咲き誇る花々、掴み取る果実   作:MUL

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第34話

夕日が辺りを染め上げる中。ベッドの上の少女は、傍らの少女に手を握られながら儚げな微笑みを浮かべていた。

右目を含む顔の大部分は真っ白な包帯に覆われており、その隙間から零れる金糸のような髪が、時折海風に吹かれて揺れている。

 

目の前のこの少女と、面識はないはずだ。

そのはずなのに―――東郷の胸には不思議な寂寥感が押し寄せていた。

東郷をじっと見ていた少女の視線が、隣―――紘汰の腰あたり、そこに未だつけられたままの戦極ドライバーの元へとスライドした。

それを見た少女の目に、また別の感情が浮かぶ。

ほんの少し、何かに耐えるように一度目を瞑った少女が、目を開くと同時にこちらに語りかけてきた。

 

「ようやく呼び出しに成功したよ…。わっしー。」

 

「え?わっ…しー…?」

 

少女が口に出した名前に、友奈は困惑して聞き返した。

宝物を扱うように紡がれたその単語は、おそらく誰かの愛称であることであることは察することはできるが、紘汰達三人の中にそれに相当する名前を持つ者はいない。

ならば傍らのもう一人の少女の名前なのかと思えば、そんな雰囲気でもなかった。

むしろ言葉を発した少女の視線は今、ずっと東郷の元へと注がれている。

 

「あなたが戦っているのを感じて…ずぅっと、呼んでいたんだよ。」

 

そういって嬉しそうに微笑む少女に、同じく話が呑み込めない紘汰もその視点の先にいる東郷に目を向けた。

 

「東郷…お前の、知り合いなのか?」

 

「…いいえ。初対面だわ。」

 

首を振り、そう答えた東郷の姿を見て、少女は一瞬目を伏せた。

そんな少女を気遣ったのか、傍らの少女が握っていた手を更に強く握りなおす。

 

「…園子…。」

 

「ありがとうミノさん。…うん、私は大丈夫だから。…わっしーっていうのはね。私たちの大切なお友達の名前。いつもその子のことを考えてて、二人でよく話してたから、つい口に出ちゃったんだ。」

 

そういってごまかすように笑った少女からは、悲しみの感情が伝わってくる。

悲しくて、それでもそれを押し殺して笑うその痛々しさに、友奈の胸はぎゅっと締め付けられていた。

しかし、何とかしてあげたいと思うのに、何故そんなに悲しそうなのか、その理由が全く分からない。

だから、悲しんでいる目の前の少女のことを少しでいいからわかりたいと思って、友奈は少女に問いかける。

 

「あの…私たちを呼んだって…。」

 

「うん。その祠でね。バーテックスとの戦いが終わった後でなら、縁を伝って呼べると思って。」

 

そういって少女が指さす方向には、先ほど樹海から戻ってきたときに目の前にあった祠がある。場所こそ違えど、それは確かに学校の屋上に建てられている祠と同じものに見えた。

しかし、そんなことよりも気になるのは―――

 

「バーテックスの事、ご存じなんですか?」

 

「一応、あなたの先輩…ってことになるのかな。私、乃木園子っていうんだよ。それで、こっちは―――」

 

「―――銀。三ノ輪銀。園子の、友達だよ。」

 

 

「わ、私!讃州中学二年、結城友奈です!」

 

「…犬吠埼、紘汰。」

 

「東郷―――美森です。」

 

友奈ちゃん、紘汰くん、―――美森ちゃん、か。

こちらの名前を噛み締めるように口の中で小さく反芻した少女―――乃木園子は、よろしくね、と微笑んだ。

もう一人の少女―――三ノ輪銀は何も言わない。

自分には何も言う資格はないとでも言うように口元を固く引き結び、無理に作ったような無表情でただ、園子のことを見守っていた。

 

「先輩…ってことは、つまりその…あなたも…?」

 

「うん。私も勇者として戦ってたんだ。ミノさんともう一人。友達と三人で、えいえいおーってね。今は、こんな感じになっちゃったけど…。」

 

そう言って園子は、包帯に覆われた右目のあたりと足を撫でて困ったように笑う。

その様子を隣で見つめる銀の顔にはほんの一瞬、隠しきれない後悔が浮かんでいた。

 

「…バーテックスが、先輩をこんな目に合わせたんですか…?」

 

