発売が待ちどおしいです。
霧の湖の辺りに、チルノ、大妖精、ルーミア、リグル、ミスティアの五人は何やら話し合いをしていた。
「うーん・・・どうするのだー?」
「私達だけじゃ、どうしょうも無いよ・・・・・・」
「歌を歌っても、元気出ないしね」
「虫ならともかく、魚の言葉は分からないよ」
「あれって魚だっけ?」
「わかさぎさんの話によると、違うみたいだけど・・・」
「ともかく! このままじゃ、キューちゃんが・・・・・・」
「それはわかっているけど・・・・・・」
五人は意気消沈してしまう。
そんな中、ミスティアがある事を閃いた。
「あっ、それなら頼りになる人がいるじゃない」
「え? 誰々?」
「ほら、神社に住んでいる――――」
「神社って・・・どっちの?」
「ええっと・・・どっちだっけ?」
「もう、ミスティアは肝心なところが抜けているんだから」
「むっ、それならリグルはわかるの?」
「分からないよ、神社なんて言ったら、巫女ぐらいしか思い付かないんだし・・・」
「巫女なのかー・・・・・・」
大妖精を除いた五人は、想像する。
もし仮に、この場所に連れて来て、キューちゃんに会わせたとしたら―――。
『あら、デッカイ妖怪ね』
『むむ、これは大きな魚の妖怪ですね!』
『早速退治するわ』
『早速退治しましょう!』
四人は背筋を震わす。
「ダメダメ! キューちゃんが退治されちゃうよ!」
「そもそも、巫女に助けを求める自体間違っている気がする・・・・・・」
「あれ? おかしいな・・・確か困っている妖怪でも助けてくれる人が神社に住んでいる気が・・・・・・」
「寺と勘違いしてるんじゃ?」
「もしかして、博麗神社に住んでいるジンさんの事?」
大妖精の一言に、ミスティアはようやく思い出した。
「そう! それよ!」
「まあ、あの人なら私達の力になってくれるよね」
「そーだなのだー、ついでにお菓子もくれるかもー♪」
「良し! 早速連れて来る!」
そう言って、チルノは一目散に博麗神社に向かって行ってしまうのであった。
「チルノちゃん一人で大丈夫かな・・・・・・?」
「大丈夫でしょ、連れて来るだけなら」
「うん・・・そうだけど・・・・・・」
大妖精は一抹の不安を抱きながら、チルノの帰りを待つことにした。
―――――――――――
博麗神社の境内を掃除していたジンの元に、チルノが慌ててやって来た。
「ジーン! 大変だー!」
「チルノか? 一体どうした?」
「キューちゃんが元気が無いんだ! どうすればいい?」
「んん? キューちゃん?」
「そう、キューちゃん。最近元気が無いんだ・・・」
「えっと・・・キューちゃんって誰だ?」
ジンはチルノにそう聞くと、チルノは怒った表情をする。
「キューちゃんはあたい達の友達だよ! そんな事も知らないの!?」
「いや、初耳だが」
「そうだっけ? まあいいや。それよりも――――」
「誰か来ているの?」
境内の様子を見に来た霊夢。
霊夢の姿を見たチルノは、何を思ったのか、霊夢に向けて氷柱を放つ。
「霊夢!」
「キャア!? ちょっと! いきなり何するのよ!」
「用があるのはジンだけ! 巫女は御呼びじゃない!」
その言葉に、霊夢はカチンと来てしまい。直ぐ様臨戦体勢をとった。
「良い度胸じゃない・・・ぐうの音も出ないくらいに叩きのめしてあげるわ!」
「上等! さいきょーのあたいが返り討ちにしてやる!」
二人は今にも弾幕勝負を始める勢いであった。
それを止めたのは、ジンの言葉であった。
「待て! 二人ともそこまでだ!」
「何よジン! 邪魔する気!?」
「ああ、流石に今回は口を出させて欲しい」
「え?」
何時もなら、霊夢の横暴を止めるために口を出すジンであったが、今回は違い、チルノに対して物申すらしい。
「チルノ、いつもの事とはいえ、霊夢に氷柱をいきなり放つのは許せない」
