もしかしたら、他の二人と違い料理が出来ないのでは?
今回はそんな妄想をして、書いたお話です。
博麗神社にあるミズナラの御神木。そこにサニー達は住んでいる。そして今日も三人一緒に朝食を食べていたのだが――――。
「ちょっと、これはどういうつもりなのルナ?」
「え? 何が?」
「どうして目玉焼きが半熟なのよ!」
テーブルを叩きながら怒鳴るサニー。ルナは戸惑いながらも、理由を聞く事にした。
「え? 半熟で何が悪いの?」
「悪いわ! 半熟なんて中途半端な事をするから、目玉焼きの形が壊れちゃったじゃないのよ!」
「でも、結局食べるんだから、どっちだって同じでしょ?」
「違うわよ、目玉焼きの黄身は、太陽を象徴しているのよ。それを崩れる半熟は正に外道! 目玉焼きを冒涜しているわ!」
そうサニーは力強く言うが、ルナもスターも彼女の主張にあまりピンと来なかった。
「うーん、私的には半熟の方が良いけど・・・・・・」
「私も、完熟が良いって言うのはサニーだけじゃない」
「二人とも分かっていないわね、こうなったら私が美味しい完熟目玉焼きを作って上げるわ!」
「え? サニー料理作れたの?」
「勿論よ、私に掛かればちょちょいのちょいよ」
「何だが不安なんだけど・・・・・・」
「まあ見てなさい、明日には凄い目玉焼きを食べさせてあげるんだから」
そう自信満々に言うサニーであったが、内心困り果てていた。何故なら、料理をしたことなど一度も無いからである。
(困ったな・・・料理なんてした事無いのに・・・・・・でも、ここで引き下がったら、リーダーとしての威厳が無くなるわ。なんとしても、ルナをギャフンと言わせてやるんだから!)
そう心に誓い、サニーは黄身が崩れた目玉焼きを食べるのであった。
―――――――――――
それからサニーは、境内で雪掻きをしているジンに、助言を貰おうとしていた。
「――――そんな訳で、簡単に目玉焼きが出来るようにならない?」
そう懇願するサニーであったが、ジンは少し困った表情をした。
「うーん・・・俺も料理はお粥ぐらいしか出来ないからな。霊夢や妖狐に教わった方が良いぞ」
「出来れば、他の二人には知られたく無いのよ」
「そうか・・・・・・」
ジンはしばらく考えた。誰か他にサニーに料理を教えてくれる人はいないものかと、そして、ある一人の人物が浮かぶ。
「そうだ、魔理沙なら引き受けてくれるかも知れない」
「魔理沙さん?」
「ああ、確か何でも屋もしていた筈だから、引き受けてくれるかも知れない」
そう言ってジンはサニーを連れて、魔法の森に向かうのであった。
―――――――――――
魔法の森にある霧雨魔法店。そこに二人は訪れていた。
「おーい、魔理沙いるかー?」
ドアを叩き魔理沙を呼ぶ、するとドアをが開いた。
「なんだジンか、何か用か?」
「ああ、今日はお前に依頼をもって来た」
「依頼?」
「実はな――――」
ジンはこれまでの経緯を魔理沙に話した。
「なるほどな。わかった、この霧雨魔理沙に任せな!」
そう言って、魔理沙は自分の胸を叩いた。
魔理沙の家に上がり込んだ二人が見た物は、とても悲惨な光景であった。
あちらこちらに本や物が積み上げられ、歩ける場所は魔理沙の部屋に続く道しか無い程である。
「相変わらず汚いな・・・・・・」
「流石にこれは・・・・・・」
「う、うるさいな、これでも生活には困っていないぜ」
「女性としてそれはどうなんだ? まったく・・・ところで魅魔は?」
「魅魔様は、また旅行に行っている。帰って来るのはいつになるかわからない」
「そうか・・・まあ、取り合えず掃除だな」
こうしてジン達は、魔理沙の家の掃除をする事にした。
掃除を終え、ようやく料理を教えて貰える事になった。
