訪れを知らせる風が幻想郷に吹いていた。
そんな中、その風を嫌う一人の少女がいた。その少女は頭を何故か抑えながら歩いていた。
(もう嫌になるわね・・・頭が飛んじゃうじゃない)
彼女の名は赤蛮寄。人里に隠れ住んでいるろくろ首の妖怪である。
彼女には首は無く、頭と体が固定されていないため、このような強風の日は頭を抑えないといけないのだ。
(あーあ、こういう日はさっさと家に帰るのが一番ね)
そう思った蛮寄は急ぎ足で家に帰ろうとする。しかし、それが災いしてしまった。
「キャア!」
石につまずき転んでしまった。そして不運にも、頭が風で飛ばされてしまう。
「ああ! ちょ、ちょっと待ってーーーー!!」
蛮寄は叫ぶも、風は容赦無く彼女の頭を遠くまで飛ばして行った。
―――――――――――
その頃ジンは、強風の中買い物を終え、神社に帰ろうとしていた。
「風が強い日は嫌だな。早く帰って一休みしよう」
そう呟き、家路につこうとした時、何かが足にぶつかった。
「ん? なんだ?」
不思議に思い、ぶつかった物体を見る。最初はボールかと思ったが、どうやら違うで、それを持ち上げた時、その正体がわかった。
「・・・・・・生首?」
普通なら、驚き声を上げるものだが、ジンは至って冷静であった。
何故かというと、ここは幻想郷で、首だけの妖怪がいてもおかしくないと考えたからである。
「おーい、大丈夫か?」
「んっ・・・・・・ここは―――」
生首は目を覚まし、ジンと目が合う。すると生首は、ジンに対して攻撃を仕掛けた。
「目からビーム!」
「うわぁ!? いきなり何をするんだ!」
「うるさい! 私が気絶している間に、変な事をしようとしてたでしょ!」
「言い掛かりだ! 転がっていたところを拾っただけだ!」
「嘘ね! そんなので騙されないわよ! その手を放しなさいよ変態!」
「・・・別に放しても良いが、こんな強風じゃ飛ばされるぞ」
「・・・・・・あ」
そこで彼女は未だに強い風が吹いている事に気づく。
もしジンが手を放したら、頭だけの自分は簡単に飛ばされてしまうだろう。
「放さないで! お願い!」
「そんなに懇願しなくても、放さないって」
その言葉で安心したのか、頭だけの彼女はホッと一安心していた。
「それで? お前は一体何の妖怪だ?」
ジンがそう聞くと、頭だけの少女は、先程の様子とは売って変わって強気の口調になった。
「相手に素性を尋ねる時は、先ずは自分から明かすのが普通でしょ」
「・・・・・・まあ、別に良いが」
ジンは少女に、自己紹介をした。すると、少女はやや驚いた表情をした。
「え? 貴方って、あの神社に住んでいるの?」
「まあ、色々あってな。霊夢の所に世話になっている」
「ふーん」
「さて、自己紹介したんだから、約束どおり教えてくれ」
「・・・・・・赤蛮寄、ろくろ首の妖怪よ」
「ろくろ首? あの首が伸びる妖怪の?」
「そう。因みにろくろ首には二種類あって、首が伸びるタイプと首を飛ばすタイプ。私は後者よ」
「へー、それは知らなかったな。てっきり、首を伸ばす妖怪だと思っていた」
「飛ばす方はマイナーだから、あまり知られていないと思う。
それでね、お願いがあるんだけど―――」
蛮寄は言いづらそうに、ジンにあるお願いを口にした。
「悪いんだけど、私を体がある場所まで連れて行って欲しいの」
「自分で動けないのか?」
「この状態だと、体の方は殆ど動けないのよ。それにこの強風じゃ、頭だけだと簡単に飛ばされるって、貴方言ってたでしょ」
「それもそうだな、わかった連れて行ってやる」
こうしてジンは、蛮奇の頭を持って、彼女の体がある場所へと向かった。
到着した二人であったが、ある筈の体がその場所になかった。
「あれ? おかしいな? 確かにこの場所で転んだ筈なんだけど・・・・・・」
「ああ、確かにここにあったみたいだ」
「どういう事よ?」
