咲き誇る花々、掴み取る果実   作:MUL

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気づけば3週間・・・。
お待たせして大変申し訳ありません・・・。
しかもその割には大して進んでいないという。


※あとがきにオマケを乗せてみましたのでよろしければどうぞ



第17話

「仕方ないから情報共有と交換よ。わかってる?アンタたちがあんまりにも情けないから今日も来てあげたんだから。」

 

ポリポリポリ。

 

そういって部室の黒板の前に立つのは、昨日入部した勇者部の新入部員、三好夏凜である。

なんだかんだで今日もこうしてしっかり来てくれるあたり、案外面倒見がいい性格なのかもしれない。ちゃんと仲良くなれるのかと昨日から散々頭を悩ませてきたが、これは思ったより望みがあるんじゃないだろうか。

 

ポリポリポリ。

 

まぁ、今はそんなことよりも。

 

「・・・にぼし?」

 

目の前の光景に対して、とうとう風が我慢しきれず疑問の声を漏らした。

先ほどから聞こえてくるこの音は、まさに今目の前にいるこの少女が手に持った袋から煮干しを取り出し口の中へ放り込み続けている音だった。

別に個人の趣味趣向にどうこう言うつもりはないが、煮干しを常備している女子中学生というのは流石に珍しいと思わざるを得ない。

 

風の怪訝な表情に、夏凜は思わずムッとする。

彼女の最も信頼する食物が、なんだか馬鹿にされているように感じたからだ。

別に自分のことはなんと思われようが興味はないが、煮干しに対する偏見だけは何としてでも取り除かなければならない。

 

「何よ。煮干しはね、ビタミン、ミネラル、カルシウム、タウリン、EPA、DHAが含まれた完全食なのよ!」

「そ、そうなの・・・。」

「あげないわよ!」

「いらないわよ・・・。」

 

突如熱く語り始めた新人に、風はあっさりと白旗を上げた。

意地っ張りで意外に面倒見がよく、その上こだわりの強い性格らしい。基本的には自分で集めておいてなんだが、やはりこの部活には個性的な人物が集まってくるようだ。

 

「じゃあ私のぼたもちと交換しましょ?」

 

そういって横合いからぼたもちの入った箱を差し出したのは、勇者部の中では唯一風に比肩するほどの料理技術を持つ東郷だった。

風と東郷。どちらも甲乙つけがたい腕を持つが、総合的な家庭料理では風、和食及びお菓子類では東郷にそれぞれわずかに軍配が上がる。

東郷のお菓子の大ファンである友奈は早速目を輝かせてお皿の準備に取り掛かっているが、肝心の夏凜はいきなり差し出されたそれに胡乱げな目線を向けていた。

 

「何よコレ。」

「さっき家庭科の授業で作ったのを取っておいたの。後で皆で食べようと思って。」

「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよ!」

 

そう聞くと確かに、ほんの少しではあるがおいしそうに見えなくもない。

夏凜だって女子中学生だ。基本的に健康志向で煮干しこそ至高の食物だとは思っているが甘い物だって嫌いではない。

しかし、それで素直に欲しいとは言えないのもまた彼女なのである。

 

「べ、別に要らないわよ!」

「おいしいのに・・・。」

 

一瞬の間、興味とプライドを天秤にかけて葛藤していた夏凜だったが、結局プライドが勝ったようで最終的には突っぱねてしまった。

東郷は仕方ないとそのまま引き下がったが、友達の自慢の一品を味合わせることができなかった友奈は少し残念そうだ。

 

ところで、どんどん本来の目的からは外れていってしまっているわけなのだが、まぁそんなところも勇者部らしいといえばそうなのだろう。

 

 

 

 

「じゃあ、さっき言った通り情報交換を始めるわけだけど・・・ところでアイツはどうしたのよ。」

 

平素の勇者部独特のゆるーい雰囲気に流されかけたものの何とか立て直し、本題に入ろうとした夏凜だったが、部室を見渡して騒がしいのが一人いないことに気がついた。

思わず口をついて出た夏凜の疑問に答えたのは、親友の作ったぼたもちを幸せそうに口に運んでいた友奈である。

放課後、慌てた様子の紘汰に伝言を頼まれた同じクラスの友奈だったが、色々あってすっかり皆にも話すのを忘れてしまっていたのだった。

 

「んぐっ・・・あいつって、紘汰くんのこと?今日は何か別の用事があるから少し遅れるってさっき教室で言ってたよ。」

「ふーん・・・まぁ別にいいけど・・・。」

 

