東方軌跡録   作:1103

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又もやネタ不足気味です。ネタが無いと、内容が纏まらないですね・・・。


妖怪相撲 前編

ジンが月に戻ってから数週間が経過した。

博麗神社はいつも通りの日常が流れていた。ただ一つ違うとすれば――――。

 

「ジンが逞しくなった?」

 

「ええ・・・・・・」

 

神社の縁側で、魔理沙と霊夢はお茶を啜りながら話していた。

 

「あいつが逞しくいのは、今に始まった事じゃないだろ?」

 

「精神的な意味じゃなくて、その・・・・・・」

 

「何なんだよ? ハッキリ言えよ」

 

霊夢はやや恥ずかしそうにしていたが、意を決して話した。

 

「か、体がよ・・・・・・」

 

「体?」

 

「そう、この間思わず見ちゃったんだけど・・・・・・」

 

それは数日前、夕立の中帰って来たジンに、着替えを持って来た時の事である。霊夢は偶然にも、上着を脱いでいるジンの姿を目撃してしまったのだ。

 

「その時のジンの体、かなり筋肉質になっていて・・・・・・」

 

「・・・ま、まあ一ヶ月、月で鍛えられたっていうし、それぐらいにはなるんじゃないか?」

 

「おかげでこっちは、ジンと会うたびにどぎまぎするってのに・・・・・・」

 

「そう言えば、そのジンは?」

 

「今日は華仙の所で修行しに行っているわ」

 

そう言いながら、霊夢は空を見ながら御茶を啜った。

 

―――――――――――

 

その頃、華仙の屋敷では仙道と呼ばれている呼吸法の修行を行われていた。

 

「ゆっくりで良いから、呼吸のリズムを崩さないように」

 

「スゥー、ハァー、スゥー、ハァー」

 

「その状態を維持しなさい」

 

華仙に言われた通りに、呼吸のリズムを保とうとするジンであったが、一分も持たずに乱れてしまう。

 

「約一分か・・・まだまだ修行は足りないわね」

 

「これ結構キツイんだが・・・・・・」

 

「最初はキツイだろうけど、慣れれば一ヶ月ずっと出来るようになるわ。それに身体を活性化させ、若さも保てるわ」

 

「ふーん、まるで漫画みたいな話だな」

 

「この呼吸法を元に、不老不死を目指した仙人がいたけど、呼吸が出来ないと効果が発揮出来ない欠点があって、今では廃れてしまったのよ。昔は治療や妖怪退治に使われていたけどね」

 

「ふーん、良く知っていたな」

 

「ちょっと文献を読んでね、気になって調べたことがあるのよ」

 

「華仙も使えるのか?」

 

「当たり前でしょ、出来なかったら教えてなどいないわ。さあ、もう一度やるわよ」

 

再び呼吸法の修行を始めるジンであったが、その日は一分の壁を越える事は出来なかった。

 

 

その日の修行を終え、帰る準備をしていた所、一枚のチラシを見て神妙な表情をしている華仙の姿が目に止まった。

 

「どうしたんだ華仙?」

 

「え? あ、何でも無いわ・・・・・・」

 

華仙はそのチラシを隠そうとしたが、その前にジンに取られてしまった。

 

「あ!」

 

「何々・・・・“妖怪相撲開催、参加者求む”妖怪相撲?」

 

「こらジン! 人の物を取るのは何事です!」

 

「わ、悪い、隠そうとしたから、つい気になって・・・所で、妖怪相撲ってのは?」

 

「河童達が今度開催する相撲大会の事よ」

 

「ふーん・・・でも何で隠そうとしたんだ?」

 

「それはその・・・・・・」

 

何やら華仙は言いづらそうにしていた。どうやら相撲大会の事を隠そうとしていた様だったが、何故隠そうとしているのかまではわからなかった。だからジンは、思いきって聞いてみる事にした。

 

「何かあるのかこの相撲大会に?」

 

「まあ、あるにはあるんだけど・・・・・・」

 

「何かハッキリしないな・・・何があるんだ?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

やはり言おうとしない華仙。これ以上追求するのは、あまり良く無いと思ったジンは、それ以上は聞かない事にした。

 

「何か話せない事情があるなら、これ以上は聞かないけど、力になれる事なら遠慮なく頼ってくれ。

俺は華仙の弟子なんだから」

 

「ジン・・・・・・」

 

