新人提督と電の日々   作:七音

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こぼれ話 隔月刊・艦娘 特別コラム小冊子 われ、あおば!

 

 

 

 

 

 ども~、恐縮です! このたび、特別コラムニストを拝命いたしました統制人格、青葉※1ですっ。

 今号から始まった、統制人格の視点で様々な事柄を語るこのコラム。

 驚いている方も多いと思いますので、まずは企画立案の経緯をご説明いたしましょうっ。

 ……と言っても、単に文字を書くの好きだったからなんですけどね? それが広報の方に伝わって、オファーを頂いたわけです。

 ご購入いただいた皆さまには、もう存じている方も多いと思われますが、私には従軍作家である海野十三(うんの じゅうざ)さんが乗っていたことがあるんです。多分その影響なんじゃないかな~、とか考えていたり。

 まだまだつたない文章ではありますが、なんと初回から写真付き(もちろん自分で撮りましたっ)の小冊子という大盤振る舞い。

 精一杯頑張りますので、どうぞご声援、よろしくお願いしますっ。

 もしかしたらいるかも知れない艦娘初心者さんたちのために、一言解説&コメントも用意しましたので、どうぞお楽しみくださいませ!

 

 さてさて、挨拶はこのくらいにしまして。第一回目の内容はズバリ、「艦娘の一日」でございます。

 冊子の表紙に青葉――セーラー服着て敬礼してるポニテ娘が載っていると思われますが、こんなナリでも軍属の船。おまけに軍事機密満載な統制人格ですし、あまり馴染みはないことでしょう。

 そこで、励起艦がぜ~んぶ感情持ちというチート艦隊に属する私たちが、普段どのように生活しているか。どのように戦いへの鋭気を養っているのか。艦娘の視点を通じてお知りになってもらおうと考えたわけです。

 統制人格といえども乙女。男子禁制(最近まで司令官は一緒に住んでました)な女子宿舎の内情を、写真付きでのご紹介ですよ? チラリもありますですよ? 興味湧きました?

 では、さっそく参りましょうっ。

 

 ※1 青葉型重巡洋艦一番艦です。過去に三度の大破、二度の着底を経験してますが、完全な沈没には至ってません。ソロモンの狼、なんて通り名もあるんですよ。格好いいでしょ?

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 まずは朝。◯六◯◯、起床時間です。

 早い子は五時くらいに起きてますが、みんな大体この時間に起きてきますね。部屋は相部屋が基本で、姉妹艦たちがまとめられることが多いです。

 パジャマ姿の艦娘がゾロゾロ向かうのは、もちろん洗面所。顔を洗って、歯も磨きますよ~。

 あ。今、「なんか普通じゃね?」とか思いませんでした? でも、本当に普通なんですよ。こんな風に……。

 

 

《写真・一。少女が三人、寝ぼけた顔で歯を磨いている所を、斜め前からの一枚。

 右。ところどころ跳ねた長い黒髪を、ネジ頭を模ったヘアピンでとめる少女。青いパジャマが着崩れて、肩が出ている。

 中央。日本人形のように切り揃えられた、黒いセミロングの少女。インナーキャミソールとジャージの半ズボン姿。

 左。長めな茶髪に、赤いハーフリムの眼鏡をかけた少女。大きめのシャツ一枚。

 一様に覇気が感じられない》

 

 

 右から順に、重巡・加古※2ちゃん、駆逐艦・初雪※3ちゃんと望月※4ちゃん。艦隊のお寝坊三人衆です。

 ひどい顔してるでしょう? これ、艦娘なんでありますよ……?

 お仕事中はこんな感じではありませんけど、この三人は特に朝が苦手らしくて、ギリギリまで寝てることが多いです。この日は珍しく早起きさんでしたねー。

 実はもう一人、お寝坊さんというか、昼夜逆転型な子が居るのですが、その子についてはまた後ほど。

 

 サッパリしたら部屋に戻ってお着替え。パジャマを脱いで、気合い一発、デフォルト衣装の召喚です。

 読者の皆さんと違い、青葉たちは生まれた時から衣服をまとっております。集合的無意識の影響だとか、能力者の持つアニマの投影だとか、何やら難しい理屈があるようなのですが、そういうのは別の専門家にお任せするとして。

 多いとされているのはセーラー服ですね。船乗りや水兵を意味する言葉通り、青葉たちにはピッタリというわけです。

 まぁ、この艦隊には和装の艦娘も多いのですが。軍全体を通して見るとけっこう珍しいみたいです。

 ん? チラリはどうした? まだまだ、焦ってはいけませんよ。お楽しみはこれからです、ふっふっふ……。

 

 ※2 古鷹型重巡洋艦二番艦。第一次ソロモン海戦で大活躍! ……したんですけど、帰ってくる途中で残念なことに……。陸の上ならどこでも寝れるのが特技。

「行きはよいよい帰りは怖い、ってねぇ……。すこー」

 ※3 特型駆逐艦三番艦にして、吹雪型三番艦。かつては第十一駆逐隊に属し、はつゆき型護衛艦としてネームシップにもなりました。ちょっと引きこもり気味?

