東方軌跡録   作:1103

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今回は、漫画を読んで思いついた話です。


冥界に行こう

幻想郷は今 夏真っ只中である。

外とは違い、文明が発展してないここでは、クーラーなどの便利な物は無い。

そこでジンは、水を撒いたり、風鈴をつけたりと、どうにかしようとしていた。

 

「ふう・・・・・暑いな」

 

「そうね・・・・・」

 

一方霊夢は、うちわを扇ぎ、水の入った桶に足を浸かっていた。

それでも暑いのは変わらなかった。

 

「こう思うと、文明のありがたさが身に染みる。

クーラーを発明した人間は偉大だ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「霊夢? 大丈夫か?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・も」

 

「も?」

 

「もう我慢できないーーー!!!」

 

「うわ!? 何だよいきなり!」

 

「何で夏はこんなに暑いのよ!

冬なら火があれば凌げるけど、暑さはどうやっても防げないじゃない!」

 

「気持ちはわかるが落ち着け、苛立っても何の解決も――――」

 

「行くわよ」

 

「行くって・・・・・何処に?」

 

「冥界よ! あそこの幽霊を捕まえるの! そうすれば、この暑さを解消出来るわ!」

 

「待て待て待て! 自分の都合で幽霊を捕まえるな!

逆の立場だったら嫌だろ?」

 

「そんな事は重要じゃない! 重要なのは、この暑さを解消する事だけよ!」

 

「頭を冷やせ霊夢! 巫女として、それはどうかと思うぞ!」

 

「ええい! あんたは私の言うことを聞いていれば良いのよ!

ほら! さっさと行くわよ!」

 

「おい! 待てよ霊夢!」

 

こうして二人は、冷房代わりの幽霊を捕まえるために冥界に向かうのであった。

 

―――――――――――

 

ここは冥界。本来死者しか入れない場所なのだが、春雪異変と呼ばれた事件以降、冥界と現世の境界が曖昧となり、今では地方の一つとされている。

 

「なあ霊夢、本当にやるのか?」

 

「当たり前じゃない。

ここで帰っても、待っているのは熱帯地獄よ」

 

「それはそうなんだが・・・・・幽霊を無理矢理ってのがな・・・・・」

 

「まったく。あんたは相手の事を考え過ぎなのよ。

もう少し、自分に素直になりなさい」

 

「素直って・・・・・」

 

「涼しくなりたいでしょ?」

 

「・・・・・・・・・・ああ」

 

「なら決まり。さっさと幽霊を捕まえて帰るわよ」

 

「うーん・・・・・ん? あれはサニー達か?」

 

「あら? 妖精がこんな所にいるなんて珍しいわね」

 

「一体何をしているんだ?」

 

「そんなの聞いてみれば一発よ。

貴女達! こんな所でなにしているの!」

 

「「「わっ!?」」」

 

「そんな威圧的に言わんでも・・・・・・・・」

 

「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 二度としませんから命だけは・・・・・・・・」

 

「別に取って食わないわよ」

 

「あれ? その声霊夢さん?」

 

「あっ、ジンもいる。

二人も幽霊を捕まえに来たの?」

 

「え? おまえ達も幽霊を捕まえるにここに来たのか?」

 

「うん、夏には幽霊は必需品だからね」

 

「ほらみなさい。皆やっているんだから、問題ないでしょ?」

 

「いや、そういう問題では――――」

 

「何か言った?」

 

「・・・・・いえ、何でも無いです」

 

「よろしい。

それよりも、私達は御札があるから良いけど、あんた達はどうやって幽霊を捕まえるつもりなの?

 

「ふっふっふ、私達には秘密兵器があるのよ」

 

「「秘密兵器?」」

 

「じゃじーん! これが秘密兵器!」

 

「これは・・・・・卒塔婆?」

 

「なるほど、妖精にしては考えたわね」

 

「卒塔婆なんかで、幽霊を捕まえれるのか?」

 

「私も最初はそう思ったんだけど、結構簡単に釣れたのよね」

 

「幽霊ってのは、そういった物に惹かれやすいのよ。

墓石とかにも集まっていることが多いのよ」

 

「そうなのか・・・・・それなら札で捕まえるより、卒塔婆で釣った方が良くないか?」

 

「あら? 幽霊を捕まえるのは反対しないの?」

 

「無理矢理連れて行くのに抵抗があるだけだ。

それに、暑いより涼しい方が良いしな」

 

「はいはい、あんたがそう言うのなら、今回は札は使わないでおきましょ」

 

「ありがとう霊夢」

 

「お礼は良いから、さっさと幽霊を捕ましょ」

 

こうして、冥界でのゴーストハントが始まるのであった。

 

 

 

「案外簡単に捕まえられたわね」

 

「捕まえると言っても、向こうから勝手に来るからな、正直楽だ」

 

「幽霊を捕まえた事だし、そろそろ帰りましょ」

 

「そうだな。

ん? ところでサニー達は?」

 

「あれ? いつの間に・・・・・まあ、その辺何処かで遊んでいるんでしょ、放っておけば?」

 

「そんな訳にはいかないだろ。探してくる」

 

「ちょっとジン!