「どうやら、死体と間違われて持って行かれたらしい」
「ええ!? 一体何処に!?」
「地底にある地霊殿だ。彼女はそこに住んでいるからな」
「彼女?」
「火焔猫燐。通称お燐で、地底の怨霊を管理している火車の妖怪だ」
「何でそんな事がわかるのよ?」
「俺の能力だ。過去の動きから未来へ動きまで視れるから、ここで何があったのか大体分かる」
「それじゃ、急いでそのお燐を追いかけましょ」
「それは得策じゃない、もうすぐ日が落ちる。明日にした方が良い」
「なら、地底の入口まで連れて行って、後は私一人で――――」
「別に良いが・・・お前は強い妖怪なのか?」
「・・・・・・そんなに強くない」
「だったら駄目だ。あそこは荒くれ者もいるから、一人で行かせる訳にはいかない。今日は神社に泊まっていけ」
「あの巫女が泊まらせてくれるの?」
「俺が話をつけるし、それにああ見えて霊夢は優しいからな」
「優しいのかしら・・・?」
こうして蛮奇は、ジンに連れられて、博麗神社に行くことになった。
―――――――――――
博麗神社に到着したジンは、蛮奇を抱えてそのまま玄関に入った。
「ただいまー」
「あ、おかえりジ―――」
出迎えてくれた針妙丸は、生首を抱えているジンの姿を見て固まる。
「ん? どうした?」
「おかえりなさ―――」
続いて現れた妖狐も、生首を抱えているジンの姿を見て固まる。一方ジンは、何故二人が固まっているのか理解していなかった。
「一体どうしたんだ二人とも?」
「うっ」
「う?」
「うわあああん! ジンが人殺したーー!」
針妙丸は泣きながら、走って行ってしまった。これには流石のジンも驚いた。
「待て! 人殺しって何だよ!?」
「ジンさん! 今からでも遅くありません! 自首を―――いえ! これを期にして、二人で逃げましょう!」
「はあ? 何を言っているんだ? 頼むから落ち着いてくれ!」
何が何だか分からないジンに、蛮奇は二人が何を勘違いしているのかを伝えた。
「あんた鈍いわね。二人とも、貴方が人を殺めたと思っているのよ」
「俺が? どうして?」
「生首を抱えて帰って来たら、誰だってそう思うでしょ」
「生首―――ああ、お前の事か」
ジンはようやく理解して、蛮奇を離す。すると彼女は、自力で宙に浮かんだ。
その光景を見た妖狐は、驚きの声を上げた。
「な、生首が浮かんだーーー!?」
「紹介する。ろくろ首の赤蛮―――妖狐?」
すると妖狐は、立ったまま気絶をしてしまった。そこに霊夢がやって来た。
「針妙丸が泣きながら来たけど、何があったの?」
「ま、まあ、色々と誤解があってな。取り合えず訳を話そう」
ジンは、これまでの経緯を霊夢に話した。
「なるほど、それでそこのろくろ首を連れて来た訳ね」
そう言って、霊夢はジンの後ろに隠れている蛮奇を見る。
「ああ、何とか一晩泊めてくれないか、頼むよ」
ジンがそう聞くと、霊夢はため息を吐きながら答えた。
「一晩だけよ」
「ああ、それだけで十分だ。ありがとう霊夢」
「最近どうも、あんたの御人好しが移ったみたいね」
そう自嘲気味に笑いながら、霊夢はジンの買い物袋を受け取り、台所に向かった。
それを確認すると、蛮奇はひょっこり、ジンの後ろから出てきた。
「な、大丈夫だったろ」
「ふーん、意外だな。博麗の巫女って、暴れているのが印象だったんだけど」
「誤解されがちだが、霊夢は誰でも優しい。たまに理不尽だけどな」
「逆じゃないの? いつも理不尽で、たまに優しいじゃない?」
「それは・・・やや否定できないな」
「まあ、それよりも、そこの狐はどうするの?」
蛮奇の視線には、立ったまま気絶をしている妖狐がいた。
「しょうがない、運んでやるか」
ジンは妖狐を抱きかかえ、家の中へと入って行った。
その日の晩御飯は、蛮奇を交えて食べる事になったのだが、彼女は羞恥心で一杯であった。
「くっ、屈辱だわ・・・・・・」
「ん? 一体何が?」
