お盆前なので、中々書く時間がありませんが、それでも頑張って書いていきます。
人里にある一件の寺子屋。
そこは多くの子供達が通っている人里唯一の学びやである。
教師は慧音と、何人かの臨時の教師がおり、ジンもその一人である。
そんな寺子屋に、ある事件が起きた。
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寺子屋の一つの教室の襖に、ジンと慧音は凝視していた。
「これが例の落書きか・・・・・・」
ジンは障子に書かれている文を見る。一つは日本語で書かれているが、もう一つは何と書かれているかはわからない文字で書かれていた。
「最初は悪戯だと思っていたが、こう毎日続くとな」
「犯人の姿は?」
「誰も見ていない。気づいたら既に書かれていたらしい」
「ふーむ・・・・・・」
ジンは能力を発動させる。
それによると、どうやらこれを書いたのは子供だとわかった。
「どうやら、子供が書いたらしいな」
「まさか生徒が?」
「いや、それにしたって、この不可解な文字を書くとは思えない。それに―――」
ジンは読める方の文字を見る。そこには慶応三年と書かれていた。
「これは年号だ。もしかして、授業でやった内容じゃないか?」
「どれどれ・・・ああ、確かに一昨日やった内容だ」
「授業の内容をメモをしているのか・・・何の為に? こっちの文字は一体・・・・・・」
そこでジンはしばらく考え、突然立ち上がる。
「慧音。これまでの落書きを取ってあるか?」
「あ、ああ、一応な」
「それを全部欲しい。専門家に解読してもらう」
「専門家?」
「ああ、どんな文字も読める。妖魔本オタクにな」
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ここは人里にある貸本屋の鈴奈庵。
ジンは、慧音から貰った悪戯書きを全て持って、小鈴に鑑定をして貰っていた。
「これは・・・間違いなく妖怪文字ですね」
「やはりそうか・・・それで内容は?」
「ちょっと待って下さい。ええっと――――」
小鈴は眼鏡を着け、妖怪文字を読み上げる。その内容はどれも、日本語で書かれていた文字と同じ物であった。
「・・・間違いないんだな?」
「はい、間違いありません。もしかしたら、この妖怪は文字の練習をしてたんじゃないですか?」
「理由は明日、本人に聞く事にする。解読ありがとう小鈴」
「いえいえ、これくらいどうってこと無いですよ。ところで――――」
「ん?」
「この落書き、譲ってくれませんか? 資料にしたいんです」
「そうだな・・・この事件が解決したらやるよ」
「やったー♪ ありがとうございますジンさん♪」
小鈴は嬉しそう飛び上がり、ジンに礼を言うのであった。
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翌日、寺子屋はいつも通りの授業を行っていた。
「それでは今日はここまで、ちゃんと宿題をするように」
「「「「はーい」」」」
その日の授業が終わり、子供達が帰る中、ジンは一人の子供に声を掛けた。
「ちょっと良いかな?」
「え? あ、はい・・・・・・」
子供は呼び止められた事に驚き、戸惑っている様子であったが、ジンは気にせず言葉を続けた。
「お前だろ? 最近障子に落書きをして妖怪は」
「ち、違います! 僕じゃありません!」
「それじゃ、その耳は何だ?」
そう言ってジンは、頭の癖毛を摘まむ。するとそれはピーンと立ち上がり、立派な狐耳だとはっきり分かる。
「あ!?」
「もう言い逃れは出来ないぞ」
「ううっ・・・・・・」
子供の狐は、頭を抱えて踞る。そんな彼に、ジンは目線を合わせて話し掛けた。
「何も罰しようとはしない。ただ、こんな事をした理由を教えて欲しい」
「・・・・・・教えたら、見逃してくれる?」
「内容によってはだが、悪い事をしようとはしていないんだな?」
「うん、実は―――」
子狐は落書きをした理由を話始めた。
彼は最近、社会勉強として人里に訪れ、その時偶々寺子屋の様子を見て、興味を持ったらしい。その後、子供達に紛れ込みながら授業を受けていたのである。
「それが何で、障子にあんな落書きを?」
「実は・・・ノートを持っていなくて・・・それで―――」
「ノート代わりに障子に書いたって訳か、なるほど」
「あ、あの、もう来ませんから、博麗の巫女には黙ってくれませんか?」
「霊夢に? それまたどうして?」
「悪さをしたら博麗の鬼巫女に退治されるって、良く言われているんです」
「鬼巫女って・・・霊夢が聞いたら怒るだろうな」