「……明日から、本気出す……」

 ※4 睦月型駆逐隊十一番艦。この子も護衛艦もちづきとして名前を受け継がれてますね~。なんだかんだでサボってるところは見たことないです。

「コメント? んぁ~……。ごめん、めんどいからパス」

 

 

 はい、では次。◯七◯◯、朝食の時間です。

 青葉たちが住んでいる宿舎には大きな食堂がありまして、朝はここに、遠征へと出ている子たち以外がみんな集まります。

 だいたい、艦隊の半数は常に輸送任務などへ就いているのですが、それでも二十人は居ます。大所帯ですね~。

 そして、空きっ腹を満足させてくれる、美味しいご飯を作ってくれるのが、軽空母・鳳翔※5さん&駆逐艦・雷※6ちゃん、電※7ちゃん姉妹!

 

 

《写真・二。厨房を覗きこむ一枚。

 左。割烹着を着るポニーテールの和装女性が、お椀とお玉を手に振り返っている。

 右奥。セーラー服の上に、「ちづかい」とカラフルに刺繍されたエプロンをつけた少女。持っているのはヘラとフライパン。

 右手前。上記と似た少女。刺繍は「まづない」で、ご飯をよそっている。

 よく見ると、端っこに白い軍服が見切れている》

 

 

 この日のメニューは和食ですね。本当に美味しいんですよ~? 鳳翔さんのお味噌汁。これぞ家庭の味っ、って感じです。ちなみに、電ちゃんはこの艦隊の最古参でもありますね。

 艦娘は、本当ならご飯を食べなくても生きていけます。船ですから、基本的に燃料さえ補給してもらえれば十分だったり。

 でもでも、感情持ちにとって侮れないのが精神的なコンディション。皆さんも美味しいご飯を食べた後はやる気が出ますよね? つまりはそういうことなんです。

 ご飯を食べさせるなんて無駄だ、とか言われることもありますが、そういう方は丸々一ヶ月ほど、カロリービスケットと水だけで過ごしてみるが良いです。食べ物の恨みは怖いですよ……?

 

 ※5 鳳翔型航空母艦一番艦。世界初の航空母艦。艦形が小さくて、局地用防空艦への改装案もありました。

「実戦での活躍は難しいですが、他のことでお手伝いさせていただきますね」

 ※6 特型駆逐艦二十三番艦にして、暁型三番艦。スラバヤ沖海戦での敵兵救助が有名ですね~。

「朝ご飯は一日の元気の源。みんなもしっかり食べなきゃダメよっ!」

 ※7 同二十四番艦にして四番艦。お姉ちゃんと同じく、スラバヤで敵兵を救助しました。でも、船同士のごっつんこには要注意、なのです!

「し、司令官さんに呼ばれてからは、衝突してないのです! ……船には、ですけど……」

 

 

 ご飯を食べ終え、◯八◯◯。朝礼の時間です。場所は変わらず食堂。

 本格的な始業は◯九◯◯ですけど、連絡事項やら何やらがありますので、この時間帯です。

 司令官の号令のもと、みんなが姿勢を正します。

 

 

《写真・三。三人のバストアップ。

 右。紫色の衣服を着る、短く切りそろえた黒髪の女性。眉毛が特徴的。

 左。眼鏡をかけた改造巫女服の少女。マイクを片手に、クリップで束ねられた紙面を読み上げている。

 中央に立っているのが提督らしいのだが、首から上は見切れている》

 

 

 本日の第一秘書官は重巡・妙高※8さん。第二秘書官は、最近艦隊へやって来た高速戦艦四姉妹の末っ子、霧島※9さんです。

 普通は専任の調整士さんとかが秘書を兼ねるらしいんですが、うちでは艦娘が持ち回りでやっております。中でも妙高さんは手際が良くて、筆頭秘書官って感じですね~。

 霧島さんは、言わずと知れた第三次ソロモン海戦・第二夜にて、米国戦艦サウスダコタ※10を相手に、三式弾※11で超至近距離の殴り合いをした方。

 そんな来歴とは違い、いつも冷静沈着をモットーにしているそうで。青葉と励起時期はほとんど変わりませんけど、頼りになりそうです。

 

