原因はケーブルだったらしく、交換したら直ぐに直りました。
こういう故障の原因は、素人では分からないですよね。
ある冬の日。人里多くの人達があっちこっちと慌ただしく動いていた。理由としては今朝方、龍神の像がの瞳が黒くなっていたからである。黒は荒れた天気を示しているので、もうすぐ大雪が来るかも知れないのである。
その為、人々は大雪対策の為に動いていた。
そしてジンもまた、その対策に買い物に来ていた。
「―――と、こんな物か。妖狐、そっちの方はどうだ?」
「はい、バッチリ買えました」
そう言って妖狐が買い物袋を見せた。その中には、ジンに頼まれていた防寒道具などが入っていた。
「よくやった。こっちも食料を買えた。これなら二、三日は持つだろう」
「流石に大袈裟な気もしますけど・・・・・・」
「備えあれば憂いなし。何事も予想外の事態が起きるもんだ。大袈裟な方がちょうど良い」
「はあ・・・・・・」
「ところで針妙丸は?」
「あれ? さっきまで一緒だったのですけど・・・・・・」
「ジーン、妖狐ー」
すると二人を呼ぶ声が聞こえる。振り返るとそこには手を振っている針妙丸と、何処かバツ悪そうにしている正邪がいた。
「何処に行っていたんだ針妙丸。ちょっと心配したぞ」
「ごめんごめん、ちょうど正邪と会って、話をしていたんだ」
「どーも・・・・・・」
正邪は素っ気ない返事をした。彼女をよく見ると、かなり大きい荷物を背負っている事がわかった。
「正邪さんも、大雪対策に買い物をしに来たんですか?」
「いや、まあ・・・・・・」
「何だ? 随分と歯切れ悪いな」
疑問を抱くジンに、針妙丸が正邪の代わりに答えた。
「実は、正邪の家が壊れちゃったみたいなんだ」
「壊れた?」
「・・・・・・屋根の雪掻きをサボってたら、その重みで潰れたんだよ」
「お前な・・・・・・」
「うるさい! だからお前だけに言いたくなかったんだよ!」
正邪は半ば涙目になりながら叫んだ。流石にこれには同情したジンであった。
その時ジンは、重大な事実に気づいてしまった。
「ところでお前、行く当てはあるのか? もうじき大雪が来るんだぞ?」
その質問に、正邪は困り果てた表情をして言った。
「・・・・・・無い」
「無いってお前・・・・・・」
「しょうがないじゃん! 友達そんなに多く無いんだから!」
「俺が悪かったから、そんな涙目で叫ばないでくれ」
「ねえジン、正邪を泊めてあげられないかな?」
「うーん・・・・・・」
ジンは少し考えた。
ハッキリと言うと、泊めたくないというのが本音である。しかし、もしここで拒否をすれば彼女はどうなってしまうか。大雪の中、一人寂しく凍え死ぬ正邪の姿を想像してしまうと、とても拒否出来なかった。
「・・・・・・わかった。今回だけだぞ」
「わーい! 良かったね正邪!」
「・・・・・・」
「正邪?」
「・・・・・・正直、断わられると思った」
「ああ、お前なんか泊めたく無い。だけど、死なれたら正直目覚めが悪い」
「相変わらず、ヘドが出る理由だね。そんなに良い子ぶりたいのかよ」
「なんとでも言え、ともかく今回は泊めてやる。お前だって死にたくは無いだろう?」
「そこまで言うなら、泊まってやらないでも無いな」
「お前、本当に嫌な奴だな。こういう時は、ありがとうって言うもんだろ?」
「嫌だね。そんな臭い台詞、死んでも言わない」
「まあ、お前にそんな言葉を期待してはいないが、泊まっている間は大人しくしていろよ。霊夢の機嫌を損ねたら、追い出されるかも知れないからな」
「仕方ない、私だって凍死はごめんだからな、今回ばかりはお前の言う通りにしてやるよ」
(何となく不安だ・・・・・・)
こうして、天邪鬼の正邪が泊まる事になった。果たして、何事も無く過ごせるだろうか、ジンは一抹の不安を抱くのであった。
―――――――――――
神社に帰って来たジンは、霊夢に事情を説明をした。
事情を聞いた霊夢は、少し呆れた様子であったが、正邪を泊まらせる事を了承してくれた。
その後ジン達は、これから来る大雪対策に母屋の雨戸を全て閉じる作業に移った。
「これで、こちら側は大丈夫だな。妖狐達の方はどうだろう?」