「あぁ、えーっとね。これは敵じゃないんだ。…うん。あのね。友奈ちゃんは、『満開』…したんだよね?」

 

「え?え、えぇ。はい、しました。私も、東郷さんも。」

 

「そっか…。」

 

園子はわかっていて、それでもあえて確認の為に聞いたのだろう。

友奈の返答を聞いた彼女は少し目を伏せ、そして小さく息を吸い込んで―――その真実を口にした。

 

「咲き誇った花は、その後どうなると思う?…満開にはね、その後に『散華』という隠された機能があるんだ。満開の後―――体のどこかが不自由にはならなかった?」

 

「―――え?」

 

「それが『散華』。神の力を振るった、その代償。花一つ咲けば一つ散る。花二つ咲けば二つ散る。でもその代わりにね…勇者は決して、死ぬことはないんだよ。」

 

代償―――?死なない―――?

言葉は耳に入ってきた。その単語の意味も、頭では理解できている。

でも、心が受け付けない。

 

「私の体もね。満開して、戦い続けてこうなっちゃったんだ。全部動かなくなる前に敵を撃退できたのは―――良かったかな。私のは敵にやられたわけじゃないから痛くはないけど、全く動けないのはやっぱりきついから。」

 

「満、開して…戦い、続けて…それじゃあ、その体…は…代償で…?」

 

耳鳴りが―――酷い耳鳴りが聞こえてくる。

わかり切っていることなのに、聞かずにはいられない。

でも、どうか。

それでもどうか。

 

「―――うん、そうだよ。」

 

でもそんな期待は、あっさりと打ち砕かれた。

 

風が、強く吹いている。

海から吹くその風は、体だけではなく心にまでしみこんで、その心を乾かしていく。

まだ九月だというのに、なんだかとても寒い。

でもそうか。

寒いのは体じゃない。

心が―――心が、酷く寒かった。

 

「…ざ、けんな…。ふざけんな!!!なんでこいつらがそんな!!!!」

 

今までじっと黙って聞いていた紘汰が、とうとう堪えきれなくなってそう叫んだ。

目の前の少女に言ったところで、仕方ないことだというのはわかっている。

でも、それでも言わずにはいられなかった。

今にも園子に飛び掛からんばかりのその剣幕に、銀が園子を庇うように体の向きを変える。

そんな銀を手で制し首を左右に振った園子は、紘汰に怯むことも無く向き合って、それから静かに口を開いた。

 

「…いつだって、神様に見初められて供物となったのは、無垢な少女だから。穢れ無き身だからこそ、大きな力を宿せる。その力の代償として、体の一部を神樹様に供物として捧げる。―――それが、勇者システム。」

 

「供物…供物ってなんだよ!そんなこと、誰も…!!」

 

「大人たちは神樹様の力を宿すことができないから、私たちがやるしかないとはいえ、酷い話だよね。」

 

ぐちゃぐちゃになった頭のまま俯いた先、紘汰の視界に入ったのは自らの腰に装着されたままのドライバー。

それを引きちぎる様に力任せに掴み取り、園子に向かって突き付ける。

 

「じゃあなんだよこれは!こいつらしか…勇者システムでしか戦えないっていうなら、なんの為にこんなもんがあるんだよ!」

 

「…大赦にもね、その状況を何とかしようとした人は居たんだよ。その人達が創ったのがあなたが今使っている、戦極ドライバーとアーマードライダーシステム。勇者システム以外で唯一、バーテックスと戦える力…それでもやっぱり、勇者システムの代わりにはなれなかった。」

 

「そんな…!こいつは合体したバーテックスにだって負けなかったんだ!なのに…!」

 

「敵の力を無理やり利用したそのシステムはね。裏技に裏技を重ねた結果、勇者システム以上に人を選ぶようになっちゃったんだ。それでも…そこまでしても、勇者システム以上にはなれなかった。可能性はあったけど、結局それは失われてしまった。だから大赦は、研究室ごとその計画を封印したの。そしてやっぱり最後には、勇者システムだけが残された。」

 

少女達の犠牲にさえ目を瞑れば、安定した…それも恒久的な戦力が得られる勇者システムと、適合者すら容易には見つからず、しかも不明な部分の多い敵由来の力を利用したアーマードライダーシステム。