 ※8 妙高型重巡洋艦一番艦。二十・三cm砲を十門も配置していて、これに驚いた英国の方々は「お前らなんか誤魔化してね?(意訳)」と吃驚したそうです。

「海に出ているよりも、書類を作成している時間の方が長い気がいたしますわ。どうしましょう」

 ※9 金剛型戦艦四番艦。上記の戦いでは飛行場を攻撃するために出撃したんですが、思わぬ会敵で、徹甲弾へ変更する間も惜しみ、砲撃を開始しました。

「私の戦果に関しては諸説あるようですが、今度は有無を言わさぬ結果を残してみせます」

 ※10 米海軍サウスダコタ級ネームシップ。十三の従軍星章を受けた艦で、アメリカには感情持ちになった傀儡艦もいるという噂です。あくまで噂ですけどね?

 ※11 対空砲弾の一種で、時限式の榴散弾。中には炎上を狙う焼夷弾子と破片効果を狙う非焼夷弾子が満載です。

 

 

 ちなみに、霧島さん方は建造された艦ですが、青葉は解放艦。

 司令官に拾われて来た艦なんですよ。初雪ちゃんと望月ちゃんもそうです。ここで改めてご説明をばっ。

 

 傀儡艦を増やす方法は二通り存在しまして、一つは建造。文字通り一から作り出す方法です。

 この際、統制人格を呼び起こせるのは、主に第二次大戦末期までの技術で構築された船のみとなります。

 より高度なテクノロジーの船や兵装を使おうとすると、そもそも統制人格を呼べなかったり、途端に同調率が下がり、能力者さんとの連携ができなくなってしまうんですよ~。困った困った。

 複雑すぎる機械に魂は宿らないのか。多くの命と共に在った物の再現だから、魂を宿せるのか。私たちにもよく分かりません。

 そもそも、命あるものへ宿る“意思”とは……な~んていう難しい話は、このコラムの趣旨から脱線してしまうので、哲学者さんとかにお任せします。またしてもポイですポイ。

 

 さて、もう一つの増やし方が、敵性勢力であるツクモ艦※12を撃破。その残骸を回収して船に仕立てる、解放です。敵に奪われた資源を解放させて船を増やす、という意味合いです。

 資源確保が大きな問題となっている昨今。使える物はなんでも使わなければ、勿体無いですもんね?

 この解放資源から、皆さんがお持ちになる機械などの部品の一部が賄われているんですよ~。他にも家とか車とか、人々の生活に密接していると言っていいでしょう。

 

 ※12 人類から海と空を奪った謎の敵性勢力。その行動目的は一切が不明。

 

 

 ……あれれ。随分とスペース使っちゃいましたね。閑話休題っ。

 ちょっと飛ばして一◯◯◯。お仕事中の艦娘たちです。

 と言っても、やれることは多くないんです。訓練しようにも船ですから、動くには燃料が必要ですし、かと言ってボケーっとしているわけにも。

 そこで与えられるお仕事が、兵装開発のお手伝いでございますっ!

 

 

《写真・四。工廠(こうしょう)の風景。工作機械の只中で、作業台に広がった図面を見る少女たち。

 右。セーラー服を着た長い赤毛の少女。背を向けている。

 左。紅白の縦縞鉢巻を巻いた和服少女。髪型はポニーテールで、上の少女と机を挟み反対側。

 真剣な雰囲気が伝わってくる》

 

 

 右の女の人が、横須賀鎮守府の整備主任の一人です。顔出し、名前出しはNGだそうで、今回は後ろ姿のみの登場です。美人さんなのに……。

 そして、左に写っているのが軽空母・瑞鳳※13さん。他にも、写っていないところで艦娘たちがたむろしてますよ~。

 ん? 兵器を作るだけの知識や技術を持っているのか? ふふふのふ。青葉たちをなんだと思ってるんです。作れるわけないじゃありませんかっ!(威張り顔)

 実際に作るのはさっきの整備主任さん。正確に言うと、彼女が使役する妖精さんですね。

 この妖精さん、統制人格の一種らしい(?)んですが、船を丸々一人で動かすほどの力は持っていない代わりに、超がつくほどの精密作業を、休みなく、恐ろしい速度で行えるんです。

 んがしかし。世の中そう都合の良いことばかりじゃなくてですね。気まぐれな彼女たちは、放っておくと予定とは違う物を作ってしまったり、ガラクタを作っちゃうことも……。

 それを主任さんが監督。方向性を定めるんです。この時に艦娘が力を貸すと、艦種やその来歴によって、安定性が向上する……らしいです。

 鉄と油の匂いを漂わせる乙女。ごく一部の方々には大好評でしょうか?