妖狐達がいるであろう、反対側の縁側へと向かうジン。しかし、そこに妖狐達の姿は無かった。
「何をしてるんだあいつら・・・・・・」
不振に思いながらも、妖狐達がやろうとした雨戸の戸締まりを代わりにやるジン。すると、何処からか声が聞こえてくる。
「おかしいな・・・一冊も無いなんて有り得ないぞ」
「ですが、他に隠す場所はありませんよ?」
「いーや、絶対にある筈だ」
そんな声が、何故か自分の部屋から聞こえて来た。
ジンはため息を吐きながら、部屋の戸を開けた。
「おい、人の部屋で何をしているんだ?」
「うひゃあ!?」
「ちっ、見つかったか」
部屋にいたのは妖狐と正邪であった。
妖狐は驚き声を上げ、正邪は忌々しいと舌打ちをした。
「もう一度聞く、何をしているんだ?」
「え、えーと・・・・・・」
「お前の隠している秘蔵本を探していたんだよ」
「秘蔵本?」
「しらっばくれるなよ♪ 男なら一冊や二冊、隠し持っているだろ?」
正邪はニヤニヤと笑い、悪ぶれた素振りも無くそう言った。ジンは再度ため息を吐き、正邪の頭を叩く。
「アホな事やっていないで働け、妖狐もだ。こんなくだらない事に付き合うな」
「ご、ごめんなさい」
「いってぇ~、後で覚えていろよ!」
妖狐はしょんぼりしながら、正邪は頭を擦りながら部屋を出ていった。
部屋を後にした妖狐は、正邪に文句を垂れていた。
「もう! 貴女のせいで怒られたじゃありませんか!」
「何言ってんだよ、お前だってノリノリだったじゃないか」
「ううっ、それはそうなんですが・・・・・・」
「それに収穫はあったよ。ほれ見ろ!」
そう言って、正邪が見せたのは一冊のノートであった。その表紙には、“絶対に見るな”と書かれていた。
「いつの間にそんな物を・・・・・・」
「ジンが部屋に入る寸前に見つけたんだよ。きっとこれには、あいつの恥ずかしい秘密が書かれているに違いない♪」
「あれ? 趣旨が違いません? ジンさんの趣向を調べる為では?」
「それ方便だから。私的には、あいつの弱味を握られれば、春画だろうがポエム集でも構わないんだよ」
「・・・・・・以前から気になったんですが、どうしてそこまでジンさんに嫌がらせをするんですか?」
「そりゃ、あいつが気に入らないからだよ。それ以外に理由は無いよ」
(全然そうには見えないのですが・・・・・・)
「ともかく、早速拝見するぞ」
「あ! ちょっと待っ―――」
妖狐の制止を無視し、正邪はノートを開いた。しかし、何も書かれてはいなかった。
「あれ? おかしいな・・・・・・?」
正邪はパラパラとページを捲る。そして最後のページを開くと、そこに大きく一文が書かれていた。
“引っ掛かったなマヌケ”
「な、な、な・・・・・・」
「どうやら、嵌められたのはこちらの様ですね」
「ち、ちくしょー!!」
正邪は悔しさのあまり、その場でノートをビリビリに破いた。
―――――――――――
夕方頃、大雪は幻想郷に到来した。
人や妖怪達は、其々の家と住みかに籠り、大雪が過ぎ去るのを待った。この博麗神社も例外ではなく、五人の人と妖怪は居間で暇を持て余している。
「あ~、退屈だ。ジン、何か面白い事は無いのか?」
「さっき漫画貸したばかりだろうが」
「そんなの全部読んだよ。まったく、早く次巻が幻想入りしないかな?」
「その辺は我慢しろ。どうしてもと言うのなら、紫にでも頼め」
「嫌、私あいつ苦手」
そう言った正邪に、ジンは深いタメ息を吐く。
そんな時、針妙丸がトランプを持ち出した。
「どうせなら、皆でトランプしない?」
「おっ、いいねぇ♪」
「トランプですか・・・・・・」
「まあ暇だし、別に良いじゃないかしら」
「決まりだね♪ それじゃ何をする?」
「大富豪だな」
「大貧民だね」
針妙丸の言葉に、ジンと正邪は同時に答え、互いに目が合う。
「何で大富豪なんだよ、大貧民だろ?」
「俺の所では大富豪なんだよ。まあ、名称なんてどうでも良いけど」
「良くない、大富豪なんてむかつくじゃない。まさに勝ち組って感じでさ」
「変なところで拘るよなお前」
「どうでもいいけど、やるならさっさとやりましょ」
「それじゃ、私がカードを配ります」
「言っておくが妖狐、イカサマするなよ」