「で、でも・・・巫女はいつも暴れているから―――」
「いつもじゃない。異変解決や妖怪退治の時だけだ。
霊夢に謝ってくれ」
「むむっ、何であたいが―――」
「謝らないなら、チルノの頼みは聞かないからな」
「うう・・・・・・」
そうジンに言われてしまい、チルノは悩んだ末、霊夢に対して頭を下げた。
「・・・・・・ごめんなさい」
「え? あ・・・べ、別に良いわよ。暴れているのは事実なんだから」
「暴れているのは否定しないのか・・・・・・」
「うるさいわよ。
それよりも、どうして私を攻撃したのかしら?」
するとチルノは、少し言いづらそうに話した。
「だって・・・キューちゃんの事を話したら、退治されると思って・・・・・・」
「霊夢はそんな無闇矢鱈に妖怪を退治したりしないって。な?」
「え? ええ! 退治するのは人様に迷惑を掛ける奴だけよ!」
「本当?」
「本当本当、だから安心しなさい」
霊夢はそう言うと、チルノは安心して理由を話始めた。
「なるほど、そのキューちゃんって奴が、最近元気が無いって事か」
「そうなんだ、だからジンに助けて欲しくて」
「うーん・・・俺に何か出来るとは思えないが、取り合えずそのキューって奴に会ってからだな。案内してくれ」
「うん! わかった!」
「それじゃ行って来る」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
霊夢に見送られながら、ジンはチルノと共にキューちゃんがいる霧の湖へと向かうのであった。
―――――――――――
霧の湖に到着すると、ルーミア、大妖精、ミスティア、リグルの四人が出迎えてくれた。
「こんにちはジンさん。今日は来てくれてありがとうございます」
「なに良いって、それよりもキューに会わせてくれないか?」
「良いよ。せーの―――」
「「「「「キューちゃーん」」」」」
五人が湖に向かって叫ぶ、すると霧の向こうからやって来る影が見えて来た。
そして、その正体を見たジンは、驚きを隠せなかった。
「こ、これがキューちゃん?」
「そうだよ、あたい達の友達のキューちゃん」
「キュー」
それは何とアザラシであった。幻想郷では御目にかかれない動物であった。
「まさかアザラシがこんな所に来るとは・・・・・・」
「アザラシ?」
「ああ、そういう名前の動物なんだ」
そう言って、ジンはアザラシのキューちゃんの頭を撫でる。
キューちゃんは嫌がる様子も無く、寧ろ嬉しそうにしていた。
(どっかの動物園のアザラシか? 随分人懐こいな)
そう思っていると、ある違和感を感じる。このアザラシは何処か元気が無いのだ。
「どうしたんだ一体?」
「キュー・・・・・・」
ジンはキューに訪ねるが、未だ授業中の身である彼では、華仙の動物以外の意志疏通は困難であった。
(うーん、原因はわかるんだが・・・どうすればいいのかさっぱり分からない)
恐らく環境の違いによるストレスが原因なのだが、どう改善すればいいか分からない状態であった。
そこでジンは、次の手段を取る事にした。
「少し待ってくれないか、力になってくれる奴を連れて来るから」
「良いけど・・・誰を呼ぶの?」
「動物のエキスパートだ」
そう言ってジンは、ある人物の元に向かって行った。
「―――なるほど、それで私の力が必要な訳ね」
「ああ、頼むよ華仙」
ジンが連れて来たのは、華仙であった。
動物と対話出来る彼女なら、キューの言っている事が完全にわかると考えたからである。
「やってみるけど、期待はしないでね」
そう言って、華仙はキューとの対話を試みた。
「キュー、キュ、キュキュー」
「ふむふむ、なるほどね・・・」
「何かわかったのか?」
「ええ、この子の話によると、湖の水じゃ体に合わないみたいなのよ」
「ん? どういう事だ?」
「簡単に言えば、塩分がまったく足りていないって事なの」