 

 ※13 祥鳳型航空母艦二番艦。元は高速給油艦・高崎という名前でしたが、潜水母艦、航空母艦と改装を重ねました。何やら、艦載機に関しては一家言あるもよう。

「九九艦爆は、足が可愛いのよ。足が! 彗星も悪くないんだけど、整備大変なのよ、やっぱり。あと、天山は――」(ごめんなさい、長いのでカットします)

 

 

 また時間を飛ばしまして、一二◯◯。待ち焦がれたお昼です!

 選べる選択肢は三つ。鳳翔さん手作りのお弁当か、庁舎の食堂か、酒保で売っているパンとかですね。

 青葉は鳳翔さんを煩わせるのもアレかなぁと、基本的にパン食なんですけど、絵的に寂し……お? おあつらえ向きに、日の当たるベンチでお弁当食べてる子たちが居ますよ~。

 

 

《写真・五。赤レンガの壁を背景に騒ぐ少女たちの一枚。

 左。帽子をかぶる白髪の少女。膝の上に弁当箱を乗せ、並ぶ二人を見て微笑んでいる。

 中央。金髪に黒いリボンの少女。ベンチの後ろから上半身だけを乗り出し、右の少女からエビフライを奪っている。

 右。白髪の少女と同じ帽子をかぶった、黒髪の少女。弁当を持ち、「あっ!?」とでも言っていそうな顔で、中央の少女を見ている。

 仲が良さそうだ》

 

 

 左から、駆逐艦の響※14ちゃん、島風※15ちゃん、暁※16ちゃんです。

 もうお気付きでしょうけど、我らが艦隊の艦娘は、船によって見た目の年齢がある程度変化するようです。

 駆逐艦が小中学生、まだ登場してない軽巡が中高生、重巡から上の大きい艦が高校生以上でしょうか。私は十六~七ですね、多分。

 でも、響ちゃんとかは見た目以上に落ち着いていて、外見と中身が一致してない子も多いみたいです。もちろん、見た目通りにヤンチャな子もいるんですけど。

 似た子は居ても、同じ子は居ない。個性豊かな仲間が揃っていますし、青葉も楽しいです。

 

 ※14 特型駆逐艦二十二番艦であり、暁型二番艦。終戦まで生き残り、賠償艦としてロシアへ。Верный(ヴェールヌイ)Декабрист(デカブリスト)と、複数の名前を持っています。いよっ、信頼できる十二月党の不死鳥!

「……名前で遊ぶのはやめてもらえないかな」

 ※15 島風型駆逐艦一番艦。同型艦は存在しませんが、時速四十ノットの快速は艦隊随一。そして食べる速度も艦隊一!

「私には誰も追いつけないよ!」(早弁済みみたいです)

 ※16 同二十一番艦にしてネームシップ。宿舎で飼っているわんこ、ヨシフの飼い主でもあります。自称、一人前のレディーだそうで。……どうみても(以下自粛)。

「自称じゃないわっ。誰がどう見ても立派な淑女じゃないっ!? ぷんすかっ!!」

 

 

 またまた飛ばして一五◯◯。午後の特筆すべき業務は艦隊演習でございます。

 青葉は参加しませんが、ちょっと特別な演習なので、これはぜひ取材をせねばと観戦許可をもらいました。

 それというのも、世にも珍しい艦隊内演習だから、です。

 普通は能力者さん同士が自らの艦隊をぶつけ合うため、相手の都合も考えなきゃなんですけど、感情持ちがゴロゴロしてるこの艦隊なら、場所を予約するだけで演習ができるんですね~。

 もう何回かやってるそうなんですが、今回の編成はこちら。

 

 

《写真・六。斜めに二分割された集合図。

 左。赤い紐でたすき掛けした、長く艶やかな黒髪の女性。艦橋を模した髪飾りをつける姉妹らしき二人。皆、巫女のような服装。

 右。青い紐でたすき掛けした、短いサイドポニーの女性。茶髪を両サイドでシニヨンにする、ティーカップを持った和装少女と、彼女の背後で飛び跳ねているらしい少女。こちらも巫女風だが趣が違う。

 気合い十分、といった様子である》

 

 

 甲艦隊:航空母艦・赤城※17、航空戦艦・扶桑※18、山城※19姉妹、他三隻。

 乙艦隊:航空母艦・加賀※20、高速戦艦・金剛※21、比叡※22姉妹、他三隻。

 この機動部隊二つが、海上で相対しました。紙面の都合で全員紹介できないのが残念ですが、注目なのはやっぱり、一航戦※23のお二方でしょう。

 かつて肩を並べた戦友同士が、演習とはいえ正面からぶつかり合う。熱い構図ですっ。

 実は乙艦隊のお三方、高速建造されたばかりでもありまして、なんとこれが初戦闘。対して甲艦隊は練度も高く、勝負にすらならないかと思われましたが……。

 結果がどうなったのか、気になります? なりますよね? なりましょうともっ!

