東方軌跡録   作:1103

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こういう恋愛系の話しは好きなのですが、書くとなると難しいものです。


ビブロフィリアのデート 当日編

人里の広場では、ジンはただ一人、小鈴の到着を待っていた。

辺りを見回してから、腕時計を見ると、約束の時間から二十分は過ぎていた。

 

(うーん・・・これは何かあったか? 迎えに行った方が―――いや、すれ違いになったら最悪だ)

 

外の世界では、携帯やスマートフォンなど、すぐに連絡取れる便利な道具があるが、幻想郷ではそんな物は無い。はぐれたり、すれ違いなってしまうと、会うのが格段と難しくなってしまう。

改めて、外の世界の便利さを実感するジンであった。

 

(仕方ない。もう少し待つか・・・・・・)

 

そして、更に十分が経過した時、向こうから息を切らせて走って来たのが見えた。

 

「ジ、ジンさーん!」

 

そう叫びながら、ジンの元に来た小鈴。既に息切れ切れであった。

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・す、すみま・・・せん・・・・・・」

 

「大丈夫か?」

 

「はあ・・・はあ・・・はい・・・なんとか・・・・・・」

 

「ゆっくりでいいから、深呼吸だ」

 

「すぅー・・・はぁー・・・すぅー・・・はぁー・・・」

 

ゆっくりと深呼吸をする小鈴。次第に、落ち着きを取り戻していった。

 

「落ち着いたか?」

 

「はい、おかげさまで・・・・・・」

 

「遅刻したみたいだが、何かあったのか?」

 

「ええと・・・実は――――」

 

小鈴は恥ずかしそうに、遅刻した理由を話す。するとジンは、思わず笑ってしまった。

 

「はは、随分と可愛らしい理由だな」

 

「笑うのは酷いですよ! こっちは大変だったんですから!」

 

「笑ってすまん。でも、夜更かししたの方が、悪いんじゃないか?」

 

「むぅ~、ジンさんがそんな意地悪する人だとは思いませんでした!」

 

そう言って、頬を膨らませてそっぽを向く小鈴。流石に意地悪し過ぎたと思ったジンは、素直に謝る事にした。

 

「悪かった。機嫌を直して欲しい」

 

「まあいいですけど・・・・・・ところで、今日は何処に行くんですか?」

 

「ああ、今日はキューちゃんショーを見に行こうと思っている」

 

「ええ!? キューちゃんショーのチケットを手に入れたんですか!?」

 

幻想郷にやって来たアザラシのキューちゃん。彼のショーは人気が高く。チケットは入手するのが非常困難で、プレミア価格になる程である。

 

「にとりに頼んだら、チケットを貰ったんだ」

 

「ええ!? そんな簡単に!?」

 

「にとりと知り合いだからな、無理な事を言わなければ、それなりに融通してくれるんだ」

 

「凄いですよジンさん! 普通だったら、なかなか手に入らない物なんですから!」

 

小鈴は目を輝かせながら、チケットを手にした。それはまるで、欲しい玩具を手にした子供のようであった。

 

「さっそく行きま――――」

 

その時、小鈴のお腹の音が小さく鳴った。それを聞いた小鈴は、顔を真っ赤に、ジンは小さく噴き出す。

どうやら、慌てて来たせいで、朝食を食べていなかったらしい。

 

「くくっ、見に行く前に、腹ごしらえだな」

 

「はい・・・・・・」

 

二人は近くの喫茶店に入る事にした。

 

―――――――――――

 

喫茶店に入り、早めの昼食を取る二人。ジンはふと、ある事に気がついた。

 

「そう言えば、いつもの服じゃないな」

 

「え? ああ、これは阿求に借りたんです。その・・・デ、デートをするのなら、ちゃんとおめかししなくちゃと思って」

 

「そうか・・・俺も少し気づかった方がよかったな。いつも通りの服装で来てしまった」

 

「いえいえ! ジンさんはその・・・普段通りでもカッコイイと思いますよ・・・・・・」

 

「あ、ありがとな。そう言われると、嬉しいと思う」

 