「あー、なるほどな」
「どういう事なのだー?」
「元々アザラシは、海に住んでいる生き物なんだ。だから、湖の水じゃ体に合わないらしい。だから元気が無かったんだ」
「そうだったんだ・・・でも、幻想郷に海は無いから・・・・・・」
「月まで運ぶ? 彼処なら海あったし」
「いやいやいや、何も海にこだわる必要は無い。要は、海と同じ環境の場所を作れば良いだけなんだ」
「どうやって作るの?」
「それは、河童達に頼むさ」
「河童?」
「そう、あいつらの技術力なら人工海水を作れるだろうし」
「おお! それじゃ早速頼みにいこう!」
「待っててねキューちゃん!」
ジンの話を聞いた五人は、勢いよく河童の住処へ飛んで行ってしまった。
ジンもその後を追おうとしたが、華仙に呼び止められてしまう。
「良いのジン? 河童達にそんな事を頼んで?」
「どういう事だ?」
「恐らく河童達は必ず見返りを求めて来るわよ。その時貴方はどうするつもりなの?」
「どうするも何も、やってくれるなら、見返りをやるのは当然だろ?」
「・・・前から思っていたんだけど、貴方は見返りを求め無いの?」
華仙はそう訪ねると、ジンは少し考え、こう答えた。
「俺が好きでやっている事だから、見返りなんて期待していない」
そう言って、五人の後を追うジン。
華仙はその背中を見て、小さく呟く。
「本当、欲が無い人なんだから」
少し微笑む華仙、その後すぐにジンの後を追って行った。
―――――――――――
河童の住処に到着したジン達は、河童のリーダーであるにとりに事情を説明していた。
「なるほど、そのアザラシの為に人工海水プールを作って欲しいんだね?」
「ああ、出来るか?」
「そのくらい御安い御用―――と言いたい事だけど、タダじゃやれないよ」
「むぅ! 意地悪な河童だな!」
「そんな事言ったって、作るのにはどうしても費用が掛かるんだよ。タダでやったら私達が干上がっちゃうよ」
「どうすれば良いんだ?」
「なに、そのキューちゃんとやらをうちで引き取らせて欲しいだけだよ」
「キューちゃんをどうするんですか?」
「芸を仕込んで、金を儲けるのさ」
「ダメー! キューちゃんに酷い事をするなー!」
チルノは真っ先に反対をした。どうやらキューが酷い事をされるのでは無いかと勘違いしているようだ。
「落ち着けチルノ、何も酷い事はしない。そうだろにとり?」
「もちろんさ、話を聞く限り人懐こいらしいからね、簡単な芸くらいは出来ると思う」
「本当?」
「本当本当、嘘はつかないって」
「うん・・・わかった」
こうして、キューは河童達に引き取られる事になった。
―――――――――――
それから数日後、キューちゃんショーを開催した河童達。
アザラシの愛くるしさと珍しさも相まって、連日大盛況をしていた。
「きゃー♪ 可愛いー♪」
「本当ですよ! 外にはあんな可愛らしい動物がいるなんて!」
「キューちゃーん♪」
にとりから招待状が送られて来たので、ショーに来た博麗神社一行。
最初は乗り気ではなかった霊夢でも、アザラシの愛くるしい姿を見て、すっかり夢中になっていた。
「一体どんな妖怪かと思ってたけど、可愛いじゃない♪」
「妖怪じゃなくて、ただの動物だけどな。しかし―――」
「どうしたのジン?」
「気のせいか、キューの奴少しやつれていないか?」
「そう? 私にはわからないけど」
「気のせいじゃないですか?」
「うーん・・・そうだと良いんだが・・・・・・」
ジンは心配そうに、一生懸命芸をやっているキューの方を見た。
この時のジンの不安は、数日後に的中してしまうのであった。
―――――――――――
それから数日後、ある知らせを受けたジンは、河童の住処にあるキュー専用プールへとやって来た。
そこには数人の河童とにとりと元気の無いキューの姿であった。