リスクと安定性を考えた場合、どちらが優先されるかなど大人の世界では自明の理だった。

ましてや計画を進めてきた責任者がいなくなったとあれば猶更だ。

 

「それじゃあ…私たちはこれからも…体の機能を失い続けて…?」

 

掠れた声を絞り出した東郷の体は、小刻みに震えている。そんな東郷の肩を、友奈がしっかり抱きしめた。

そして東郷を安心させるように、目を見つめながら―無理やりにでも―笑顔を作る。

 

「でも、十二体のバーテックスは倒したんだから、大丈夫だよ東郷さん!」

 

「倒したのはすごいよね。私たちの時は、追い返すだけだったから…。」

 

「そうなんですよ!だからもう、戦わなくてもいいんです!」

 

まるで自分に言い聞かせるように友奈はそう、言葉を重ねた。

神樹様が予言した、十二体のバーテックスは全てちゃんといなくなった。

だから、きっと少なくともこれ以上は―――。

 

親友を勇気づけるように振舞う友奈。

そんな友奈を見ながら園子はぽつり、そうだといいね、と呟いた。

風に消え入ってしまいそうなその声に、友奈達は気づけない。

 

「そ、それで!失った部分は…ずっと、このままなんですか!?皆はもう…治らないんですか!?」

 

「治りたい…よね。私も治りたいよ。行きたい場所も、やりたいこともいっぱいあるんだ。―――友達と、一緒に…。」

 

園子の言葉と、何よりもその状態がそこに希望が無いということを物語る。

残酷な現実を前に、再び友奈は言葉を失った。

 

「…悲しませてごめんね。大赦の人達も、このシステムのことを隠すのは一種の思いやりではあると思うんだよ。でも―――私は、そういうの…ちゃんと言ってほしかったから…。そうしたらもっと…こうなる前にもっといっぱいお友達と遊んで…それで、ちゃんとわかってて、もっとうまく戦えてたら…もっとちゃんと話せてたら…もしかしたら、今も……ちゃん、は…。」

 

園子の手が、何かを求めるように自分の頭へと伸ばされる。

しかし、そこにあったはずの温もりは、もう二度と感じられることはない。

 

唯一見える左目からぽろぽろと涙を流す園子の姿。

その姿を見た東郷は居てもたってもいられず、車いすをベッドに寄せ、あふれ出る涙を手で拭った。

触れた手の感触に園子は少し驚いて、そして懐かしそうに微笑んだ。

でも東郷には、何故彼女がそんな顔をするのかわからない。

 

「ありがとう、美森…ちゃん。…そのリボン、似合ってるね。」

 

「この…リボンは…。とても…大事なものなの…。それだけは覚えてる…のに。ごめんなさい。私…何も思い出せない…っ。」

 

頭の横で結ばれたリボンに手をやり、東郷は涙を流す。

事故に遭って、気がついた時このリボンは自分の腕に巻かれていたという。

それが大事なものだという事だけはすぐに理解できたのに、何故そうなのかがどうしても思い出せなかった。

でも、今はこれだけはわかる。

きっとこれは、目の前の少女にとってもとても大事な物なのだ。

 

「方法は!このシステムを変える方法はないんですか!」

 

友奈の悲痛な叫びが、海辺に響き渡る。

それにこたえるのは、今までずっと黙ってやり取りを見守っていた銀だった。

銀が自分の服の裾をわずかにめくり上げる。

彼女の腹部、その白い肌の上には、痛々しい大きな傷跡が刻まれていた。

 

「…アタシたちが戦い始めた時。勇者システムはまだ、こんな形じゃなかった。そのシステムで戦って、その戦いの途中でアタシは大怪我をして…目が覚めた時にはもう全部終わってた。」

 

「バーテックスとの戦いはね。それほど危険なものだったんだ。ミノさんは本当にもう少しで死んじゃうぐらいの怪我をして、最近までずっと寝たきりだった。バーテックスと戦うためには、勇者システムを強くしなきゃいけない。神樹様の力をもっと使わなきゃいけない。そして、それができるのは…私たちしかいないんだよ。」

 

バーテックスの侵攻を許せば、世界が終わる。

それをさせないためには、戦うしかない。

でも戦えば、命を落とすかもしれない。

命を落とさず、世界を守るためには―――。

 