 その期待にお答えしまして、次号の付録に戦闘記録をお付けする予定でございますっ。オーディオコメンタリーにはスペシャルゲストもお呼びしますので、お楽しみに! もちろん私も語りますよ~。

 

 ※17 赤城型航空母艦一番艦。正確には、天城型巡洋戦艦二番艦を前身とする改装空母。栄えある第一航空戦隊の旗艦であり、空母の皆さんを束ねるリーダー的存在です。

「三段式甲板のことは、忘れてください」

 ※18 扶桑型航空戦艦一番艦。史実では実装されなかった改造を施され、艦載機と主砲のコンビネーション攻撃は圧巻の一言。艦橋の高さでも有名ですね~。

「レイテ沖? そうね……。いつか突入してみたいわ。本当よ」

 ※19 扶桑型航空戦艦二番艦。余談ですが、傀儡艦として励起された扶桑型戦艦は数える程しかないそうです。何ででしょう? 防御力と速力の問題でしょうか?

「別に、人気なんか無くたっていいですよ。最後の時まで、姉さまと一緒に戦えれば」

 ※20 加賀型航空母艦一番艦。正確には、加賀型戦艦一番艦を前身とする改装空母。赤城さんと同じく、第一航空戦隊の主力を務めました。赤城さんがリーダーなら、加賀さんはエースでしょう。

「……私の顔に、何かついていて?」

 ※21 金剛型戦艦一番艦。イギリス生まれだからか、英語が堪能。なんと彼女には、あの芥川龍之介氏が乗船したことがあるんですよ~。

「Tea Timeは大事にしないとネー」

 ※22 金剛型戦艦二番艦。比叡さんには作家の方は乗っていないんですが、御召艦として愛された過去があるんです。素晴らしい栄誉ですね~。

「大和型に採用される技術のテストベッドにもなったのよ。知ってた?」

 ※23 南雲忠一(敬称略)率いる、第一航空戦隊の略。時期によって編成は変わりますが、特に有名なのが航空母艦・赤城、加賀でした。

 

 

 日が暮れ始め、疲れも出てくる一七◯◯。

 青葉も初めての取材活動にお疲れ気味ですが、そうも言ってられません。

 ちょうど、遠征に出ていた艦隊が帰って来ました。お出迎えに行きましょう。

 

 

《写真・七。夕日を背にする軽巡。その手前にいる人影を追う一枚。

 左。白いセーラーに半ズボンの少女。背負う艤装の一部に、小さく「球磨」の文字。ぐんにょりしている。

 中央。金髪碧眼の黒いセーラー服を着る少女。機関部を背負い、履いているのはスカート。彼女もぐんにょりし(略)。

 右。袖のない白のセーラー服少女。長い黒髪を二つに縛り、ぐんにょ(略)。

 端に白い軍服が見切れている》

 

 

 軽巡・球磨※24さん、駆逐艦・夕立※25ちゃん、そして涼風※26ちゃん。今回は近海の警備任務に行っていたそうです。

 こういった通常任務を人海戦術でこなせるのも、この艦隊がチート扱いされる理由の一つかもしれません。海の安全を確保しつつ、お仕事達成でバイト代……ではなく、お給金も貰える。WinWinな関係です!

 と言っても、統制人格だって疲労は溜まりますので、球磨さんたち、疲れ果てたご様子。一日中ずーっと海を見張っていたらこうなりますよねー。

 他にも、海上護衛やタンカー護衛、鼠輸送任務などに就いていた皆さんもご帰還なのですが……またまた誌面の都合で割愛! ごめんなさいっ、今度ちゃんと紹介しますんで、お許しを~っ。

 

 ※24 球磨型軽巡洋艦一番艦。五五◯◯t級の先駆け的存在で、防空巡洋艦への改装計画があったようです。語尾に「クマ」をつけるのが個性的。

「よろしくだクマ。ちなみにこの口調は釣りでもなんでもないクマ。ネタだろって思ったやつには置き場に困る木彫りの熊を送りつけるクマー」

 ※25 白露型駆逐艦四番艦。戦史に名高き第三次ソロモン海戦・第一夜で活躍。どこまでが事実かはさておき、あんな戦果を出せるように頑張っているもよう。

「ソロモンの悪夢、いつか見せてあげる! ……今はまだ無理っぽい?」

 ※26 白露型駆逐艦十番艦。江戸っ子みたいな喋り方が特徴。大元になった船が浦賀生まれなのが原因?