「ギクッ」
「やるつもりだったの!?」
「そ、そんなこと、ある訳無いじゃないですか、あははは・・・・・・」
「やったら、一ヶ月お揚げ禁止よ」
「はーい・・・・・・」
妖狐はしょんぼりしながら、イカサマせずにカードを配り始めた。
ゲームが開始されてからしばらく時間が経過した。現在の順位は、一位霊夢、二位妖狐、三位針妙丸、四位ジン、五位正邪であった。
「くっそ~、もう一回だ!」
正邪はヤケクソ気味にそう言い、カードをシャッフルし配り始める。そして、大富豪の霊夢とカードを二枚ずつ交換した。
「あらありがとう、こんな強いカードをくれて♪」
そう言って霊夢が差し出したのは、最弱の三カード二枚であった。
その時、正邪はニヤリと笑った。
ゲームは進み、中盤に差し掛かった。どのプレーヤーも、手札が半分になっていた。
「ダイヤの七よ」
霊夢がカードを出し、次は正邪の番になった。そこで正邪は勝負に出た。
「スペードの八! 八切りだ!」
ジンは八切りを行い、自分の手番に回す。そこで正邪は、起死回生の一手を繰り出す。
「三のフォーカード! 革命だ!」
「か、革命ですって!?」
「革命って、同じ数字を四枚同時に出す事によって、カードの強弱を逆転するでしたよね?」
「ああ、この瞬間に、二が最弱で三が最強になる。強いカードを一杯持っている霊夢には致命的だな」
「逆に正邪は、弱いカードを一杯持っているから、逆転のチャンスだね」
「ま、まだよ! まだゲームは終わっていないわ!」
「いいや、お前の天下は終わったよ。見せてやるよ、これが下剋上だ!」
そう言って正邪は、畳み掛けるようにカードを出す。この時の為に弱いカードを温存していた正邪を止める術もなく、彼女はそのまま一番上がりした。
「よし! これで大革命だ!」
「大革命?」
「大貧民が一位になると、今までの順位が逆転するんだ。だから霊夢は大貧民、妖狐は貧民になり、俺は富豪になる訳だ」
「私は?」
「針妙丸は平民だから、変動は無い。ともかく、このゲームは正邪の逆転勝ちだな」
「見たか! これが下剋上だ!」
そう言って、正邪は高笑いをした。しかし、次のゲームで正邪は都落ちをしてしまい、呆気なく大貧民に戻ってしまうのであった。
―――――――――――
ゲームを一通り楽しんだ後、ジン達は晩御飯を食べる事にした。
霊夢と妖狐が台所で鍋を作り、それを居間のこたつの上に置く。
「お、今日は鍋か」
「冬と言ったらこれでしょ」
「良いねぇ、それじゃ早速――――」
「「「「「いただきます!」」」」」
五人がそう言うと、それぞれ鍋に箸を入れる。
「う~ん♪ 美味しいわ~♪」
「本当、ほっぺたが落ちてしまいそうです♪」
「はふぅ、はふぅ」
「熱いから気をつけろよ」
「肉いただき♪」
それぞれ鍋の野菜や肉を食べていく。そんな中、正邪だけが肉ばかりを食べていた。
「おい正邪、そんなに肉を食べるな。他の奴の事も考えろ」
「そんなの知ったこっちゃないね」
正邪は悪ぶれた様子も無く、肉を食べ続けた。そんな正邪に、ジンは制裁を加える事にした。
「ふーん、そんな事を言うのなら、覚悟は出来ているよな?」
「何が?」
そう聞き返しながら、正邪は再び肉に箸を伸ばす。しかしその箸は、ジンの箸に止められた。
「・・・・・・何をするのさ」
「お前は十分に肉を食べた。これ以上食べる必要は無いだろ?」
「「・・・・・・」」
次の瞬間、二人の攻防が始まった。
正邪が肉を取ろうとすると、ジンはそれを妨害する。どんな素早く、フェイントを入れても、ジンの能力で先読みされ、肉を掴むことは出来なかった。その攻防がしばらく続くと、霊夢が怒り出す。
「あんた達! 食事中は静かにしなさい!」
「す、すまない・・・・・・」
「やーい、怒られてやんの♪」
「あんたもよ正邪! これ以上騒ぐのなら、外に放り出すわよ!」
「酷い!」
「だったら静かにしなさい!」
霊夢の怒声に二人は沈黙し、そのまま静かに食事を続けるのであった。
―――――――――――
食事を終えた一同は次に風呂に入る事にした。
ジンが火獸と水獸で風呂を沸かせ、それぞれ順番に入って行く。