「この状況よ!」
彼女は体が無い為、食事をする際に誰かに食べさせて貰うしか無かった。その事に、彼女は目一杯の羞恥心を感じていた。
「仕方ないだろう。そうでもしなきゃ、食べれないだから」
「それはそうだけど・・・・・・」
「はい蛮奇、あーんして」
「むっ、あ、あーん・・・」
針妙丸に差し出されたおかずを、恥ずかしがりながら食べる蛮奇。それを見ていた霊夢と妖狐はクスクスと笑っていた。
「あーもう! 他人事だと思って!」
「別に良いじゃない、なかなか微笑ましいわよ」
「そうですね、なんか和みます」
「くぅ~今に覚えてろよ~」
蛮奇は悔しそう言った。
こうして、その日の晩御飯は、いつも以上にのどかな空気が流れたのであった。
―――――――――――
翌日、ジンと蛮奇は持ち去られた体を取り戻す為、旧都に続く道を歩いていた。
「それにしても、貴方って鬼だったの?」
道中、蛮奇はそう訪ねた。
現在ジンは鬼人の姿をしているのである。
「まあ・・・何というか、俺の先祖に鬼がいてな、ある時に鬼の酒を口にして、それ以降酒を飲むと鬼になる体質になったんだ」
「ふーん、先祖返りってことね。珍しい」
「旧都に行くなら、こっちの方が良いからな。出来れば霊夢にも来て欲しかったんだが・・・」
霊夢は現在、退治依頼を受けている為、この場にはいなかった。
「ともかく、旧都についたら俺の側から離れないように、面倒事に巻き込まれるからな」
「わかっているわよ」
「おっ、見えて来た。彼処が旧都だ」
ジンと蛮奇の視線の先には、旧都の明かりがあった。
二人は、その明かりに向かって歩き出す。
旧都はいつも通りの賑わいを見せていた。
三回目であるジンは、この賑わいに慣れていたが、初めての蛮奇は戸惑うばかりである。
「なんかクラクラするわね・・・・・・」
「大丈夫か? 辛いなら言えよ」
「余計な御世話よ、私は全然平気。ちょっとこういう賑わう場所に慣れていないだけだから」
「そうなのか?」
「そうなの。お祭りとか、騒がしいのは好きじゃないし、一人でいるのが一番気が楽なの」
「・・・もしかして、お前ぼっちか?」
ジンの一言に、蛮奇は石のように固まってしまった。
「あっ、図星か」
「ち、違うわよ! 私にだって一人や二人、友達が・・・・・・」
蛮奇の声はだんだんと小さくなっていった。
流石に可哀想と思い、話題を変える事にした。
「ま、まあ、祭りもそんな悪いものじゃ無いぞ。試しに一回ぐらい参加してみないか? 何なら、帰りに旧都の店にでも寄るか?」
「別にいい。体を取り戻したら、さっさと帰るから」
素っ気ない態度で返事をする蛮奇。ジンは、どうしたものかと考えながら、お燐がいる地霊殿へと向かう。
―――――――――――
地霊殿の客室に招かれたジンと蛮奇は、地霊殿の主であるさとりと面会していた。
「なるほど、お燐が拾った体を取り戻しに来たのね」
「何でわかったの!? まだ何も言っていないのに!?」
「さとりは相手の心を読む事が出来る。だから大体の事情は既に理解しているんだ」
「便利でもありますが、不便でもあるんですよ」
「へ、へ~・・・・・・」
蛮奇は不安を抱いていた。
目の前にいる少女は自分の考えを読んでいる。その気になれば、この場で暴露する事も出来るだろうと。
「安心して下さい。別に貴女の考えを暴露するつもりはありませんから」
「うっ・・・・・・」
「蛮奇、そんなに恐がる必要は無いぞ。さとりは良識のある妖怪だからな」
「そんな事言ったって・・・・・・」
「無理しなくていいですよ。慣れていますから」
そう言って、さとりは優雅に紅茶を飲んだ。
蛮奇はとても居心地悪く感じ、さっさと用件を済ませようとした。
「あ、あの、私の体は何処に?」
「恐らくお燐の部屋に飾られていると思います。あの子は気に入った死体を部屋に飾る趣味がありますから」
「部屋ね!」