その後、気恥ずかしかったのか、二人の会話が途切れてしまい。やや、気まずい空気が流れてしまった。

 

(ううっ、慣れないことを言うんじゃなかった・・・恥ずかしいな・・・・・・)

 

(ストレートに言われるのは嬉しいが、少し照れるな・・・もう少し、身なりに気を使った方が良かったか・・・・・・)

 

そんな気まずい空気をどうにかしようと、ジンが最初に切り出した。

 

「そ、そう言えば知っているか? 最近のショーだと、途中で抽選があるらしい」

 

「抽選? 何の抽選ですか。」

 

「ショーに参加出来る抽選だ。チケットのしたに、番号が書かれているだろ?」

 

「どれどれ・・・あ、本当だ」

 

「この抽選に当たったら、特別にショーに参加出来るそうだ」

 

「そうなんですか! それは楽しみです♪」

 

「と言っても、当たるのは一人だけだからな、あまり期待しない方が良いだろ」

 

「もう、どうして夢の無いよう事を言うんですか?」

 

「こればっかりは運だからな。俺はあまり、自分の運を信じないからな」

 

そう言って、少し寂しそうな表情をするジン。そんな彼の表情を見た小鈴は、聞かずにはいられなかった。

 

「・・・・・・どうして、信じないですか?」

 

「・・・・・・昔から、運が無い方でな。こういうのに、当たった試しが無い。だから、過度な期待をしないだけだ。運だけは、どうしようも無いからな」

 

「そんな事は無いですよ。もしかしたら、この抽選で当たるかも知れませんし」

 

「はは、そうかも知れないが、確率的に無理かも知れないな」

 

「そんな事を言うから、当たらないんですよ」

 

「違いない。さて、そろそろ行こう。ショーに遅れるからな」

 

「あ、はい」

 

そう言って立ち上がり、会計を済ませるジン。小鈴もに立ち上がり、一緒に店を出た。

 

―――――――――――

 

おいてけ堀。そこでは夏の間だけやる。キューのショーが行われていた。

愛らしいキューの姿を見ようと、観客席はいつも満杯であった。

 

「さあ、皆さん! 一緒にキューちゃんを呼びましょう! せーのー!」

 

「「「「キューちゃーん!!」」」」

 

「キュ♪」

 

「「「「キャー!」」」」

 

観客の呼び声と共に、キューが堀から顔を出した。キューの姿を見た観客達は、歓声上げる。

 

「見てくださいジンさん! キューちゃんですよ! キューちゃん!」

 

「あ、ああ、そうだな・・・・・・」

 

「もうテンション低いですよ。せっかくキューちゃんのショーなのに」

 

「わ、悪い」

 

ジンは小鈴のテンションに圧されながら、どうにか返事をした。

元々、物静かである彼は、こういう雰囲気は少し苦手なのである。しかし、喜ぶ小鈴の姿を見て、来て良かったと素直に思っていた。

 

「さーて、皆さんお待ちかねの抽選の時間だよー! 手持ちのチケットのご用意を!」

 

「ジンさん! チケット! チケット!」

 

「そう慌てるな」

 

小鈴に急かされながら、ジンはチケットを取り出した。そして、抽選が始まる。

 

「それでは! くじを引きます! えーと・・・五の七十八!」

 

司会者の河童が番号を言うと、観客達が一斉に、チケットの番号を確認始める。

ジンも、一応確認するが、やはり外れであった。

 

「外れだな。小鈴の方はどうなんだ?」

 

「・・・・・・あ」

 

「ん?」

 

「当たり・・・です・・・・・・」

 

小鈴は手を震わせながら、ジンにチケットを見せる。そこには確かに、抽選の番号と同じ物であった。

 

「良かったな小鈴。さあ、行って来い」

 

「で、でも・・・・・・」

 

「せっかく抽選に当たったんだから、楽しまないと損だろ」

 

「そ、それはそうですが・・・・・・」

 

「五の七十八の方、いませんかー?」

 

「ほら、司会者が困っているだろ。早く行って来い」

 

「わ、わかりました・・・・・・」

 