まったく、お人好しなんだから!」

 

ジンはサニー達を探しに行き、その後を追う霊夢であった。

サニーを探しに歩いていると―――。

 

「「「キャアーー!!!」」」

 

「あれは・・・・・サニー達の声!」

 

「あっちの方からだわ!」

 

二人は急いで、悲鳴が聞こえた方に走って行った。

 

―――――――――――

 

「そこまでです幽霊泥棒!

我が楼観剣の錆となれ!」

 

「「「あわわ・・・・・」」」

 

「サニー! ルナ! スター! 大丈夫か!」

 

「あっ! ジンだ!」

「お助け~~!」

「うわ~ん!」

 

サニー達はジンの姿を見つけると、直ぐ様彼の後ろに隠れた。

そしてジンは、長刀を構える少女と対峙する。

 

「ジンさん! そこを退いて下さい!」

 

「落ち着け妖夢! 一先ず、その物騒なものを下げろ!」

 

長刀を構える少女の名は、魂魄妖夢。

冥界にある白玉楼の剣術指南兼家政婦である。

 

「いくらジンさんと言えど、邪魔するのであれば切り捨てます!」

 

「何でもかんでも切ろうとするな! 落ち着いて話を――――」

 

「問答無用!」

 

妖夢は情け容赦なくジンに切りかかった。

当然のようにジンは能力を使い、対処しようとしたが―――――。

 

「ヤバ―――」

 

地面の石に置かれてあった卒塔婆を踏みつけてしまい、バランスを崩してしまった。

これではいくら攻撃を読めても、かわせない。

妖夢の楼観剣がジンを切り裂こうとしたその時―――。

 

「“夢符 封魔神”!」

 

「むぎゅん!」

 

「霊夢!」

 

「まったく・・・・・先に行き過ぎよジン。

少しでも遅かったら、あんた死んでたわよ?」

 

「いや・・・・・面目ない」

 

後から来た霊夢のスペルカードによって、妖夢は気絶してしまっていた。

 

「まあ良いわ。

それよりも、そこの辻斬りが起きる前に、さっさと退散しましょ」

 

「・・・・・」

 

「ジン?」

 

「悪いけど霊夢。俺は妖夢を介抱してから帰る」

 

「・・・・・・・・あんた本気なの?」

 

「そうだよ! 起きたら、また襲い掛かって来るわよ!」

 

「だからって、このまま放置ってのは出来ない。

それに、ちゃんと話せば妖夢だってわかってくれる筈・・・・・多分だが」

 

「・・・・・はあ、あんたって、幻想郷にいないタイプよね。

他の奴等だって、そこまでしないのに」

 

「霊夢・・・・・」

 

「好きにしなさい。ただし、夕飯前に帰って来ること。

帰って来なかったら、夢想封印を食らわすわよ」

 

「ああ、わかった」

 

「それじゃあんた達、捕まえた幽霊を持って帰るわよ」

 

「で、でも・・・・・」

 

「ジンなら大丈夫。

ほら、行った行った」

 

こうして霊夢とサニー達は、捕まえた幽霊を連れて、冥界を後にしたのであった。

 

 

それからしばらく時間が経つと、気絶した妖夢が起きたのであった。

 

「ん・・・・・」

 

「目が覚めたか妖夢?」

 

「あれ・・・・・ジンさん?

って、うわわわ!?」

 

妖夢はジンが膝枕してくれているのに気づき、慌てて起き上がる。

 

「ななな、何をしているんですか!?」

 

「いや、地面は固そうだと思ってな。他に変わりがなかったから、俺の膝を使った」

 

「そんな事を聞いているんじゃなくて――――」

 

「何処か痛むか?」

 

「え? 特に大丈夫です。

こう見えても鍛えていますから」

 

「そうか、それなら大丈夫か」

 

「はい!・・・・・あ」

 

妖夢は何かを思い出しかのように辺りを見回し、ある事をジンに問いただした。

「ジンさん! 幽霊泥棒は!?」

 

「サニー達なら、霊夢と一緒に帰っていった」

 

「くっ・・・・・やはり巫女が裏から手を引いていたか・・・・・」

 

「・・・・・なあ妖夢、少しだけ話を聞いてくれないか?

確かに、幽霊を連れて行ったのは悪かった。けど、夏の間だけでも、幽霊を貸してはくれないか?」

 

「何を言っているんですか! 私は冥界の管理者―――西行寺幽々子の従者!

主の仕事を手伝うのも従者の勤め!」

 

「もちろん、妖夢の立場もわかっている。

だけど、夏の暑さはお前が思っている程に大変なんだ。

幻想郷ではどうだか知らないが、外では毎年死者が出ている」

 

「え・・・・・」

 

「だから、何かを対策を練らないといけない。

その対策の一つとして、幽霊を貸して欲しい。頼む」

 

「い、いくら頭を下げても、そんな要求受け入れ―――」

 

「あら、別に良いじゃないかしら」

 

「ゆ、幽々子様!? どうしてここに!?」

 

突然現れた女性に、妖夢は声を上げて驚いた。

彼女は冥界の管理者、西行寺幽々子である。

 

「貴女の帰りが遅いから、様子を見に来たのよ」

 

「も、申し訳ありません・・・・・。

それで幽々子様、先程の言葉は・・・・・?」

 

「言葉通りよ。彼に幽霊を貸して上げなさい」

 

「え? 良いんですか!?」

 

「あんなに熱心に頼んでいるのよ。無下にしたら可哀想よ。それに―――」

 

幽々子はジンを一瞥してから、妖夢にこう言った。

 

「気絶していた貴女を介抱してくれたのよ?