そう言って、蛮奇は部屋を出て行こうとするが、頭だけではドアを開けれない事に気がつく。
「ちょっとジン! ドアを開けてよ!」
「そんなに慌てる必要は無いだろ。出された羊羮ぐらい食べてからにしよう」
「貴方は食べれるでしょうけど! 私は食べれ無いのよ!」
「なんだ? 羊羮嫌いなのか?」
「貴方・・・もしかしてわざと言ってない?」
「いえ、本気で言っているようですよ」
「尚更悪い!」
「??」
「ジン、彼女は今体が無いから、一人じゃ食べれ無いんですよ」
「あ、そう言えば・・・悪い、配慮が足りなかった」
「分かれば良いのよ・・・って、その羊羮は何?」
「食べさせてやるよ。ほら、口を開け―――」
「目からビーム!!」
ジンのその言葉に蛮奇はキレ、ジンに情け容赦なく弾幕を浴びせる。
その様子をさとりは、呆れながら見ていた。
―――――――――――
その後、さとりの言いつけもあってか、お燐は、とても名残惜しいようだったが、主であるさとりには逆らえず、渋々蛮奇の体を返してくれたのである。
その帰り、蛮奇は上機嫌で歩いていた。
「やっぱり体があるのは良いわ♪」
「上機嫌だな」
「それはもちろんよ。今まで窮屈だったんだから」
そんな風に歩いていると、一人の女性が声を掛けて来た。
「おや、ジンじゃないか。いつ旧都に来ていたんだい?」
「勇義か、ちょっと用事で地霊殿に行っていたんだ」
「地霊殿に? そりゃまた珍しい。ところで、そっちの妖怪は連れかい?」
そう言って、勇義は蛮奇の方に目をやる。
勇義の迫力に圧されたのか、蛮奇はジンの後ろに隠れてしまった。
「うーんまあ、そんなものだ」
「ふーん・・・あ、そうだ、今暇かい?」
「用事は終わったから、これから帰るところだ」
「それならちょうど良い。これから宴会があるから、ちょいと付き合いなよ」
「いや、流石に帰らないと霊夢に怒れ―――」
「細かいことは気にしない。そっちのあんたも、一緒に来な」
「ええ!? 私も!?」
「お、おい勇義!」
ジンと蛮奇は、勇義に有無言わさず連れて行かれてしまうのであった。
―――――――――――
「んっ・・・・・・」
蛮奇が目を覚ますと、そこは旅館の一室であった。
「えっと・・・確か―――」
蛮奇はどうして自分がここにいるのかを思い出そうとする。
勇義に連れられた後、流されるままに宴会に参加した。最初は乗り気ではなかったが、徐々に酒が回り、最後は自分の能力を使った隠し芸までも披露した事を思い出す。
(我ながら、馬鹿な事をしたな・・・・・・)
そんな事を思いながら起き上がると、隣に誰かがいることに気づく。
「ん?」
「スー・・・・・・スー・・・・・・」
「―――――」
静かな寝息を立てて寝ていたのはジンであった。その事実に、蛮奇の思考は完全に停止してしまった。
しばらくすると、ジンが目を覚ましまた。
「ん・・・・・・あれ? 蛮奇?」
まだ寝惚けているのか、ハッキリしない口調で尋ねた。蛮奇は寝惚けているジンに対して――――。
「目からビーム!」
躊躇なく弾幕を浴びせるのであった。
朝食を取りに食堂に訪れた二人、その間も蛮奇は今朝の出来事に関して怒っていた。
「機嫌直して欲しい、あれは事故なんだ」
「女の隣で寝て、事故済ますわけ?」
「その・・・何もなかった訳なんだし・・・・・・」
「良くないわよ! あんたね、朝起きたら男が隣に寝ていたなんて、恐怖以外何ものでも無いのよ!」
「わ、悪い・・・・・・」
ジンはただ謝るしかなかった。
そこに勇義がやって来た。
「朝から元気だねぇ」
「勇義か、おはよう」
「・・・・・・おはようございます」
「おや、昨日はあんなに楽しんだのに、今日は御機嫌斜めだねぇ」
「楽しんでなんかいないわよ!」
「そうかい? 私は楽しそうに見えたけど」
「全然! そもそも、こいつとは何もなかったのよ!」
「ん? 何を言っているんだい? 私は昨日の宴会の事を言っているんだよ」