「もう二度と来ませんから! お願いします!」
子狐は深々と頭を下げ、ジンに頼み込む。そんな子狐を見て、ジンは彼の頭をそっと撫でてあげた。
「別に霊夢に言うつもりは無いし、寺子屋に来るなとも言わない」
「え?」
「ここは学び舎。子供達が学ぶ場所なんだから、別に遠慮はしなくても良いぞ。慧音からは、俺が伝えといてやるから。
ただし、障子にはメモを取るな。妖怪文字があるだけで、怖がる人がいるからな」
「で、でも、ノートを買うお金が無くて・・・・・・」
「それなら、いい店を紹介しておく。彼処なら、条件次第でノートをくれるからな」
そう言ってジンは、悪戯な笑みを浮かべるのであった。
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それから数日後。あれから落書きは無くなり、寺子屋はいつもの風景を取り戻した。
あの子狐も、いつも通りひっそりと寺子屋に通っていた。
「ちょっと、何でそんな大事な事を私に言わなかったのよ?」
人里にある茶店で、霊夢は不機嫌そうにジンに問い詰めているが、ジンは涼しい顔で答えた。
「今言っただろう」
「慧音から話を聞いた時点で、私に相談しなさい。慧音も慧音よ、何で私に相談しなかったのよ」
「下手に騒げば、子供達が不安がるだろ。霊夢は有名人だから、何かあったと騒ぎ立てる人は少なからずいるからな」
「それはそうだけど・・・・・・」
「それに、相手は子供で、理由も真っ当だった。退治する必要性は無いだろ?」
「それはまあ・・・だけど大丈夫なの?」
「何が?」
「話によると、その子はお金が無いんでしょ? ノート欲しさに盗みを働くかも」
「それは無いな」
「断言出来るわね」
「そりゃ出来るさ、ノートを無償で提供してくれる親切な貸本屋の娘がいるからな」
「ノートを無償で? 一体誰よ? そんな酔狂な事をする子は?」
「まあ、酔狂な事が好きな子だからな。俺から見ても、かなり変わった子だよ」
そう言って、ジンは外を眺めていると、一人の子供と目が合う。その子供はジンに気づくと、丁寧に御辞儀をし、走り去って行ってしまった。
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事件から数週間後。
鈴奈庵では、小鈴が上機嫌で何かの巻物を眺めていた。
「ふふふ♪」
「何笑っているのよ?」
「うひゃあ!?」
突然声を掛けられ、小鈴は驚き跳ね上がる。声の主を確認すると、友人の阿求がそこに立っていた。
「な、なんだ阿求か・・・驚かせないでよ」
「客を放っておいて、ニヤニヤしているのはどうかと思うわよ? 端から見てたら、気味が悪かったわよ」
「気味が悪いとか言わないでよ!」
「それで? 何を見ていたの?」
阿求は、小鈴が見ていた巻物を除き込むと、そこには落書きをされた和紙が張られていた。
「何これ? 障子の和紙?」
「え、えーと・・・少し前に妖怪が障子に落書きをしたのよ。それで、いらなくなっから、この和紙を譲って貰ったのよ」
「そんな話初耳よ」
「そりゃ誰にも話して無いし、落書きされた所の人達も口外して無いと思うわよ」
「それだと治安が悪くなるわ。一応霊夢には話しておかないと―――」
「それなら心配無いと思う。ジンさんがその妖怪を捕まえたから」
「ジンさんが?」
「ええ、二度と落書きしないように言ったらしいわ」
「ふーん・・・・・・」
二人がそんな話をしていると、一人の子供が店に入って来た。
「こ、こんにちは・・・・・・」
「あ、いらっしゃい。ちょっと待っててね」
小鈴はそう言うと、一冊の本を取り出し、子供に手渡す。それを受け取った子供は、今度は自分が持っている本を小鈴に渡すのであった。
「はいありがとう。またいつでも来てね」
「う、うん」
子供は御辞儀をすると、そそくさと店を出て行った。
「今の子は?」
「へ? ああ、最近来るようになった御得意様。ああやって何日かに一回は来てくれるのよ」
「へぇ、今時珍しい勉強熱心な子ね」
阿求は素直に感心するのだったが、実は先程の子供は子狐が化けた姿であった。
ジンが言っていた店とは鈴奈庵の事であった。小鈴に事情を説明すると、彼女はある条件で引き受けてくれたのである。
その条件とは、“使い切ったノートと交換”である。これにより、子狐は新たな白紙のノートを、小鈴は子狐がびっしり書いた妖怪ノートを手に入る事が出来るので、両者にとっては悪い話ではなかった。
それから度々、子狐が鈴奈庵に通うのだが、それを知っているのはジンと小鈴だけであった。