東方軌跡録   作:1103

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今回はオリジナル術が出ます。
素人が考えた物なので、設定に矛盾が生じると思いますが、寛大な心で読んでくれるとありがたいです。


師匠と弟子 前編

妖怪の山のとある場所に、華仙の屋敷が存在する。

彼女の屋敷には方術が施されており、辿り着くには一定のルートを通らなければならない。

そんな彼女の屋敷に、足しげく通う一番弟子がいた。

 

―――――――――――

 

屋敷の外で、華仙とジンは術の修行を行っていた。

 

「それではジン、五行獸を召喚しなさい」

 

「わ、わかりました・・・」

 

ジンは慣れない敬語を使いながら札を取り出し、術を発動させる。

 

「土獸招来!」

 

ジンがそう言うと、札から土竜のような獣が現れた。

 

「良し! 成功だ!」

 

「やったわねジン、これで仙術の初歩をマスターしたわね」

 

「華仙の教えが良かったから――――」

 

「敬語! それと、私の事は師匠と呼びなさい!」

 

「し、師匠の教えが良かったからです・・・・・・」

 

「よろしい。それでは、今日の修行はこれまでにするわ。帰って体を休めなさい」

 

「押忍!」

 

こうして、その日の修行は終わりを迎え、ジンは神社へと帰るのであった。

 

―――――――――――

 

その日の夜、華仙の屋敷に小町が遊びに来ていた。

 

「どう? ジンの修行は?」

 

「順調よ、今日はようやく五行獸の一角を喚べるようになったわ」

 

「五行獸?」

 

「五行思想を元に作られた術の一つよ」

 

華仙は小町に五行獸について話始めた。

五行獸とは、とある術者が産み出した簡易術である。

札に霊力を与え、木、火、土、金、水の属性を持つ獸を召喚し使役する術である。

 

「式神みたいなもんかい?」

 

「まあ似たような物ね、東洋の術のルーツは全て五行思想から来ていると言っても過言じゃないから、似たような術はかなりあるのよ」

 

「へ~、あんたも使えるのかい?」

 

「一応使えるけど・・・効率が悪いからあまり使わないわね」

 

「効率が悪い?」

 

「ええ、例えば高位術者が使用しても、修行者と同程度の威力しか出せないように設定されているのよ」

 

「そうなのかい?」

 

「これはあくまで修行者用の術、だからそれほど強くは無いのよ。

だからあまり知れ渡っていないし、これを好き好んで使う人はいないのよ」

 

「あくまで入門用って訳か」

 

「そう、この術で基礎基本を学び、それを発展させるのが次のステップになるの」

 

「ふーん、仙人の道は険しいねぇ・・・ところで―――」

 

すると小町の表情が変わる。それは先程とはうって変わって、何かを射るような真剣な表情になった。

 

「ジンをどうする気だい? まさか本気で仙人にするつもりじゃないだろうねぇ」

 

やや敵意を向ける小町に対して、華仙は流すように答える。

 

「まさか、彼は仙人どころか、不老不死にさえ興味が無いのよ。ただ術を覚えたいだけみたいなの」

 

「ほう、それは健全で良いじゃないか、不老不死なんて全うな人間がなるもんじゃない」

 

「そうかしら? 何となく私利私欲な気もするけど・・・・・・」

 

「ははは! 私利私欲なんて、ジンに最も似合わない言葉だよ」

 

「どういう事?」

 

「映姫様から聞いたんだけど、ああゆうタイプは自分利よりも、他人の幸福を願うんだよ。

もっと具体的に言えば、他人の幸せに幸福を感じる人間だよ」

 

「それって、人としてどうなの?」

 

「まあ、行き過ぎれば、歪な人間にはなるだろうけどさ、ジンの場合は身内にストッパーがいるから、その辺は大丈夫じゃないかい?」

 

「それなら良いんだけど・・・・・・」

 

「もし不安なら、お前さんが導いてやれば良いじゃないか。

一応仙人なんだろ?」

 

そう言って、小町は去って行った。

華仙は小町の言葉が引っ掛かるのか、難しい顔をして、夜空の月を眺めるのであった。

 

―――――――――――

 

数日後の博麗神社、ジンが五行獸の術を覚えてから、神社の生活が一部変わっていた。

 

「火獸招来!」

 

 

ジンは火獸を呼び寄せ、竈に火をつけた。

 

「ありがとうございますジンさん、助かります」

 

「これぐらい御安い御用だ。それよりも、火の強さはどれくらいに?」

 

「やや強めでお願いします」

 

「了解」

 

そう言うとジンは、火獸を使い、竈の火の調整をし始める。

五行獸の術を覚えてから、ジンは日常生活に役立つ使い方をして来た、先程の火獸もその一つである。

 

「他にやれる事なら手伝うが?」

 

「それじゃ、その御野菜を切ってください」

 

「わかった」

 

火の調整をしつつ、ジンは丁寧に野菜を切っていく。

すると霊夢が台所に顔を出して来た。

 

「ジン、何か華仙があんたに用があるって」

 

「華仙が俺に?」

 

「術を生活に使っているのがバレたんじゃない?」

 

「仮にそうだとしても、修行の一環と言えば良いし。それに、使える物は使うのが俺のポリシーだ」

 

「あんたのそういう性格は好きよ」

 

「ありがとな、それじゃ華仙に会って来るから、後は頼んだ妖狐」

 

「はい、お任せください」

 

ジンは後の事を妖狐に任せ、霊夢と共に華仙がいる居間へと向かった。

 

 

居間に入ると、そこには落ち着かない様子の華仙がいた。

 

「どうした華仙? 何かあったのか?」

 