何かを守るためには、何かを犠牲にするしかない。

神様の奇跡は、犠牲という対価無しには訪れない。

それが今のこの世界の―――残酷で、そしてまぎれもない真実だった。

 

「そろそろ、帰る時間だよ。迎えの大赦の人達ももう来ているしね。」

 

振り返ると、いつの間にか自分たち以外の人影が複数その場所に立っていた。

狩衣に烏帽子、そして大赦の紋が刻まれた白い面を付けたその人物たちは、静かな動作で園子に向かって平伏する。

そんな姿に一つため息をついて、園子は東郷に別れの言葉を告げた。

 

「私はもう神様に片足以上突っ込んじゃってるから、こうして崇められてるんだよ。こんなこと、してほしいわけじゃないんだけどね。…それじゃあね、美森ちゃん。いつでも待ってるからね。」

 

 

 

 

話は終わった。

未だにすべてを受け止めることができていない友奈と東郷は、何も言葉を発さないまま先導する大赦職員の背中について用意されていた車の元へと歩き出した。

そんな二人を見送って、紘汰は一人その場に残った。

最後に一つ、どうしても聞いておきたいことがあったのだ。

 

二人が十分その場から離れたのを確認し、改めて園子へと向き直ると、その目を見つめながら静かに口を開いた。

 

「なぁ。戦いは―――本当に終わったのか?」

 

友奈がもう戦わなくてもいいといったとき、この少女が浮かべた表情とこぼした言葉。

二人が気づかなかったそれらに、紘汰だけは気づいていた。

強張った表情で自分を見つめる紘汰を静かに見つめ返していた園子は小さく息を吐くと、一つの質問を紘汰へと投げ返す。

 

「紘汰くん。あなたたちはバーテックスを全部倒してきたって言ったよね。それは、どんなふうに?」

 

「どんな…って…。バーテックスを足止めしたら、アイツらが封印して…出てきた御霊を壊したら、沢山の光が…。」

 

「あぁ…やっぱり。うん、そうだよね。紘汰くん、私ね。見たんだその光。私の最後の戦いで。」

 

「それ…じゃあ…。」

 

「私たちが戦ってから、二年間バーテックスは現れなかった。だけど、二年後には新しい戦いが始まった。今回も同じかどうかはわからないけど、でも………。」

 

敵がまた、現れるかもしれない。

それは、残酷な真実に打ちのめされた彼女達を更なる絶望へと追いやる可能性だ。

震えるほどに手を強く握りしめる紘汰の脳裏には、大切な仲間たちの顔が浮かんでいた。

彼女達を、これ以上悲しませないために―――選択肢は、一つしかない。

 

「なら…なら俺が戦う!あいつらがこれ以上、戦わなくていいように…失わなくてもいいように!このドライバーなら、代償なんてないんだろ!?」

 

「そうだね。神樹様との結びつきが弱いそのシステムには、散華はないよ。」

 

「だったら―――!!」

 

「―――でもね、だからこそあなたは………死んじゃうかも、しれないんだよ?」

 

「っ!!」

 

死。

シンプルなその単語に、紘汰は言葉を詰まらせた。

精霊の力によって守られた勇者達が死ぬことはない。

しかし、それならばそうではないアーマードライダーは…

 

「アーマードライダーシステムには、精霊の守りはない。硬い鎧と丈夫なスーツはあるけど、でもそれだけなんだよ。紘汰くん。あなたは戦いの中で、今まで大きなけがはしなかった?」

 

「そ…れは…でも…!」

 

「友奈ちゃんたちの先輩に、私たちがいるように。あなたにもね、先輩は居たんだよ。」

 

「その…人は…?」

 

「―――死んじゃったよ。」

 

「あ…。」

 

淡々と告げた園子の顔には、どんな感情も浮かんではいない。

しかし、無理に作ったようなその無表情からは深い悲しみが否応なしに伝わってくる。

目の前の少女に、そんな表情をさせてしまったことに紘汰は激しい後悔と自分に対する怒りを覚えて口を噤んだ。

きっと、この少女は見てきたのだ。

限界を超えて戦った…アーマードライダーの行きつく先を。

 

「その人が使っていたのが、あなたが今持っているメロンエナジーロックシード。封印されたはずのアーマードライダーが―――あなたが戦っているって聞いて、ミノさんにお願いして届けてもらったんだ。ミノさん、リハビリもまだ終わってないのに頑張ってくれて…。」