「先ずはフライパンに油を引いて、火をよく通してから卵を投下するんだぜ」
「はーい」
サニーはおぼつかない手付きで、フライパンに油を引いた。
暫くし様子を見て、フライパンに十分火が通ったのを確認した魔理沙は、サニーに次の指示を出す。
「よし、そこで卵を投下しろ」
「わかりました!」
サニーは元気よく返事をし、卵を割ろうとするが、何故か片手で割ろうとしてしまい、卵をグチャっと潰してしまった。
「うへぇ・・・ぬるぬるして気持ちわる~い」
「・・・・・・何で片手で割ろうとしたんだ?」
「え? だって、その方がカッコいいと思ったから」
「カッコいい以前に、素人なんだから、そんな見栄を張るな」
「むう・・・・・・」
サニーは渋々と頷いた。
気を取り直して、次の卵を手に取る。今度は両手で割った。しかし、今度はフライパンの上に落ちた瞬間に黄身が壊れてしまった。
「ああ! 黄身が壊れちゃった・・・・・・」
「まあこれは仕方ないな、次頑張れば良いさ」
そう言って、魔理沙は壊れた黄身をかき混ぜ、スクランブルエッグにした。
フライパンを洗い、再度目玉焼きに挑戦するサニー。今度は、上手く割らずにフライパンの上に落とす事が出来た。
「やったー♪」
「よーし、今度は水を入れ、蓋を閉めて蒸すんだ」
「はーい♪」
魔理沙の指示に従い、サニーはフライパンに水を入れ、直ぐ様蓋を占める。暫く待つと、魔理沙は次の指示を出す。
「そろそろ良いかな、蓋をとってみろ」
「わかったわ」
サニーは蓋をあける、大量の水蒸気が立ち上ぼり、その中から見事な目玉焼きが姿を現した。
「よーし上出来た。後は、皿に移せば良いだけだ」
「ふふん、私に掛かればこんな物よ」
サニーは得意気に言って、目玉焼きを皿に移そうとしたが、何故かフライパンから離れなかった。
「あれ? おかしいな?」
「どうやら、油が少なかったらしいな」
「ええい! こなくそー!」
サニーは破れかぶれにフライパンを振り回す。すると目玉焼きは空中を舞い、そのままジンに目掛けて飛んでいった。
「「あ」」
「へ? うわあっちぃーー!?」
ジンの叫びが、家中に木霊した。
それから再度目玉焼きに挑戦するサニー。今度はフライパンから上手く剥がれ、皿に移す事が出来た。
「よーし、今度こそ成功だ。よくやったなサニー」
「えっへん」
「さて、失敗作を含めて食べる事にしよう」
そう言って、皿を食卓に並べた。因みに、スクランブルエッグはジンと魔理沙、目玉焼きはサニーが食べる事になった。
「「「いただきます」」」
食べ始める三人であったが、途中でサニーの手が止まってしまった。
「ん? どうしたんだサニー?」
「・・・・・・これ、半熟なのよ」
「それがどうかしたんだ?」
「私が作りたいのは、完熟目玉焼きなの!」
サニーはテーブルを叩きながら言った。そこでジンは、サニーの言葉を思い出した。
「そう言えば、そんな事を言っていたな」
「完熟も半熟も似たような物だろ?」
「全然違うわ! 例えるなら、太陽と月ぐらいに違うわ!」
サニーはそう言うと、再び台所に向かった。
「もう一度やるわ! 今度は完璧な完熟目玉焼きを作ってみせる!」
「おいおい、まだやるのか・・・・・・」
「まあ、本人がやりたいんだ。やらせてくれないか?」
「別に良いが、別料金請求するからな」
「わかった。その代わりに指導頼むぞ」
「任せておけ、私に掛かればシェフにだってなれるさ」
そう自信満々に言う魔理沙に対して、ジンは僅かな不安を抱く。
それからと言うもの、サニーは完熟目玉焼きを作る事が出来ず、どれも焦げた目玉焼きになってしまった。そして、卵の数も残り少なくなった。
「残り少ないな・・・ちょっと人里で買ってくる」
そう言って、ジンは人里なに卵を買いに行くのであった。
