その為、原作と矛盾点があるかも知れません。
ジンは途方に暮れていた。
何故なら彼は月の海に居たからである。
「一体・・・どうしてこうなった・・・・・・」
時間は少し遡る―――。
―――――――――――
永琳の復帰祝いとして、永遠亭で宴会が行われていた。
皆で騒いでいたのだが、そんな時――――。
『一発芸、兎大砲!』
『ジン、私の勇姿をしっかり目に焼き付きなさい』
酒のせいで妙なテンションの鈴仙が、大砲の中に入ろうとしたのをジンは慌てて止めようとした。
『落ち着け鈴仙! 明らかにてゐに乗せられているぞ!』
『なら、ジンがやる?』
『え? 俺が?』
『やめなさいてゐ、ジンには荷が重すぎるわ』
『そうだね、ジンもヘタレだし』
『むっ、そこまで言われたら引き下がれないな!』
こうしてジンは鈴仙の代わりに、大砲に乗り込むのであった。それが全ての間違いであった。
『一応聞くが、安全性は大丈夫なんだろうな?』
『大丈夫大丈夫、少し黒焦げになるだけだから』
『・・・やっぱりやめ―――』
『発射!』
こうしてジンは空へと打ち出されてしまった。しかし、その大砲は“送還砲”という物で、月の使者を強制的に月へと送り出す道具だったのである。
こうしてジンは、月へと射ち出されてしまうのであった。
―――――――――――
「さて、これからどうするか・・・・・・」
ジンは月の海を眺めながら、これからの事を考え始めた。
当面の目的は幻想郷の帰還である。その為には――――。
「確か、昨年月に行った時、幻想郷に送り返してくれた人がいたな。その人に会うか、しかし――――」
ジンは月と幻想郷の関係はイマイチ良く分かっていなかった。ただ分かるのは、あまり良好な関係では無いという事である。
(二回もイザコザがあったみたいだし、下手に会おうとすれば外交?問題になるかも知れないしな・・・かと言って、他に方法も無い訳だ。さて・・・・・・)
そんな事を考えていると、背中に何かを突きつけられた。振り向くと、いつぞやの玉兎が銃を突きつけていた。
「う、動くな!」
「・・・・・・これはこれで好都合――――か?」
銃を突きつけられたまま、ジンは小さく呟いた。
―――――――――――
ここは綿月姉妹の屋敷、捕らえられたジンはここの地下牢に入れられてしまう。
それからしばらくして、玉兎はリーダーである依姫を連れて来た。
「貴方また来たの? こりないんだから」
やや呆れ気味であった依姫だが、直ぐ様気持ちを切り替えた。
「さて、単刀直入に聞くけど、今回は何の目的で来たの? 観光? 海水浴?」
「いや、不慮の事故だ」
ジンの答えに、依姫は頭を抱えた。
「あのねぇ・・・ここは月なのよ? 結界だってしっかりしてるし、不慮の事故で来れるわけ無いでしょ」
「とは言われても、気づいたらここに居たわけだし・・・・・・」
「・・・ふぅ、仕方ないわね。レイセン! あれを持って来なさい!」
「は、はい!」
レイセンと呼ばれた玉兎は、地下牢から出て行き、装飾が施された剣を持って来た。
「それは?」
「これは真言の剣と言って、虚偽を切る剣なのよ。
どんな虚偽でも、この剣の前では偽れない」
「つまり?」
「そうね、この場合は“嘘をついた人間を切り殺す剣”と考えてもらって構わないわ」
「なるほど、逆に言えば嘘をつかなければ切られないって事だな」
「そうよ、だからくれぐれもつまらない嘘をつかない事ね。死にたくなければ」
「・・・・・・」
「それじゃ最初の質問よ、“貴方は何をしに月に来た”」
「“何も、事故でここに来た”」
ジンがそう言った瞬間、依姫は容赦なくジンの頭に剣を降り下ろした。しかし、剣はジンを切り裂く事はなかった。
「嘘!?」
「いてて・・・これで嘘じゃないってわかっただろ?」
「いえ、まだ貴方には聞くことがあるわ」
そう言って、依姫は再び剣を構えた。
その後、ジンは質問に答えては剣で殴られ、答えては殴られ続けるのであった。
それから時間が経ち、依姫の尋問が終わる頃には、ジンの頭はコブだらけになっていた。
「もう・・・終わりか・・・・・・?」
「え、ええ、貴方の事情は大体わかったわ」
