東方軌跡録   作:1103

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博麗神社の七不思議

七不思議、それは日本人なら誰でも知っている言葉である。

一般的な物から怪談的な物、果てには世界の七不思議と幅広い言葉である。

そんな七不思議だが、実は博麗神社にもあるのであった。

 

一つ、花見の街道。

博麗神社で花見をする時、何故か道が遠く感じる時がある。

 

二つ、夏の日の氷柱。

夏なのに、何故か氷柱が生える日がある。

 

三つ、博麗神社の猫。

時折、博麗の巫女が可愛がっている猫がいるのだが、巫女が可愛がっている時以外姿を見せない。

 

四つ、謎の香り。

屋内で時折謎の香りがする時がある。

 

五つ、太らない博麗の巫女。

代々博麗の巫女は、何故か太らない。

 

六つ、博麗神社の神。

どんな神様が祭っているのか、誰も知らない。記録すら載っておらず、一説には元々いないとまで言われている。

 

そして最後の不思議は、とても摩訶不思議な現象であった。

 

―――――――――――

 

博麗神社の母屋にある神棚、そこにサニー、ルナ、スター、針妙丸の四人が見張っていた。

 

「スター、誰か近づいて来る?」

 

「ううん、誰も近づいて来る気配は無いわ」

 

「針妙丸は右を、ルナは左を見張って」

 

「わかった」

 

「う、うん・・・」

 

二人はサニーの指示に従い、廊下をそれぞれ見張りだした。

 

「さあ! 今日こそ捕まえてやるわ!」

 

そう言ってサニーは神棚をじっと睨み付けた。

 

 

それから十数分後、異変は起きた。

何もなかった筈の神棚に、一瓶の酒が突如現れたのである。

 

「!? スター!」

 

「え? 誰も近づいて来てないわよ」

 

「廊下の二人は!?」

 

「一瞬たりとも目を離すしてないよ」

 

「私もよ」

 

「あー! また逃げられた!」

 

「何が逃げられたんだ?」

 

不意に声を掛けられ振り向くと、そこに不思議そうな顔をしていたジンの姿があった。

 

「ジン? ちょうど良かった。誰か不振な奴を見掛けなかった?」

 

「不振な奴? いいや」

 

「そう・・・・・・」

 

「一体何をしているんだ?」

 

ジンがそう聞くと、針妙丸が説明を始めてくれた。

 

「私達、博麗神社の七不思議を解明しているんだよ」

 

「七不思議?」

 

「そう、この博麗神社には不思議な七不思議があるのよ」

 

そう言って、四人は博麗神社の七不思議について話始めた。

 

「へ~、それは知らなかったな」

 

「因みに、一と二は私達の悪戯が原因だけどね♪」

 

「こらスター! バラさないの!」

 

「大丈夫よ、霊夢さんならともかく、ジンならこれぐらいの事で告げ口しないわよ。ね♪」

 

「はは、度を過ぎた悪戯以外ならな」

 

「ほら♪」

 

「なら、霊夢さんのお気に入りの湯呑みを割った事も?」

 

「え?」

 

「妖狐のへそくりをくすねた事も?」

 

「え? え?」

 

「「言わないでくれる?」」

 

「・・・・・・霊夢の湯呑みに関しては、後日新しいのを買う予定だが、へそくりは返しなさい」

 

「はーい・・・・・・」

 

サニーは渋々頷いた。

そんな時、針妙丸がある事を思いつく。

 

「そうだ、ジンの能力なら、神棚にお酒を置いた犯人がわかるかも」

 

「おお! その手があったわね!」

 

「流石は針妙丸! 冴えているわ!」

 

「一体何の話だ?」

 

「最後の七つ目の不思議の事よ。“神棚に突如現れる酒”」

 

スターの話によると、何も無い神棚から突如酒が現れるらしいのだ。

彼女達はその不思議を解明しようと、こうして神棚の周囲を見張っていたのである。

 

「それで結果は?」

 

「見事に失敗、影も形も見つけられなかったのよ」

 

「でも、ジンの能力なら、姿を消した奴でも追えるわよね?」

 

「まあな、どんな物でも動けば必ず軌跡は残る。それが姿を消そうが、時を止めようが、隠す事は出来ない」

 

「「「「おおー!」」」」

 

四人の期待を背に、ジンは軌跡を視た。すると、ジンは怪訝な表情をした。

 

「・・・なあ、この酒が置かれたのはついさっきだよな」

 

「そうだけど?」

 

「どうしたの?」

 

「おかしいんだ。動いた軌跡がまったく無い。まるで元々ここにあったかのようだ」

 

「そ、それじゃ、このお酒は何処から来たの?」

 

「分からん、本当に不思議だ・・・」

 

ジンは神棚をじっと見て、呟いた。

 

―――――――――――

 

翌日、人里にある焼物屋に霊夢とジンは訪れていた。

 

「さて、どれにしようかしら?」

 

「随分機嫌良さそうだな霊夢」

 

「そうかしら?」

 

「ああ、専用の湯呑みが割られているのを見た時より機嫌が良いと思うぞ」

 

彼女が自分の湯呑みが割れているのを見た時は、正に鬼巫女と呼ぶのに相応しい形相であった。

そのまま腹いせに、周囲の妖怪を退治しに行きそうな勢いだったので、ジンは思わず――――。

 

『新しいのを買ってやるから、今度一緒に人里に行こう』

 

そう言うと、不思議と怒りを納めてくれたのだ。

こうして今日、二人は人里の焼物屋に来ていたのだ。

 

「そりゃ、新しい湯呑みを買ってくれるんだから、機嫌も良くなるわよ」

 