小鈴は、心苦しく感じながらも、舞台の方へと向かって行った。

 

「すみませんが、チケットを確認させてください」

 

「はい」

 

「少々お待ちください・・・・・・はい、大丈夫です。お名前は?」

 

「も、本居小鈴です」

 

「小鈴さんですね。それでは、会場の皆さん! 小鈴さんに拍手を!」

 

司会者がそう言うと、会場中が小鈴に拍手を送った。

その後小鈴は、緊張しながらも、ショーに参加し、無事成功させるのであった。

 

―――――――――――

 

ショーは終わり、会場を後にする二人。

小鈴はとても楽しかったようで、上機嫌であった。

 

「ああ・・・キューちゃん、凄く可愛かったな・・・・・・ジンさんもそう思いますよね?」

 

「可愛いと思うが、俺としては、あたふたしていた小鈴の方がおもしろかったな」

 

「もう! どうしてそんな事を言うんですか!?」

 

「何となくかな?」

 

「今日のジンさん、凄く意地悪ですね。もしかして、遅刻した事を怒ってます?」

 

「ん? 別にそんなつもりは無いんだが・・・まあ、少し意地悪し過ぎたな。悪かった小鈴」

 

「い、いえ、そんな謝られても・・・あ」

 

小鈴はふと、ある物を見つけた。それは限定販売の、特製キューちゃん縫いぐるみであった。

とても精巧に作られており、キューの愛らしいさを上手く表現出来ていた。

 

「いいな・・・・・・」

 

「ん、あれが欲しいのか?」

 

「あ、いえ。少し良いなと思っただけで・・・・・・」

 

小鈴が遠慮するのには理由があった。それは、普通の縫いぐるみにしては値段が高い事であった。それ故、買って欲しいと、口をさけてでも言えなかった。しかしジンは――――。

 

「買ってやるよ。せっかく来たんだし、思い出の品をねだっても、バチは当たらないと思うぞ」

 

「でも、悪いですよ・・・・・・」

 

「あれくらいなら許容範囲内だ。心配するな」

 

そう言って、ジンは売店に向かい、ぬいぐるみを買った。そして、それを小鈴に手渡す。

 

「はい、どうぞ」

 

「え、えっと・・・ありがとうございます・・・・・・」

 

「ああ、どう致しまして」

 

そう言うと、ジンは笑った。小鈴は何だが恥ずかしくなって、ぬいぐるみで顔を隠すのであった。

 

―――――――――――

デートから数日後。小鈴は今までのスランプが嘘かのように、小説の続きを書き上げ、それを阿求に見せていた。

 

「・・・・・・」

 

「ど、どうかな・・・・・・?」

 

不安そうに訪ねる小鈴。すると阿求は、小説を置いて、はっきり言った。

 

「ええ、今回もとてもおもしろかったわ。やっぱり、ジンさんとのデートが良かったのかしら?」

 

「ま、まあ、凄く楽しかったわ」

 

「そうでしょうね。この小説を読んでいても、良く分かるわ」

 

「え、分かるの?」

 

「もちろん。今回の話は、今までよりも、主人公の心理描写がとても良かったもの。まるで、その出来事を体験したかのようにね」

 

「そ、そうかな~? たまたまだと思うわ~」

 

小鈴は何とかはぐらかそうとするが、阿求の追求は止まらなかった。

 

「ところで小鈴?」

 

「な、なに?」

 

「ジンさんと、どこまでいったの?」

 

「ぶほぉ!? い、いきなり何を言うのよ!」

 

「だってこのシーン、主人公と青年がキスしているじゃない。まさか、本当にそこまでいったの?」

 

「そ、そんな訳無いじゃない! 何を言ってるのよ!」

 

「はあ・・・その様子だと、まだまだなようね・・・・・・」

 

「う、うるさいわね! そんな簡単に出来るわけ無いじゃない!」

 

「そうみたいね・・・まあ、一歩進んだとして、良しとするか」

 

そう言って、阿求はお茶を啜る。

こうして、小鈴のスランプは無事に解決したが、もう一つの悩みは、そう簡単に解決出来ないみたいである。

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