正邪と針妙丸が風呂に入っている時に、順番待ちをしていた妖狐は、ジンにこんな事を聞いて来た。
「あの、つかぬことを聞きますが、ジンさんって、正邪さんだけ容赦ありませんよね?」
「言われてみればそうよね。普段なら大人しいあんたが、彼処までムキになるなんてね」
「ん? まあ、なんて言うか、同属嫌悪だからかな?」
「同属? あんたと正邪が?」
「寧ろ正反対なような気がしますけど・・・・・・」
「まあ何て言うか、昔の自分を見ているようで、あまりいい気はしないんだ」
「昔って、小さい時の頃?」
「ああ、あいつの考えはガキの頃の俺にそっくりなんだ。だから昔の自分を見ているようで腹が立つ。だけどその反面、尊敬もしている」
「ええ!?」
「尊敬って・・・あの正邪を?」
予想外の言葉に、妖狐と霊夢は驚きを隠せなかった。
「あいつはどんな時でも、自分を曲げない強さがある。その辺りは、素直に尊敬する」
自分の本質を一切否定せず、それを良しとする正邪。その心の有り様に、ジンは何処か惹かれていたのである。
「と言っても、やっている事は誉められる物では無いからな。その辺りは容赦するつもりは無い」
そう言ってジンは、こたつの上にあるみかんを食べた。
―――――――――――
全員がお風呂に入り終え、それぞれの部屋で寝る事になった。
その夜遅く、寝ているジンの部屋に誰かが入って来た。そしてそのままジンの布団に潜り込む。
「ん・・・? 針妙丸か・・・・・・」
「残念だけど違うね」
「なっ!?」
布団に入って来たのは正邪であった。
ジンは直ぐ様起き上がろうとしたが、後ろから抱きつかれて身動きが取れなかった。
「な、なんのつもりだ?」
「昼間の仕返し♪」
「はあ!? あれはお前の自業自得だろ!」
「やられっぱなしは性に合わないんだよ」
そう言って、正邪はますます腕の力を強めた。それに呼応するかのように、ジンの鼓動は早まる。
「以外とうぶなんだな。鼓動が早まっているぞ?」
「あ、当たり前だろ、女性に抱きつかれた経験なんて、あんまり無いんだからな・・・・・・」
「へえ、それはいい事を聞いたよ」
そう言って、正邪はニヤニヤと笑みを浮かべながら、今度はジンの耳に息を吹き掛けた。
「ひゃうん!?」
「あははは、変な声出してやんの!」
「お、お前なあ!」
「やめて欲しいか? それなら“やめて下さい正邪様”って、言うのなら考えてやるよ」
そう正邪はジンに言った。しかしジンは、首を縦に振らなかった。
「誰が言うか、それに言っても、辞めないだろお前」
「ああ勿論さ。お前の反応、中々おもしろいからな」
そう言って、正邪は更に行動をエスカレートした。
耳たぶを噛んだり、ジンの体をまさぐったりと、明らかに逆セクハラ的な行為を続け、息も荒々しくなって行く。
「うっ、あう、ひゃう」
「はあ、はあ、はあ、何だが、興奮して来たよ・・・・・・」
「~~~~! いい加減にしろ変態天邪鬼!」
「ぎゃん!?」
とうとう我慢の限界が来たジンは、正邪に対して肘鉄を喰らわす。肘鉄を顔面にもろに食らった正邪は、そのまま気絶してしまうのであった。
―――――――――――
翌日の朝、正邪が目を覚ますと、何故か宛がわれた部屋にいた。
「あれ? 確か昨夜・・・・・・痛っ」
何故か頭に痛みが走り、昨夜の記憶が一部抜けていた。取り合えず起き上がろうとするが、何故か体が動かなかった。その理由は直ぐにわかった。
「な、なんだこりゃー!?」
何と正邪は、布団で簀巻きにされていたのである。
どうにか動こうとするが、まるで陸に上がった魚のような動きしか出来なかった。そこにジンが入って来た。
「あ、ジンいい所に、ちょっと縄をほどいてくれないか?」
そうジンに頼むが、ジンは冷やかな目で断った。
「悪いがそれは出来ないな。しばらくそうして反省していろ」
「反省って・・・一体何の事だよ!?」
「昨夜の事だ! バカ野郎!」
そう言って、ジンは襖を閉め、そのまま部屋を去って行った。
「あ、おい待て! この野郎ー!」
そう正邪が叫ぶが、部屋に防音の結界が施されているので、その声が外に届く事は無かった。
その後、正邪は針妙丸に発見されるまで、部屋に放置されるのであった。