「一体どうした?」
「それが・・・全然餌を食べないんだ」
ここ最近、キューは食事を与えても食べない事が多くなり、だんだんと元気が無くなっていってしまった。
事態を重くみた河童達は、ジンに相談する事にした。
「うーん・・・少し良いか?」
ジンはキューに歩み寄り、理由を聞き出そうとする。すると――――。
「キュ、キュキュ・・・・・・」
「食べたくないって?」
「どういう事?」
「理由はわからないが、餌を食べたく無いらしい」
「一体どうして?」
「悪いけど、それ以上の事はわからない。もしかしたら、何かの病気かも・・・・・・」
「病気だって!?」
病気という言葉に、河童達はどよめき始めた。
ジンは納めようと、言葉を続ける。
「あくまで仮説だ。でも、放って置くわけにもいかないな」
「どうするの?」
「永琳に頼るしか無いな・・・幻想郷の医者はあの人しかいないからな」
「わかった、早速呼んで来るよ」
にとりは河童仲間に指示を出し、永琳に使いを出すのであった。
それから時間が経ち、やって来た永琳は早速キューの容態を診た。
「どう?」
「完全な栄養失調ね。餌を与えていないの?」
「ちゃんと与えているよ! だけど、全然食べないんだ・・・・・・」
「ふむ、栄養失調意外に悪いところは無いんだけど・・・変なのは食べさせていないのよね?」
「失敬な! いつも新鮮な魚を与えているんだよ!」
「困ったわね、これ以上私でもわからないわ」
「ちょっと! あんた医者でしょ! 何とかしなさいよ!」
「そうは言われても、原因がわからないわ以上、手の施しようが無いわ。問診が出来れば良いんだけど・・・・・・」
問診、それは診断を行う際に極めて重要なものである。
しかし今回は動物相手なので、永琳は問診が出来ないのだ。
「せめて、動物の言葉が分かれば良いんだけど・・・・・・」
その言葉に、ジンは閃くのであった。
「いや居るぞ、動物の言葉が分かる動物のエキスパートが」
「え? それって――――」
「動物で困った時は、華仙に頼もう」
こうして、再び華仙に頼る事にしたジンであった。
事情を聞いてやって来た華仙は、何処か呆れたような表情をしていた。
「まさか、もう一回通訳をさせられるとは思わなかったわ・・・・・・」
「頼む華仙! 頼れるのはお前しかいないんだ!」
「まあ、私としても動物を見捨てるつもりは無いわ。任せて」
そう言って、再びキューと話始める華仙。しばらくして、華仙は振り向きジン達に向かって話始めた。
「原因がわかったわ」
「え!? 本当かい!」
「それで? 一体何が原因だったの?」
永琳がそう聞くと、華仙は簡潔に答えた。
「虫歯よ」
「虫歯・・・ああ、なるほどね」
「どういう事?」
「つまり虫歯が痛くて、食べれなかったのよ」
「そういう事か」
キューが餌を食べなくなった理由は、虫歯が原因であったのだ。
原因がわかったところで、永琳は機材を出し始めた。
すると、瞬く間にキューを治療台に縛り上げてしまう。
「キュ?」
「さて、それじゃ虫歯の治療を始めるわよ」
そう言って、ドリルを回しながら動けないキューに近づいていく。
何か恐ろしい気配を感じとり、ジタバタ動くが、まったく動けなかった。
次に河童達に助けを求めようとするが――――。
「ねえ? あれって月の道具かな?」
「中々に興味深い・・・・・・」
キューそっちのけで、永琳の道具に興味津々であった。
仕方なく、ジンと華仙に助けを求めるが―――。
「それじゃ、俺達は帰るから、後はよろしくな」
「虫歯、しっかり直すのよ」
そう言って、さっさと帰ってしまった。
助けてくれる人はいなくなり、再び永琳の方を見ると、彼女はにこやかに笑いながら――――。
「安心して、直ぐに終わるから♪」
「キュー!!」
キューの叫びが、妖怪山に木霊したのは言うまでも無い。