ジンはそう言って、屋敷を後にした。

華仙は最後に何か言おうとしていたが、最後までそれを言うことは無かった。

 

―――――――――――

 

その日の夜、神社に遊びに来ていた萃香と一緒に晩酌をしていた時、ジンは昼の華仙の様子について萃香に話していた。

 

「――――ってな事があったんだよ」

 

「ふーん、何か珍しいね」

 

「そのチラシなら、うちにも来てたわよ」

 

そう言って、霊夢は一枚のチラシを出した。それは確かに華仙が持っていた物と同じ物であった。

 

「妖怪相撲か、懐かしいねぇ」

 

「萃香はやった事があるのか?」

 

「まあね、最も今ではやらなくなったけど」

 

「何で?」

 

「私達鬼の相手がいなくなったからね」

 

そう言った萃香は、何処か寂しそうであった。

力の強いが故に孤立する鬼、そう思うと少し哀れみを感じてしまった。

 

「しっかし、何でこれを隠そうとしていたのかしら?」

 

「どれどれ・・・これは――――」

 

萃香はチラシを見ると、表情を変えた。そして霊夢に席を外そうに言う。

 

「悪いけど霊夢、席を外してもらって良いかい?」

 

「え? 何でよ?」

 

「これは華仙に関わる事だからだよ。ジンは華仙の弟子だから、知る権利はある。けど――――」

 

「わかったわよ、あまり知られたく無い事なのね」

 

「察して貰えて助かるよ」

 

霊夢はやや不満そうにしたが、大人しく席を外してくれた。

二人っきりなると、萃香は話を切り出した。

 

「さて、何処から話そうか・・・そうだね、先ずは華仙の右腕についてかな?」

 

「右腕って、いつも包帯がされている腕か?」

 

「ああ、右腕について華仙からは?」

 

「いや、何も聞いていないが・・・」

 

「なら先ずはそこから話そう」

 

萃香はそう言うと、華仙の右腕について話始めた。

 

「あいつ、右腕が無いんだよ」

 

「え? だって包帯が――――」

 

「あれは術でそう見せているだけで、実際は腕は無いんだよ」

 

「そうなのか・・・・・・知らなかった」

 

「アイツはずっと自分の右腕を探しているんだよ。今回も、それが原因かも」

 

そう言って、萃香はチラシの優勝商品の一つを指した。

 

“河童の腕”

 

そう書かれていた。

 

「河童の腕? それが華仙の腕と何か関係が?」

 

「分からないけど、腕の事になると見境が無くなる時があるから、もしかしたら優勝商品が自分の腕だと思ったんじゃない」

 

「なら、華仙はこれに参加するのか?」

 

「無理だと思うよ、妖怪相撲は規定された服装を着なきゃいけないし、武器を隠せそうな物は外す取り決めがあるから」

 

「そうか・・・なあ萃香」

 

「ん? なに?」

 

「俺も参加出来るか?」

 

その言葉を聞いた萃香は目をまるくした。

 

「人間が参加するのは初めてだが、鬼人になるのかい?」

 

「いや、人のままで参加したい」

 

「相手は力自慢の妖怪だよ? 人間の腕力で勝てるとは思えないけど?」

 

「それなら技で何とかするさ。人はそうやって、強い者に勝っていったんだ」

 

「そうかい、それなら私も手伝うよ」

 

「萃香が?」

 

「なに、練習相手は必要だろ? 私で良ければ付き合うよ」

 

「ありがとう、恩に切るよ萃香」

 

「なに、友人を助けるのは当然だよ」

 

こうして相撲大会に参加する事を決めたジンは、その日の為に萃香と特訓を始めるのであった。

 

―――――――――――

 

相撲大会当日、妖怪の山の麓は多数の人や妖怪が集まっていた。

その中にはジンと萃香の姿があった。

 

「サイズは大丈夫?」

 

「ああ、ピッタリだ」

 

ジンは妖怪相撲の規定であるシャツとハーフパンツを着用し、その上にまわしをつけていた。

シャツとハーフパンツは河童が作った特殊な物で、掴みにくくなっているのだ。

 

「それにしても、結構な数の参加者がいるんだな・・・・・・」

 

「久々に開催されたから、腕自慢が集まっているのよ。

それよりも、本当に参加するのジン?」

 

文は不安そうにジンに聞くが、ジンは迷わずに答えた。

 

