七不思議、それは日本人なら誰でも知っている言葉である。
一般的な物から怪談的な物、果てには世界の七不思議と幅広い言葉である。
そんな七不思議だが、実は博麗神社にもあるのであった。
一つ、花見の街道。
博麗神社で花見をする時、何故か道が遠く感じる時がある。
二つ、夏の日の氷柱。
夏なのに、何故か氷柱が生える日がある。
三つ、博麗神社の猫。
時折、博麗の巫女が可愛がっている猫がいるのだが、巫女が可愛がっている時以外姿を見せない。
四つ、謎の香り。
屋内で時折謎の香りがする時がある。
五つ、太らない博麗の巫女。
代々博麗の巫女は、何故か太らない。
六つ、博麗神社の神。
どんな神様が祭っているのか、誰も知らない。記録すら載っておらず、一説には元々いないとまで言われている。
そして最後の不思議は、とても摩訶不思議な現象であった。
―――――――――――
博麗神社の母屋にある神棚、そこにサニー、ルナ、スター、針妙丸の四人が見張っていた。
「スター、誰か近づいて来る?」
「ううん、誰も近づいて来る気配は無いわ」
「針妙丸は右を、ルナは左を見張って」
「わかった」
「う、うん・・・」
二人はサニーの指示に従い、廊下をそれぞれ見張りだした。
「さあ! 今日こそ捕まえてやるわ!」
そう言ってサニーは神棚をじっと睨み付けた。
それから十数分後、異変は起きた。
何もなかった筈の神棚に、一瓶の酒が突如現れたのである。
「!? スター!」
「え? 誰も近づいて来てないわよ」
「廊下の二人は!?」
「一瞬たりとも目を離すしてないよ」
「私もよ」
「あー! また逃げられた!」
「何が逃げられたんだ?」
不意に声を掛けられ振り向くと、そこに不思議そうな顔をしていたジンの姿があった。
「ジン? ちょうど良かった。誰か不振な奴を見掛けなかった?」
「不振な奴? いいや」
「そう・・・・・・」
「一体何をしているんだ?」
ジンがそう聞くと、針妙丸が説明を始めてくれた。
「私達、博麗神社の七不思議を解明しているんだよ」
「七不思議?」
「そう、この博麗神社には不思議な七不思議があるのよ」
そう言って、四人は博麗神社の七不思議について話始めた。
「へ~、それは知らなかったな」
「因みに、一と二は私達の悪戯が原因だけどね♪」
「こらスター! バラさないの!」
「大丈夫よ、霊夢さんならともかく、ジンならこれぐらいの事で告げ口しないわよ。ね♪」
「はは、度を過ぎた悪戯以外ならな」
「ほら♪」
「なら、霊夢さんのお気に入りの湯呑みを割った事も?」
「え?」
「妖狐のへそくりをくすねた事も?」
「え? え?」
「「言わないでくれる?」」
「・・・・・・霊夢の湯呑みに関しては、後日新しいのを買う予定だが、へそくりは返しなさい」
「はーい・・・・・・」
サニーは渋々頷いた。
そんな時、針妙丸がある事を思いつく。
「そうだ、ジンの能力なら、神棚にお酒を置いた犯人がわかるかも」
「おお! その手があったわね!」
「流石は針妙丸! 冴えているわ!」
「一体何の話だ?」
「最後の七つ目の不思議の事よ。“神棚に突如現れる酒”」
スターの話によると、何も無い神棚から突如酒が現れるらしいのだ。
彼女達はその不思議を解明しようと、こうして神棚の周囲を見張っていたのである。
「それで結果は?」
「見事に失敗、影も形も見つけられなかったのよ」
「でも、ジンの能力なら、姿を消した奴でも追えるわよね?」
「まあな、どんな物でも動けば必ず軌跡は残る。それが姿を消そうが、時を止めようが、隠す事は出来ない」
「「「「おおー!」」」」
四人の期待を背に、ジンは軌跡を視た。すると、ジンは怪訝な表情をした。
「・・・なあ、この酒が置かれたのはついさっきだよな」
「そうだけど?」
「どうしたの?」
「おかしいんだ。動いた軌跡がまったく無い。まるで元々ここにあったかのようだ」
「そ、それじゃ、このお酒は何処から来たの?」
「分からん、本当に不思議だ・・・」
ジンは神棚をじっと見て、呟いた。
―――――――――――
翌日、人里にある焼物屋に霊夢とジンは訪れていた。
「さて、どれにしようかしら?」
「随分機嫌良さそうだな霊夢」
「そうかしら?」
「ああ、専用の湯呑みが割られているのを見た時より機嫌が良いと思うぞ」
彼女が自分の湯呑みが割れているのを見た時は、正に鬼巫女と呼ぶのに相応しい形相であった。
そのまま腹いせに、周囲の妖怪を退治しに行きそうな勢いだったので、ジンは思わず――――。
『新しいのを買ってやるから、今度一緒に人里に行こう』
そう言うと、不思議と怒りを納めてくれたのだ。
こうして今日、二人は人里の焼物屋に来ていたのだ。
「そりゃ、新しい湯呑みを買ってくれるんだから、機嫌も良くなるわよ」