「そういう物なのか?」

 

「そういう物よ。それよりも、どれにしようかしら?」

 

霊夢は再び湯呑みを見始める。

あまり焼物に詳しく無いジンは、どれも似たような物にしか見えなかった。

 

「ねえ、これなんてどうかしら?」

 

「良いんじゃないか?」

 

「ちょっと、適当に言っているでしょ」

 

「うっ、すまん、あまり焼き物に詳しくなくて・・・・・・」

 

「仕方ないわね、これを期に湯呑みのなんたるかを教えてあげるわ」

 

「お、お手柔らかに・・・・・・」

 

霊夢は、店に置かれた湯飲みを一つ一つ手にとって、それぞれの良さをジンに話始めるのであった。

 

 

霊夢のうんちくもあったせいで、湯飲み選びは時間が掛かり、既に昼を過ぎていた。

 

「これにするわ」

 

霊夢は一つの湯呑みを手に取り、ジンに見せる。

芸術的センスがまったく無いのか、霊夢が選んだ湯呑みがどう良いのかまったく分からなかった。

しかし、霊夢が選んだのなら、それはきっと良いものだと思い、それを買う事にした。

 

「これを下さい」

 

「はい、五十二銭になります」

 

ジンは店員にお金を渡し、丁寧に梱包されあ湯呑みを受け取る。

 

「ほら、大事にしてくれよ」

 

そう言って、霊夢に手渡す。

 

「ふふ♪ ありがとうジン」

 

霊夢はそれを嬉しそうにそれを受け取った。

その微笑みを見て、ジンの胸が少し高まった。

 

「ん? どうしたの?」

 

「い、いや、何でもない・・・・・・」

 

「変なジン」

 

「そ、それよりも、腹が減ったな。何処か食べてから帰らないか?」

 

「たまには良いわね。何処に行く?」

 

「この前華仙に一押しの蕎麦屋を教えてくれたんだ。そこにしようと思う」

 

「決まりね、不味かったら承知しないわよ」

 

「多分大丈夫だろ」

 

二人は焼物屋から出て、華仙お薦めの蕎麦屋へと足を運ぶのであった。

 

―――――――――――

 

蕎麦屋に訪れた二人は、美味しそうに蕎麦をすすっていた。

 

「うーん♪ この蕎麦、美味しわね」

 

「ああ、中々の歯応えだ」

 

「すいませーん。蕎麦もう一つ追加で」

 

「おいおい、そんなに食べたら太るぞ?」

 

「大丈夫大丈夫、この時の為の陰陽玉の力なんだから♪」

 

「そうか・・・・・・」

 

ジンは内心呆れながらも、蕎麦を食べた。ふと、博麗神社の七不思議の事を思い出した。

 

「そう言えば――――」

 

「ん?」

 

「霊夢は神社の七不思議について、何か知っているのか?」

 

「七不思議? 何それ?」

 

「知らないのか?」

 

「初耳よ。大方、その辺の妖精か妖怪が適当な事を言っているでしょ」

 

「まあ、俺もサニー達から聞いたんだが、ちょっと気になる事があってな」

 

「気になる事?」

 

「実は――――」

 

ジンはこの前の、神棚から突如酒が現れる事象を霊夢に話した。

すると霊夢は、その話を聞いた瞬間に興味がまったく無い態度をとる。

 

「なーんだ、そんな事か」

 

「そんな事って・・・これはいわゆる超常現象だぞ? もしかしたら妖怪か幽霊の仕業かも――――」

 

「それは無いわ」

 

霊夢はキッパリハッキリと言い退けた。

 

「断言するな・・・根拠は?」

 

「だって、私の子供の頃からそういうの起きたいたもの」

 

「え?」

 

「博麗神社が、結界の境にあるのは知っているわよね?」

 

「ああ」

 

「外の世界にも博麗神社はあるけど、だけど結界の作用で、幻想郷では幻想郷の博麗神社、外では外の博麗神社にしか行けないようになっているのよ」

 

「ふむふむ」

 

「でも、境にあるせいか、たまに外の物がこっちに来たり、こっちの物が外に行ったりする時があるの。

ここまで言えば、わかるわよね?」

 

「つまり・・・あの酒は外の人が供えた物なのか?」

 

「正解」

 

真相はこうである。

外の人間が、神社に酒を供え。その酒が、偶々こっちの神社にやって来ただけなのだ。

 

「なるほど、それなら軌跡が残らないのも頷ける」

 

「不思議なんて、タネが分かれば拍子抜けなものよ。

分からないからこその不思議なの」

 

「それなら、しばらくはサニー達にこの事を明かさない方が良いかな?」

 

「それが良いわ。これで暫くは大人しくしてくれるでしょうし」

 

「それもそうだな。ところで、もう一つ分からない事があるのだが――――」

 

「なに?」

 

「博麗神社の神様は、どんな奴なんだ?」

 

そのジンの言葉に、霊夢は沈黙し、やがて口を開く。

 

「・・・・・・知らない」

 

「え?」

 

「私も、先代である母さんも、博麗神社を祭る神様について知らないのよ。

因みに、記録すら残っていないわ」

 

「・・・・・・不思議だな」

 

「そうね、不思議よねぇ・・・・・・」

 

こうして、一つの謎は解明されたが、博麗神社最大の謎が解明されるのは何時の日になるのやら。

それはまさに、神のみぞ知る。




今回出てくる七不思議のほとんどは、漫画と旧作から出しています。
ところで、博麗神社の神様は一体どんな神様なんでしょうか?と常々疑問に思っています。
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