友奈からもたらされた情報で夏凛はあっさり引き下がった。

一瞬、心の中で何かモヤっとした感覚が生まれたような気がするが絶対に気のせいだ。

勇者ですらない相手だが、一応大赦からの指示もあるので仕方なーく気にかけてやっただけだ。いないならいないで全然構わない。・・・別に、昨日のやり取りを気にしているなんてことは全くない。

 

「・・・いない奴はほっといて、話を進めるわよ。バーテックスの襲来はこれまで周期的な物と考えられてきたわ。・・・でもアンタ達も知っての通り、その法則は既に相当乱れてる。今後敵がどう攻めてくるかは正直言って予測不能よ。」

「確かに一か月前は三体同時、しかも二日連続で出現しましたしね・・・。」

 

気を取り直して話を始めた夏凜の言葉に東郷が相槌を打つ。

夏凜が黒板に書いた情報によれば襲撃の間隔はおよそ二十日前後と想定されていたらしいが、最初の戦いから一か月と少しで既に五体も出現している。その情報はもはや全くと言っていいほどあてにならないとみていいだろう。

しかし、周期の予測があるなどということは、東郷達はもちろん直接大赦とやり取りをしている風ですら聞いたことはない情報だった。

今となっては問題ないが、少しだけ気になる。

大赦もこちらに余計な先入観を与えないためあえて何も言わなかったのだろうか。

 

「私は何が来たって対処できるけど、あんた達は違うわ。気を引き締めないと命を落とすわよ。・・・まぁ予測不能な敵に対して対抗手段がないわけでもない。勇者システムにはまだ上がある。勇者は戦って戦闘経験値をためるとレベルが上がり、より強くなることができるの。それが、『満開』よ。」

「『満開』かぁ・・・。」

 

夏凜の言葉を聞きながら皆が頭に思い浮かべるのは、先日会った戦極凌馬が言っていた言葉だった。

正直あまり良い印象は持てなかったし、どこまで本当のことを言っているのか怪しいが言っていることは一理ある。敵がどう出てくるわからない中、皆で無事にお役目をやり遂げるには、確かに備えるに越したことはないだろう。

そう言った意味で『満開』による勇者システムの強化はとても興味深い話だった。

 

「勇者は『満開』を繰り返すことでより強力になっていく。それが大赦の勇者システムよ。」

「ちなみに、三好さんは『満開』を経験したことがあるんですか?」

 

少し真剣になった部員達の表情を見て少々面食らったものの、ようやく真面目に聞く気になったかと満足そうに頷きながら話を続けていた夏凜だったが、東郷の何気ない質問に言葉を詰まらせた。

大赦で正式な訓練と教育を受けてきた身として色々と語りはしたものの、訓練はともかく実戦は先日が初めてである。まだ『満開』に至るほどの実戦経験値は積んでいない。

 

「そ、それは・・・まだ・・・だけど・・・。い、いいのよ私は!アンタ達とは地力が桁違いなんだから!とにかく、アンタたちじゃそのぐらいしておかないとこれからの戦いではやっていけないって言ってんの!」

「・・・心配してくれてるんですね三好さん。」

「なぁ・・・!?べ、別にそんなんじゃないわ!大赦からの指示だから仕方なく言ってやってんのよ!」

 

嬉しそうな樹の言葉を受けて居心地悪そうにしている夏凜に、メンバーからの生暖かい視線が集まる。実際にそういうと本人は絶対に否定するだろうが、やっぱり素直じゃないだけで根はいい人らしい。

 

「ま、とにかく装備は同じレベル1ってことなら、あとは私たちの頑張り次第ってことね。」

 

視線に耐え切れず顔を赤くして震えだした夏凜を見かねて助け舟を出したのは風だった。

彼女としてはこのままどうなるか見ていたい気持ちもあったが、変に爆発してまたヘソを曲げられても困る。

『満開』については正直まだわからないことが多いが、とにかく当面の方針としては”もっと頑張る”ということでいいだろう。

 

「そういえば、友奈ちゃんは紘汰君と一緒に特訓しているんだったわよね?」

「特訓・・・そうなんですか友奈さん?」

「うん!時間あるときにに少しずつだけどね!」

「あの子・・・そんな話全然聞いてないわよ・・・。」

 

以前紘汰にお願いされて以来、これまで友奈は何回か時間を作って武術を教えていた。

と、言っても勿論人に教えた経験など無いので、基本は友奈がこれまで教わってきた基礎的な動きの指導と筋力トレーニング、そしてちょっとした組手等が中心だった。

流石にこちらでは一日の長がある友奈が今のところずっと優勢ではあるのだが、元来の抜群な運動能力に加えどうやらセンスも相当あるらしく、始めたばかりだというのにもうヒヤリとさせられることが何度もあった。