「ああ、そのつもりだ」

 

「貴方が決めたのなら止めないけど、くれぐれも無理はしないでね」

 

「大丈夫だって、その時はセコンドの私が止めるから。それじゃ開会式に行くよ」

 

「武運を祈るわジン」

 

文に見送られ、ジンと萃香は開会式に参加しに行くのであった。

 

 

開会式が行われ、予選が始まった。その最中に華仙が慌てて駆け付けた。

 

「はあ・・・はあ・・・、ジンは何処に――――」

 

華仙は辺りをキョロキョロしていると、博麗一行と何故か一緒にいる正邪の姿を見つけた。

 

「霊夢!」

 

「あら、華仙じゃない」

 

「あらじゃないわよ! ジンが妖怪相撲に参加したらしいじゃない!」

 

「そうだけど」

 

「そうだけどって、貴女それで良いの!? 鬼人になっているならまだ良いけど、ジンの性格なら人間のままで参加するに決まっている! 人間が妖怪の腕力に勝てる訳――――」

 

「でも、普通に勝ち進んでいますけど?」

 

「え?」

 

その言葉を聞いた華仙は、ジンの土俵の方を見る。するとそこには、自分より大きい体格の妖怪を投げ飛ばすジンの姿があった。

 

「こ、これは・・・・・・?」

 

「何か知らないけど、月で教わった格闘技を使っているらしいよ」

 

それは依姫から教わった軍隊格闘技である。

この格闘技には投げ技と組技が多く、相撲でも十分に活用出来るのであった。更にジンには相手の動きの軌跡が見えるので、攻撃を見切り投げ返す事で勝ち進んでいたのである。

 

「最初は不安だったけど、この調子なら大丈夫みたいよ」

 

「そう・・・なら良いんだけと、どうして大会に出たのかしら?」

 

不思議そうにしている華仙に対して、霊夢はジト目で見ていた。

 

「な、何よ・・・・・・」

 

「・・・何でもないわ、そんなのは本人に聞けば良いじゃない」

 

 

そう言って、霊夢はそっぽを向く。何がなんだか分からない華仙は、ただ戸惑っていた。

すると霊夢の手に握られた紙が目に入る。

 

「霊夢、その紙は?」

 

「ああこれ? 賭け券よ」

 

「賭け券?」

 

「誰が優勝するか賭けているのよ。因みに私達はジンに賭けているわ」

 

そう言って全員が賭け券を取り出した。そこにはちゃんとジンの名前が書かれていた。

流石の華仙もこれには呆れ果てていた。

 

「貴女ねぇ・・・巫女が賭け事をするのはどうかと思うけど?」

 

「うるさいわね、応援して尚且つお金も手に入るんだから、別に良いじゃない」

 

「損しても知らないわよ。

ところで、正邪は何故ジンに賭けているの?」

 

すると正邪は、まるで当然だと言うような感じで答えた。

 

「リサーチした結果、ジンに賭けた奴って少ないんだよね。だからだよ」

 

「どういう事?」

 

「つまり、ジンが優勝すれば、他に賭けた奴等は大損するし、私も大金も貰えて良いこと尽くしだよ」

 

「ジンが優勝するとは限らないのよ?」

 

「その時はその時、ジンの悔しがる顔が見れるから♪」

 

「・・・・・・」

 

「もう正邪ったら、素直をにジンに優勝して欲しいって言えば良いのに」

 

「な!?、何を言っているんだよ針妙丸! 私がそんな事を思っている訳無いだろ!」

 

顔を真っ赤にしながら否定する正邪。それに対して妖狐がやや呆れながら、正邪に言った。

 

「そんな事を言っても、説得力ありませんよ。さっきから声援を送っていたじゃありませんか」

 

「そ、それは相手を応援していたんだよ!」

 

それでも頑なに否定をする正邪に、ルナが更に追い討ちを掛けてしまった。

 

「え? でもさっきから“よくやったぞジン!”とか言っていたような・・・」

 

「~~~~! これで勝ったと思うなよー!」

 

そう言って正邪は、顔を真っ赤にしながら何処かへと走り去って行った。

 

「放って置いて良いのアレ?」

 

「良いわよ、その内戻って来るから。それよりも、ジンの試合が始まるわよ」

 

正邪を完全に放置し、霊夢達はジンの応援に専念するのであった。

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