「出来れば、コブだらけにならない方法が良かった・・・・・・」
ジンは頭を擦りながら、そう呟く。
流石に罪悪を感じた依姫は、ジンの要望に応える事にしようとしたのだが、それにはある問題があった。
「事故で来たのなら、直ぐに地上に送り返して上げたいけど―――」
「何か問題が?」
「貴方を月に送った送還砲何だけど、それにはある細工が施されているのよ」
「それは?」
「それで送られた月人は、地上に行けないようになるのよ。そういう術式が施されているの」
「ええ!? それじゃ、俺は幻想郷に帰れないのか!」
やや取り乱すジンに、依姫は落ち着くように諭した。
「落ち着いて、他の者ならともかく、八意様の教え子である私と姉様なら、この術式を解除できるわ。ただ―――」
「時間が掛かる?」
ジンがそう聞くと、依姫は静かに頷いた。
「一ヶ月は掛かると思う。それまで辛抱して欲しいんだけれど」
「帰れるのなら、一ヶ月も二ヶ月も待つさ。ただ―――」
「何かしら?」
「それまで俺は地下牢に?」
ジンの質問に、依姫はどうするか考え始めた。
地下牢に監禁するのは最も安易な方法だが、彼の話を聞く限り自分達の師である永琳とそれなりに親しい間からある事がわかる。そんな人間を無下な扱いで良いのか?と悩んだ。
(だけど、彼は地上人である以上穢れを持っている。そんな人間を一ヶ月も置いたら、たちまちバレてしまう。そうなったら、私達の立場が不味くなってしまう。さて、どうしたものか・・・・・・)
依姫は真剣に悩んでいると、姉の豊姫がやって来た。
「あら、面白い事をしているのね依姫」
「お姉様ちょうど良かった、実は――――」
「まさか貴女がこういう趣味をしているなんて、知らなかったわ」
「なぁ!? ち、違います! 私はこんなを飼う趣味はありません!」
「違う子だったら飼うの?」
「だーかーら! そういうつもりでは――――」
「ふふっ、冗談よ依姫。大体の事情は分かっているから」
「え?」
「先程、八意様から暗号通信が来たのよ。大体の経緯と、彼の事をよろしくって」
「知っていたのなら、教えて下さいよ!」
「教える前に、貴女は地下牢に行って彼を虐めていたじゃない。姉としてどうかと思うわ」
「居たのなら止めてくれよ!」
「ごめんなさい、見ていたら何だか面白くなっちゃって」
豊姫楽しそうに笑い、依姫とジンは深い溜め息を吐く。
「それでお姉様、どうするおつもりですか?」
「うーん、八意様の御友人を地下牢に閉じ込めたくは無いわ」
「ですが、彼は地上人、穢れがある以上、いずれはバレてしまいますよ」
「それなら、穢れを出さないようにすれば良いのよ」
「まさか・・・アレを使うのですか?」
「ええ♪ 今まで誰も使ってくれなかったから、この機会にね♪」
「何だアレって?」
「秘密兵器よ。持って来るから待ってて」
そう言って、豊姫は楽しそうに地下牢を出て行った。
その後、豊姫が持って来た秘密兵器をジンは素直に着ていた。
「わー♪ 可愛い♪」
「・・・・・・一体何なんだコレは?」
ジンが着ていたのは兎のキグルミであった。
疑問に思っていると、依姫が説明を始める。
「特殊制圧スーツRPDー72よ。少数で敵を制圧する為に作られたパワードスーツよ。
センサーは勿論、防御機構、機動性、通気性、あらゆる面においてこれ以上のパワードスーツは無いくらい高性能よ」
「凄いのは分かったが・・・何でキグルミ?」
「知らない、作った本人に聞いてちょうだい」
依姫はやや投げっぱなし気味であった。一方豊姫は、キグルミ姿のジンが大層気に入ったのか、とても喜んでいた。
「デザインが気に入っていたんだけど、誰も着れなかったのよ。貴方が来てくれて良かったわ♪」
「そ、そうか・・・・・・」
「ねえねえ、腕を振ってみて頂戴」
「こ、こうか?」
ジンは豊姫の要望通りに両腕をブンブン振り回した。
「キャー♪ 可愛いー♪」
我慢が出来なかったのか、豊姫はキグルミ姿のジンに思いっきり抱きついた。
(俺は一体どうなってしまうんだ・・・・・・)
ジンはこれからの事を考えると、より一層の不安を抱くのであった。
こうして、長いようで短い、月の生活が始まるのであった。