―――――――――――
ジンは、人里で目的の卵を買ったが、直ぐに戻らず、香霖堂を訪れていた。
「ん? ジンじゃないか、いらっしゃい」
「邪魔するぞ」
「今日は何をお求めで?」
「耐熱ガラスで出来た蓋を探しているんだが、あるか?」
「ちょっと待ってて」
そう言って、霖之助は店の奥へと行った。しばらく何かを探す音がするが、やがて止み、ガラスで出来た鍋の蓋を持って戻って来た。
「これなんてどうかな?」
「ふむ・・・ああ、これなら良いだろう。これを貰おう」
「毎度あり。それにしても、これを買うって事は、霊夢へのプレゼントかい?」
「いや、サニーにやろうと思って」
「サニーって、神社に住んでいる妖精? 何でまた?」
「まあ何と言うか、彼女に必要な物だからかな」
「まあ、深くは詮索しないよ。はいどうぞ」
ジンは霖之助から蓋を受け取り、彼に代金を手渡した。
「ありがとう、また何か必要だったら寄るから」
「お客さんは、いつでも歓迎するよ」
言葉を交わしたジンは、霖之助に見送られながら店を出ていった。
―――――――――――
魔理沙の家に戻ったジンが最初に見たのは、かなりの数の目玉焼きの失敗作だった。
「これは・・・かなり酷いな」
「お、帰って来たかジン」
「ああ。その様子だと、成果は芳しくないようだな」
「そうなんだよ、焦がしたり、完熟じゃなかったりしていてな・・・・・・」
魔理沙は少し疲れた表情で呟いた。一方サニーも、憔悴している様子であった。
そんなサニーに、ジンは優しく声を掛けた。
「大丈夫かサニー?」
「ジン・・・・・・」
「そんなに根を詰めていると、体に良くないぞ」
「だって・・・全然上手く出来ないんだもん」
「どうしてそんなに完熟に拘るんだ?」
その問いに、サニーは小さく答えた。
「sunny side up」
「え?」
「以前、ジンが教えてくれたよね。目玉焼きを片面で焼くのを、英語で言うとsunny side upって」
それはほんの些細な事であった。理由は今では思い出せないが、サニー達が聞いて来たので、その言葉を教えた事があった。
「sunnyってのは私の名前でもあり、太陽の呼び名でしょ?、だから、目玉焼きは太陽を象徴する物。それが崩れてしまうのが嫌なの」
ほんの些細な事であるが、サニーにとっては大切な事だと、ジンは感じた。
そんな落ち込んでいるサニーを、ジンは優しく撫でた。
「その気持ち分かるよ。俺も、黄身が崩れるのは嫌だからな」
「ジン・・・・・・」
「だから、これをサニーにプレゼントする」
そう言って、ジンは先程買ったガラス蓋を渡した。
「これは?」
「ガラスの蓋。これなら焼き具合が見えるだろ?」
「ありがとうジン! 早速やってみるわ!」
サニーは嬉しそうに蓋を受け取り、それを使って目玉焼きを作ろうとした。
魔理沙の教え通りに、フライパンに油を引き、火が通ったところで卵を投下、水を入れ、先程受け取ったガラスの蓋でフライパンに蓋をする。今までとは違い、中の様子が覗け、焼き具合が良くわかる。しばらくフライパンの中をじっと見つめ、黄身の色が完全に変わったところで蓋を開け、目玉焼きを皿に移した。
「ど、どうかしら?」
「どれどれ・・・・・・」
ジンは橋で黄身を刺す、黄身は崩れず、完熟になっていた。
「うん、ちゃんと完熟になっているぞ」
「や、やったー♪」
「よくやったなサニー」
「ジンのおかげよ、ありがとう♪」
ジンとサニーは、喜びを分かちあった。そんな中、魔理沙は二人に残された問題を伝えた。
「喜んでいるのは良いが、この大量の失敗作はどうするんだ?」
「「あ」」
テーブルの上には大量の失敗作が置かれていた。ジン達は、それらをどう処理すべきか悩むのであった。