「あ、うっ・・・・・・」
蛮奇は墓穴を掘ったと後悔した。すると勇義は、おかしな方へと勘違いをしてしまう。
「ははん、つまりジンが何もしなかったから不機嫌なのか」
「ち、違うわよ!」
「良いって良いって、ごまかさなくって」
「だから違うって! あんたも言ってやって―――どうしたの?」
ジンはまるで世界が終わるかのような絶望的な表情で呟いた。
「・・・・・・霊夢に何の連絡もいれていない」
勇義と蛮奇はきょとんとしていたが、ジンにとっては最大の窮地であった。
「連絡無しで、しかも朝帰り・・・夢想封印で済まないぞこれ・・・・・・」
「えーと・・・御愁傷様?」
「まあなんだ、嫌な事は酒でも飲んで忘れるものだよ。
飲むかい?」
「・・・・・・飲もう」
ジンは勇義に差し出された酒を受け取り、それを一気に飲んだ。
「おお! 良い飲みっぶりだねぇ! もう一杯!」
「ち、ちょっと、朝から飲んで大丈夫なの?」
「らいしょうふ、らいしょうふ。ほれくあいのら」
「大丈夫じゃないわよ。既に呂律回ってないし・・・・・・」
「ジンは酔いやすいけど、酔った後が凄いんだよ。ほら」
そう言った勇義が指したのは、ジンが飲み干した酒瓶の山であった。
「早!? もうそんなに飲んだの!」
「流石は萃香と飲み比べしているだけはあるねぇ」
「うい~、もっと酒を持ってこ~い」
その後ジンは、旅館の酒が無くなるまで、勇義と飲み比べをしてしまうのであった。
―――――――――――
夕暮れ時、蛮奇は酔い潰れているジンを支えながら博麗神社の階段を登っていた。
「ほら、しっかりしなさいよ」
「うーん・・・・・・」
「まったく、酒が入ると駄目になるわね貴方」
「だみじゃなう」
「はいはい、もうすぐ着くわよ」
そう言って、二人は階段を登りきる。すると境内に霊夢と妖狐が立っていた。
「おお~い、ただい――――」
ジンが呑気に言おうとしていた時に、空気が凍る。
霊夢と妖狐の二人の背に、阿修羅の幻影が立っていた。
「随分と楽しんで来たみたいねジン?」
「そうですね霊夢さん。
朝帰りならぬ夕方帰り。しかも、何の連絡も無しに」
「えっと・・・それはその・・・・・・」
二人の威圧に、流石のジンも酔いは完全に醒めた。
それでもなお、二人の怒りは収まらなかった。
「それじゃ、私は帰るわ。後の事は好きにして」
「ちょ、そんな薄情な――――」
「これは貴方の問題でしょ。頑張って解決しなさいよ」
ジンは蛮奇に助けを求めようとしたが、蛮奇はさっさとその場を立ち去ってしまった。
そして、霊夢と妖狐がジンを睨み付ける。
「覚悟はいいジン?」
「覚悟はいいですかジンさん?」
「すっ、すみませんでしたーーーー!!」
ジンの叫びと共に、境内は大爆発を起こすのであった。
―――――――――――
それから翌日、蛮奇は再び博麗神社に訪れた。
境内には、相変わらず掃除をしているジンの姿があった。
「貴方無事だったの」
「そう見えるのか?」
ジンの体には、あちらこちらと包帯が巻かれていた。どうやら、昨日の折檻の傷だろうと容易に想像できた。
「今日は何しに来たんだ? 参拝か?」
「違うわよ。今日は御礼をしに来たの、ほら」
そう言って、蛮奇は持って来たカステラをジンに手渡した。
「これって・・・人気のあるカステラじゃないか」
「朝から並んで買って来たの。皆で食べてね」
「ああ、ありがとう」
「それじゃ、私はこれで」
そう言って、蛮奇は帰ろうとするが、ジンはそれを呼び止めた。
「ちょっと待てよ」
「なによ?」
「折角来たんだ、茶でも飲んで来な」
「何で私が―――」
「遊びに来た友人をそのまま帰すのは失礼だろ」
「・・・・・・まあ、そこまで言うなら、付き合ってあげるわ」
「それは良かった。じゃあ案内する」
ジンはそのまま蛮奇を神社に招き入れた。
たまにはこんな日も良いと、蛮奇は密かに思った。