「へ? こ、こめんとぉ? あ、え、あ~……て、てやんでぃ!」

 

 

 ――と、軽い頭を下げてるうちに、時刻は二◯◯◯。夕飯時です。

 用意してくれるのはもちろん鳳翔さんなんですが、全部を押し付けているわけではございません。

 前日に遠征へ出ていたり、出撃から帰って来たばかりの艦娘は、司令官からしっかり休養するようにと仰せつかっております。しかし、ただ休んでいるほど退屈なこともないので、掃除・洗濯・炊事、自然と家事を手伝うことが多くなるんですよ。

 この日も、鳳翔さんをお手伝いしている子が居るようで……。

 

 

《写真・八。食堂での一枚。

 左。両手にヘラを持ち、お好み焼きの前で得意げな顔をするツインテールの少女。頭のバイザーがどこか店員を思わせる。

 左手前。お好み焼きの上で踊る鰹節にヨダレを垂らすショートカットの少女。目に星が浮かんでいそう。

 右。左を興味深げにのぞき込む、長い黒髪の少女。金剛と同じ服装をしている。

 背景に、ホットプレートの前で作業する鳳翔たちも》

 

 

 今日の献立はお好み焼き。ヘルパーは軽空母・龍驤※27さんと、高速戦艦最後の一人、榛名※28さんのようです。手前の方は軽巡・多摩※29さんですね。

 理由は全く不明なのですが、なぜか龍驤さんは大阪ナイズされた性格でして、粉物料理が大得意。実に美味しそうです! というか美味しかったです!

 榛名さんも一回見ただけでコツを覚えちゃったらしく、見事なヘラさばきでひっくり返していました。美人さんなだけじゃなく、要領も良くて羨ましい……。

 多摩さんは名前の通り猫舌のようで、あんな顔をしておきながら程よく冷めるまでお預け。本人は「猫じゃないもん!」とか言うんですが、ぶっちゃけ誰も信じてませんですよ?

 これがお好み焼き初体験という艦娘(金剛さんとか)も多かったですけど、とっても大好評でした。龍驤さん、ありがとうございましたっ。

 

 ※27 龍驤型航空母艦一番艦。「りゅうじょう」とは、三国志の中にある龍驤虎視という言葉を元にしていて、龍が天へ登っていく姿をさすそうな。かく言う私は、驤が初見で読めませんでした。要勉強です……。

「実はウチも一航戦なんやで? しっかり近代化改装すれば、赤城や加賀にも負けへん! って、それは無理かぁ。あっはは……」

 ※28 金剛型戦艦三番艦。運命のあの日、呉は江田島で懸命に空を睨み続けた方。清楚な佇まいに似合わず、活動的な一面も。

「高速戦艦四姉妹で、最後まで戦い続けた榛名のこと、覚えていてね」

 ※29 球磨型軽巡洋艦二番艦。北はキスカから南はラバウルまで、様々な海域で作戦に従事した歴戦の軽巡。球磨さんと同じく、語尾に「にゃ」をつけて喋ります。

「頑張ってお国にご奉仕するにゃ。お代はマタタビでよろしくだにゃ。じゃこでもいいにゃ」

 

 

 さて。さてさて。さてさてさて。現在時刻は二一◯◯。

 仕事を終えてお腹も一杯。となれば、あとは分かりますよね? そう、一日の疲れを洗い流す、バスタイムです!

 本誌を手に取っていただいた紳士の皆様方、長らくお待たせいたしました! チラリタイムでございますよ!

 いや~、実はこの宿舎には、艦娘専用の大浴場がありまして。十人~二十人程度なら一挙に入れるくらい広いんです。

 ただでさえ煙突からの噴煙とか海風の塩気で汚れちゃいますから、皆この時間が大好き。女の子としても、毎日のお風呂は欠かせません。

 服をぬぎぬぎ、心もウキウキ。開放的になった艦娘たちの色っぽい姿、だぁいこぉうかぁいでごっざいまぁ~す!!