 

「色んな目があるから、直接渡しには行けなかった。色々調べて準備して…一番ちゃんと渡せる可能性があったのがあの方法だったんだ。満開についても、あのぐらいしか…。ごめんな。アタシが、もっとうまくやれてたら…。」

 

「ミノさんのせいじゃないよ。私の方こそ、無理言ってごめんね。………私たちと一緒に戦ってくれたその人は…私の、お兄ちゃんは…とっても強くて、とってもカッコよくて、いつも私たちの事守ってくれて…それで最後は一人で戦って死んじゃった。自分の命と引き換えで、お兄ちゃんは私の大切な友達の命と、私の夢を守ってくれた。…でも、ね…。わ、私は…それでも一緒に…ずっと一緒にいてほしかったから…だから…っ!」

 

とうとう感情があふれ出してしまった園子の体を、銀が優しく抱きしめる。

嗚咽を漏らす園子の背中を撫でながら、銀は顔だけを紘汰に向けて園子が言おうとした言葉を引き継いだ。

 

「もういいよ園子、もう…。ごめん、これ以上はもう勘弁してあげて。園子はさ…中もあちこち捧げちゃって、あんまり長いこと無理できないんだ。病院のベッドから離れられないのもそれが理由。…自分を犠牲にしてでも友達を守りたいって気持ち、アタシにもわかるよ。でも、アーマードライダーの力は強いけど、無敵でも不死身でもないってことは覚えておいて。そしてそうやって無茶を重ねた結果、悲しむ人がいるってことも。」

 

 

 

 

大赦が用意した車が、讃州市に向けて走っていく。

助手席に座り、車に揺られる紘汰の頭では先ほどの話の内容が駆け巡っていた。

どれだけ考えても堂々巡りで、どうすればいいかなんて何一つ浮かんでこない。

こんな時に何もできない自分への苛立ちで、紘汰は割れそうなほどに奥歯を噛み締めた。

 

ちらりと視線を向けたバックミラーには、友奈と東郷が抱き合いながら眠っている姿が映っていた。

きっと、泣き疲れてしまったのだろう。

二人の目尻には、はっきりと涙の跡が残っていた。

二人を…皆を守るために、自分にできることなんて結局一つしかない。

バックミラーから視線を外した紘汰は、自分の両の掌をじっと見つめる。

戦いと訓練の影響で、ここ数か月で随分と皮膚が硬くなった…そして、すべてを救い上げるにはあまりにも小さすぎるその掌。

 

―――死んじゃうかも、しれないんだよ?―――

 

頭をよぎった園子の言葉に、紘汰は大きく顔を歪めた。

その言葉と同時に浮かんでくるのは、あの戦いの後、入院が決まった時の風と樹。たった二人の大事な家族の心配そうな表情。

 

(でも…たとえそうだとしても…俺は…っ!!)

 

自分の膝の上に置いた両手を強く握りしめながら、紘汰はフロントガラスから見える夜の闇をひたすら睨み続けた。

 




園子さんは原作と違い、両手は動かせるので今も無理ない範囲で小説を書いています。
それが、貴虎兄さんが銀さんの命以外で園子に残したもの。
そして銀さんは1年以上昏睡した後ようやく目が覚めて最近になってやっとある程度歩き回れるまでに回復してきたという感じです。
だからこそ松葉杖つきながらでも何とかロックシードを渡しに行けた。

元々反対も多かったアーマードライダー計画は責任者である兄さんがいなくなったことで頓挫。
しかし裏でこっそり戦極が継続。
それができたのは本人の手腕もありますが、大赦の体制側にも関係の深いとある協力者がいて…
そのあたりもまた、これからのお話でできればと思います。


さて、今年の投稿はこれで最後になります。
ひっじょーにモヤモヤした感じで新年迎えるという暴挙…。
でもこれ以降一章は最後までどこで切ってもそんな感じなので…。

未だ色々と拙い文章ではありますが今年もお付き合いいただきありがとうございました。
来年はとりあえず一章完結、そして三章のプロローグのみ公開してから二章突入という形になる…と、思います。たぶん…。

これからもコツコツと続けていきますのでこれからもよろしくお願いいたします。

では、皆さまよいお年を。
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