「そういう物なのか?」
「そういう物よ。それよりも、どれにしようかしら?」
霊夢は再び湯呑みを見始める。
あまり焼物に詳しく無いジンは、どれも似たような物にしか見えなかった。
「ねえ、これなんてどうかしら?」
「良いんじゃないか?」
「ちょっと、適当に言っているでしょ」
「うっ、すまん、あまり焼き物に詳しくなくて・・・・・・」
「仕方ないわね、これを期に湯呑みのなんたるかを教えてあげるわ」
「お、お手柔らかに・・・・・・」
霊夢は、店に置かれた湯飲みを一つ一つ手にとって、それぞれの良さをジンに話始めるのであった。
霊夢のうんちくもあったせいで、湯飲み選びは時間が掛かり、既に昼を過ぎていた。
「これにするわ」
霊夢は一つの湯呑みを手に取り、ジンに見せる。
芸術的センスがまったく無いのか、霊夢が選んだ湯呑みがどう良いのかまったく分からなかった。
しかし、霊夢が選んだのなら、それはきっと良いものだと思い、それを買う事にした。
「これを下さい」
「はい、五十二銭になります」
ジンは店員にお金を渡し、丁寧に梱包されあ湯呑みを受け取る。
「ほら、大事にしてくれよ」
そう言って、霊夢に手渡す。
「ふふ♪ ありがとうジン」
霊夢はそれを嬉しそうにそれを受け取った。
その微笑みを見て、ジンの胸が少し高まった。
「ん? どうしたの?」
「い、いや、何でもない・・・・・・」
「変なジン」
「そ、それよりも、腹が減ったな。何処か食べてから帰らないか?」
「たまには良いわね。何処に行く?」
「この前華仙に一押しの蕎麦屋を教えてくれたんだ。そこにしようと思う」
「決まりね、不味かったら承知しないわよ」
「多分大丈夫だろ」
二人は焼物屋から出て、華仙お薦めの蕎麦屋へと足を運ぶのであった。
―――――――――――
蕎麦屋に訪れた二人は、美味しそうに蕎麦をすすっていた。
「うーん♪ この蕎麦、美味しわね」
「ああ、中々の歯応えだ」
「すいませーん。蕎麦もう一つ追加で」
「おいおい、そんなに食べたら太るぞ?」
「大丈夫大丈夫、この時の為の陰陽玉の力なんだから♪」
「そうか・・・・・・」
ジンは内心呆れながらも、蕎麦を食べた。ふと、博麗神社の七不思議の事を思い出した。
「そう言えば――――」
「ん?」
「霊夢は神社の七不思議について、何か知っているのか?」
「七不思議? 何それ?」
「知らないのか?」
「初耳よ。大方、その辺の妖精か妖怪が適当な事を言っているでしょ」
「まあ、俺もサニー達から聞いたんだが、ちょっと気になる事があってな」
「気になる事?」
「実は――――」
ジンはこの前の、神棚から突如酒が現れる事象を霊夢に話した。
すると霊夢は、その話を聞いた瞬間に興味がまったく無い態度をとる。
「なーんだ、そんな事か」
「そんな事って・・・これはいわゆる超常現象だぞ? もしかしたら妖怪か幽霊の仕業かも――――」
「それは無いわ」
霊夢はキッパリハッキリと言い退けた。
「断言するな・・・根拠は?」
「だって、私の子供の頃からそういうの起きたいたもの」
「え?」
「博麗神社が、結界の境にあるのは知っているわよね?」
「ああ」
「外の世界にも博麗神社はあるけど、だけど結界の作用で、幻想郷では幻想郷の博麗神社、外では外の博麗神社にしか行けないようになっているのよ」
「ふむふむ」
「でも、境にあるせいか、たまに外の物がこっちに来たり、こっちの物が外に行ったりする時があるの。
ここまで言えば、わかるわよね?」
「つまり・・・あの酒は外の人が供えた物なのか?」
「正解」
真相はこうである。
外の人間が、神社に酒を供え。その酒が、偶々こっちの神社にやって来ただけなのだ。
「なるほど、それなら軌跡が残らないのも頷ける」
「不思議なんて、タネが分かれば拍子抜けなものよ。
分からないからこその不思議なの」
「それなら、しばらくはサニー達にこの事を明かさない方が良いかな?」
「それが良いわ。これで暫くは大人しくしてくれるでしょうし」
「それもそうだな。ところで、もう一つ分からない事があるのだが――――」
「なに?」
「博麗神社の神様は、どんな奴なんだ?」
そのジンの言葉に、霊夢は沈黙し、やがて口を開く。
「・・・・・・知らない」
「え?」
「私も、先代である母さんも、博麗神社を祭る神様について知らないのよ。
因みに、記録すら残っていないわ」
「・・・・・・不思議だな」
「そうね、不思議よねぇ・・・・・・」
こうして、一つの謎は解明されたが、博麗神社最大の謎が解明されるのは何時の日になるのやら。
それはまさに、神のみぞ知る。
今回出てくる七不思議のほとんどは、漫画と旧作から出しています。
ところで、博麗神社の神様は一体どんな神様なんでしょうか?と常々疑問に思っています。