 

 

《写真・九。お白州のような場所を高めから一枚。

 中央。薄いオレンジ色のタイのセーラー服を着た、短めなポニテ娘――青葉が涙ながらに正座している。頭にマンガ的たんこぶ。

 右。黒いベストの学生服を着た、ツインテールの少女。白い目で青葉を見下ろしている。

 左。夕立と同じ服装をした、ヘアバンドの少女。なぜか得意げな顔。

 どうやらこの写真、別人が撮ったらしい。高さを鑑みるに、男性か》

 

 

 はいごめんなさい無理でした。

 常識的に考えて駄目に決まってますよね、成年指定受けちゃいますもん。司令官にもこっぴどく怒られてしまいました……。

 横に立っているのは、右が駆逐艦・陽炎※30ちゃん、左が白露※31ちゃんです。大浴場の換気窓から盗撮しようとしていた青葉を、二人掛かりでタイーホしてくれやがり――もとい、止めてくれました。

 どうやら司令官から別命を受けて監視していたらしいのですよ。そしたら案の定、暴走しかけていたわけで……。ううう、これがリポーターズハイというやつなんでしょうか? 青葉、反省です。

 読者の皆様、さぞがっかりされたことでしょう。せめてものお詫びとして、演習終わりの芳ばしく香る粘液※32まみれな艦娘たちの写真を、コソッと背表紙の裏に載せます。これで許してください。

 ……反省してないだろうって? 何を仰いますやらー。ご期待に応えたいだけですよーっと。

 

 ※30 陽炎型駆逐艦ネームシップ。今のところ、我が艦隊では最新型の駆逐艦。改装も加えられていて、それに見合う実力を持っています。

「陽炎よ、よろしくねっ! ところで、今度変なことしたら酸素魚雷ブチ込むわよ」(勘弁してください)

 ※31 白露型駆逐艦ネームシップ。一番であることにこだわりを持ち、艦隊でのトップを目指して努力は欠かしません。

「何を隠そうこの白露は、岡っ引きとしても一番なんです! 御用だ御用だ~!」

 ※32 ペイント弾の中身です。環境にも優しいペイント弾です。大事なことなのでもう一度。 ペ イ ン ト 弾 です。

 

 

 こってり絞られ、二二◯◯。

 お風呂の後のまったりタイムで、全体的に静かな宿舎。

 ところが、玄関の方が何やら騒がしく。少し様子を見て来ましょう。

 

 

《写真・十。宿舎の玄関らしき場所での一枚。

 左。やたら元気そうな、オレンジ色の衣装をまとうツインテール少女。枠外の誰かに笑顔で話しかけている。

 右。同じ衣装だが、こちらは気弱そうなロングヘアー少女。左の少女を止めようとしているようだ。

 中央奥。白い上着を手に、苦笑いの電が立っている。

 端にお団子頭が見切れているような……》

 

 

 宿舎へ帰って来た司令官を待ち受けていたのは、幼妻的にかいがいしく出迎える初励起艦娘と、なんとも熱烈な夜戦へのお誘い。

 最初の方に言った昼夜逆転しちゃってる艦娘、軽巡・川内※33さんに、それをたしなめようとする神通※34さんです。

 ちょっと意味深な書き方をしてしまいましたが、今回は普通に、水雷戦隊が本領を発揮する夜間戦闘のことでした。

 夜戦に始まり、夜戦で人生……艦生(?)を終えた川内さんは、こうして夜になると夜戦の素晴らしさを語り出すほど、強い思い入れがあるようです。

 それにひきかえ、神通さんはとっても控えめ。コロンバンガラ島沖海戦では、真っ先に探照灯を照射。攻撃を一身に引き受けつつ、最後の瞬間まで砲撃を続けた方とは思えません。

 でも、そのせいで周りの抑え役になることも多かったり……。これも因果でしょうか……?

 あ、端っこに見えるのは那珂※35さんなのですが、シャッターを押すタイミングが悪く、画面に収めることができませんでした。データ容量的にも厳しかったので、残念ながらこれで。

 なかなか(ダジャレじゃないですよ?)いいキャラしてる子ですし、次回はぜひご紹介したいですね~。

 

 ※33 川内型軽巡洋艦ネームシップ。かつては第三水雷戦隊の旗艦も務め、四回の大きな戦いに参加。うち三回が夜戦でした。珍しい戦歴です。

「夜はいいよね、夜はさ」

 ※34 川内型軽巡洋艦二番艦。世界最強とも呼ばれた第二水雷戦隊で、長く旗艦を務めました。が、うちの艦隊では結構な確率で遠征に……。

「な、なんで、しょうか。……コメント。その……あの……。ご、ごめんなさい……」

 ※35 川内型軽巡洋艦三番艦。第四水雷戦隊旗艦。進水間際で被災して大破したり、衝突事故を起こして大破したり。明るい性格と裏腹に、けっこう苦労人?