ちなみにそんな特訓をしているということを家族にすらしていないのは、改めて言うのはなんだか照れ臭いのと、男子中学生らしく『秘密の特訓』というワードになんとなく憧れを抱いているからだったりする。

 

「じゃあそれについては後で本人から聞くとして、とりあえずお役目についてのお話はこれでおしまいね。次はもっと私たちらしい議題に行きましょう。樹、お願いね。」

「はい!」

 

部長である姉の指示に元気よく答えた樹は、集まっているメンバーに鞄に仕舞っていたA4用紙を配り始めた。内容は、今週末に控えた勇者部の活動内容についてのしおりである。

お役目ももちろん大事だが、勇者部の既存メンバーたちにとってはむしろこちらの方がより重要な話題だ。

 

それが丁度皆に行き渡るころ、慌ただしい足音が廊下の彼方から響いてきた。

その足音の主が誰かなんていうことは、流石に言うまでもないだろう。

遅刻して慌てているのはわかるが、廊下を走るのはいただけない。

呆れた風が右手で顔を覆いため息をついたのとほぼ同時のタイミングで扉が開き、足音の主――紘汰がようやく姿を現した。

 

「わりぃ皆!遅くなった!・・・と、あんたも来てたのか。」

「フン。別に。一応部員になったからには形式上来るわよ。」

「そ、そっか。そうだよな・・・。」

 

部室に飛び込んで最初に目に入ったのは、昨日初めて出会った強気な少女の後ろ頭だった。

つい口から出てしまった戸惑い気味の言葉に後悔したころにはもう遅い。素っ気ない言葉と共に早速そっぽを向いてしまった夏凜に紘汰はもはやタジタジだ。

昨日みんなの前で謝ると宣言したものの、いざ本人を目の前にすると中々言葉が出てこない。

結局それ以上は何も言えないまま樹から用紙を受け取ると友奈の隣へと収まった。

そのまま用紙に顔を向け熱心に内容を確認しているようなふりをしているが、先ほどからチラチラと視線がある方向へと向かっていることは外から見ている他のメンバーたちからはバレバレだった。ちなみに奇跡的に視線は交差していないが視線を向けられている方も全く同じことをしており、そちらもバッチリ気づかれている。

素直になれないそんな二人の様子に他の皆はそれぞれ苦笑を浮かべていた。

 

しばらくして今日はこれ以上進展はなさそうだと判断した風が、隣にいる樹に肘で軽く合図を送り進行を促した。それを受け、樹は少し慌てた様子で一つ咳ばらいをすると週末の予定について話を始める。

 

「え、えと・・・それでは、今週末の予定ですが、今週は子供会のレクリエーションのお手伝いをします。」

「具体的には?」

「折り紙の折り方を教えたり、一緒に絵を描いてあげたり、やることはいっぱいです。」

 

予定を発表した樹に東郷が質問し、より具体的な内容が全員に共有される。

話が始まった以上、流石に皆そちらに集中し予定や時間などを真面目に確認していた。

そんな中、唯一人ごとのように黙って用紙を見つめていた夏凜を目ざとく見つけた部長が、いたずらっぽい表情を浮かべながら彼女に向かって声をかけた。

 

「夏凜~。もちろんあんたにも色々働いてもらうから、そのつもりでいなさいよ~。」

「私!?」

「あんた今日からウチの部員でしょ?さっき自分でも言ってたじゃない。部員になった以上は部の方針に従ってもらいますからね。」

「け、形式上って言ってるでしょ!それに私のスケジュールをアンタ達が勝手に決めないでよね!」

 

まさか自分も対象だと思っていなかったが故に大いに慌て始めた夏凜に、ニコニコと笑顔を浮かべた友奈が近づいていく。

子供会のお手伝いとは、これはまたとても楽しそうなイベントだ。

夏凜も一緒に来てくれればもっと楽しくなるに違いない。本人はあまり乗り気じゃなさそうだが、友奈としてはぜひとも来てもらいたかった。

 

「夏凜ちゃん、日曜日用事あるの?」

「ない、けど・・・。」

「じゃあ親睦会もかねてやろうよ!きっと楽しいよ!」

 

無邪気な顔でグイグイくる友奈に夏凜はちょっと押され気味だ。

急に親睦会がなんだといわれたって正直どうしていいかわからないが、100パーセントの善意でこう来られると嫌だとも言いにくい。

しかし、その内容が内容である。

訓練一筋でこれまでやってきた夏凜にとって、年下の子供たちの相手だなんて完全に未知の領域であるし、そもそも向いているとも思えない。

 

「で、でもなんで私が子供の相手なんか・・・。」

「・・・嫌?」

「うっ・・・。」

 