恩を返すべきだと思うけど?」

 

「うっ・・・・・それは―――ってずっと見ていたのですか!?」

 

「貴女が起きる少し前辺りから。

微笑ましいかったから、少し様子を見ていたのよ」

 

「あうう・・・・・」

 

「幽々子、あんまり妖夢を苛めるな」

 

「だって、妖夢って可愛いだもの。

貴方もそう思わない?」

 

「何を言っているんですか幽々子様!!」

 

「あら、殿方にどう思われているか気にならないの?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「ほら、気になるでしょ?

そんな訳だからジン。ちゃんと答えなさい」

 

幽々子様はやや威圧的に言って来た。

釘を刺されてしまった事を悟ったジンは、素直な感想を言った。

 

「そうだな、確かに妖夢は可愛い部類に入ると思うな。

料理も掃除も出来て、礼儀正しいし」

 

「うんうん♪」

 

「あうう」

 

「だが、欠点もある」

 

「うんう・・・・・ん?」

 

「え?」

 

「何でもかんでも斬って済まそうとする癖を直せ。

正直物騒でありゃしない」

 

「で、ですが、お祖父様は斬れば分かると・・・・・」

 

「お前のジイさんがどんなの人物かは知らないが、お前が間違って解釈していると思うぞ」

 

「え? そうなんでしょうか・・・・・?」

 

「少なくとも、俺はそう思う。

むやみやたらに斬りかかるんじゃなく、少しは考える事をした方が良い」

 

「はい・・・・・気を付けます」

 

「ふふふ・・・・・」

 

「ん? どうしたんだ幽々子、何かおかしな事を言ったか俺?」

 

「いいえ。ただ、妖夢が説教されるところを久々に見たなって、つい懐かしくなって」

 

「ん? もしかして、妖夢はジイさんにいつも説教されていたのか?」

 

「主に、剣術に関してね」

 

「幽々子様! 余計な事は言わないで下さい!」

 

「あら、別に良いじゃない。減るもんじゃないんだし」

 

「良くありません! これ以上言うのであれば、晩御飯抜きですよ!」

 

「ええ~!? それは勘弁して妖夢~!」

 

「なら、これ以上余計な事は言わないで下さい」

 

「うう~ジン~妖夢が苛める~」

 

「いや、自業自得だろ」

 

「うわ~ん、二人ともひど~い」

 

そう言って幽々子は泣きながら(嘘泣き)、何処かへ飛んで行ってしまった。

 

「・・・・・お前も大変なんだな」

 

「まあ・・・・・いつもの事ですから。それよりも、幽霊を大切に扱って下さいね」

 

「良いのか?」

 

「正直、幽霊を冷房代わりにしないで欲しいですが、貴方には誠意を感じましたから。

それと、介抱してくれたお礼です」

 

「ありがとうな妖夢」

 

「いいえ。

それよりも、ちゃんと返して下さいよ」

 

「ああ、約束する」

 

こうして、幽霊を借りる許可を得たジンは、冥界を後にするのであった。

―――――――――――

 

博麗神社に帰ったジンを迎えたのは、涼しい居間と暖かい晩御飯であった。

サニー、ルナ、スターの三人も同伴で、いつもより賑やかであった。

 

「美味しい~♪」

 

「霊夢さんって、料理も作れたんですね」

 

「当たり前よ。伊達に何年も一人暮らししていれば、普通に上達するわよ。

まあ、いくらやっても駄目な奴はいるけどね」

 

そう言って、霊夢は何故かジンをジト目で睨んでいた。

視線に気づいたのか、ジンはそっと目をそらす。

 

「それよりも、よく無事だったわねジン」

 

「本当にねー、私はてっきり斬られちゃったかと思たわ」

 

「どうやって逃げたの?」

 

「逃げたも何も、少し話をしただけだ」

 

「へ? それだけ?」

 

「それだけだ。

あと、ついでに幽霊を借りる許可も貰って来た」

 

「それじゃ、あそこの幽霊を釣り放題ね♪」

 

「言っておくが、あんまり調子乗ると、本当に斬られるぞ。

何事も程々にだな―――」

 

「おかず貰い♪」

 

「おいサニー! それは俺のおかずだぞ!」

 

「う~ん♪ このおかず美味しい♪」

 

「スター! お前もか!」

 

「ちょっと二人とも、食事くらい静かにしなさいよね」

 

「やれやれ、今夜は騒がしそうになるわね」

 

こうして、博麗神社は賑やかに、夏の一日を終えるのであった。




三月精によると、幽霊の温度は低いらしいです。
きっと、クーラーが無い幻想郷では夏の必需品なんだと思います。
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