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー! よっろしくぅ!」(顔写ってませんけどねー)

 

 

 この日も残り一時間。時刻は二三◯◯です。

 皆さんが部屋に戻って行く中、青葉も部屋に帰って最後の取材。

 待っていてくれたのは、姉妹艦の衣笠※36でした。

 

 

《写真・十一。宿舎の一室での一枚。

 青葉と同じセーラー服を着る、セミロングの少女。脱ぐ途中だったらしく、ヘソがチラリと覗いている。

 窓の向こうに、逃げる白い軍服と、追いかけるツインテール少女の背中もチラリ》

 

 

 ぃよっし、こぉれでチラリは達成ですよーっ。青葉ウソつかない!

 このご時世、ちょっとぐらいお色気要素がないと本は売れないんですっ。だから私は悪くぬぁいのです!!

 はい、なんですか? 載せたら怒る? ふっ、私がなんの覚悟もなしにリポートしていると思って痛いっ!? あたっ! デコピンはやめて~っ!?

 

 ……うぅぅ、ヒドイ目に遭いました。「今回だけだからね?」って許してもらいましたけど、引き換えにおでこが真っ赤っかです……。

 それはさておき、お着替え中の姉妹艦に戻りましょう。普段は髪をツインテっぽく結っているんですが、それも下ろしてリラックスムード。

 彼女も今日は兵器開発をお手伝いしてたんですけど、私たちは感情を得た弊害として、疲労を認識できるようになってしまいました。なので、普通の人と同じように睡眠が不可欠です。

 艤装を召喚していれば、一週間ぐらい不眠不休で活動できますが、そんなブラックホール企業みたいなことはうちの司令官が許しません。休息も仕事の一環、だそうで。愛されてますねぇ。

 

 福利厚生のありがたみを感じながら、私は使える写真を選んだり、どんな文章を書くかを相談したり。

 スタンドの明かりだけを頼りに、ベッドで原稿を書いていると、やがて返事が少なくなってきました。見れば、すっかり夢の中へ旅立っているルームメイトが。

 その穏やかな顔に眠気を誘われて、私も寝ようと明かりを消します。

 統制人格は鳥啼く歌の夢を見るか。……ご想像にお任せします。それでは、お休みなさいませ~。

 

 ※36 青葉型重巡洋艦二番艦。私と古鷹ちゃん、加古ちゃんを加えて第六戦隊を編成。ソロモン海を征きました。

「カタパルトをお初装備の衣笠さんよ、よろしくね。青葉が泣き土下座するから許したけど、変なとこ見ちゃダメだからねっ?」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 ……以上で、「艦娘の一日」は終了でございます。いかがだったでしょうか。

 なんというか、コラムじゃなくて日記? 書いた本人が言うのもアレですけど、これで良かったのかちょっぴり不安。

 まぁ、問題なく発行されたなら、大丈夫ってことでしょう。楽しんでもらえたなら嬉しいですっ。

 ついでに私たち艦娘――統制人格へ関心を寄せてもらえたら、なお喜びます!

 もちろん、ご意見・ご感想などは随時募集中。

 こんなこと書いて欲しい、アレはどうなってるのか教えて、というご要望なども、禁則事項に引っ掛からない限り、頑張ります。なのでドンドンお便りをくださいませっ。

 

 長くなりましたが、ここらで締めに入りましょう。

 次回のテーマは「統制人格と妖精さんの違い」の予定です。今回ちょろっと出てきた妖精さん。彼女たちと私たちの関係性について語ります。

 また、次号特典の戦闘記録では、ゲストも招いて私が実況解説させて頂きます。艦娘の生声を聞けるチャンス、逃したらいけませんよ~?

 それでは、青葉型重巡洋艦一番艦・青葉でした! またお会い致しましょう!

 

 

 

 

 

「お疲れ、青葉。どうだ、記事の反応は?」

 

「あ、司令官。おはようございます! 見てください、このお手紙の山!

 やっぱ働いたら負けだよね初雪ちゃん。提督はモゲろ。とか、鳳翔さんの味噌汁を毎日飲みたいです。提督は爆ぜろ。とか、雷電姉妹ペロペロ。提督はねじ切れろ。とか、色んなご感想を頂きましたっ。

 もう嬉しくて嬉しくて、青葉、恐縮しきりです!」

 

「そうかそうか。良かったな。ところで、三枚目の手紙貸してもらえるか? 念のために身元洗っとくから」

 

 

 

 




「……はぁ? 罵れって、いきなりなに。えーと……ウザいのよっ!」
「どういう趣向なのよ……私の番? はいはい、もうバカばっかりで嫌んなるわ」
「これって、あいつに向けて言えってことよね。だったら……。やらしい目つきでこっち見んな! このクソ提督!」
「はい、ご苦労様。私も含めて誰が誰だか分かったら、ご褒美があるかもしれないわよ。ま、せいぜい頑張んなさい」

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