一瞬にして不安げに曇った友奈の表情を見て、強気な夏凜も流石に怯んだ。

口ではなんだかんだ言いつつもやはり、何度怒らせるようなことを言っても自分に好意的に接してくれる相手のそんな表情を見てバッサリ断れるような性格はしていない。

助けを求めるように数度視線をさまよわせるが、どこを見ても目に入ってくるのは、夏凜がYesと言ってくれることに期待するような表情ばかりだった。

言葉にならない言葉を口から零しながら、しばらくそうしていた夏凜だったが、やがて観念したかのように目を瞑って大きくため息をこぼした。

 

「ハァ・・・わかったわよ・・・。今週の日曜日なら丁度、たまたま空いてるわ・・・。」

「やったぁ!!」

 

夏凜から出たOKの言葉に、部室の中が色めき立つ。

そのまま楽しそうに今週末のイベントについて話し始めた今の部員達の頭の中に、もうお役目のことなど残ってはいないのだろう。

あまりの能天気ぶりになんだか頭が痛くなってきた。

 

「・・・緊張感のないヤツら・・・。」

 

そして何より。

そんな雰囲気になんとなく流され始めてきている自分自身に、こんなはずではなかったと頭を抱えながら呟く夏凜だった。

 




書いては消しを繰り返し、息抜きにオマケなどを書いてみたり・・・。

以前言ってたものの導入部的なヤツです。



『散った花の数をかぞえて』

―――両親が死んだ。

それを最初に聞かされた時の感情を、僕はもう覚えていない。
ある日突然見知らぬ大人の人が家にやってきて、父さんと母さんの帰りを待つ僕の目の前でそう告げた。
それがどういうことなのかも理解できぬまま、車で連れていかれた先は大きな病院。
沈痛な面持ちのお医者様の案内で入った部屋の中、二つ並んだベッドの上には確かに僕の父さんと母さんが静かに横たわっていた。
その顔があまりに安らかだったから、本当にただ寝ているだけなんじゃないかと思って僕は母さんの腕に手を伸ばした。
母さんは普段しっかりしているが案外朝に弱いところがあって、時々僕が起こさなきゃいけないことがある。
そういう時はいつも、こうやって腕のあたりを掴み、優しく揺らしながら母さん、母さん、と声をかけるのだ。
そうすると母さんは眠たげな眼をこすりながらも僕に微笑みかけ、ありがとうと言って頭を撫でてくれる。
それが大好きだったから、僕は母さんを起こすのが嫌いじゃなかった。

薄暗い部屋の中で僕はいつものように母さんに呼びかける。
一回、二回、三回と繰り返しても母さんは目を開けてはくれない。
おかしいな。疲れているのかな。そんなことを思いながらも何度も何度も繰り返す。
それが十回を超えたあたりだったろうか。僕をここに連れてきた人が、僕の腕をつかんだのは。
その人は泣きそうな顔で僕を抱きしめ、お母さんはもう目を覚まさないんだよ、と言い聞かせるように僕に囁いた。
その言葉を聞いて僕は、不思議なぐらいあっさりと納得してしまった。
あぁ、父さんと母さんはもう本当に目を覚まさないんだな、と。
そう思えてしまうぐらいに、母さんの体はとっても冷たかったから。

それから数日は、あっという間に過ぎていった。
僕の家に普段から付き合いのある親戚と呼べる人達はおらず、父さんと母さんのお葬式はあの人が全てやってくれた。
その人は三ノ輪さんと言って、今はもう僕一人となってしまった呉島家の本家に当たる人なんだそうだ。

全てが終わった会場の外、石段の真ん中あたりで腰掛けながら僕はぼぅっと目の前の風景をただ眺めていた。
父さんも母さんももういない。頭ではわかっていても、実感としてうまく呑み込み切れていなかった。
ただなんとなく、明日からどうなるのかなんてことを考えていたような気がする。

そんな僕の頭上に、ふと影が差した。
ゆっくりと視線を上げた先にいたのは、僕より少し年上に見える長めの髪を頭の後ろで縛った女の子。
その子は、へたをすれば僕よりずっと泣きそうな顔で、僕の手を握りしめながらこう言った。

――私は銀。三ノ輪銀。今日からお前のおねーちゃんになるモンだ。大丈夫だミツザネ。これからは、おねーちゃんがお前のことを守ってやるからな――

それが僕と三ノ輪銀―――姉さんとの初めての出会いだった。




と、言うわけでミッチ主役の導入部でした。
設定はある程度共有しつつパラレルです。
闇を抱えていくミッチに勇者達は明かりを灯すことができるのか・・・。
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