「お、落ち着いて聞いてジン」

 

「あんたが落ち着きなさいよ。それでどうしたの?」

 

霊夢がそう聞くと、華仙は恐る恐る口を開いた。

 

「実は・・・・・・神霊廟と交流試合をする事になったの」

 

「「交流試合?」」

 

華仙の話によると、神霊廟の神子と交流があり、互いの弟子について盛り上がっていると、神子の方から―――。

 

『それでは、互いの弟子を戦わせてみませんか?』

 

そんな申し出が出たのである。

 

「断れなかったの?」

 

「そりゃ無下に断れる訳無いじゃない。仙人としての格は向こうが上なんだから」

 

「だからって、ジンを巻き込まないでよね。成り行きであんたの弟子になっているけど、私の身内でもあるのよ」

 

「そ、それは分かっているけど・・・・・・」

 

「まあまあ落ち着けよ霊夢、たかが交流試合だろ? それくらいなら何でも無いだろ」

 

「それが・・・そうでもなくて・・・・・・」

 

「「え?」」

 

「これを見て頂戴」

 

そう言って華仙は、一枚のチラシを出した。そこにはこう書かれていた。

 

“仙人弟子対決!

山の仙人、茨華仙VS現代に蘇った聖人、豊聡耳神子

勝つのはどちらの弟子か!”

 

――という宣伝が大体的に書かれていた。

 

「・・・・・・明らかに天狗の仕業ね」

 

「相変わらず速いな・・・一体何処で嗅ぎ付けるんだ?」

 

「ともかく! この宣伝のせいで、当日多数の人や妖怪が来てしまうのよ!」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「もし・・・ジンがあっさり負けたりしたら――――」

 

華仙の脳裏にはある光景が過る。

大勢の前で自分の弟子が呆気なく敗北、それを見た大衆は――――。

 

『なんだ、偉そうに説教する割には、ろくに弟子を育てられていないじゃないか』

 

『所詮引きこもり仙人、神子様とでは格が違いますな』

 

『エセ仙人は、地底に帰れー』

 

大衆はそう言いながら、自分を嘲笑う光景が、華仙の脳裏にハッキリと映っていた。

 

「そうなったら・・・もう仙人として生きていけないわ・・・・・・大人しく田舎に帰るしかないわ・・・・・・」

 

華仙は俯せになり、その瞳には涙が溢れていた。

そんな意気消沈の華仙に、霊夢とジンは元気つけようと声を掛けた。

 

「しっかりしなさい華仙! ジンの師匠なんでしょう! 少しは弟子を信じなさい!」

 

「霊夢・・・・・・」

 

「その通りだ華仙、俺を信じてくれ」

 

「でも、貴方はまだ土獸しか喚べないでしょ?」

 

「そう思うか?」

 

そう言うと、ジンは三枚の五行札を取り出し五行獸を呼び出す。

 

「土獸! 金獸! 火獸招来!」

 

すると札から、土の獣、金の獣、火の獣が現れた。

 

「え!? いつの間に三体喚べるようになっていたの!?」

 

「日頃から練習を欠かしていないからな。交流試合まで何日だ?」

 

「あと一週間だけど・・・・・・」

 

「まだ時間はある。その日まで修行あるのみ! だろ?」

 

「そうね・・・その通りだわ、まったく私ったら」

 

華仙はそう言うと、頬を叩き気合いを入れる。

 

「そうと決まれば早速特訓よ! 最低でも五行全部喚べるようならなきゃ、話にならないもの!」

 

華仙は有無言わさず、ジンを外に連れ出し、竿打を呼び寄せ、その背に乗った。

 

「それじゃ霊夢、一週間は神社に帰さないから、そのつもりでね」

 

それだけを言うと、そのまま飛び去ってしまうのであった。

 

―――――――――――

 

それから一週間後、神霊廟に多数の人と妖怪達が集まっていた。

 

「うひゃ~これは凄いなー」

 

「あまりキョロキョロするんじゃないよ魔理沙、まるで田舎者に見えるよ」

 

「そうよ、こっちが恥ずかしくなるじゃない」

 

物珍しそうに辺りを見回す魔理沙に、魅魔とアリスがそれを注意する。

 

「だって、まるで祭りみたいだぜ魅魔様」

 

「確かに楽しそうではあるが、私達の目当てはこれだよ」

 

そう言って魅魔が取り出したのは、宣伝のチラシであった。どうやら彼女達は、交流試合が目当てらしい。

 

「東洋の魔法なんて、私からは学べ無いんだから、これを期にしっかりと勉強するんだよ」

 

「はい魅魔様!」

 

「まったく、魅魔の言うことは素直に聞くんだから・・・・・・あれは?」

 

するとアリスは、人混みから見知った人物達を見つけた。

 

「パチュリーじゃない、珍しいわね」

 

「あらアリス」

 

「こんにちはアリスさん」

 

アリスが見掛けたのはパチュリーと小鈴であった。

魅魔と魔理沙も、二人に気付き挨拶をかわす。

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「パチュリーさんに誘われたんです。面白い物がみられるって」

 

「お前さんも交流試合目当てかい?」

 

「ええ、それ以外理由は無いでしょ」

 

「貴女達二人だけで来たの?」

 

「レミィとフラン、それと咲夜と一緒に来たんだけど、はぐれちゃって。

まあ、大方屋台に巡りでもしているんでしょうね」

 

「まあ、五百年生きていても、お子様には変わりないからねぇ」

 

「否定出来ないわ・・・それよりも、そろそろ交流試合が始まりそうよ」

 

「おおっと! 急がないと良い席とられちまう!」

 

こうして五人は、試合会場へと足を運ぶのであった。

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